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ミステリの祭典

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ことはさんの登録情報
平均点:6.19点 書評数:298件

プロフィール| 書評

No.38 4点 倒錯のロンド
折原一
(2019/11/17 01:35登録)
叙述トリックは大好きです。
しかし、これはだめだった(面白く感じられなかった)もののひとつ。
なにがだめかって、叙述トリックが明かされるまでのストーリーが全くのれない。陰鬱なサイコ風の話で、仕掛けだけを楽しみに読みましたが、だめでした。仕掛けは悪くないんだけど、仕掛けだけのために(私の好みでは)つまらない話を読まされても、なんだかなぁという感じです。
ううむ、折原一は何作か読んでいるけど、こっち系(サイコ系)の話はまったく相性が悪くて、楽しめないなぁ。パロディ色の強い密室ものは楽しめるんだけどなぁ。


No.37 3点 七回死んだ男
西澤保彦
(2019/11/17 01:26登録)
世評では高評価だけど、自分はまったく楽しめなかった作品って、結構ありますが、このサイトでの点数と、自分の読後感で、一番乖離があるのがこの作品。
まず、何度も似たような話が続く展開が飽きるし、なにしろ、語り口が受け付けない。上滑りな口調で、事件がどうなってもどうでもよくなってしまった。(語り口に対するコメントがまるでないのが意外。これってわたしだけ?)
そのせいか、全体の趣向も「あ、そうなの」といった感じでまったくひびかない。
やはり作風の相性ってあるんだなぁと思う。


No.36 8点 午前零時のフーガ
レジナルド・ヒル
(2019/11/12 00:34登録)
あぁ、とうとう(既訳の)ダルジール・シリーズを読み終わってしまった。
今回も(タイトル通り)フーガのように重層的なプロット。同一時間を並行的に4つくらい進行させる。作者が70歳過ぎの作品なのに、全然耄碌していないなぁ。もっと生きて新作を書いて欲しかったよ。
ダルジールは、前々作の怪我から少しずつ調子を取り戻し、本作のラストで完全復活という感じ。次作があれば、またダルジールの活躍が見れたのにと思う。
最終章は、ノヴェロとの会話でしんみりして、パブで締めくくりと、いい感じだし、エピローグも「そうくるかぁ」という感じでよい。
シリーズでも上位の出来です。
でも、なんであまり読まれていないかなぁ。このサイトで(ヒル作品全体で)この投稿数なのは寂しい。英国小説らしい皮肉めいたユーモアが全編にきいていて、読んでいる間、実に楽しいのに。
例えば、7年前の事件に関わりを持たされたダルジールの台詞がこう。
「このショーは7年もロングランを続けていて、わたしはたった今、舞台の袖から迷い込んだばかりだ」
ジャンル小説にくくれないからかもしれない。「完璧な絵画」以降のシリーズは、謎解き/警察小説のテイストの群像劇になっているからなぁ。
ここはひとつヒル推しで、こつこつ書評を書いていこう。


No.35 6点 忘られぬ死
アガサ・クリスティー
(2019/11/04 00:48登録)
これも評価が難しい。
最後に明かされる真相の構図は、確かに予想外で驚かされた。でもそれが心地よい驚きか、肩透かしかは微妙なところ。否定的な人も出そう。私はやや肯定的。
各登場人物の心理の描きこみもされているが、私には少し冗長。(冗長に感じるところがクリスティー好きではないところですな)
トリックについては「誰か気付くよ」と思うので、かなり否定的。
5点とまよった6点。


No.34 7点 死が最後にやってくる
アガサ・クリスティー
(2019/11/04 00:39登録)
これは評価が書きづらい。
まずこれを読もうと思ったのは、「クリスティー攻略作戦」で「ないないづくし」と否定されていて、どんなものでしょうと思ったからだった。
ところが、これが面白かった。「クリスティー攻略作戦」での否定的な部分に反論する形で感想を書いてみよう。
(クリスティー再読さんも「コスプレ」と書いているが)「クリスティー攻略作戦」では、そうとう否定的なニュアンスで「コスプレ」と書いている。うん、確かにそうだ。登場人物の考え方は現代人で、当時の人はこんな風には考えないに違いない。「コスプレ」だ。
でも、霜月さんには「それでいいでしょう!?」と言いたい。そんなことをいったら劇団四季なんかみれませんよ。「コスプレ」と思ってみればいいのだ。舞台設定は風味付けに過ぎない。それを求めるのはもっとリアルな作品群でしょう。(情報調略小説みたいな?)
霜月さんは「情景描写がない」というが、クリスティーにしては少しはある方だと感じる。これも舞台設定に応じた描写がないといっているのだと思うが、そこは「コスプレ」だからいいのだ。
プロットも人物もいつものクリスティーで、霜月さんは特別なものがないと否定しているが、私としては安定した内容と受け取れた。
安定以上に、人物描写については、他作品より鮮明に感じられたし、物語の最初と最後で人物の立ち位置が変わっていくさまは、なかなかスリリングに思えた。
最初の事件の「ある気づき」については、後年の有名作にも似た味わいがあるし、ミステリ的にも美点があると思う。
個人的に好みなのは(風味付けに過ぎないかもしれないが)舞台設定だ。大家族の確執が、より切実に感じられる気がするし、舞台設定を利用した、事件解決後のエピローグ的なラストがいい。主人公の決断が不思議な味わいがあって、この感覚なんといったらいいかと少し考えて「あぁ」と思ったのは「センス・オブ・ワンダー」だった。クリスティーで「センス・オブ・ワンダー」を感じるとは!
ここ最近よんだクリスティー作では、一番よかった。典型的クリスティー作でなく、こういう異色が好きなところが、私はよいクリスティー読者ではないなぁと思う。


No.33 5点 無実はさいなむ
アガサ・クリスティー
(2019/11/04 00:09登録)
クリスティー好みの家族の人間関係を中心にした疑心暗鬼がサスペンスたっぷりと描かれる。
視点人物が固定されないのも、個々の人物をカットバック方式で描きたいからでしょう。
中盤までは楽しかったが、後半の事件は付け足し感が大きいし、解決は少し腰砕けに感じる。謎解きの枠組みがじゃまをしている気がするんだよなぁ。もっと心理サスペンスに振ったほうが面白かったと思う。


No.32 4点 ねじれた家
アガサ・クリスティー
(2019/11/03 23:24登録)
これはだめでした。
中盤、クリスティー好み(?)の女優やらの尋問シーンなどがどうにも退屈。やはり私はクリスティーのキャラは性にあわないのだなぁ。
真相は意外かもしれないが、説得力はよわいし、視点が変わるから視点人物に感情移入する型でもないし……。
評価する人はキャラを楽しめる人なのかなぁ。


No.31 8点 司政官
眉村卓
(2019/10/27 00:21登録)
ミステリではないけれど、見てみたら、登録済みだったので採点。
いやあ、面白かった。今さら自分が「異世界の社会の成り立ちを描いた作品」が好きなことに気付かされた。
解説で「アシモフの影響」とかかれていたけど、確かにファウンデーション・シリーズに似たテイストがある。アシモフよりも、社会の成り立ちのウェイトがだいぶ強いけど。
1話は描写がくどい(ページ数も内容に比べて長い)気がするけど、他は、簡潔なのに世界のイメージが湧いて、どこか哀愁が感じられる作品ばかり。傑作です。


No.30 10点 シャーロック・ホームズの冒険
アーサー・コナン・ドイル
(2019/09/07 01:30登録)
点数は、もうこの点しかない。
古典の評価をするとき、どう評価するかは難しいですね。
読んで面白かったかどうかだけで点をつけるのもありですが、私はその作品の影響下にある作品も一緒に考えます。
(読んで面白かったかどうかだけで点をつけるのを否定するわけではなく、そういう多様な切り口の評価があつまるから、このサイトは素敵なのだと考えています。以下は私の視点の説明というだけ)
A作品を読んで「面白かった」と思った、B作品を読んで「Aと一緒じゃん」と思ったとして、A作品よりB作品のほうが先行していて、面白かったポイントが同じなら、「面白かった」と思った評価は先行のB作品に与えるべきでしょう。「歴史的価値」ともニュアンスは微妙に違って、要は「”真似したほう”(後続作)への評価は、”真似されたほう”(先行作)へ振替しよう」と思っているだけなのです。
そう考えると、ホームズは後続のミステリ/名探偵設定に絶大な影響があるわけで、ホームズがなければ、今のミステリはないと思うのです。
作品で言えば、やはり「冒険」。
「緋色」「四人」だけでは、影響はなかったろうし、「思い出」以降はプラスアルファです。
最強のインフルエンサーの本書には、この点しかありえません。
個々の作品について少し。
集中好きなのは「青いガーネット」。ガチョウの足取りを追跡するテンポの良さが楽しい。次は「まだらの紐」。ラストのホームズのセリフが好き。
ついでに、自己紹介に「ホームズ生まれ」と書きましたが、そのホームズは、ポプラ社の山中版ホームスでした。好きな話は「鍵と地下鉄」「踊る人形」だったなぁ。
最後に、「冒険」の「おっさん」さんの書評、とてもいいです。私もこんな書評がかけたらなぁ。


No.29 3点 真鍮の家
エラリイ・クイーン
(2019/09/07 00:53登録)
ン十年ぶりの再読。
これはいまひとつだなぁ。うん、クイーン長編38作中で最低評価確定です。
前半はひねくれた設定で退屈しないけれど、中盤、殺人と宝探しとで興味が分散してしまうし、クイーン警視の推理で盛り返しても、ラストの解決が説得力がないなぁ。初期の鮮やかな論理や、奇抜な手がかりはどこへいった……。中期の小説としての厚みもないし……。


No.28 6点 花嫁のさけび
泡坂妻夫
(2019/08/31 14:36登録)
再読。「レベッカ」と続けて読んでみた。
以前読んだときは、メインの仕掛けに「すげぇ」って思ったけど、うーん、仕掛け以外の部分がどうにも楽しめない。もうこれは好みとしか言えないのだけど……。やっぱり登場人物の心理描写がないからかなぁ。仕掛けを考えたらしょうがないとはいえ、うん、仕掛けをメインに楽しんでた若い頃とは好みが変わってきたということでしょう!


No.27 7点 レベッカ
ダフネ・デュ・モーリア
(2019/08/31 14:30登録)
古典、侮りがたし!
いろんな作品の、これが元ネタかぁ、といったところが多々あり。面白い。
今の視点からすると、プロットの仕掛けはわかりやすいけど、(時代によるのかな)ゆったりとした描写力は味わいがある。読み捨てではなく、再読したくなる魅力を感じる。
ついでに、翻訳について。
数年前に新訳されたが、私は旧訳を読んだ。
比較を色々検索すると「マキシムは旧訳のほうが萌える」というような記述があって、下記の比較がのっていて、たしかにこれなら私も旧訳が好き。
【旧 大久保訳】
ところで、あなたはまだぼくの質問に答えていませんね。ぼくと結婚してくれますか?
【新 茅野訳】
まだ答えを聞いてないよ。ぼくと結婚する?


No.26 10点 春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
(2019/08/29 01:25登録)
私はあまりいいクリスティー読者ではないです。(20作以上読んで、クリスティーとはお話の好みが違うところが多いと感じている)
それは学生時代からそうで、その頃にいくつかのクリスティー作品を読んで「いまひとつだな」と思っていました。
そして「クリスティーは(アイルズの「殺意」みたいな)心理サスペンスを書いたら面白そうなのに」とも思っていました。
そのときにこれを読んで、「クリスティー、やっぱりこういうの面白いじゃん!」と夢中になりました。
この作品、ここ数年でじわじわと評価が高まっているように思いますが、10年後には、クリスティーの「そして誰も……」と並ぶ最有名作になっていると思います。
伊達に「クリスティー攻略作戦」で「未読は俺が許さん!」とかかれていないな。
マイ・オールタイム・ベストの1作。


No.25 5点 道の果て
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 01:11登録)
これはあまりみるところがない。退屈はしないからこの点数だけど。
前半は恐喝されるサスペンスがガーヴにしてはスリリング。しかし、恐喝者が死んでからは、主人公が悪い方へ悪い方へもっていっていて、どうにも共感できない。舞台の大森林のイメージが湧かないのも弱いいなぁ。
ラストシーンは良い感じ。


No.24 8点 遠い砂
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 01:07登録)
これはいい。冒頭の出会いから風景描写がよくて、事件が起きるまでも楽しく読める。
事件発生から捜査の過程もスリリングで、主人公ふたりの葛藤も味がある。特に主人公のモチベーション(それは読者のモチベーションにも直結するけど)が、明快なのがいい。
「遠い砂」を読んで、「メグストン計画」「ギャラウエイ事件」を思い起こすと、あれらは主人公のモチベーションが弱いと思う。こっちのほうが好き。(福島正実訳好きとしては、それで数割増しているとは思うけど)
それに、ラストシーンはツボ。「ギャラウエイ事件」にもこういうエピローグが必要でしょ!
今のところガーヴで一番いい。


No.23 6点 地下洞
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 01:01登録)
これもガーヴらしく3部構成。
事件発生、恋愛サスペンス、そして……。
1部の洞窟描写は味がある。いいね。
2部の恋愛サスペンス、悪くない。でも1部からの引き続きとしては、違う方向に行っている感が……。
と思ったら、3部でそっちの方向?!
なんだ、この違うベクトルの話を3つ繋げた話は。嫌いじゃないけど。1部が一番好きかな。


No.22 7点 メグストン計画
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 00:54登録)
きれいな3部構成。計画、実行、実行後。どこもよどみなく楽しく読める。
2部の冒険小説風の味がカーヴなんだろうなぁ。冒険小説はそんなに好きでない私でも楽しめた。
(ジャンル投票は冒険小説にしました)
ラストは、ささっと終わる。これもカーヴ印。
うん、楽しい。ガーヴの特徴がでているという意味で、確かに代表作。でも、これが代表作だとインパクトは薄いかなぁ。ガーヴがメジャーにならないのはその辺りにあるのかなぁ。


No.21 7点 ギャラウエイ事件
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 00:44登録)
冒頭の二人の出会いから再会まで、とても楽しく読める。
ここの流れはいかにもガーヴ。なるほどクロフツ風との評がでるのもわかる緻密さ。いい。
そこから一転、剽窃事件へ。試行錯誤の道行きが楽しい。最後は冒険小説風で、ここはちょっとベタすぎかなぁ。
どうしてもいいたいのは、ラスト! ああ、これは、エピローグが必要でしょ! 読んだ人、わかるよねぇ。


No.20 7点 死と空と
アンドリュウ・ガーヴ
(2019/08/29 00:40登録)
ガーヴは3部構成が多いけど、これも3部構成。
よくできたサスペンス。瀬戸川さんが「夜明けの睡魔」で「幻の女」より面白いと書いていたけど、まあ、それは言い過ぎにしても、持ち上げたくなる気持ちはわかる。これが絶版とは!
2部の脱走のスリリングさ、いい。古き良きイギリスの冒険小説のイメージですね。
ラストが、ささっと終わるのが、インパクトが薄くなってしまうかもしれないけど、でもこれはそれがはまっているように思う。
「ギャラウエイ事件」「メグストン計画」より好き。


No.19 5点
エラリイ・クイーン
(2019/08/12 15:08登録)
ン十年ぶりの再読。 (展開のネタバレあり)
「三角形の第四辺」とつづけて読んでみて、共通点が多いなと感じました。状況証拠だけで法廷まですすんで、最終的に無罪判決になる展開。犯人の立ち位置など。(発表順もつづいているので)「三角形の第四辺」のリベンジ?
確かに「三角形の第四辺」よりはいいけど、積極的に評価する気にはならないなぁ。
第2の事件をよく考えると、犯人も見えてきてしまうし、だいたい登場人物が少なくて、展開の可能性が少なくて思いついてしまう。
「最後の一撃」より後のクイーン長編では、平均よりは上だけど。

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