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ミステリの祭典

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平均点:6.13点 書評数:459件

プロフィール| 書評

No.299 10点 推理小説の整理学〈外国編 ゾクゾクする世界の名作・傑作探し〉
評論・エッセイ
(2020/04/29 17:06登録)
★★★★★ミステリだけではない美学への入門書(2014年11月9日アマゾンに投稿)
都筑先生に次ぐハヤカワミステリマガジンの立役者(準備は常盤新平さんがしたらしいですが)。 編集長時代には、マンガあり、アニメ評あり、立派な映画評論ありの黄金時代をもたらしました。正統派からは文句が出たのでしょうが… この本も、当時は先進的だったと思いますが、今では真っ当なスタンダード、保守派と思われるくらいの名作をリストアップしています。面白い本を見つける方法も伝授しており、確かに役に立ってます。他にも著者の美学が学べました。大真面目に読みすぎですか?でも田舎の少年にはとても有難かった水先案内だったのです。
(現在、4人が役に立ったって評価いただいています…)
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各務三郎なら私はこっち。1977年7月かんき書房出版。ミステリ(というか大人の小説。札幌の駅地下の書店、弘栄堂にずらっと並んだHPBが眩しかった… 当時もっと田舎に住んでたので…)を読み始めた頃に見つけ、スポンジのように吸い込み、多分いろいろな物の見方に大きな影響をうけているはず。でも書庫の奥にあるのか全然見つかりません。(見つけたらちゃんと読んで追記する予定。上記のアマゾン評も記憶だけで書いています。)
記憶の中ではバランスの良い入門書で、コロンボとかにも触れてたり、後から集めたHMMの太田博編集長時代を彷彿とさせる内容だった、はず。
桜井一の表紙絵も良い。
『ミステリ散歩』は未読なので、この機会にそっちも入手するつもりです…


No.298 5点 ミステリマガジン1984年4月号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/27 20:03登録)
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1984年4月号 <336>
小特集は「女たちの殺人物語」と題して3篇。234ページ。定価580円。
表紙イラストは岡本 信次郎、表紙・扉・目次構成は島津 義晴と野々村 晴男。表紙にはMECHANICALの文字とゼンマイのネジが毎号描かれているようだ。今号のメインはベルリン風キャバレー・ダンサー。裏表紙の広告は大塚製薬 カロリーメイトとポカリスエット。
ダイアン・ジョンスンの『ハメット伝』は連載3回目、作家修行時代(1921〜1926)が載ってる。稿料について下で結構いろいろ書きました。他は都筑『出来るまで』と瀬戸川『睡魔/名作篇』はやはり見逃せない。リレー小説はバークリーがウィムジイ卿を引っさげて登場。
雑誌全体の暫定評価は5点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
小説は10篇。以下、初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は雑誌収録順。
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⑴ “Murder by Dog” by Christianna Brand (初出HMM 1984-4書き下ろし)「人間の最良の友」 クリスチアナ・ブランド 中村 凪子 訳(挿絵 山野辺 進)
英語タイトルの記載がない。上記はWebサイト“ミステリー・推理小説データベース Aga-Search”にあったものを採用。
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⑵ Mary Postgate by Rudyard Kipling (初出Nash’s and Pall Mall Magazine 1915-9 挿絵Fortunino Matania; 米初出The Century Magazine 1915-9) 「メアリ・ポストゲイト」ラドヤード・キプリング 山本 俊子 訳(挿絵 佐治 義隆): 評価7点
コンパニオンについての話だと解説にあったが、そーなのか? こーゆー話を書くキプリングは只者ではないなあ。途中で泣きそうになりました。実にハードボイルドな文体。翻訳は不安定なのが残念。(最後のほう、ニュアンスを掴みかねてる匂いがする… しかしながら原文を読んでも私の英語力ではよくわからない…) Mataniaの素晴らしいイラストはWebで見つかるので是非。
p40 建物のすぐ裏手で銃声—と二人には聞こえた(a gun, they fancied, was fired immediately behind the house): このgunは大砲だろう。数行あとで「爆弾(A bomb)」と言っている。爆発音が、大砲を発射したようだった、ということ。
p42 鼻先が平になった弾丸(たま)をつめた大きな自動拳銃だった。この種のものは戦争のきまりで敵国の市民に対して使ってはならないことになっている…(a huge revolver with flat-nosed bullets, which latter, ... were forbidden by the rules of war to be used against civilised enemies): 試訳「大きなリボルバーと先端が平らな弾丸—それは…文明国の敵兵士に対して使用を禁じられているものだ…」ハーグ陸戦協定(1899)で定められた弾丸先端は固く尖っていなければならないルール、先端がフラットな弾丸は体内で潰れて拡がり、内部の損傷を悪化させ兵士を不必要に苦しめるためお互いにやめましょう、という国際協定。(野蛮人には適用されない。) この翻訳では意味が取りにくいし、「市民」ではなく「兵士」に対する規定だし(むしろ警察のほうが後ろの市民に2次被害を起こすのを避けるため体内を貫通しにくいフラットノーズ弾を使う)、リボルバーを自動拳銃と間違えている。
(2020-4-26記載)
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⑶ The Woman Who Loved a Moter-Car by Julian Symons (初出The Argosy(UK) 1968-10 挿絵David Knight)「モイラ — 車を愛した女」ジュリアン・シモンズ 水野谷 とおる 訳(挿絵 天野 嘉孝)
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⑷ The Belvedere by Jean Stubbs (初出”Winter's Crimes 3” 1971, ed. George Hardinge)「ファニー — 望楼」ジーン・スタッブス 山本 やよい 訳(挿絵 新井 苑子)
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⑸ Whip Hand by E. S. Gardner (初出Argosy 1932-1-23 as “The Whip Hand”) 「先手を打て」E・S・ガードナー 大井 良純 訳(挿絵 門坂 流)
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⑹ Captain Leopold's Gamble by Edward D. Hoch (初出AHMM 1980-11-19) 「レオポルド警部の賭け」 エドワード・D・ホック 木村 二郎 訳(挿絵 畑農 照雄)
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⑺ 「黒いレストラン 第1話 理想的な夫」東 理夫 (挿絵 河原まり子)
連載ショートショート。今月の料理(レシピ付き)はスプリング・ラム・レッグ・ロースト。
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⑻ A Piece of Cake by Ron Montana (初出AHMM 1981-3-4) 「ケーキの分け方」 ロン・モンタナ 竹本 祐子(挿絵 細田 雅亮)
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⑼ Passport in Order by Lawrence Block (初出AHMM 1966-2) 「逃げるが勝ち?」ローレンス・ブロック 和泉 晶子 訳(挿絵 楢 喜八)
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⑽ Ask a Policeman (単行本1933) リレー小説『警察官に聞け』連載第4回 「解答篇3 ウィムジイ卿の個人的助言」アンソニイ・バークリイ(Anthony Berkeley) 宇野 利泰 訳(挿絵 浅賀 行雄)
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HMM OPENING FORUMとして
『連想ゲーム(岡嶋 二人)』二人三脚の作家の秘密を公開。
『世界のミステリ作家を撮る(南川 三治郎)』文藝春秋のグラビアになった作家たち。撮影の苦労話。実家で文藝春秋を毎号とってたので懐かしいなあ。掲載号は捨てちゃったかな?
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Dashiell Hammett: A Life by Dian Johnson (1983)「ダシール・ハメット伝: ある人生」ダイアン・ジョンスン 小鷹 信光 訳 連載第3回「修行時代—サンフランシスコ(1921〜1926)」以下の日本円換算は当時の米国消費者物価指数を2020年と比較して算出したもの。1921年末のピンカートンからの日給は6ドル(=9504円、フル稼働で月額約24万円)。『マルタの鷹』のプロットはヘンリー・ジェイムズの『鳩の翼』(1902)がヒントだ、という。しかもハメットがジェイムズ・サーバーにそう言ったらしい。『鷹』の前にぜひ読まなくては。しかし内面描写溢れるヘンリー・Jの文章がハメットに(逆の)影響を与えた、というところがとても興味深い。復員局補償金はタコマ時代の最悪期(1919か1920か)に月額80ドル(=13万円、1919年基準)、回復期病院転院時に40ドルになり、退院後(1921年5月頃)は20ドル(=31680円)に下げられた。1922年に遡及適応される追加補償金月額2ドル50セント(=4208円)を勝ち取り(合計額16ドル21セント…何の合計?)、1924年4月末に遡及適応される月額51ドル68セント(=81034円)を得る。しかし5月で打ち切り。Black Mask1924年8月に掲載されたハメットの詫び状、ずいぶん気弱な感じ。(小鷹さんは「ハメット唯一の見苦しい文章」と評している。) 体調がよっぽど悪かったのか。ボブ・ティール殺し(突っ返されたThe Question’s One Answerのことだと思う。結局、別の雑誌に載った)、そんなに酷い作品かなあ? 1926年7月、結核で血を吐いて倒れた時、復員局補償金月額90ドル(=14万円)を得た。パルプ雑誌での稿料は1語2セント。
※ パルプの稿料について、Richard Laymanの”Corkscrew and Other Stories”序文(2016)によると、Black Maskは渋かったらしく(記録が残っていないが)ハメットは1語1セントだったようだ。(他のパルプ雑誌のスター作家は20年代中盤に1語2セント、後半には3セントになったという) ハメットが1語2セントに昇格したとすればショー編集長時代か? (1926年コディ編集長は稿料の値上げを拒否しハメットはBlack Maskを去る。この時、ガードナーが自分の稿料を削ってハメットに上乗せしろ!と提案したのは有名な話。ガードナーにここまで言わせるコディって結構なヤツだったのでは?) ハメット短篇の語数はサットン編集長時代は2篇を除き6000語以下、コディ時代は14000語。1語1セント、14000語として140ドル(=22万円、1926年基準)。比較の対象にはあまりならないが、新人作家フィッツジェラルドがSaturday Evening Post初短篇(1920)で400ドル(=64万円)。気前の良いポスト誌の稿料とは言え、新人作家と約3倍の差。ハメットが自作を「屑」と卑下する気持ちもわかりますよね…
ところで上述の序文を読んで初めて気づいたのだが(←何のために年代順に読んでたんだろうねえ)、サットン時代のオプものには派手な銃撃戦などは全然ない(例外はBodies Piled Up)。死体とアクションが山盛りになるのはコディ時代。よく考えると、コディが掲載拒否した2作のいずれにもそーゆー場面が登場しない。お馬鹿なコディ&副編ノースには作品の品質より血みどろさがウケるということしか理解出来なかったのだろう。(ハメット詫び状の妙なへりくだりぶりは、お前ら、そんなに文章が読めないのかよ?という皮肉だったのか、と腑に落ちました。)
(この項目、2020-4-28大幅に追記)
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読み物は
『続・桜井一のミステリマップ: ワインは死の香り』地図が大雑把すぎる…
『共犯関係(青木 雨彦)1 女神について』映画『ディーバ』についていつもの雨彦節。
『連載対談 田村隆一のクリスティー・サロン4 ジェーン ・オースティンの伝統(小池 滋)』
『ペイパーバックの旅(小鷹 信光)16 M・E・チェンバーのMilo Marchシリーズ』
『アメリカン・スラング(木村 二郎)4 ダウンタウン物語』『フィルム・レビュー(河原 畑寧)「ジョーズ3」の立体度は?』この頃、また3Dがちょっと流行ってたらしい。
『ロジャー・L・サイモンの東京日記(木村 二郎)』『名探偵登場(二上 洋一)16 おしどり探偵—シンとマユコ』『フットノート・メロディ(馬場 啓一)16 ミステリに於ける船旅について』
『ハメットにダッシュ!(青山 南)4 銀色の目の女』『血の収穫』はつまらないがオプものの中短篇は無類に面白い、という感想。
『推理作家の出来るまで(都筑 道夫)96 馬小屋図書館』今回は特許すべき事なし。
『愛さずにはいられない(関口 苑生)4 少年よ試練の壁に耐えてタテ!』
『新・夜明けの睡魔/名作巡礼(瀬戸川 猛資)4』ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』ほとんどSF的にクレイジー、と評している。
『ミステリ漫画(梅田 英俊) 没頭…ってことでしょうかね』
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Crime Fileとして海外ミステリ情報を
『Crime Column(オットー・ペンズラー)28 伝統的“ハードボイルド”の図式』『Mystery Mine(木村 二郎)世界まるごとジョン・D・マクドナルド』『Study in Mystery(山口 勉)カセットで聴くミステリ案内』カセットの時代か。懐かしい…『外国の出版社めぐり9 モロー社』『ペイパーバック散歩(宮脇 孝雄)W・マーシャルの「骸骨詐欺事件」』『製作中・上映中(竜 弓人)』
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HMM Book Review(書評コーナー)
『最近愉しんだ本(紀田 順一郎)劇画的ホラ話の傑作』『新刊評(芳野 昌之/香山 二三郎)』『みすてり長屋(都筑 道夫/瀬戸川 猛資/関口 苑生)』『ノンフィクション(高田 正純)』『日本ミステリ(新保 博久)』『チェックリスト&レビュー(山下 泰彦)』
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最後に
『響きと怒り』『編集後記(S/N/K)』


No.297 5点 ミステリマガジン1984年3月号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/26 09:44登録)
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1984年3月号 <335>
1983年翻訳ミステリ回顧。特集は「罠をしかけろ!」と題して騙し小説を4篇。234ページ。定価580円。
表紙イラストは岡本 信次郎、表紙・扉・目次構成は島津 義晴と野々村 晴男。表紙にはMECHANICALの文字とゼンマイのネジが毎号描かれているようだ。今号のメインは女流飛行士、飛行機の後部が見えている。裏表紙の広告は大塚製薬 カロリーメイトとポカリスエット。
ダイアン・ジョンスンの『ハメット伝』は連載2回目だが、私が一番興味がある作家以前を書いた第2〜3章(ほぼ全文らしい)が載ってるので、下の方でトリビアも含め詳しく検討。他は都筑『出来るまで』と瀬戸川『睡魔/名作篇』が見逃せない感じ。田村隆一対談にはカンシンシロー先生(乾 信一郎、昔「信四郎」というペンネームも使ってたことから)登場、新青年時代の興味深い話。(詳細は下で)
雑誌全体の暫定評価は5点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
小説は11篇。以下、初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は雑誌収録順。
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⑴ Last Year's Murder by Edward D. Hoch (初出HMM 1984-3書き下ろし)「去年の殺人」エドワード・D・ホック 木村 二郎 訳(挿絵 深井 国)
国さんのイラストが素晴らしい。短篇の価値五割増し。
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⑵ Hurry, Hurry, Hurry! by Paul Gallico (初出Everywoman’s Magazine 1957-1 as “The Faker”)「急げや急げ」ポール・ギャリコ 松下 祥子 訳(挿絵 天野 喜孝)
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⑶ Emergency Exit by Michael Gilbert (初出Argosy(UK) 1968-9 as “Mr. Calder Acquires a Dog” 挿絵David Nockels)「非常出口」 マイケル・ギルバート 汀 一弘 訳(挿絵 野中 昇)
コールダー&ベーレンズ(Daniel John Calder & Samuel Behrens)もの。なお初出のArgosyは同名の米国雑誌とは関係ないらしい。ヘンリー・ウッド夫人のThe Argosy誌(1865-1901)とも繋がりはない。
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⑷ One Down by Carroll Mayers (初出AHMM 1981-4-1)「ワン・ラウンド終了」キャロル・メイヤーズ 嵯峨 静枝 訳(挿絵 細田 雅亮)
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⑸ A Deal in Overcoats by Gerald Kersh (初出Playboy 1960-12 as “Oalámaóa”)「厚塗りの名画」 ジェラルド・カーシュ 山本 やよい 訳(挿絵 楢 喜八)
詐欺師カーミジン(Karmesin)もの。
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⑹ The Iron Collar by Frank Sisk (初出AHMM 1965-6)「鉄のカラー」フランク・シスク 秋津 知子 訳(挿絵 佐治 嘉隆)
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⑺ Hérédité chargée par Frédéric Dard (初出Ellery Queen Mystère Magazine[仏EQMM]1958-2)「悪い遺伝」 フレデリック・ダール 長島 良三 訳(挿絵 じょあな・じょい)
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⑻ La main heureuse par Louis C. Thomas (初出不明)「つき」ルイ・C・トーマ 長島 良三 訳(挿絵 細田 雅亮)
Louis C. Thomas(1921-2003)の長篇デビューは1953年のJour des morts(Thomas Cervion名義)。
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⑼ Dream of a Murder by C. B. Gilford (初出AHMM 1965-5)「殺人の夢」 C・B・ギルフォード 坂口 玲子 訳(挿絵 畑農 照雄)
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⑽ A Burning Issue by Susan Dunlap (初出AHMM 1981-4-1)「後のまつり」 スーザン・ダンラップ 栗山 康子 訳(挿絵 天野 嘉孝)
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(11) Ask a Policeman (単行本1933) リレー小説『警察官に聞け』連載第3回 「解答篇2 サー・ジョン、きっかけをつかむ」グラディス・ミッチェル(Gladys Mitchell) 宇野 利泰 訳(挿絵 浅賀 行雄)
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HMM OPENING FORUMとして
『インスタント・ママ、奮戦す(深町 眞理子)』高校生の甥を預かることになった独身翻訳家。1990年から翻訳者冥利に尽きる大仕事、と予告。ホームズ全集のことでしょうね。『小説『1984年』のミステリー(新庄 哲夫)』オーウェルは探偵小説の愛読者だったか?『下町のお正月(日影 丈吉)』深川の昔の正月風景から。
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Dashiell Hammett: A Life by Dian Johnson (1983)「ダシール・ハメット伝: ある人生」ダイアン・ジョンスン 小鷹 信光 訳 連載第2回「少年—青年時代(1894〜1921)」
私の興味はいつも「その人が完成する前」にある。功成り名遂げてしまった後の話は「あとは皆さんご存知の通りで…」で十分。そんな大事な部分がこの程度(雑誌で14ページ足らず)しか書かれていないのは残念。資料が少なく関係者の証言などは拾えなかったのか。以下の日本円換算は当時の米国消費者物価指数を2020年と比較して算出したもの。
ハメットはボルティモア育ち。当時の人口は508,957(1900年全米6位, Webページ “Population of the 20 Largest U.S. Cities, 1900–2012”による) 14歳(1908)で経済的窮乏で学校を辞めた。1915年頃にはピンカートンの事務員からオプに昇格、週給21ドル(=58968円、月額25万6千円)。西部に派遣されるようになり、一泊50¢か$1(=2808円)の宿で出張をこなした。1918年6月頃、陸軍に志願し、救護自動車小隊(Motor Ambulance Corps)に配属。1918年10月にスペイン風邪に感染。1919年5月、兵役不適格者に認定され、月額40ドル(=65560円)の恩給付きで除隊。ピンカートンに戻るも体調不良で[1919年?]秋にタコマで就労不能の宣告を受ける。銃を発砲し人を傷つけた経験はピンカートン社時代の警備任務時のたった1度だけらしい。
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読み物は
『続・桜井一のミステリマップ: 隅の老人のロンドン』全然、ひねこびて無いので肖像はペケ。ポリーの髪型も当時の英国女性風ではないと思う。
『連載対談 田村隆一のクリスティー・サロン3 新青年のクリスティー(乾 信一郎)』当時タイトルは訳者が勝手につけ、原文も訳者持ち込みだった、という。英国赴任の官僚には探偵小説の読書が義務付けられている、という噂があった。(当たり障りのない会話ネタとして当時使われていたらしい) 途中、田村隆一が、割り箸のせいで森林が破壊されてる!と関係ない話題で一人盛り上がっている。当時の日本の普通の新進作家は初版300部。
『ペイパーバックの旅(小鷹 信光)15 ハント・コリンズの処女作Cut Me In(The Proposition)』エヴァン・ハンターの筆名。
『アメリカン・スラング(木村 二郎)3 ミッキー・マウスがうようよ』『フィルム・レビュー(河原 畑寧)古典的な図式をまもる『銀河伝説クルール』』『名探偵登場(二上 洋一)15 カニさんウマさん名コンビ—蟹沢警部補と相馬刑事』
『新・夜明けの睡魔/名作巡礼(瀬戸川 猛資)3』ミルン『赤い館の秘密』瀬戸川さんもネタバレ嫌い派のようなのでチャンドラーに全面的に同意、と書いて詳しく検討してない。本格ものとして評価しないが好き、という立場。ううむ。瀬戸川さんには父との確執があったのかな?
『ハメットにダッシュ!(青山 南)3 インタルード—ハメット円環』個人的連想ゲームが上手く繋がると嬉しいよね、という青山 南らしいネタ。
『推理作家の出来るまで(都筑 道夫)95 鬼たちの反発』本国から怒られたクリスティー特集は1956年12月号〈6〉。海外版掲載権は作品別に指定されているのか… 当時の翻訳の稿料が明記されている。超トップで四百字250円、ひとりかふたり。200円が何人か。150円が普通だった。新人は120円くらい。社内の場合は100円。当時の挑発的な日本ミステリ界への提言は意図的に、刺激的に書いていた、という。(まーそれは読めばわかる)
『愛さずにはいられない(関口 苑生)3 少年、おい、安っぽくなるなよ』『フットノート・メロディ(馬場 啓一)15 ミステリに於けるドラッグについて』『ミステリ漫画(梅田 英俊) 縄縛』
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1983年翻訳ミステリ回顧、として
『アンケート 私のベスト3』作家・評論家・翻訳家38人の回答。
『リレー対談「本格は当り年、冒険はやや不作」(吉野 昌之VS瀬戸川 猛資/北上 次郎VS香山 二三郎)』
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HMM Book Review(書評コーナー)
『最近愉しんだ本(森 詠)燃えさかる火のそばで』『新刊評(芳野 昌之/香山 二三郎)』『みすてり長屋(都筑 道夫/瀬戸川 猛資/関口 苑生)』『ノンフィクション(高田 正純)』『日本ミステリ(新保 博久)』『チェックリスト&レビュー(山下 泰彦)』
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Crime Fileとして海外ミステリ情報を
『Crime Column(オットー・ペンズラー)27 ‘83年秋の注目作紹介』『Mystery Mine(木村 二郎)栄光のパルプたち』『Study in Mystery(山口 勉)新作ミステリ予告篇』『外国の出版社めぐり8 ハッチンソン社』『ペイパーバック散歩(宮脇 孝雄)スティーヴン・キング「異なれる四季」』『製作中・上映中(竜 弓人)』
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最後に
『響きと怒り』『編集後記(S/N/K)』


No.296 5点 ミステリマガジン1984年1月号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/25 22:27登録)
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1984年1月号 <333>
女流作家特集。234ページ。定価580円。
表紙イラストは岡本 信治郎、表紙・扉・目次構成は島津 義晴と野々村 晴夫。表紙はMECHANICALの文字、銃を発射する探偵(自動人形?)とゼンマイのネジ。裏表紙の広告は大塚製薬 カロリーメイトとポカリスエット。
フィリップ・ロスの翻訳などでお馴染み(じゃないかなあ)青山 南の「ハメットにダッシュ!」の連載があったのを思い出し、単行本化されてないようなので、掲載年のHMMを大人買い。新たな発見があったけど、昔好きだった青山 南の筆風が今の好みからかなり外れていることに気付いてちょっとショック… 特集の女流作家ではセイヤーズの現行本が『ピーター卿の事件簿』しかないのは残念!いつか全貌を…と張り切ってる浅羽姉さん、これもその後の展開を知るものにとっては感慨深い…
雑誌全体の暫定評価は5点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
小説は12篇。以下、初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は雑誌収録順。
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⑴ A Machine to Say Hello by Henry Slesar (初出 HMM 1984-1書き下ろし)「ハローという機械」ヘンリイ・スレッサー 朝倉 隆男 訳(挿絵 細田 雅亮)
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⑵ Means of Evil by Ruth Rendell (単行本1979)「悪の手段」ルース・レンデル 深町 眞理子 訳(挿絵 山野辺 進)
ウェクスフォード主任警部もの。
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⑶ Akin to Love by Christianna Brand (初出Rogue 1963-4)「愛に似て…」クリスチアナ・ブランド 吉野 美恵子 訳(挿絵 中村 銀子)
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⑷ Silence Burning by Helen McCloy (単行本“The Singing Diamonds” 1965)「八月の黄昏に」 ヘレン・マクロイ 嵯峨 静枝 訳(挿絵 佐佐木 豊)
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⑸ Cardula and the Locked Room by Jack Ritchie (初出AHMM 1982-3-31)「カーデュラと鍵のかかった部屋」 ジャック・リッチー 島田 三蔵 訳(挿絵 畑農 照雄)
ジャック・リッチー(1922-1983)追悼。
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⑹ The Vindictive Story of the Footsteps That Ran by Dorothy L. Sayers (初出 単行本“Lord Peter Views the Body” Gollancz 1928)「逃げる足音」 ドロシイ・L・セイヤーズ 浅羽 莢子 訳(挿絵 佐藤 喜一): 評価5点
ピーター卿もの。仲良くバンターを連れて友人宅へ。二階の足音が気になるピーター卿。謎に魅力が無く平凡作。
p118 誘われても主人と食卓を共にしないバンター: 執事道を追究する男。
p118 一九二一年の平和な夏の日曜の午後(a Sunday afternoon in that halcyon summer of 1921): 本作冒頭のピーター卿の言動からWhose Body事件(私の推定では素直に読めば1920年だが他の情報から考えると1921年か1922年の「11月」)の後っぽい。ピーター卿最初の事件アッテンベリー事件は公式発表によると1921年(季節不明)なので、その後に遭遇した事件だとすれば、一応、年代記に収まるものの、繋がりが悪い。作者の念頭にはWhose Bodyの当初の設定年である1920年があったのだろう。
(2030-4-25記載; 2020-4-26修正)
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⑺ The Golden Girl by Ellis Peters (初出This Week 1964-8-16)「黄金の娘」 エリス・ピーターズ 山本 俊子 訳(挿絵 天野 喜孝)
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⑻ The Listening by Celia Dale (初出AHMM 1981-6-22)「聞こえる」 シリア・デイル 大村 美根子 訳(挿絵 佐佐木 豊)
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⑼ The New Broom by Donald Olson (初出AHMM 1981-10-14)「新米掃除婦」 ドナルド・オルスン 山本 やよい 訳(挿絵 細田 雅亮)
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⑽ Inspector Gothe and the Miracle Baby by H. R. F. Keating (初出Catholic Herald 1970-12-4 as “Inspector Ghote and the Dangerous Baby”)「ゴーテ警部と奇跡の赤ん坊」H・R・F・キーティング 望月 和彦 訳(挿絵 畑農 照雄)
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(11) My Christmas Carol by Budd Schulberg (初出不明)「わたしのクリスマス・キャロル」バッド・シュールバーグ 沢川 進 訳(挿絵 中村 銀子)
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(12) Ask a Policeman (単行本1933) リレー小説『警察官に聞け』連載第1回 問題篇 ジョン・ロード(John Rhode)
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HMM OPENING FORUMとして
『カトリーヌ・アルレー会見記(長島 良三)』来日した機会にインタビュー。アルレーはアイリッシュとハドリー・チェイスから影響を受けた、と言っている。『海原翔ける淑女たち(高橋 泰邦)』大阪帆船祭りの記事。8カ国10隻が集ったイベント。
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読み物は
『第14回バウチャーコン(E・D・ホック/早川 浩)』ニューヨーク開催のレポート。『続・桜井一のミステリマップ: ゴーリキー・パーク』人気企画の連載再開!『メグレのパリ(長島 良三)最終回 パリの女』街娼のインタビュー。『新・夜明けの睡魔/名作巡礼(瀬戸川 猛資)1』あらためて古典を振り返る試み。第1回目は総論。『フットノート・メロディ(馬場 啓一)13 ミステリに於けるブランデーについて』
『ハメットにダッシュ!(青山 南)1 ハンプティ・ダンプティ』オプがチビで小太りだというのに気付いてびっくりしている。
『推理作家の出来るまで(都筑 道夫)93 また多町がよい』EQMM日本語版、刊行前夜のドタバタ。表紙の抽象画採用はポケミスの成功体験から。翻訳者名は田村隆一案では小説の終わりにカッコで記す予定だったが乱歩に反対され撤回となった。誤訳やデタラメ訳が多かった従前の慣習を引きずらなくて良かった、と都筑は感じている。準備の途中で田中 潤司がいなくなった事情はうやむや。
『ジャック・リッチーを悼む(木村 二郎/丸本 聰明)』『連載対談 田村隆一のクリスティー・サロン1 ディクタフォンの秘密(数藤 康雄)』ファンクラブ結成のきっかけを語る。『ペイパーバックの旅(小鷹 信光)13 ジム・トンプスンのThe Killer Inside Me』この時点でポップ1280未読だったとは。『アメリカン・スラング(木村 二郎)1 私立探偵が多すぎる』『フィルム・レビュー(河原 畑寧)二重底の仕かけ』『ミステリがボクを育ててくれた(東 理夫)24 一年一度、一念発起』『愛さずにはいられない(関口 苑生)1 子供の顔は請求書』『名探偵登場(二上 洋一)13 白晢美貌の天才探偵 神津 恭介①』
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Crime Fileとして海外ミステリ情報を
『Crime Column(オットー・ペンズラー)25 探偵はルネッサンス型からスペシャリスト型へ』『Mystery Mine(木村 二郎)尋問自供パート2』『A J H Review(アレン・J・ヒュービン)‘82年下半期の評判作』『ペイパーバック散歩(宮脇 孝雄)P・ディキンスンの「ツルク」』『製作中・上映中(竜 弓人)』
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HMM Book Review(書評コーナー)
『最近愉しんだ本(石川 喬司)裸の特異点』『新刊評(芳野 昌之/香山 二三郎)』『みすてり長屋(都筑 道夫/瀬戸川 猛資/関口 苑生)』『ノンフィクション(高田 正純)』『日本ミステリ(新保 博久)』『チェックリスト&レビュー(山下 泰彦)』
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最後に『響きと怒り』『編集後記(S/N/K)』


No.295 5点 EQMM日本語版 1957年4月号 <10>
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/25 21:07登録)
表紙は勝呂 忠。広告は裏表紙1ページ色刷り「住友海上火災」、裏表紙の内側1ページ白黒「江戸川 乱歩 海外探偵小説作家と作品」予約注文すると乱歩署名本が手に入るという。
定価100円(地方103円)、132ページ。
カットは吉田 政次。
古い作品が多くて嬉しい号。編集後記で都筑さんが「オールドファンに楽しんでいただく号」と言っています。
EQMM日本語版に載った小実昌さんの翻訳を追いかける企画です。
まだ途中ですが、暫定評価5点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ Crime Without Passion by Ben Hecht (初出The Grand Magazine 1933-9)「情熱なき犯罪」ベン・ヘクト 三樹 青生 訳
同名の映画の原作。
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⑵ The Dusty Drawer by Harry Muheim (初出Collier’s 1952-5-3 挿絵C. C. Beall)「埃だらけの抽斗」ハリイ・ミューヘイム 森 郁夫 訳
EQの解説(EQMM 1956-3)付き。
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⑶ I Killed John Harrington by Thomas Walsh (初出Collier’s 1937-6-12 as “Light in Darkness”)「俺が殺ったんだ」 トマス・ウォルシュ 中田 耕治 訳
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⑷ Pastorale by James M. Cain (初出The American Mercury 1928-3)「牧歌」 ジェイムズ・M・ケイン 田中 小実昌 訳: 評価6点
いかにもなハードボイルド風味の語り口。ただし私立探偵ものではない。田舎の犯罪の話。(だから「田園」というタイトルなのか) 小実昌さんの訳は快調。
p61 二十三ドル: 米国消費者物価指数基準1928/2020(15.09倍)で$1=1658円。23ドルは38134円。
p61 一セント銅貨…五セント貨…十セント貨(pennies... nickels... dimes): 当時のPenny銅貨は3.11g、Nickel貨は5.00g、Dime銀貨は2.27g、ということは$23なら全部Penny貨にすれば一番重くて7153gになる(一番軽くて522g)。7.153キロが全部Dime銀貨なら315ドル相当(=52万円)になるのだが…
(2020-4-25記載)
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⑸ £5000 for a Confession by L. J. Beeston (英初出1929年以前?、米初出EQMM1955-12)「自供書売ります」 L・J・ビーストン 田中 融二 訳: 評価6点
古めかしい意匠だが、野次馬根性を暴き立てられてるみたいで居心地が悪い… 手に汗握る、良い仕事。(2020-4-26追記: 博文館 世界探偵小説全集19 ビーストン集(1929)にこの作品の翻訳が収められているようだ。本作はこの作家としては珍しくない構成らしい。まあ大ネタは手癖としても周りを巻き込むシチュエーションが素晴らしいと思う)
p69 五千ポンド: これがいつの話だからわからないが、訳注では「約500万円」としている。(単純に当時のポンド円レート£1=約1000円を当てはめたもの。ただし日本物価指数基準1955/2015(6.07倍)なので当時の500万円は今の3000万円相当) 初出は1920年代と思われるので英国消費者物価指数基準1925/2020(61.20倍)で£1=8683円、5000ポンドは4342万円。ちなみにEQMMリプリント時の1955年英国基準(26.41倍)なら£1=3747円で、5000ポンドは1874万円となる。(英国物価と日本物価の推移が異なるので、このような結果となった。実感は英国物価で考えた方が適切だと思う。話の中身を考えると億単位が欲しいところだが…)
p70 イングランド銀行発行の100ポンド紙幣: お馴染みWhite Noteのこと。スーシェ版ポワロにもちょくちょく出てきます。100ポンド紙幣はサイズ211x133mm。文字だけのシンプルなデザイン、裏は白紙です。
(2020-4-25記載)
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⑹ The Ministering Angel by E. C. Bentley (初出The Strand Magazine 1938-11 as “Trent and the Ministering Angel” 挿絵R. M. Chandler)「優しき天使」 E・C・ベントリイ 深井 淳 訳
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⑺ Dime a Dance by Cornell Woolrich (初出Black Mask 1938-2)「死の舞踏」コーネル・ウールリッチ 高橋 豊 訳
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⑻ Ransom by Pearl S. Buck (初出Cosmopolitan 1938-10)「身代金」 パール・S・バック 大門 一男 訳
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読み物は
『ぺいぱあ・ないふ: フレドリック・ブラウン 火星人ゴー・ホーム』『海外ニュースCriminals at Large』『みすてり・がいど 第2講 探偵小説とはなにか』
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最後に
『編集ノート(都筑 道夫/福島 正実/田村 隆一/小泉 太郎)』豪華なメンツの編集部ですね…


No.294 5点 EQMM日本語版 1962年8月号 <74>
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/19 19:12登録)
表紙は勝呂 忠。色づかいはグレー・黒・赤。裏表紙の広告はシキボウ カラーシーツ。
特大号なので定価180円、218ページ。
カットは北園 克衛。7周年記念特大号として、表紙には珍しくロス・マクドナルドとエド・マクベインの名前と作品名を表示。
まだ途中ですが、全体の暫定評価は5点として、短篇小説を読んだら追記してゆきます。
収録された小説は8篇。初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ Only by Running by E. S. Gardner (初出This Week 1952-5-11 (+1)二回連載 as “Flight Into Disaster”)「逃げる女」 E・S・ガードナー 田中 融二 訳
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⑵ Ambitious Cop by William Fay (初出Black Mask 1949?; EQMM 1955-3)「野心家刑事」 ウィリアム・フェイ 田中 小実昌 訳: 評価6点
ブルックリンの安アパート、5月の朝。刑事が目をさます。たった一日で街の嫌われ者になったのだ…
なかなか良い話。作中に1947年10月という日付が出て来る。EQMM再録時にブラック・マスクから、としているようだが、Black Mask1948-6から1949-12までを探したが該当作らしきものが見当たらない。小実昌さんの訳は快調。
p24 七ドル: 米国消費者物価指数基準1948/2020(10.73倍)で$1=1179円、$7は8251円。手持ちの金。
p24 三八口径の拳銃: ポリス・スペシャルだと言う。手がかりは全く無いがコルトっぽい。
p26 二二口径: ライフルらしい。
p28 十五セント玉ぐらいの穴: 米国硬貨に15セント玉は存在しない。10セント(Dime, 17.91mm)か25セント(Quarter, 26.26mm)の誤植。どっちかなあ。
p29 イタリア製ベレッタ拳銃: ヨーロッパ戦線からもってかえったもの。デザインがカッコ良いM1934だろう。
(2020-4-19記載)
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⑶ The Master Stroke by Harold R. Daniels (初出EQMM 1960-10)「最高の演技」 ハロルド・R・ダニエルズ 宇野 輝雄 訳
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⑷ Origin of the Detective Business by Newton Newkirk (初出Wood-Morgan Detective Agency 1931?; EQMM 1951-10)「探偵商買ことはじめ」 ニュートン・ニューカーク 稲葉 由紀 訳: 評価5点
小説というより戯文だが… まあ起源なら基本的にその時代からか。
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⑸ Eeny Meeny Murder Mo by Rex Staut (初出EQMM 1962-3)「ど・れ・が・殺・し・た?」 レックス・スタウト 佐倉 潤吾 訳
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⑹ 「かなしい二人」 結城 昌治(絵 東 君平)
<おとなのえほん>ショート・ショート絵物語と題して連載。登場する作者と絵師は毎号異なるようだ。
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⑺ Storm by Ed McBain (初出Argosy 1961-12 as “Murder on Ice” 挿絵Lou Feck)「雪山の殺人」 エド・マクベイン 井上 一夫 訳
87分署シリーズ。
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⑻ Trouble Follows Me by Ross Macdonald (単行本Dodd Mead & Co. 1946, as by Kenneth Millar)「トラブルはわが影法師 第一部 オワフ島」 ロス・マクドナルド 小笠原 豊樹 訳(長篇分載1)
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「自分を語る3」レイモンド・チャンドラー 清水 俊二 訳
書簡集の抄訳
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読み物は
『マイ・スィン(丸谷 才一)11 チャンドラー プレイバック』『隣の椅子(有馬 頼義)45』『Mystery on the wave(刺片子)テレビの優等生』『ミステリ・ニュー・ウェイヴ(sin)エドガーズ決定』『紙上殺人現場(大井 広介)その32』『あんたにそっくり(美術評論家 湯川 尚文)』『狂乱の20年代 めりけん残酷物語(大原 寿人)電気椅子にすわった女』(挿絵 金森 達)『第四回EQMM短篇コンテスト最終審査報告』『審査員選後評(佐藤 春夫、福永 武彦、大井 広介、都筑 道夫)』『東京三面鏡(青木 雨彦)28』『探偵小説風物詩(中内 正利)』


No.293 7点 探偵コンティネンタル・オプ
ダシール・ハメット
(2020/04/18 12:23登録)
グーテンベルク21の電子本(砧 一郎 訳)で読了。翻訳は意外と古くなっていないが「ぼく」では若過ぎる。全体的にもう少しこなれた感じに出来そう。是非とも創元社は若い翻訳者を起用してブラック・マスク等の初出テキストに準拠した『シン・ハメット短篇全集』を刊行して欲しい。(←多分、売れないと思う…)
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。
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⑶ The Golden Horseshoe (初出The Black Mask 1924-11)「金の馬蹄」K30 #13: 評価6点
スピーディーな展開で地に足がついた捜査手法だが、死体は大盛り過ぎ。荒々しい大男のキャラ描写が上手。ダメ男の弱さも理解している。ふと思ったがTV映えしそうな話。1920年代米国を忠実に映像化するなら、オプものは派手だし魅力的な女も出てくるしで良いチョイスだと思う。(2022-2-11原文入手。追加分は❤︎で示した)
p1993/4344 ニッケルめっきした安ものの32口径(❤︎a cheap nickel-plated .32)♠️なんとなくリボルバーな感じ。
p1993 十ドル♠️米国消費者物価指数基準1924/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して16620円。
p2015 ハモウチャ(❤︎Jamocha)♠️悪党の通称。語感が面白いが何由来だろう? 原文発注中。(2022-2-11追記: java+mochaでコーヒー、(クロンボの)間抜け野郎、という意味らしい。発音はジャモウカ)
p2131 となりの部屋にはいり♠️Black Mask誌の原文ではコックニーたっぷりの歌が挿入されている。汚いヤク中街のかわい子チャン、彼氏とへべれけ、このアマ、夜じゅう大騒ぎ… みたいな歌詞。(❤︎2022-2-11追記)
p2421 五ドル♠️ほんのちょっとした手伝いの報酬
p2484 コンビネーション♠️ツナギの下着?パジャマの代わりに身につけようとしている。
p2524 古い黒しあげのピストル♠️お馴染みオプの古いリボルバー。オプならS&Wだと勝手に想像、普段使いなら短銃身のミリタリー&ポリスを推す。
(2020-4-17記載; 2022-2-11追記)
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⑷ Who Killed Bob Teal? (初出True Detective Mysteries 1924-11 挿絵画家不明)「だれがボブ・ティールを殺したか」K31 #14: 評価6点
ブラック・マスクが買わなかった作品。それで実話系雑誌に掲載された。(掲載時の作者名はDashiell Hammett of the Continental Detective Agencyとなっていて実話っぽさを盛り上げている)
探偵らしい捜査と活劇の話。冒頭のネタがラストで有耶無耶、という評価(小鷹さん)があるが、私はこれで良いと思う。当時既に仲間の死がテーマのおセンチ小説は沢山あったはず。現実はこんなもんだよ、とハメットが言ってるような気がする。
なお、Dead Yellow Women(1947)収録のダネイ版は随分語句を削っているが、この翻訳はオリジナル・テキストによるもののようだ。(Don Herron主宰のWebサイトでざっと確認) 単行本は翻訳時(1957)にはダネイ版しか無かったような気がするが、砧さんは正しいテキストをどこで入手したのだろう?
p2749 三二口径(a thirty-two)…小型の自動ピストル(p2923, a small automatic pistol)◆当時のベストセラーはブローニングFN M1910だが、他にも候補は沢山。銃を特定出来る情報は記されていない。
p2789 実名をもち出すことが、迷惑のたねとなったり…◆ここら辺、実話っぽい文章が挿入されている。この雑誌用に追記したような感じ。
p2809 二重にくくれた顎(the cleft chin)◆この訳だと意味不明だが、ケツ顎のこと。「割れ顎」が正しい日本語のようだ。
p2906 二十五ドル◆上記の換算で41550円。妻の全財産。
p3018 三二口径のピストルの弾丸の、封を切ったばかりの箱がひとつ――十発足りなくなっている(a new box of .32 cartridges—ten of which were missing)◆2発発射されてて、ブローニングM1910拳銃にフルロードなら7発マガジンに、1発薬室に、で一応数は合う。でも多分そーゆー意図ではなく、犯人が使う時、手掴みで大体の分を持ってったらそれが10発分だった、ということだろう。(正確に10発使う場合、まずマガジンに7発入れて2発撃つ。そーするとマガジンに4発、薬室に1発入った状態になるので残りの3発をマガジンに込める、という段取り。あまりやる意味が無い…)
p3025 係長(the captain)◆「デカ長」と訳したいなあ。
p3048 通話ごとに料金を入れる式の電話(It’s a slot phone)◆1911年からニッケル、ダイム、クォーターの3スロット式の公衆電話50AがWestern Electric & Gray Telephone Pay Station Co.によって製造販売されている。ダイヤルは無く、まずいずれかの硬貨(普通は一番安いニッケル=5¢)を入れると交換手に繋がり、そこで番号を言って必要な料金のコインを入れるとコインによってベルが違う音を出す。正しい料金の音を確認したら交換手が相手に繋いでくれる、という仕組みだったらしい。(人間の聴力をあてにした機械…)
p3048 ニッケル◆当時の5セント貨幣(Nickel)はBuffalo or Indian Head(1913–1938)、25% nickel & 75% copper、直径21.21mm、重さ5.00g、83円。貨幣面の表示はFIVE CENTS。
(2020-4-19記載; 電話の説明がわかりにくかったので2020-4-24修正)
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⑸ The Whosis Kid (初出The Black Mask 1925-3)「フウジス小僧」K34 #16: 評価8点
カヴァー・ストーリー。表紙の男は小太りではないがオプなのか?(小説にはこーゆー場面はないと思うがオプのつもりで描いてるのだろう) まぎれもない傑作。どんどん物語に引き込まれる。キャラも良い。ハメットの良い仕事です。原文取り寄せ中。(2022-2-11原文入手。追加分は❤︎で示した)
p3180 [1917年の]立ち話から一、二週間たったころ、ぼくは、コンティネンタル探偵社のボストン支社を去って、軍隊生活にはいった。戦争がすむと、シカゴ支社に舞いもどり、そこに、二年ばかりぐずぐずしたあげく、サンフランシスコへ転任した(❤︎A week or two after this conversation I left the Boston branch of the Continental Detective Agency to try army life. When the war was over I returned to the agency payroll in Chocago, stayed there for a couple of years, and got transferred to San Francisco)♣️オプが語る自身の略歴。『デイン家』時点(作中年代1928)でSF歴五年くらいと言っていた。1917-1918軍隊、1919-1921シカゴ、1922-1928サンフランシスコ、といったところか。
p3236 安タバコのファティマ(❤︎Fatimas)♣️1910年代Camelは一箱20本10セント、Fatimaは一箱20本15セントだったようだ。1910年代の広告で見るとMurad 15¢、Duke of York 15¢、Helmar 10¢(それぞれ一箱の値段。何本入りかは書いてないが20本がスタンダードっぽい)。米国物価指数基準1925/2020(14.75倍)で$1=1620円。Wikiによるとファティマは当時のベストセラー(the best-sellingなので一番売れていた、か)。「安」ではなさそう。(2020-4-24追記: Muradの1917年の広告を見ると“Judge yourself—compare Murad with any 25 cents cigarette”と書いてあった。25¢のタバコも数種あったようだ)(❤︎2022-2-11追記: 「安」は翻訳の余計な付け加えだった…)
p3261 十四才♣️こーゆー小僧が苦労してのし上がり大金持ちに、といった話が米国富豪物語に良くある。当時、若年労働者は沢山いた。
p3315 六インチ砲♣️6-inch gun M1897(及びその後継)のことか。米国沿岸警備で使用された大砲。50口径152mm砲(これは銃身の長さが口径の何倍かを示す砲世界の表現。152mm口径の50倍=7.6m銃身。ちなみに戦艦大和の主砲は45口径460mm砲で銃身長20.7m。しかも3連砲。凄すぎる…)。
p3438 筒のずんぐりと短い自動ピストル(❤︎a snub-nosed automatic)♣️原文が気になる。snub-nosed automaticか。(❤︎でした)
p3520 中背というよりは、いくぶん低めの、肌の浅黒い女(dark-skinned woman)… 髪のいろも、インディアンのように黒く、… 浅黒い胸もと(dark chest)には… / …茶いろの肌をした女…(p3606)(原文❤︎)♣️浅黒警察としては正訳だと思う。原文が楽しみ。(❤︎翻訳に誤りなし)
p3606 ジェリー・ヤング♣️今回のオプの偽名。思いついたのだが、使った偽名からオプの本名を探る試みはどうだろう? 偽名は本名から(多分確実に)除外出来るし、イニシャルを無意識に合わせている可能性もある。『赤い収穫』で使ったのはヘンリー・F・ネイル。とりあえずオプの本名はジェリーでもヘンリーでもヤングでもネイルでもない。(イニシャルは合わせていないようだ…)
p3630 四十前後というどっちつかずのとしごろ♣️執筆当時ハメットは31才。
p3653 通話管(speaking-tube)… 玄関のドアの錠をはずすボタン(the button that unlocks the street door, p3660) (原文❤︎) ♣️マンションのインターホンらしい。この時代くらいから普及し始めたものか。当時の映画でこういう場面を見てみたい。通話管は各部屋に別々のチューブを引いていたのだろうか?(一つのマイクを切り替えて使うのか。電話の交換台を応用すれば簡単に作れそう) 正面玄関のドアを開錠出来るボタンが各部屋にあるくらいだから、結構大仕掛け。かなり高級で最新式のマンションなのだろう。(2022-2-10追記: 色々調べると、大きなアパートのintercomはKellogg Switchboard & Supply Companyが1894年に開発したらしい。結構古い技術で、既にドアマンなどの人減らしは始まっていたわけだ。ならばここは電話風の仕組みで、最新型というわけでも無いということか。なおこの技術をオフィスのインターコムに応用したのはAdams Laboratories社の開発で1930年代後半のことだという。こちらは意外と新しい。)
p3712 色の白い女… 色の黒い女(one yellow and white lady…. dark woman)♣️翻訳はyellow抜け。yellow and whiteの意味がよく分からない。(❤︎2022-2-11追記)
p3728 洗濯に使う青味づけ(ブリューインク)(❤︎in blueing)♣️これも原文が楽しみ。
p3738「赤」のバーンズ(“Red” Burns)♣️カリフォルニアのボクサーで1923年と1926年に試合をした。(❤︎2022-2-11追記)
p3938 撃鉄をおこした回転胴式ピストルは、撃鉄のない自動式よりも(❤︎a cocked revolver a lot quicker than …. a hammerless automatic)♣️自動式でも撃鉄はある。cockedとuncockedの対比か。cockは撃鉄が起きている状態でちょっと引き金を引くと発射される。cockしてないと引き金を引ききって撃鉄を起こしてから発射、となるため、正確性と秒単位の時間が犠牲になる。(2022-2-11追記: シングル・アクションとダブル・アクションの違いだね、というとガンマニアっぽいかな)
(2020-4-23記載; 2022-2-11追記)
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⑴ Dead Yellow Women (初出The Black Mask 1925-11)「シナ人の死」K39 #19: 評価7点
Black Maskではカヴァー・ストーリー。初出誌表紙のがっしりとした男はオプなのか?
たくさんの中国人が出てくるが、バランスの良い描写。SFのチャイナタウンの雰囲気が良く出ている。ラスボスのキャラがとても素敵。リアルなホラ話という感じの語り口が楽しい。
p587 ぼくのピストルは三八口径のスペシャルなのだが、その店には、スペシャル用のがなかったので、それよりも射程の短い、威力の弱い弾丸で間にあわせた(My gun is a .38 Special, but I had to take the shorter, weaker cartridges, because the storekeeper didn’t keep the specials in stock)♠️ここのshorterは弾丸の「長さが短い」ということ。38スペシャルの弾丸全長は39.0mmだが、その前身(互換性あり)の38ロング・コルト弾は34.5mmだ。威力(初活力)は前者367ジュールに対して、後者276ジュール。(床井雅美『ピストル弾薬事典』より)
(2022-2-10記載)
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⑵ The Main Death (初出Black Mask 1927-6)「メインの死」K46 #24
これはハヤカワ文庫『コンチネンタル・オプの事件簿』の書評参照。


No.292 6点 名探偵の世紀
事典・ガイド
(2020/04/18 08:22登録)
最近ハメット漬けで、ふとヴァンダインを評した文章が翻訳されてることに気づき、ムック本(1999)を書庫から無事見つけました。
「『ベンスン殺人事件』について」(村上 和久 訳)がその批評です。ヴァンダインこてんぱんですね。続くバウチャー「ヴァン・ダインを評する」(村上 和久 訳)も手酷い仕打ち。優しさのかけらもなく、なんか個人的な恨みがありそうな感じ。まあ言ってることは正論なんだが、こーゆー書き方、EQの諸作品に対してやったことあるかい?と皮肉りたくなる。
ところで引用されてるオグデン・ナッシュの有名なPhilo Vance / Needs a kick in the pance(pantsじゃないんだよね。試訳「ヴァンスに、蹴りだ。おパンスに」)の元ネタ全文が知りたいのですが見つかりません。この一聯だけで完結した冗句なんでしょうか。
さてバウチャーはほっといてハメットの批評です。初出はThe Saturday Review of Literature January 15, 1927。この雑誌での書評は初登場。匿名ではなくDashiell Hammettと署名。その後、6月までほぼ毎月書評が掲載され、ちょっと飛び飛び掲載になりましたが、1928年10月から1929年2月までは毎号のように書評が掲載されています。(ここら辺の詳細はDon Herron主宰のWebサイト “Up and Down These Mean Streets”のHammett: Book Reviewer参照)
原文は“Poor Scotland Yard!”と題して、探偵もの長篇小説五冊(いずれも1926年出版)の書評。取り上げられた作品は順に①False Face by Sydney Horten ②The Benson Murder Case by S.S. Van Dine ③The Malaret Mystery by Olga Hartley ④Sea Fog by J.S. Fletcher ⑤The Massingham Butterfly by J.S. Fletcher. 翻訳はヴァンダインのところだけを抜いたもの。
この翻訳では省かれてしまった冒頭部分は、皮肉な調子で愉快なので、以下再現。
「長いこと民間探偵局に勤め色々な街で働いたが、探偵小説を読むと言った同僚は一人だけだ。『たくさん読むよ。』と奴は言った。『日々の探偵仕事でウンザリしたら、リラックスしたいのさ。日常家業と全く違うもので気を紛らわせたい。だから探偵小説を読む。』
奴なら“False Face”が気にいるだろう。これには日常業務で起こりうる事と全く違う話が書かれている。」
と最初の作品の評に入ります。
原タイトルは、最初の作品が英国もので、信じがたいほど間抜けな組織としてスコットランド・ヤードが描かれていることから。
「…しかしながら兄弟国を笑ってばかりもいられない。同書に出てくる米国シークレット・サービスや、『ベンスン殺人事件』のニューヨーク警察やD.A.も同じ調子なのだから。」
という感じで、この本収録の翻訳冒頭に続きます。
翻訳最後の文に出てくる “「そんなことは思いもよらなかった」といったスタイル”(little-did-he-realize style)は Had-I-But-Known という用語を意識してるのかな?(Howard HaycraftがMurder for Pleasure(1941)にHad I But Known schoolと書いて一般的になったのだと思うが、用語自体はもっと昔に遡るのだろうか?)
チャンドラーのSimple Art(こちらもSaturday Review of Literature 1950)でもそうでしたが、警察はそんなに馬鹿じゃなかろう、というのがいわゆる「ハードボイルド派」に共通した思いのようだ。でもこれは基本的に小説における対比効果を狙ったものだし、ハメットやチャンドラー自身の探偵小説だって警察の手ぬかりは結構ある気がする。(まあ本格系は世間知らずが多いので間抜けさがぶっ飛んでいることは確かだが…)
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他にも楽しい黄金時代のネタが詰まってるこのムック本。新しい世代のために改訂して復刊しても良いのでは?
(他のエッセイや研究は気が向いたら追記します。実は私はこの手の本は苦手です。どこにネタバレが仕込んであるかわからないので… 地雷原で途方に暮れる感じ)


No.291 5点 ミステリマガジン1994年7月号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/15 20:57登録)
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1994年7月号 <459>
特集:ダシール・ハメット生誕100年記念。234ページ。定価780円。
表紙・扉・目次構成は島津 義晴、表紙は砂浜と海を上空から撮った遠景か。裏表紙の広告はAsahi スーパードライ。
ハメットは忘れられた古典作家で読まず嫌いの若者に紹介する、という趣旨らしい。1994年、私はミステリ界(というか小説界)から全く離れており、毎月購入もしばらく前から辞めていて、書店で手に取ることすら無かったころ。今回、ハメット・マイブームに乗って1年分を一気に某オクで購入しました。エッセイ陣には全然思い入れが無く、読む気が全く起きません…
ハメット作品を(なるべく)初出順に読む試みの一環です。雑誌全体の暫定評価は5点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
小説は8篇。以下、初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は雑誌収録順。
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⑴ The Green Elephant by Dashiell Hammett (初出The Smart Set 1923-10)「緑色の悪夢」ダシール・ハメット 稲葉 明雄 訳(挿絵 山野辺 進): 評価5点
ハメット第13番目の短篇小説。意図はわかるけど、あまり工夫のない話。翻訳は削除の多いダネイ版ではなく、初出雑誌のテキストによるもののようだ。(Don Herron主宰のWebサイト “Up and Down These Mean Streets”のHammett: “The Green Elephant”参照)
p20 五十ドル: 米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して83100円。
p21 小口径の拳銃(a small-caliber pistol): 何となくオートマチックのような感じ(ただの個人的な印象で根拠なし)。小口径はこの場面なら32口径。25口径では小さすぎる。
p22 千ドル札のほか、色々な紙幣が登場するが、当時の紙幣サイズは額面にかかわらず187×79mm。なおFederal Reserve Noteの場合、裏面は全券種で緑色だった。(Gold Certificateはオレンジ)
p23 全請求書を前払いできる(all bills are payable in advance): 「できる」ではなくて、「先払いする決まりの」ではないかと思う。そーゆー仕組みの風来坊向けの安宿で、その日に出立するつもりで支払いを済ませていた、と解釈すれば、前後がつながる。
(2020-4-15記載)
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⑵ Zigzags of Treachery by Dashiell Hammett (初出The Black Mask 1924-3-1) 「裏切りの迷路」 ダシール・ハメット 小鷹 信光 訳(挿絵 佐伯 嘉隆): 評価7点
オプもの第8作、ハメット第25番目の短篇小説。書評は『チューリップ』参照。傑作。(訳文は『チューリップ』収録のものが、この時点よりさらにブラッシュアップされてるので、単行本で読むのがお薦め)。
(2020-4-15記載)
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⑶ Any Small Measure of Justice by Terry Courtney (初出AHMM 1991-8)「ささやかな正義」 テリイ・コートニー 西田 佳子 訳(挿絵 畑農 照雄)
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⑷ About Time by Linda Evans (初出AHMM 1990Mid-December号)「サマータイム殺人事件」リンダ・エヴァンズ 山内 三枝子 訳(挿絵 楢 喜八)
ヒッチコック・マガジンは1990年12月は2冊発売。普通の160ページの12月号が発売された他、34th Anniversary Special Double Issueとして288ページの増刊号がMid-December号として刊行された。
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⑸ Checking Out by Nick O'Donohoe (初出AHMM 1990-9)「チェックが肝心」ニック・オドナヒュー 夏来 健次 訳(挿絵 浅賀 行雄)
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⑹ Accounts Payable by D. H. Reddall (初出AHMM 1991-6)「支払勘定」 D・H・レドール 小西 恵里 訳(挿絵 桜井 一)
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⑺ The Maggody Files: Spiced Rhubarb by Joan Hess (初出AHMM 1991-6)「ルバーブ・ジャム事件」ジョーン・ヘス 近藤 麻里子 訳(挿絵 大鹿 智子)
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⑻「恵美子の手袋」 山崎 秀雄(挿絵 成田 一徹)
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特集の読み物は
『ダシール・ハメットの生涯(編集部 編)』年表と写真。ダイアン・ジョンスンの伝記から再構成。
『映画『赤い収穫』架空キャスティング(野崎 六助)』なんかズレてる。ほとんど知らないメンツだし…
『映像で観るハメット作品(筈見 有弘)』写真が良い。
ハメットへのオマージュとして短文がいくつか
『廉潔の人(稲葉 明雄)』本号掲載の「緑色の悪夢」を陳腐とばっさり。『冒険者としてのハメット(逢坂 剛)』『一度だけ読んだハメット(片岡 義男)』相変わらずのズルい手口が心地良い。『マイルズ・アーチャーが死んだ場所(田中 小実昌)』『ワールド・ジャンク(楢山 芙二夫)』『ポイズンヴィル発…(船戸 与一)』
漫画『彼ら(いしかわじゅん)』スペード、ニック、オプが登場する四コマx3作。本質を突いている。
作品論『註解『マルタの鷹』(小鷹 信光)』写真が良い。『赤い暴力の現代小説(野崎 六助)』『三人称一視点という錯誤(池上 冬樹)』『シン・マン症候群(木村 仁良)』ディックとドラの掛け合い。
『ダシール・ハメット長篇小説解題』あらすじと短評。
『ダシール・ハメット長短篇作品リスト』単行本『チューリップ』(2015)所載の小鷹リストの元。
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その他の読み物は
『ミステリ漫画(梅田 英俊)』『ミステリアス・プレス ニュース(O)』『海外ミステリ風土記(直井 明)13 ルーマニアIII』『チャイナ・ファンタジー(南 伸坊)16 窓から手』『木村 二郎インタヴュー』二郎さんの顔、見たのは多分初めて…かな?『眺めたり触ったり。(青山 南)28』『読ホリデイ(都筑 道夫)65 伊賀とイタリア』『20世紀を冒険小説で読む(井家上 隆幸)35 核の<聖戦>』『サイコドラマ・サイコパシー(野崎 六助)19 人造のサイコII』『殺しの時間(若島 正)42 本を殺す』『カメレオン日記(香山 二三郎)19 勝負服の研究』『ビデオの冒険者(柳生 すみまろ)65 新ポリス・ストーリー』『午後3時半のウェイブ(吉村 浩二)4』『ミルクが先よ(浅羽 莢子)4 穿鑿は権利?』英国では遺言も公の文書なんだ…『読者登場(浅沼 幾美さん)』『響きと怒り』『編集後記(T、K)』
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クライム・ファイルと銘打って各種情報コーナー
『クライム・コラム(オットー・ペンズラー)144』『書評(北丸 旭、穂井田 直美、岩田 清美)』『洋書入荷情報(丸善、洋書ビブロス)』『音楽情報(百日 紅一郎)』『映画情報(河原畑 寧、竜 弓人)』
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『今月の書評(芳野 昌之、関口 苑生、池上 冬樹、三橋 曉、長谷部 史親、西夜 朗、結城 信孝)』『チェックリスト&レビュー(芝 隆之)』


No.290 5点 EQMM日本語版 1959年10月号 <40>
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/11 22:59登録)
表紙はクロード・岡本の抽象画、目玉焼きがセンターにある何かの食べ物風? 裏表紙の広告は早川書房 グレアム・グリーン選集の第1回発売。(どこにも早川書房以外の広告無し… 営業苦戦中か?)
秋の特大号。定価150円(地方155円)、208ページ。
カットは金子 三蔵と真鍋 博。ロバート・ブロック特集で3篇収録。
他にもレックス・スタウトやH・C・ベイリーの中篇を収録、ビッグ・ネームばかりの巻。
書庫にあるハメット作品を初出順に読む試みの一環です。
まだ途中ですが、全体の暫定評価は5点として、短篇小説を読んだら追記してゆきます。
収録された小説は13篇。初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ Object Lesson by Ellery Queen (初出This Week 1955-9-11 as “The Blackboard Gangster”)「実地教育」エラリイ・クイーン 青田 勝 訳
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⑵ Itchy the Debonair by Dashiell Hammett (初出Brief Stories Magazine 1924-1 as “Itchy”) 「紳士強盗イッチイ」ダシェル・ハメット 森 郁夫 訳: 評価5点
ハメット第18作目の短篇小説。ノン・シリーズ。作者がオプものをどう考えていたか、という楽屋裏なのだろうか。
p15 二千五百ドル: 米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して416万円。
p20 紳士強盗: 原語はgentleman crook。有名なのはRaffles(1898)やLupin(1905)と言ったところか。
(2020-4-11記載)
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⑶ To Be Found and Read by Miriam Allen de Ford (初出EQMM 1958-12)「探しだされ読まれるために」M・A・ディフォード 小笠原 豊樹 訳
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⑷ Second Honeymoon by Brett Halliday (初出EQMM 1959-7)「二度目の蜜月」ブレット・ハリデイ 田中 小実昌 訳
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⑸ The Unpunishable Murder by Hugh Pentecost (初出EQMM 1959-7)「罰せない殺人」ヒュー・ペンティコースト 稲葉 由紀 訳
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⑹ Fool’s Mate by Stanley Ellin (初出EQMM 1951-11)「好敵手」スタンリイ・エリン 田中 融二 訳
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⑺ Over My Dead Body by Anthony Gilbert (初出The Evening Standard 1951-6-19)「屍を越えて」アントニイ・ギルバート 高橋 泰邦 訳
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⑻ Cry Silence by Fredric Brown (初出Black Mask 1948-11)「静寂は叫ぶ」フレドリック・ブラウン 福島 正美 訳
ブラック・マスク誌のこの号は広告を含め全ページ無料公開、本作には挿絵1枚あり(画家名は記載なし)。
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⑼ Too Many Detective by Rex Stout (初出Collier’s 1956-9-14)「探偵が多すぎる」レックス・スタウト 井上 一夫 訳
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⑽ The Affair of the Zodiacs by H. C. Bailey (初出Flynn’s Weekly Detective Fiction 1927-11-19 as “Zodiacs”)「ゾディアックス鉱山株事件」H・C・ベイリー 宇野 利泰 訳
創元文庫『フォーチュン氏の事件簿』収録作品。なのでそちらでまとめて読む予定。
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(11) Enoch by Robert Bloch (初出Weird Tales 1946-9)「頭上の侏儒」ロバート・ブロック 都筑 道夫 訳
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(12) One Way to Mars by Robert Bloch (初出Weird Tales 1945-7)「片道切符」ロバート・ブロック 豊原 実 訳: 評価4点
ジャズ小説。主人公はトランペッター。ジャズメンなんて皆こーゆー感じ、という描写が陳腐。展開もつまらない。
p182 二ドル八八セント: 米国消費者物価指数基準1945/2020(14.37倍)で$2.88=3914円。切符の値段。随分お得。
(2020-4-11記載)
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(13) The Mannikin by Robert Bloch (初出Weird Tales 1937-4)「瘤」ロバート・ブロック 久慈 波之介 訳
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読み物は『反対尋問(日本探偵小説の匿名時評)』『探偵小説不作法講座 第四講』『黒いノート(松本 清張)12』『深夜の散歩14(福永 武彦) スイート・ホーム殺人事件』『隣の椅子(有馬 頼義)12』『ふたりで犯罪を(映画の話)』『探偵小説風物詩(中内 正利)』


No.289 6点 スペイドという男 ハメット短編全集2
ダシール・ハメット
(2020/04/11 17:29登録)
冒頭にエラリー・クイーン(ダネイ)の「サム・スペイド ご紹介」(Meet Sam Spade)という前書きあり。EQMM誌のコメントのような感じの文章。ソフトカバーの単行本”The Adventures of Sam Spade & Other Stories” ed. Ellery Queen (Mercury Bestseller Mystery No. B50, 1944)に収録のもの。この本は7篇収録(Too Many Have Lived K67, They Can Only Hang You Once K68, A Man Called Spade K66, The Assistant Murderer K42, Nightshade K71, The Judge Laughed Last K22, & His Brother's Keeper K73)だが、翻訳の底本であるペイパーバック“A Man Called Spade”(Dell #90 Mapback, 1945)では収録は5篇のみ(K66, K68, K67, K42, K73とEQの序文。なおこのMapbackは#411(1950)と#452(1954)の全部で三つの異版がある。#90の表紙絵はGerald Greggだが#411と#452はRobert Stanleyに変更、裏表紙のMapはいずれもRuth Belewが描いたMax Blissのアパート図面、収録短篇は全て同じ)。これにK7, K17, K20, K26, K71を追加したのが本書、という成り立ちのようだ。結局K71はいったん削除されたが翻訳で戻ったわけである。
なおDon HerronのWebサイトを見ると、2000年以前のハメット短篇集のテキストはダネイ本に基づくもので、初出に手が加えられてることがあるようだ。
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。★はEQ編1944以外からの収録作品。ついでに今回は米国EQMM再録号も表示。
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⑷ Holiday (初出The New Pearson’s 1923-7; EQMM掲載なし) K7 ★「休日」
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⑽ Bodies Piled Up (初出The Black Mask 1923-12-1; EQMM1947-4 as “House Dick”) K17 #5 ★「やとわれ探偵」: 評価7点
オプもの。冒頭のシーンが大好き。派手でヴィジュアル・インパクトが素晴らしい。途中、まともなデカならどうやって調査するか、というミニ講座あり。多分、探偵小説作家の皆さま方に教えてさしあげましょう、という優しい親切心(「皮肉」と書く)。こーゆーやり方でキチンと捜査したら大抵の探偵小説はあっさり解決しちゃうんじゃなかろうか。
ディック・フォーリイの喋りはまだ普通っぽい。(原文では主語を落とした文が多い感じだが、後年の単語を並べる境地には至っていない)
p321『暗黒の男』(the Darkman): 悪者につけられたあだ名だが、浅黒警察としては気になる。黒髪野郎、という意味ではないか。オプも黒髪なのか。
(2020-4-11記載)
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⑹ The Man Who Killed Dan Odams (初出The Black Mask 1924-1-15; EQMM1949-12) K20 ★「ダン・オダムズを殺した男」: 評価5点
テキストはダネイの所々数語カット版なので、Black Mask版を訳している『死刑は一回でたくさん』(講談社文庫1979、グーテンベルク21電子版が入手しやすい)の田中 融二 訳をお勧めする。訳文の調子も田中訳の方がキビキビしている。
(2020-4-12記載)
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⑼ One Hour (初出The Black Mask 1924-4-1; EQMM1944-5) K26 #9 ★「一時間」: 評価6点
オプもの。詳しいことは『死刑は一回でたくさん』参照。こちらの依頼人は関西弁じゃない。なおEQMM再録時のダネイの直しはほとんど無いらしい。
(2020-4-14記載)
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⑺ The Assistant Murderer (初出The Black Mask 1926-2; EQMM掲載なし) K42「殺人助手」: 評価7点
三人称の不細工な私立探偵アレック・ラッシュもの。ハメットが育った街、ボルティモアが舞台。
捜査方法や探偵センスはオプと同様。複雑な筋を見事にまとめている。キャラの描き方も良い。
p195 料金は一日15ドルと、ほかに実費(fifteen a day and expenses)◆米国消費者物価指数基準(15.88倍)で$1=1811円。
p197 色があさぐろくて(He’s very dark)◆「髪が真っ黒で」という意味で良いかなあ。後の方ではdark young manとか書かれている。(翻訳では「あさぐろい」の連発だが)
p198 五十セント◆ボーイへの情報料
p246 同じ問題をあつかった芝居(One of the plays touched the same thing)◆もしかしてアガサ・クリスティのアレかと思ったが初演1953なので違うようだ。ただしその小説の初出は米国パルプ雑誌Flynn's Weekly 1925-1-31。
(2202-2-13記載)
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⑴ A Man Called Spade (初出The American Magazine 1932-7 挿絵Joseph Clement; EQMM掲載なし) K66「スペイドという男」
American Magazineのこの号、広告も含め無料公開あり。イラストのスペイドは普通っぽい男に描かれている。
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⑶ Too Many Have Lived (初出The American Magazine 1932-10 挿絵J. M. Clement; EQMM1941秋[創刊号]) K67「赤い灯」
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⑵ They Can Only Hang You Once (初出Collier’s 1932-11-19; EQMM1943-3) K68「二度は死刑にできない」
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⑸ Nightshade (初出Mystery League 1933-10 [創刊号]; EQMM掲載なし) K71「夜陰」
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⑻ His Brother's Keeper (初出Collier’s 1934-2-17; EQMM掲載なし) K73「ああ、兄貴」


No.288 5点 EQMM日本語版 1960年4月号 <46>
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/11 03:11登録)
表紙はクロード・岡本の抽象画。裏表紙の広告はクラボウ ミステリー 影、日本教育テレビ・毎日放送テレビ 毎週金曜夜9.15〜9.45「多才な人間関係の交錯… 迫真のサスペンス…」とある。宣伝写真は米国私立探偵みたいな扮装の男、煙草の煙で表情は隠れている。どんな番組だったのか、ちょっと気になります。
特大号なので定価150円(地方155円)、208ページ。(2、4、7、10は特大号、他は定価100円と最終ページに書いてある)
カットは真鍋 博。ハードボイルド特集。ハメット&マスタースンの中篇がメイン。
書庫にあるハメット作品を初出順に読む試みの一環です。
まだ途中ですが、全体の暫定評価は5点として、短篇小説を読んだら追記してゆきます。
収録された小説は13篇。初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ When Luck’s Running Good by Dashiell Hammett (初出Action Stories 1923-11 as “Laughing Masks” by Peter Collinson)「ついている時には」ダシェル・ハメット 田中 融二 訳: 評価5点
ハメット第16番目の短篇。ノン・シリーズ。『チューリップ』所載の小鷹リストではコリンスン名義の記載漏れ(これが最後のコリンスン)。EQMM1959-12再録時にタイトルを変更。ダネイが語句をちょっといじってる可能性もあり。
最初のほうの主人公は中年だと受け取っていました。若々しい感じがしなかった… 敵の食えないキャラが印象的。
p6 四百ドル: 米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して66万円。かなりの金額。
p8 順風而呼、声非加疾也、而聞者彰: いきなり漢文が出てきてビックリ。荀子、勸學篇第一の引用のようだ。オリジナルはラテン語なのか?原文発注中。
(2020-4-11記載)
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⑵ By His Own Act by Emily Jackson (初出EQMM 1954-8)「誤算」エミリイ・ジャクスン 高橋 泰邦 訳
米国EQMM「最初の短篇」コーナーの紹介作品。
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⑶ Louisville Blues by Albert Johnston (初出EQMM 1954-5)「ルイズヴィル・ブルース」アルバート・ジョンストン 三田村 裕 訳
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⑷ Two-Bit Gangster by Thomas Millstead (1954 初出EQMM 1954-12)「感傷的な殺人」トマス・ミルステッド 森 郁夫 訳
米国EQMM「最初の短篇」コーナーの紹介作品。
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⑸ And the Desert Shall Blossom by Loren Good (初出EQMM 1958-3)「かくて砂漠に花咲かん」ローレン・グッド 稲葉 由紀 訳
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⑹ Hard Guy by Thomas Walsh (Ten Detective Aces 1935-1 as “Framed in Fire”)「しぶとい男」トマス・ウォルシュ 井上 一夫 訳
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⑺ The Marriage Counselor’s Marriage by C. B. Gilford (初出EQMM 1958-6)「結びの神の結婚生活」C・B・ギルフォード 青田 勝 訳
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⑻ Anniversary Gift by John Collier (初出1958?, 米初出はEQMM 1959-4か)「記念日の贈物」ジョン・コリア 大門 一男 訳
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⑼ A Case of Cainapping by A. H. Z. Carr (初出EQMM 1954-7)「猫探し」A・H・Z・カー 高橋 豊 訳
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⑽ Hernand Cortez, Detective by Theodore Mathieson (初出EQMM 1959-7)「名探偵エルナンド・コルテス」シオドー・マシスン 吉田 誠一 訳
歴史名探偵シリーズ第4作。
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(11) The Invisible Loot by Michael Gilbert (Argosy[UK]1959-3 as “Bonny for Value” 挿絵Isn Garrard)「見えざる掠奪者」マイケル・ギルバート 森本 忠 訳
Patrick Petrellaもの。
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(12) The Living Bracelet by Robert Bloch (Bestseller Mystery Magazine 1958-11 as “The Ungallant Hunter”)「生きている腕輪」ロバート・ブロック 都筑 道夫 訳
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(13) The Women in His Life by Whit Masterson (初出EQMM 1958-6)「ギルモア・ガールズ」ウィット・マスタースン 田中 小実昌 訳
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読み物は『悪霊の誕生(開高 健)』『隣の椅子(有馬 頼義)18』『みすてり・らうんじ(扇屋 正造)続・ソフィスティケーテッドということ』『紙上殺人現場(大井 広介)その4』『EQMM翻訳紳士録<1>田中 融二』『新聞記者と探偵—カゴのトリには探偵はできない—(古波蔵 保好)』『ミステリ・ニュー・ウェイヴ』『探偵小説風物詩(中内 正利)』


No.287 5点 EQMM日本語版 1959年11月号 <41>
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/08 20:10登録)
表紙はクロード・岡本の貼り絵、モチーフは黒人の横顔。裏表紙の広告は早川書房 グレアム・グリーン選集の第1回発売。(どこにも早川書房以外の広告無し… 営業苦戦中か?)
カットは市田 喜一。異色2篇(アームストロングとフラナガン)がメイン。
具象の表紙絵だったのでびっくり。勝呂さん体調が悪かった?
書庫にあるハメット作品を初出順に読む試みの一環です。
まだ途中ですが、全体の暫定評価は5点として、短篇小説を読んだら追記してゆきます。
収録された小説は13篇。初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ Broker’s Special by Stanley Ellin (初出EQMM 1956-1)「専用列車」スタンリイ・エリン 田中 融二 訳
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⑵ Three Men in the Garden by Lord Dunsany (初出EQMM 1959-8)「庭園の三人」ロード・ダンセイニ 井上 一夫 訳
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⑶ Child Missing! by Ellery Queen (初出This Week 1951-7-8 as “Kidnaped!”)「消えた子供」エラリイ・クイーン 青田 勝 訳
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⑷ What Would You Have Done by Charlotte Armstrong (初出EQMM 1955-7)「あなたならどうしますか」シャーロット・アームストロング 小笠原 豊樹 訳
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⑸ Won’t Somebody Help Me? by Helen Nielsen (初出EQMM 1959-1)「だれか助けて」ヘレン・ニールセン 福島 正美 訳
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⑹ Ten Per Cent of Murder by Henry Slesar (初出EQMM 1958-9)「10パーセントの殺人」ヘンリイ・スレッサー 森 郁夫 訳
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⑺ The Long Black Shadow by Rosemary Gibbons (初出EQMM 1959-2)「長い黒い影」ローズマリー・ギボンズ 田口 実 訳
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⑻ Ghost Town by Jack Schaefer (初出不明 1953?)「ゴースト・タウン」ジャック・シェーファー 水沢 伸六 訳: 評価6点
『シェーン』の作者による短篇。寂れた西部の町の話。なかなか気が利いている。実際にありそうな結末。
p82 八百ドル: 米国消費者物価指数基準1953/2020(9.69倍)で$1=1064円。$800は85万円。
p82 五十セント: 532円。
(2020-4-8記載)
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⑼ Doors in the Mind by Alan E. Nourse (初出EQMM 1958-4)「心の扉」アラン・E・ナース林 克己 訳
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(10) In the Morgue by Dashiell Hammett (初出Saucy Stories 1923-10-15 as “The Dimple”)「死体置場」ダシェル・ハメット 田中 小実昌 訳: 評価6点
ハメット第10番目の短篇。『チューリップ』所載の小鷹リストにはオプものだという記号#がついているが誤り。探偵ものではなく、妻を探す焦燥感に満ちたスケッチ。EQMM掲載時の題より、もとの題の方がずっと良い。翻訳も良いなあ。
(2020-4-8記載)
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(11) Suppose You Were on the Jury by Thomas Flanagan (初出EQMM 1958-3)「もし君が陪審員なら」トマス・フラナガン 宇野 利泰 訳
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(12) Leonardo Da Vinci, Detective by Theodore Mathieson (初出EQMM 1959-1)「名探偵レオナルド・ダ・ヴィンチ」シオドー・マシスン 吉田 誠一 訳
シリーズ2作目。
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(13) Show Biz by Robert Bloch (初出EQMM 1959-5)「ショウ・ビジネス」ロバート・ブロック 常盤 新平 訳
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読み物は『反対尋問(日本探偵小説の匿名時評)』『隣の椅子(有馬 頼義)13』『深夜の散歩15(福永 武彦)大はずれ殺人事件』『ふたりで犯罪を(映画の話・本の話)』『探偵小説不作法講座 第五講』『探偵小説風物詩(中内 正利)』


No.286 7点 フェアウェルの殺人 ハメット短編全集1
ダシール・ハメット
(2020/04/08 15:01登録)
日本オリジナル短篇集(創元推理文庫1972)。全部オプもので7篇収録。稲葉さんの当初の構想では1、3、4巻がオプもの中心、2巻はサム・スペードものやその他、だったようだ。
ところでEQの序文「偉大なる無名氏」はどの短篇集に収められていたのだろう。EQ編・序文のソフトカバー本は九冊あり、①The Adventures of Sam Spade (1944)、②The Continental Op. (1945)、③The Return Of The Continental Op. (1945)、④Hammett Homicides (1946)、⑤Dead Yellow Women (1947)、⑥Nightmare Town (1948)、⑦The Creeping Siamese (1950)、⑧Woman in the Dark (1951)、⑨A Man Named Thin(1962)だが、候補はやはり②か③。⑦の序文タイトルが“A Dashiell Hammett Detective”らしいのでこれも怪しい。稲葉編の本書は短篇を上記②④⑥⑦⑧⑨からセレクトしている。
ところでハメットの短篇をコツコツ集めて本にしたダネイの功績は認めるが、文章のいじり癖には困ったものだ(Don HerronのWebページHammett: The Dannay Edits参照)。雑誌ならスペースの都合上仕方ない場合があるかもしれないが、単行本収録時に戻してくれれば良いのに… (もしかして文章を「直してやった」つもりか?)
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。◯囲み数字は上記EQ編・序の短篇集の番号。
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⑸ Arson Plus (初出The Black Mask 1923-10-1, Peter Collinson名義)「放火罪および… 」K9 #1 ⑧: 評価5点
オプが初登場した作品。このあとブラック・マスク誌に1924年4月までほぼ毎号、1926年3月まで二月に一度は掲載されてるレギュラー作家になった。
ダネイは数カ所で数語を削ってる。詳細はDon Herron Hammett: “Arson Plus”で検索。このWebではEQ⑧初版とBlack Maskのオリジナル(以下「BM」)を比較。しかしこの翻訳のテキストは概ねBMに戻っており、一部だけEQ版(p238「1万4500ドル」、本来のBMなら「4500ドル」など) が残っている感じ(全部は未確認)。ただしハメットは本作を元々コンチネンタル・オプものとして書いてないので、「コンチネンタル探偵局(p249)」とあるのはBMでは只のAgencyなのは当然か。小鷹訳(1994)も同じテキストを使っているようだ。(この折衷テキストは何処由来なのだろうか)
(2020-4-12記載)
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⑵ Crooked Souls (初出The Black Mask 1923-10-15)「黒ずくめの女」K12 #3 ⑨: 評価5点
Dashiell Hammett名義でBlack Maskに初登場した作品。誘拐事件は金の受け渡しがキモ、この話での工夫は初歩的な感じ。お馴染みオガー刑事が初登場するが活躍なし。
p81 十二号: 靴のサイズ。米国サイズなら日本サイズ30cm相当。
p81 五万ドル: 米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して8億3千万円。身代金。米国の有名誘拐事件の相場は、Charlie Ross(1874)2万ドル、Bobby Franks(1924)1万ドル、Marion Parker(1927)1500ドル、Charles Augustus Lindbergh Jr(1932)5万ドル。
p81 百ドル紙幣: 16万円。当時のFederal Reserve Note(1914-1928)はBenjamin Franklinの肖像、Gold Certificate(1922-1927)はThomas H. Bentonの肖像。サイズはいずれも189x79mm。
p92 大型旅行用自動車: Touring Sedanの訳か。1923で検索するとBuick Convertibleが出てくる。原文発注中。
(2020-4-8記載)
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⑹ Night Shots (初出The Black Mask 1924-2-1)「夜の銃声」K21 #7 ④: 評価7点
ダネイが数カ所でかなり長めに語を削ってる。詳細はDon Herron Hammett: “Night Shots”で検索。このWebページで異同をざっとチェックしたが、この翻訳はEQ編④のテキストを使用しているようだ。
この作品自体は、面白い話。捜査がちゃんとしていて、オチも良い。
p272 色があさ黒く、眼のさめるような彫刻的美人(dark, strikingly beautiful in a statuesque way): 「黒髪で」
p273 支那人の料理番… ゴン・リム(Gong Lim): gongは公、工など。limは林か。もちろん他にもあてられる漢字はあるだろう。
(2020-4-12記載)
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⑷ Corkscrew (初出The Black Mask 1925-9)「新任保安官」K37 #18 ⑥: 評価6点
西部の小さな町に出張したオプ。荒馬に乗るやり方が、実に良い。男の子はこーでなくっちゃね。『赤い収穫』の前身みたいなことが言われるが、別物である。DellペイパーバックNightmare Town所載の本作のイラスト(Lester Elliot作)2枚はWeb “Davy Crockett’s Almanack“で見られる。稚拙だけど面白いので是非。
(2021-10-18記載)
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⑶ The Creeping Siamese (初出The Black Mask 1926-3)「うろつくシャム人」K43 #21 ⑦: 評価7点
ズバリ、が決まると格好良い。そんな話。オガー刑事登場。本作を最後にハメットはコディ編集長のBlack Maskから去る。お前には$300ドルの貸しがあるんだぞ、と言って。(当時ハメットの原稿料は1語1セント。同時代の他のパルプ雑誌スター作家は1語2〜3セント稼いでいた。ガードナーがコディに俺のを削ってハメットに上乗せしろ、と提案したのは有名な話)
p110 約900ドル◆p130から1925年の話とすると、米国消費者物価指数基準1925/2022(16.07倍)で$1=1832円。
p111 日本の五十銭銀貨(a Japanese silver coin, 50 sen)◆senがyenと誤っている版があった(日本の金貨は20円が最高額面。為替レート1925年は¥1=¢0.410なので当時の五十銭は376円)。1917年まで鋳造のは旭日五十銭 .800 silver, 直径27.3mm, 10.12gで、英字で“50 sen”との表示あり。1922以降の新発行(鳳凰五十銭 .72 silver, 直径23.5mm, 4.95g)からは英字は無く、全て漢字と漢数字のデザインなので米国人にはすぐわからないだろう。だが老練なオヤジ(the Old Man)なら読めたかもね。
p111 二枚の二セント切手(four two-cent stamps)◆「四枚の」単純な誤り。2セント切手はワシントンの横顔で赤一色。1923年に新版デザインのものが発行されている。当時の手紙の普通料金は2セント。
p111 シアトル… ポートランド(Seattle… Portland)◆ どちらも当時大リーグ球団を持っていない。SF Giantsは1885年頃からのチーム名。遠征試合だったのか? まあここは「どうだね、その後は?」(What’s score?)と聞いたのを野球のスコアに曲解した適当な答えから派生したもの。
p114 サロン(sarong)
p116 似たような家並みの一軒◆Dell Mapback #538 “The Creeping Siamese”にイラストあり。
p124 たしか一九二一年◆話ではそれから1年数か月以上が経過している。
p131 マライ人たちの使う、刃が波型の短剣(クリス)(a kris)◆補い訳、Black Mask原文では表示の通りシンプル。
p130 一九一九年◆話ではそれから六年が経過している。
(2022-2-16記載)
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⑺ This King Business (初出Mystery Stories 1928-1)「王様稼業」K49 #27 ⑦
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⑴ The Farewell Murder (初出Black Mask 1930-2)「フェアウェルの殺人」K59 #35 ②


No.285 6点 スペイドという男(グーテンベルク21)
ダシール・ハメット
(2020/04/08 04:39登録)
日本オリジナル短篇集(2008)。オプもの5篇、スペードもの1篇を収録。電子本で読了。
クリスティ再読さまに教えてもらうまで気づかなかったのですが、いままで雑誌掲載のみで単行本未収録だった作品K11、K33、現在絶版中の単行本にしか収録されていないK40の貴重な3作が収められていて、とても良い企画。(ただし単行本タイトルが他社の文庫本とかぶってるのは紛らわしくてよろしくないが…) グーテンベルク21さんには今後もこーゆー素晴らしい企画を期待しています。
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。{ }内は各篇の元雑誌等(と思われるもの)を前述の短篇リストに基づき記載。
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⑵ Slippery Fingers (初出The Black Mask 1923-10-15, Peter Collinson名義)「つるつるの指」小山内 徹 訳 {別冊宝石93号1959-11} K11 #2: 評価5点
Black Maskの同じ号に「黒づくめの女」K12 #3(創元『フェアウェルの殺人 ハメット短篇全集1』収録)が掲載されてて、名義はハメット。つまり「Dashiell Hammett」のブラック・マスク初登場。コリンスン名義は本作が最後(コリン星に帰ったのだろう)。目次上はK12が同号中2番目、K11が11番目の掲載作品(全部で14作掲載)。なのでK番号のナンバリングを逆にしたいところ。FMIのデータには同号にハメットの手紙(letter)掲載、となってて気になる(他の数号にもハメット(letter)が載っているようだ)。
普通の探偵小説。話としてはあまり面白くない。新訳で読むと印象はちがうかも。これ、実際に使えるネタなのか?
「うちのピカ一のディック・フォーレイ」や「ボッブ・ティール」などのレギュラーキャラ初登場作品なのだが活躍せず。
p757 百ドル札♠️米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して100ドルは16万円。当時のFederal Reserve Note(1914-1928)はBenjamin Franklinの肖像、Gold Certificate(1922-1927)はThomas H. Bentonの肖像。サイズはいずれも189x79mm。
(2020-4-8記載)
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⑷ The Black Hat That Wasn’t There (初出The Black Mask 1923-11-1 as “It”)「暗闇の黒帽子」井上 一夫 訳 {EQMM日本語版1960-7} K14 #4: 評価6点
『チューリップ』で書評済みだが、改めて読むとキビキビした話の流れが良い。場面場面がいちいちリアル。
一人称は「私」だが、セリフの中では「あたし」(コロンボ風の)。井上先生の翻訳は好き。ところどころ、小鷹訳よりスムーズに感じた。流石です。
p105/246 先月の二十七日月曜日
p110 五セントのチップ(a jit)◆タクシーの運転手に。
p116 三二口径コルト自動拳銃(.32 Colt revolver)◆古い翻訳者はリボリバーを「自動拳銃」と訳してたのか?井上先生でさえも!
p121 黒い自動拳銃(a black automatic pistol)◆こちらは正しい。
p122 必要だと思うとき以外には、拳銃は持って歩かないことにしていた◆オプの考え方。
(2022-2-11追記)
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⑶ Mike, Alec or Rufus (初出The Black Mask 1925-1)「誰でも彼でも」砧 一郎 訳 {別冊宝石73号1958-1} K33 #15: 評価6点
ユーモラスな感じの話。テキストはダネイ版The Creeping Siamese収録(1950)によるもの。オリジナル・テキストにちょっと手を加えており、登場人物の名前もJacob CoplinからFrank Toplinに変えられている。(元の名前はユダヤ人を連想させすぎるのか?) 詳細はDon HerronのWebページHammett: “Mike or Alec or Rufus”参照。
銃は「回転胴式のピストル(リボルバー)」または「自動式(オートマティック)… 三八口径の」が登場。一般人にはリボルバーもオートマチックも区別がつかない、ということでしょうね…
p1063 色は白いほうですか、黒いほうですか?(Light or dark?)♣️髪の色は明るい?暗い?だと思う。
p1123 広告の文句じゃないけど、この鼻がおぼえてます(My nose would know, as the ads say)♣️探してみたけど、このフレーズを使った広告は見つからなかった。気になる…
p1134 電話の交換台と受付けと、両方いっしょにやってる♣️マンションの交換手は受付を兼ねているのが普通なのだろう。
p1181 ニッケル玉でカケを(matching nickels)♣️メキシコでの遊び方がWebにあった。matching nickels - volado (we choose either "aguila" or "sol", each side of a coin in Mexico) やってたのはフィリピン人なのでこれなのかも。
(2020-4-19記載)
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⑴ The Gutting of Couffignal (初出The Black Mask 1925-12)「クッフィニャル島の夜襲」田中 西二郎 訳 {『血の収穫/ビロードの爪』中央公論社1969} K40 #20: 評価7点
一人称の弱点は、探偵が手がかりに気づいていても、そこを書いちゃうとネタバレになっちゃうところだが、ハメットはうまく処理していると思う。作品内容は非常に楽しめるし、ユーモアとペーソスもある。『マルタの鷹』序文でハメットが後悔している本作の結末の「失敗」---- 私も何かコレジャナイ感があった。
p3/246 コンティネンタル探偵局がとりあつかわない離婚関係の仕事(divorce work, which the Continental Detective Agency doesn’t handle)♠️ピンカートン社がそうだった。1900年ごろの広告でNo Divorce Case Undertakenと真っ先に大きな文字で宣言しているのがあった。
p6『海の殿様』(The Lord of the Sea)♠️Hogarthが登場する、というからMatthew Phipps Shiel(1865-1947)著、1901年出版の小説だろう。「デュマの荒々しいロマンス、ヴェルヌの想像力溢れる予言、そしてポオの悪夢の如き冷酷さの混淆」という宣伝文句のようだ。気になるねえ。ハメットはプリンス・ザレスキーを読んだことあるのかな?
p8 小銃のなかでは一番重いやつ(the heaviest of the rifle)♠️ここは「ライフル」のほうがわかりやすいかな?
p9 ごく小さい火器の一斉射撃の音(a volley of small-arms shots)♠️small-armsはピストルやライフルなどの総称。「小火器」が定訳。ここでは「重い」ライフルの音と対比して「軽い」銃の音という趣旨だろう。
p13 四角のオートマティック・ピストル(square automatic pistol)
p52 浅黒い顔に(dark face)
(2022-2-11記載)
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⑸ The Farewell Murder (Black Mask 1930-2)「フェアウェルの殺人」稲葉 由紀 訳 {別冊宝石123号1963-10} K59 #35
創元文庫で読むつもり。
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⑹「スペイドという男」田中 西二郎 訳 {『血の収穫/ビロードの爪』中央公論社1969} K66
創元文庫か講談社文庫『死刑は一回でたくさん』で読むつもり。


No.284 6点 ミステリマガジン1976年8月号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2020/04/05 17:50登録)
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1976年8月号 <244>
20周年記念増大号。298ページ。定価700円。
表紙は真鍋博、ハートのジャックと数字の20がモチーフ。裏表紙の広告はマルゼン ポータブル タイプライター。
まだ途中ですが、暫定評価7点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
リストを作ってて思ったんですが、挿絵の記憶が随分と残ってるもんですね… 内容はほとんど覚えていないのに…
書庫にあるハメット作品を初出順に読む試みの一環です。
以下、初出はFictionMags Index調べ。
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エッセイが豪華。巻頭は旧ポケミスやEQMM日本語版最初期の表紙と言えば…の勝呂忠による早川書房とのなれそめ話。次が真鍋博のHMM表紙の話(太田博[各務三郎]との電話会談形式。10周年記念号の表紙が最初だと言う)。これ、早川書房を追ん出されたらしい太田をさりげなく登場させる演出だったのでは?、と初めて気づきました。(私は太田編集長時代の変なHMMが一番好きなんです…)
続いて中島河太郎、植草甚一、扇谷正造、福永武彦、清水俊二、高橋泰邦、丸谷才一と言う重鎮の記念エッセイ。
田村隆一と都筑道夫の記念対談。創刊の頃の話がとても興味深い。
特別企画は「思い出の短篇ベスト3」識者、読者から思い出の三作を推薦してもらう試み。集計結果のベスト5は①魔の家の森JDC②おとなしい凶器Rダール③女か虎かFRストックトン④百万にひとつの偶然Rヴィカーズ⑤ジェミニイ・クリケット事件Cブランド
続いて記念エッセイは田中 西二郎、中田 雅久、結城 昌治、石川 喬司、田中 小実昌、稲葉 明雄(この編集長列伝が楽しい)の諸氏。
連載は『課外授業(青木 雨彦)32』『ミステリ時評What Is Your Poison(芳野 昌之)28』『ミステリ漫画(梅田 英俊)』『ニューヨーク便り(木村 二郎)最終回』『冒険者たち(鎌田 三平)5』『街角のあなた(雨)』『続パパイラスの舟(小鷹 信光)13』『ティー・タイム(宮脇 孝雄)5』
特別企画の座談会「翻訳は“女には向かない職業”か?」は青木 雨彦司会、小尾 芙佐、小泉 喜美子、深町 真理子という三傑の翻訳裏話。
短篇小説は16作品を収録。記念号だけあってビッグ・ネーム揃いです。
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⑴ The Blood Bargain by Eric Ambler (“Winter’s Crimes 2” 1970, ed. George Hardinge)「血の協定」エリック・アンブラー 菊池 光 訳(挿絵 金森 達)
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⑵ Hard Sell by Craig Rice [ghost written by Lawrence Block](初出Ed McBain’s Mystery Book 1960 #1)「セールスメンの死」クレイグ・ライス 浅倉 久志 訳(挿絵 畑農 照雄)
代作情報はFictionMags Indexより。ちょっとショック。
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⑶The Indivible Life, The Release by Cornell Woolrich (1967, 1970)「負け犬: 第1章 割りきれない人生、最終章 釈放」コーネル・ウールリッチ 永井 淳 訳(挿絵 山野辺 進)
解説は小鷹 信光。未完の長篇の第1章と最終章?
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⑷What Happened to Annie Barnes by Evan Hunter (初出EQMM 1976-6)「何がアニーに起ったか」エヴァン・ハンター 井上 一夫 訳(挿絵 中村 銀子)
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⑸「ハンバーガーの土曜日」片岡 義男(挿絵 佐治 嘉隆)
私立探偵アーロン・マッケルウェイもの。初登場と書いてある。
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⑹The Kidnapping by Henry Slesar (初出EQMM 1975-1)「誘拐」ヘンリイ・スレッサー 高橋 泰邦 訳(挿絵 浅賀 行雄)
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⑺Eight Minutes to Kill by Julien Symons (初出The Evening Standard 1957)「殺人への八分間」ジュリアン・シモンズ 風見 潤 訳(挿絵 佐治 嘉隆)
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⑻The Honest Swindler by Ellery Queen 初出The Saturday Evening Post 1971夏号 挿絵Albert Michini)「正直な詐欺師」エラリイ・クイーン 青田 勝 訳(挿絵 真鍋 博)
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⑼The Fall of a Coin by Ruth Rendell (初出EQMM 1975-6)「コインの落ちる時」ルス・レンデル 後藤 安彦 訳(挿絵 山野辺 進)
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⑽Old Friend by Dorothy Salisbury Davis (初出EQMM 1975-9)「二人の女」D・S・デイヴィス 深町 真理子 訳(挿絵 中村 銀子)
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(11)The Pasty by Robert L. Fish (初出EQMM 1976-6)「地下室の死体」ロバート・L・フィッシュ 宮脇 孝雄 訳(挿絵 畑農 照雄)
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(12)The Pond by Patricia Highsmith (初出EQMM 1976-3)「池」パトリシア・ハイスミス 小倉 多加志 訳(挿絵 村上 遊)
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(13)「しごき屋のしごきが鈍くなる時」日影 丈吉
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(14)The Man Who Stood in the Way by Dashiell Hammett (初出The Black Mask 1923-6-15 as “The Vicious Circle”、Peter Collinson名義)「厄介な男」ダシール・ハメット 丸本 聡明 訳(挿絵 金森 達): 評価4点
ハメット短篇第5番。穴が沢山開いてそうな残念な話。文章も締まらない。
(2020-4-5記載)
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(15)The Living End by Robert Bloch (初出The Saint Mystery Magazine 1963-5)「生きどまり」ロバート・ブロック 仁賀 克雄 訳(挿絵 楢 喜八)
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(16)The Affair of the Reluctant Witness by E. S. Gardner (初出Argosy 1949-4 挿絵George Salkin)「気乗りしない証人」E・S・ガードナー 尾坂 力 訳(桜井 一 訳): 評価7点
Jerry Baneもの。シリーズ第1作目のようだ(FictionMags Indexによると全2作)。レスター・リース風の楽しい話。ガードナーは読者の鼻面を引き回すのが上手い。
現在価値は米国消費者物価指数基準1949/2020(10.87倍)、$1=1194円で換算。
p282 三百八十七ドル引き出し超過: 46万円。銀行が気づく前に小切手を振り出せば、こうなるのかな?
p293 二十五セント: 299円。缶切り1つの値段。
(2020-4-5記載)
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他、評論が一本。
「主人公(ヒーロー)としての探偵と作家」ロス・マクドナルド 小鷹 信光 訳 (The Writer as Detective Hero (1964) by Ross Macdonald from “On Crime Writing” 1973)


No.283 6点 チューリップ : ダシール・ハメット中短篇集
ダシール・ハメット
(2020/04/04 08:41登録)
小鷹ファンなら「訳者あとがき」で泣ける。帯に「ハードボイルド精神とは何か?」とあるが、もちろん、そーゆー内容ではない。私にとってハードボイルドとは谷譲二(牧逸馬・林不忘、いずれも長谷川 海太郎の筆名)とかワーナー映画だったりする。軽ハードボイルド(=カーター・ブラウン)という概念のほうがむしろわかりやすい。ハメットはハードボイルド私立探偵小説を書いたわけじゃない。自分の面白い持ちネタが、今まで経験してきた探偵家業だっただけ。(各篇解説p112に似たようなことが書いてあった)
この書評では初出順に再構成。カッコ付き数字は単行本収録順。K番号は、本書収録の作品リストにつけられた短篇小説(長篇分載を含む)の連番(勝手に私が「K番号」と命名)。#番号は『コンチネンタル・オプの事件簿』(ハヤカワ文庫)収録のオプもの短篇リストの連番。初出はFictionMags Indexで加筆。
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(おまけ) The Parthian Shot (初出The Smart Set 1922-10) K1 「最後の一矢」: 評価4点
訳者あとがきの中に収録(目次には出てこない)。短いスケッチ。Smart Setのこの号は広告も含め無料公開されている。
(2020-4-4記載)
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⑵ The Barber and His Wife (初出Brief Stories 1922-12、Peter Collinson名義) K2 「理髪店の主人とその妻」: 評価5点
これはちょっと冗長だが、文章のシンプルなスタイルは最初からのものだったようだ。小耳に挟んだネタを書いたようなリアリティがある。
p98「炉の火を燃やしつづけてくれ(Keep the Home Fires Burning)」: 続く「また逢う日まで(Till We Meet Again)」、「兵士たちになにをしてくれるんだ、ケイティ」、「彼らをどうやって農場に縛りつけておくんだ?(How Ya Gonna Keep 'em Down on the Farm)」はいずれも大戦中(WWI)の曲だというが、「〜ケイティ」だけ調べつかず。(2020-4-12追記: 原文を見たら「〜ケイティ」のところは”Katy,” “What Are You Going to Do to Help the Boys?”の2曲分の題名だった。全てWW1当時の有名曲。いずれもWikiに項目あり。KatyはK-K-K-Katyで立項)
p100 赤いネクタイはつけないという、強いタブー(strength of the taboos of his ilk that he did not wear red neckties): 共産主義者のイメージなのか。調べつかず。
p101 黒人の靴磨き: 理髪店には靴磨きがつきものだったのか。便利なサービスだと思う。
(2020-4-4記載; 2020-4-12追記)
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⑶ The Road Home (初出The Black Mask 1922-12、Peter Collinson名義) K3 「帰路」: 評価5点
ハメットのBlack Mask初登場。あっさりしたスケッチ。男のケジメがテーマなのが、らしいと言えばらしい。
p114 現地人の服を着た浅黒い男(The dark man in the garb of a native): 浅黒警察の判定では「黒髪の男」ここは最初の描写なので髪の色をまず言うはず、と言うのが一応の根拠だが、微妙かも。
(2020-4-5記載)
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⑷ Holiday (初出The New Pearson‘s 1923-7) K7 「休日」: 評価6点
FictionMags Indexでは1923年7月号から雑誌タイトルがPearson’s Magazineに戻ったとなっているが、mikehumbertのWebで表紙絵を見ると、上記が正解。英ピアソンズ・マガジンの米国版(1899-1925)、25セント(=416円)、64ページ。
なおここでは米国消費者物価指数基準1923/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算。
うらぶれた休みの日。競馬場、酒場のスケッチ。小実昌さん向きの話。小鷹訳はちょっとカタい。各篇解説で、稲葉訳のポカを「編集部の重大なミス」として苦言を呈する翻訳者寄りの姿勢が微笑ましい。(稲葉訳は、雑誌マンハント1962-9に掲載後、創元『スペイドという男』に収録。小鷹訳よりこなれているが、時代を感じさせる古い表現が多い。私は好きだが現代の読者にはわかりにくいか。詳しく確認してないが語釈が小鷹訳とところどころ違ってるようだ。原文が届いたら見てみよう。←多分、私には判定が困難だろうが…) ほろ酔い気分の主人公に寄り添える「純文学」な内容でヒョウーロン家が持ち上げ易い作品。作者自身は「や・お・い」と評している、ならばハメットは物語にはヤマやオチが必要という考えなのだろう。
p121 十ドル札: 16620円。当時の10ドル紙幣はUnited States Note(1907-1928)はAndrew Jacksonの肖像、Gold Certificate(1922-1928)はMichael Hillegasの肖像。サイズはいずれも189x79mm。
p121 <一度に一歩>(Step at a Time): 日本の競走馬風ならイチドニイッポ。(稲葉訳は『一度にひと足』)
p128 銀貨で85セント: 5セント硬貨を1枚持ってるのは確実(ニッケル製だが…)。残りを半分に割ってるので、半ドル銀貨(Half dollar)は持っていない。とすると、5セント貨、10セント銀貨と25セント銀貨の組み合わせだろう(3通りが可能)。当時の5セント貨幣(Nickel)はBuffalo or Indian Head(1913–1938)、25% nickel & 75% copper、直径21.21mm、重さ5.00g、83円。10セント銀貨(Dime)はWinged Liberty Silver Dime(1916-1945)、.900Silver、直径17.9mm、重さ2.5g、166円。25セント銀貨(Quarter)はStanding Liberty Type2[2aとも](1917–1924)、.900Silver、直径24.3mm、重さ6.25g、416円。
(2020-4-7記載)
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⑸ The Black Hat That Wasn’t There (初出The Black Mask 1923-11-1 as “It”) K14 #4 「暗闇の黒帽子」: 評価5点
オプもの。暗闇のシーンだけが取り柄。32口径コルト・リヴォルヴァーなら色々候補はあるが一番普及してたのはPolice Positiveかなあ。
Don HerronのWebサイトを見ると、EQMM1951-6再録時にダネイが原文をちょっといじってるらしく、小鷹訳はEQMM版によるもののようだ。Black Maskオリジナルを収録してるはずのThe Big Book of the Continental Op(Black Lizard 2017)取り寄せ中なので、届いたら確認してみます… (なお、このハメット・ファンサイト主宰のDon HerronはTadが誰かわからないらしい。英語得意な方、教えてあげて!)
(2020-4-8記載)
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⑹ Afraid of a Gun (初出The Black Mask 1924-3-1) K24 「拳銃が怖い」: 評価4点
同じ号に二篇掲載(もう一つは下のK25。同じくハメット名義)。この作品の狙いがよく分からない。現実に見聞きした事件を解釈しようとしたが、上手く核心に迫れなかった感じ。なお再録時のダネイの修正は無いとのこと。
(2020-4-12記載)
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⑺ Zigzags of Treachery (初出The Black Mask 1924-3-1) K25 #8 「裏切りの迷路」: 評価7点
オプもの。とても良い仕事をするオプ。作品タイトルもピッタリ嵌まっている。ダーティーな世界でケジメを貫くカッコ良さに惚れてしまうやろ〜。
p187 尾行には四つの原則がある: オプの尾行ミニ講座。
p198 小粋すぎる服を着たフィリピン人のガキども:『大いなる眠り』p185のトリビア参照。
p217 弾倉を閉じて(snapped it shut again): リヴォルヴァーなので「シリンダー」と言いたいところ。回転式弾倉が訳語だが、単に「弾倉」というとマガジンのイメージが強い。「輪胴」という訳語もあるが、あまりポピュラーではない。試訳「シリンダーを元に戻して」
(2020-4-12記載)
「撃針(firing pin)」について一言。当時のリヴォルヴァーだと、もれなく撃鉄にセットされている。普通は銃内部に隠れていて見えないが、発射準備(撃鉄が起きている)状態なら撃針は外部に露出している。撃鉄の前側の尖った部品が撃針。これで弾丸のケツにある発火薬を叩いて発射する仕組み。
(2020-4-17記載)
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⑻ The Scorched Face (初出The Black Mask 1925-5) K36 #17 「焦げた顔」: 評価6点
オプもの。掲載号のカヴァー・ストーリー(シャツがボロボロで、ドアの前で半ば手を上げてる男の絵)。オプの捜査手法が良い。登場する刑事のエピソードが面白い。大ネタは探偵局で見聞きしたものなのかも。
p245 ロコモービル♦️Locomobile Model 48(95HP 1919-1929)か。1922年以降はDurant Motors傘下で1929年までブランド名は存続した。
p261 八百ドル♦️米国消費者物価指数基準1925/2021(15.67倍)で$1=1792円。143万円。
p264 五十セント玉♦️当時はWalking Liberty half dollar(1916-1947)、90%silver、直径30.63mm、重さ12.5g。貨幣面の表示は「FIFTY CENTS」ではなく「HALF-DOLLAR」この大きさは訳注を入れて欲しいところ。
(2021-10-18記載)
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⑼ Ruffian’s Wife (初出Sunset:The Pacific Monthly 1925-10) K38 「ならず者の妻」: 評価5点
うーん。こーゆータフサイドの逆から見る感じが上手いのがハメットの資質だと思うが、話としては、そんなに面白くない。
p322 一万二千ドル♠️(8)の換算レートで2150万円。
p323 <バング・アウェイ、マイ・ルールー>を口笛で♠️Bang Away, My Lulu。英WikiにBang Bang Luluとして項目がある米国民謡だろう。
p330 五十万ルピー♠️1925年の換算レートだと、1インド・ルピー=$0.3626=650円。3億2500万円。
(2021-10-19記載)
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⑽ Albert Pastor at Home (初出Esquire 1933秋) K70 「アルバート・パスターの帰郷」: 評価5点
掲載号はエスクワイヤの創刊号(この号も全て無料公開あり)。愉快なスケッチ。人口25万人(a quarter million people)クラスの街は1920年の統計でToledo city, OH(243,164、全米26位)、Providence city, RI(237,595)、Columbus city, OH(237,031)、Louisville city, KY(234,891)、St. Paul city, MN(234,698)、「ちっぽけな町」というのはNew York city, NY(5,620,048、全米1位)、Chicago city, IL(2,701,705、2位)、Philadelphia city, PA(1,823,779、3位)と比較してのことか。デューセンバーグとロールス・ロイスの件は『悪夢の街』小泉 太郎 訳の方が意味を捉えている感じ。なおDell版のイラスト全体(kidも描かれている)はWebサイトDavy Crockett’s Almanackで見ることが出来る。
(2020-5-2記載)
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(11) Night Shade (初出Mystery League 1933-10) K71 「闇にまぎれて」
掲載号はミステリ・リーグの創刊号。K70の代わりに書かれたもの。
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⑴ Tulip (生前未発表; 短篇集The Big Knockover 1966) K76 「チューリップ」


No.282 5点 デイン家の呪い
ダシール・ハメット
(2020/04/04 05:45登録)
1929年7月出版。(『赤い収穫』の5カ月後、立て続けの出版だったのか) 初出Black Mask 1928-11〜1929-2 (4回連載)。小鷹信光訳で読了。
改訂内容の概要は訳者あとがきにあるが、詳しいことはBlack Mask掲載分を集めた作品集The Big Book of the Continental Op(Black Lizzard 2017)などを読んでみるしかないのか。ハヤカワ文庫(小鷹 信光 訳)で読了。
第1部、第2部までは普通の堅実なオプもの…と思ったら第3部で何だか大掛かりになって無茶苦茶に。第3部後半はまた雰囲気がかわる。まーここがこの小説のハイライト。オプが普段になく心情をわかりやすく吐露、結構女に弱いんだよね。ラストは付け足しのような長い説明。きっと当初はあっさりした解決篇だったのだろうが、クノッフ奥様がこの解決、どーなってるの?さっぱりわからん、と文句をつけ、ハメットがそんなにどーでも良いことが知りたきゃこれでも食らえ! って不貞腐れて書いたのだろう。(そんな投げやり感に満ちている)
バラバラの事件を繋ぎ、長篇としての体裁を整えるのが「呪い」というキーワード。なのでマクガフィン以上の意味はない。失敗作だがハメット・ファン必見作。特にp298辺り以降。汗まみれで奮闘するオプの姿にハメットの素顔を見た。最終幕の明るさも良い。
以下トリビア。
作中年代は『赤い収穫』の後(p311)なので1928年、2月6日(p61)から数日後(感じとしては一カ月以内)が冒頭か。
現在価値は米国消費者物価指数基準1928/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算。
献辞はTO ALBERT S. SAMUELS。ハメットが広告マンとして勤めた宝石店主。詳細は注釈盛りだくさんの訳者あとがき参照。
p11 背筋がまっすぐのび、浅黒い肌(dark-skinned erect man): 例の「浅黒」だがここは正しい訳。浅黒警察にとって紛らわしい文章である。
p25 千二、三百ドル: $1300=216万円。ダイヤモンドの売値。安物。原価は$750。利益率42%か…
p32 電話交換台の若い男(boy at the switchboard): ここではアパートの受付も兼務している。
p33 サンフランシスコ暮らしが5年近く(I had been there [San Francisco] nearly five years): オプのセリフ。最初のオプものはBlack Mask 1923-10-1号。約5年前である。
p33 西部をインディアンに返還する運動(movement to give the West back to the Indians): そういう運動が1920年代に盛り上がっていたのか? 調べつかず。
p34 物書きで人をだます収入り(みいり)(literary grift): ハメットの自虐ネタ。
p37 シュヴァリエ・バヤール(Chevalier Bayard): フランスの騎士Pierre Terrail, seigneur de Bayard (1473–1524)のこと。le chevalier sans peur et sans reproche(恐れ知らず、非の打ちどころなし)と言われた。Chevalier de Bayardという表記が一般的のようだ。
p38 デューマ(Dumas): ここでは大(アレクサンドル)の方だろう。謎めいた男(モンテクリスト伯みたいな)というイメージか。
p38 O・ヘンリーの見かけ倒しの三文小説(gimcrackery out of O. Henry): 小鷹さんなので詐欺師ジェフ・ピーターズを念頭に置いてるはず。
p46 全部で1170ドル: 194万円。一枚ずつ置いて金額を確認してゆくのは欧米人がよくやる行為。(ジェームズ・サーバーの登場人物がお釣りを暗算で出すのは「軽はずみ」と評していたはず) ここの記述から100ドル札7枚、50ドル札5枚、20ドル札7枚、10ドル札6枚、5ドル札4枚を持ってるようだ。米国の紙幣は額面に関わらず統一サイズだが、1928年〜1929年以降は一回り小さくなっている。(189x79mmから156x66mmに)
p63 黄色ちゃん(high yellow): 黒人と白人の混血の薄い肌の色を指す語、とwikiにあり。単にyellowとも。The Yellow Rose of Texasもムラートのことだという。
p67 “踊る宗教”や<ダビデの家>(Holy Roller or House of David): Holy RollerはFree MethodistsやWesleyan Methodistsのような宗教団体。ダビデの家は正式にはThe Israelite House of Davidという1903年ミシガン生まれの新興宗教。1920年代に教祖と13人の信者(若い女性)とのスキャンダルが発覚した。いずれも英wikiに項目あり。
p69 村の鍛冶屋さん(village-blacksmith): しばしも休まず槌うつ響き、で始まる文部省唱歌「村の鍛冶屋」(1912)の日本語wikiではLongfellowの詩(1840)のことが出てこないが、無関係なのだろうか?
p199 百五十四ドル八十二セント: 26万円。男のポケットにあった現金の総額。
p245 スタッド・ポーカー… 12時半には16ドル勝っていた: 26592円。新聞記者4人・カメラマン1人とのオプの対戦成果。
p275 ニック・カーター調の冒険談のほうがましだ(I like the Nick Carter school better): 1886年初登場の探偵。人気が出たらしく1915年までNick Carter Weeklyという雑誌があった。1924-1927にはDetective Story Magazineに連載があったが、あまり成功せず、1933年にザ・シャドウやドグ・サヴェージの人気にあやかろうと冠雑誌が復活、Nick Carter Detective Magazineが創刊された。以上、英wikiより。1928年当時のイメージは「冒険談」なのだろうか。
p317 十ドル: 16620円。ガロン入りの最高級ジンの値段。大瓶2本分なので一瓶あたり8310円。禁酒法時代なので高いのか。(値段は2〜6倍になったという)
p293 わかりました、コンティネンタル殿(Aye, aye, Mr. Continental): ラインハンがオプにふざけて言う。「ミスター・コンティネンタル」はミスター・タイガース(藤村富美男、自他ともに認めるチームの代表者)のような意味あいか。


No.281 7点 最初の刑事:ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
ケイト・サマースケイル
(2020/03/29 10:28登録)
2013年製作の英国製TVドラマ、The Suspicions of Mr. Whicher 四話シリーズの第1作目The Murder at Road Hill Houseは、本書の映像化。(日本語題名は『ウィッチャーの事件簿』) 素晴らしい時代感覚で1860年代の英国を再現しています。列車のコンパートメントや裁判所や旧家の邸宅、それぞれの衣装、様々な使用人たち、刑事、ジャーナリスト、市井の人々… 文句なしです。英国の当時もの好きは是非御覧ください。
早速、本書も発注しました。読んだら感想を書きます…
(2020-3-29記載)
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本が届いたので、早速、読んでいます。記述がかなり詳細で、これ誰だっけ?と登場人物一覧を見ながら読み進めています。終えるまで時間がかかりそう…
探偵小説風味が強い実録物。屋敷の見取り図や家系図がそれっぽい雰囲気(いや実話だから)
細かい値段が明記されてるので、価格マニアとしては当時の物価の記録としても使えそうで嬉しい限り。
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ただし、著者が冒頭p24に書いてる現在価値換算には異議あり。
「1860年の£1は、現在(2008)の貨幣で65ポンド分の価値があった… この換算率は小売物価指数によるものであり、交通機関や飲食物など、日常的なものの相対的な価格を計算するのに役立つだろう。
ただし、給与などの価値に関しては、1860年の£100の収入が現在の約60000ポンドに相当するという換算率のほうが適切である。」(米国人経済学教授の計算だという)
つまりパンの値段が£1なら現在の65ポンド相当だが、給料として支給された£1ならどこからともなく9.23倍の価値が生じて現在の600ポンド相当になるって… パン代£1と給料£1に違いがあるわけないだろう。
この換算法、磯田道史(監修)『江戸の家計簿』(宝島新書)の「現代価格(物価の換算、一両=63000円)」と「現代感覚(給料の換算、一両=30万円)」(こちらは4.76倍)と称して事柄により換算率を分ける考え方とそっくり。歴史研究で広く用いられているアホ概念なんですかね?
彼らが言いたい(らしい)のは、一律換算すると、物価に比べて給料が低過ぎるので、現在の感覚に合わなくなってしまい、都合が悪いということだと思うが、それじゃ当時の実感はわからない。実際に執事やメイドや労働者の給与水準は低かったのだ。色々な事物で異なる換算率を使うのであれば、換算する意味がない。
私が常用してるサイトによると、英国消費者物価指数基準1860/2008で91.13倍。同基準1860/2020だと122.39倍、£1=17365円。以下はこの換算率で現在価値を円表記する。
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さて代表的な事物の価格を拾うと…(以下s.はシリング、d.はペンス)
p92 宿代は一泊1s.6d.=1302円。
p103 ウィッチャーは1842年に部長刑事(サージャント)に昇進し、昇給して年収£50=87万円から£73=127万円となった。
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別の資料からだが、当時(1865)のパン1斤(a pound of bread)の値段は1.8d.=130円。ハウスメイド(1850)は多いほうで年収£14=24万円(住込なので食住は無料)。牛肉(1870年代後半)は重さ1ポンドあたり8.5d.=615円(100g換算で135円)。ビール(1888)は3パイントで3s.1/2d.=2641円(500ml換算で775円)。ロンドンの下宿代(朝食付き, 1865)は1日3s.=2605円。洗濯女(洗剤と食事込み, 1844)は年£6.13s.=11万5千円。
以上、現在から見てビール、パンや牛肉はまあ順当だが、給与や部屋代はかなり安い。(衣食住のうち「衣」が抜けているが、衣はピンキリなので未調査) この結果を見ると辻褄合わせで換算率を二種類用意したくなるのもある程度理解できる。
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当時の所得税は3%ほどで年収£150以上が対象だったようだ。社会保険料も徴収されない。つまり収入額=ほぼ手取り額なので現在の収入額面より使いでがある。英国の国民負担率は45.9%なので収入額を1.85倍すれば現代の税控除前の収入額と比較出来る。まあそれでも安いが…
上の米国経済学者の数字を借りると9.23/1.85=4.99倍すれば(多分、学者は現代の税込収入額との比較で考えている)現代で言えばどのくらいの収入レベルなのか比較出来そう。この率で計算しなおすと、ヒラ刑事は手取り年収434万円レベル、部長刑事は同634万円レベル、ハウスメイドは同120万円レベル、洗濯女は同57万円レベルとなる。多分、米国経済学者が本当に言いたかったのは、そーゆーことであろう。(貨幣の交換レートと収入額による社会階層の当てはめを混同したのが間違いの原因)
(2020-4-3記載、2020-4-5修正)


No.280 6点 赤い収穫
ダシール・ハメット
(2020/03/28 14:10登録)
1929年2月出版。初出Black Mask 1927-11〜1928-2 (4回連載)、出版時の改訂により連載より表現が和らげられているらしい。その辺りの詳細を探したがWebでは見つからず。ハヤカワ文庫(1989年、小鷹 信光 訳)で読了。
変な話。文章は上等。乾いたユーモア感のある文体。でもオプが前のめりにこの町に関わってゆく動機が全くわからない。(都会モンが舐めた態度の田舎モンをカタに嵌める話?) クノッフの奥様はどんなつもりでこの長篇を出版する気になったんだろう。珍獣を眺めてるような気分だったのか。
筋ははちゃめちゃだが一応の理は通っている。小ネタも良い。記憶に残るのはダイナとオプの酔っぱらい場面。下戸の小鷹訳より小実昌訳(講談社文庫)がふさわしかったか。(呑めない噺家の方が酔っ払い上手、という説もあるが…) ハメットは割りの良いアルバイト気分で文章を綴っている。自分の作品のことはジョークだと思っていただろう。あとがきは小鷹ファンじゃないといささか意味不明だが情感溢れるエッセイ。(ゴアス直伝の語釈が知りたい!) 次作『デイン家』が非常に楽しみ。
以下トリビア。
作中年代は1927年のヒット曲が出てくるので素直に1927年で良いだろう。季節は、冬ではないことは多分確実(p206はあまり寒そうじゃない)。夏という感じでもない。イメージだと秋。(2020-4-5追記: 「去年の夏(summer a year ago)」の事件が8月最終週末(p129)に起きて、それは今から「一年半前(p149 a year and a half ago)」のことだという。ちょっと矛盾してるが last summerとは言ってないので、一年(ちょっと)前の夏、と理解すれば話は通る。ならば「今」は2月末の前後数カ月。p81のヒット曲はおそらく1927年3月か4月が流行の初め。毛皮のコート(fur coat)を着てる(p112)ので、この物語は1927年3月の話なのだろう。夏の事件は1925年8月29日土曜日あたりか)
現在価値は米国消費者物価指数基準1927/2020(14.87倍)、$1=1633円で換算。
銃は色々出てくるがgunmanは.32口径なんか使わない(p62)というネタが興味深い。銃世界の通説ではgunmanとは銃を持った悪党のこと。じゃあどんな奴が.32口径を使うのか、という答えはp89参照。
献辞はTO JOSEPH THOMPSON SHAW。
p14 赤い幅広の絹のネクタイ(a red Windsor tie): 組合関係者なので「赤」か? 赤一色のネクタイはCommunist Red necktieと呼ばれることもあるらしい…
p21 色の浅黒い、小柄な若い男(It was young, dark and small):「黒髪の」小鷹さんも浅黒党とは意外。
p23 あさぐろい横顔がうつくしい(His dark profile was pretty.): 小実昌訳より。この文、小鷹訳では抜け。He was Max Thaler, alias Whisper.と続く場面。(2020-4-5追記)
p25 イーストを食べるようになってから、耳の具合がぐんとよくなりました(My deafness is a lot better since I've been eating yeast): 1910年代から家庭でパンを焼く習慣が廃れ売上が減ったので、Fleischmann’s Yeast社がイースト菌は健康に良いキャンペーンを張った。広告ではconstipation, bad breath, acne, boils, and sluggishnessなどに効き目があると主張、パンに塗って食べたり溶かして飲んだりすると良い、として売上1000%の効果があったという。
p33 五千ドル: 817万円。
p49 五十セント玉ほどの(size of a half-dollar): 当時の半ドル銀貨はWalking Liberty half dollar(1916-1947)、直径30.63mm、重さ12.5g、ギザあり。貨幣面の表示は「FIFTY CENTS」ではなく「HALF-DOLLAR」(2020-4-5追記)
p53 五ドルもだして買ったのよ(paid five bucks): 8165円。靴下(socks)の値段。小実昌訳では「ストッキング」伝線してるのだからストッキングのほうがふさわしい。何組買ったのかはわからない。1920年代の高級品は1組$4.5という情報あり。(2020-4-5追記)
p81 <ローズィ・チークス>を口ずさんでいる(humming Rosy Cheeks): 同タイトルは数曲あるが、ここでは1927年のヒット曲のことだろう。作詞Seymour Simons、作曲Richard A. Whiting。初録音はNick Lucas 1927-3-29(Brunswick)か。(2020-4-5追記: 1927年4月には見つけただけでも9つのレコーディングがある。ミュージカルのヒット・ナンバーではないようだ。ダンス・ホールでの評判が良かったので各バンドが争うように吹き込んだものか)
p84 五十ドル札、二十ドル札、十ドル札: 当時の紙幣サイズは額面にかかわらず、現在より大きめの189x79mm。50ドル紙幣はUnited States Note(1914-1928) 、Gold Certificate(1913-1927)のいずれもUlysses Grantの肖像、81670円。20ドル紙幣はUnited States Note(1914-1928)はGlover Clevelandの肖像、Gold Certificate(1922-1927)はGeorge Washingtonの肖像、32668円。10ドル紙幣はUnited States Note(1907-1928)はAndrew Jacksonの肖像、Gold Certificate(1922-1928)はMichael Hillegasの肖像、16335円。
p89 銃器の専門家に… 弾丸の精密検査をさせる(have a gun expert put his microscopes and micrometers on the bullets): 1925年Calvin Goddard創始の技術が一般的になってきてるようだ。(有名になったのは1929聖バレンタインデーの虐殺の鑑定からだという)
p101 ピノクル(pinochle): トリックテイキングの米国トランプ・ゲーム。2〜8を除いたダブル・デック(48枚)を使用。原型は4プレイヤーだが、この場面のように2人でも出来るバリエーション(べジークとほとんど同じ)がある。詳細はWiki「ピノクル」及びWebページ「ベジーク(Bezique)と、ピノクル(Pinocle)の2人ゲーム」
p107 全財産の三十五ドル(my last thirty-five bucks): 57172円。
p112 マルセル式にウェーブが(marcelled): ボブと組み合わせて1920年代人気の髪型。ウェーブというよりカール。
p121 チャウメン(chow mein): 炒麺。焼きそば。
p127 科学探偵(scientific detectives): 前のセリフにexperimentが出てくるからscientificと言ったのか。
p129 ほつれた糸で脚を痛めたくないと(so the loose threads wouldn't hurt his feet): 婆さんみたいに靴下を裏返しにはくおかしな男… 小実昌訳では「縫い目で足が痛くならないように」こっちのが正解だろう。こーゆー、いかにもな女の話をちゃんと覚えてて書くところがハメットのリアリティだと思う。(2020-4-5追記)
p136 四十にもなると(At forty): オプの歳。
p179 機関銃の覆いがとられ(Machine-guns were unwrapped)… ライフル(rifles)… 暴徒鎮圧銃(riot-guns)…: 機関銃は当時ならThompson submachine gun。riot-gunはshotgunのこと。
p181 バイバイ(Ta-ta): 小実昌訳では「タ、タ」訳注「バイバイといった類の幼児語」Webページ「イギリス英語“Ta-Ta”って何て意味?」によるとニュージーランドでは使わないらしい。発音は「タター」Weblioによると[英口語]子供が用いたり、子供に向かって用いる言葉。他の辞書でも「英」英国人と付き合ってた設定だからこの語か。ここはお母さん(mama)のつもり(p195参照)で言ってるのだろう。試訳「バイバイでちゅ」(←貴家さんの声で) (2020-4-5追記)
p209 そば粉ケーキ(buckwheat cakes): 蕎麦粉配合のパンケーキ。東ヨーロッパ、ロシア、フランスのが有名。(wiki)
p241 一ドル銀貨大(the size of a silver dollar): ここに訳注を入れると台無しか。当時はPeace Dollar(1921-1928) 90% silver, 直径38.1mm、重さ26.73g、縁にギザあり。デザインは表がLibertyの横顔、裏が白頭鷲。デカくて重かったので西部以外ではあまり流通しなかった。(サルーンやカジノでよく使われたらしい)
p264 ディック・フォーリーは原文ではもっと言葉を節約してる。小実昌訳でも節約不足。(2020-4-5追記)
p272「やつは犯罪専門の弁護士なのかい?」「そうとも、犯罪専門のね」: ジョークとしてキレが悪いが仕方ないかなあ。小実昌訳も上手く処理出来てない。原文は'Is he a criminal lawyer?' 'Yes, very.' 試訳「そうだよ、前科は数え切れずさ」(2020-4-5追記)
p273 十セントのチップ(For a dime): 163円。ホテルのボーイへの。(2020-4-5追記: 10セント銀貨は当時Mercury dime(1916-1945) Winged Liberty Headが正確な通称。 .900Silver、直径17.91mm、重さ2.50g。貨幣面の表示は「TEN CENTS」ではなく「ONE DIME」)
p274 おれのところにきたものは、みんなまわしてほしい(Take anything that comes for me and pass it on): なんとかして誤魔化す、の意味だと思うし、この要望に応じて、実際そうしている。(2020-4-5追記: 私は小鷹訳の「もの」を者と誤解してトンチンカンなことを書いていた。小実昌訳では「おれのところにきたしらせは、みんなとりついでくれ」これなら明瞭)
p275 上記(p264)同様ディック・フォーリーは原文ではもっと言葉を節約してる。小実昌訳でも節約不足。(2020-4-5追記)
p293 やつのくそったれの叔母(and his blind aunt): 罵りに出てきた文句。ファイロ・ヴァンスもoh, my auntと良く言うが… (2020-4-5追記: 小実昌訳では「メクラの叔母さん」外人名みたいで上手)
p309 十六インチ砲(16-inch rifle): 16インチ(406.4mm)銃身のライフルという意味か。通常より短めで鹿用に最適らしい。口径40ミリなら「砲」という翻訳だろうが、16"/45 caliber gun(1921から戦艦用)や16"/50 caliber Mark 2 gun(1924から沿岸警備用)をrifleとは言わないはず。(砲の意味ならこの場面では非常に大袈裟で意図不明) (2020-4-5追記: 小実昌訳では「16インチのライフル」)
p309 コルトの軍用拳銃(A Colt's service automatic): M1911(コルト・ガバメント)のこと。
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(2020-4-5追記)
小実昌訳(講談社文庫1988)であらためて読んだら、結構、色々な気づきがあったので、トリビアにかなり追記した。この物語はおそらく1927年3月のことだろう、というのが最大の発見。やはり小実昌訳はセリフ(特に女性の)が素晴らしい。地の文もシンプルで、漫画みたいな表現(p180のすり抜け等)も上手い。小鷹訳は楷書ぶりがちょっと堅苦しい。多分、全体の正確さは小鷹訳が上のはず。でも印象は小実昌訳が非常に良い。
現実の事件を思い起こすと、本書は絵空事とは正反対で、実際にあり得る世界だということに今更気づいた。(ギャングの抗争によるシカゴの大量殺人「聖バレンタインデーの虐殺」は、本書刊行と同月の事件。トリビアp89で触れているのに全く気づいていない…)
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(2020-4-12追記)
ついでに創元新訳(田口 俊樹2019)も読んでみた。語釈は小鷹訳に準拠している感じで、多分ほぼ完璧になってると思う。もっと言葉は省略出来るのになあ、という感想。小鷹訳でも小実昌訳でも気に入らないディック・フォーリーの口調が違和感あるところ(上のp264、p275)は、長いセリフのまま。全体的には、やっぱり小実昌訳サイコー。
なおBlack Mask連載とKnopf初版との全文比較をDon Herron主宰のWebサイト “Up and Down These Mean Streets”でTerry Zobeckがやり始めている。(まだ第1回目で単行本13ページまで… 先は長いが楽しみだ)
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(最後のおまけ)
ネタバレにはならないと思うので書いちゃうと、本書最後の文が素敵だ。
He gave me merry hell.

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