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ミステリの祭典

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悪魔の悲しみ
マリー・コレーリ

作家 マリー・コレリ
出版日2017年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 弾十六
(2021/12/31 06:28登録)
1895年出版。kindle電子版で読了。翻訳はリズム感のある堅実なもの。この訳者のは初めてでしたが値段に反して優れたものだと思いました。他にも古くて興味深い作品を翻訳しておられ、読むのがとても楽しみです。(値段が安いのがありがたいです…)
本作はベストセラーとして世界初、という称号が与えられているようですが、その名に恥じず、とても面白い作品。俗だなぁ!俗っぽいなあ!というのを非常に強く感じました。
でもこれ、シャーロック・ホームズやマーチン・ヒューイットと同時期なんですよ。同じ時代の英国を描いても、こうも違うか!という感じ。作者が女性ながら(女性だから?)女性に非常に厳しいのも面白い。そして自分のパロディを登場させちゃうのも素敵。人物評価や世界(といっても出版界と社交界ネタが多い)の記述が、まー素敵に薄っぺらい。そう言いたい気持ちはわからない訳ではないけど、軽薄なスキャンダル雑誌のレベル。でも、そういう俗悪さがこの小説の良さでもある。
ヴィクトリア朝英国のある一断面として必読の小説なんじゃないか、とも思いました。私は裏ヴィクトリア朝といえば『我が秘密の生涯』を推してたんですが、あっちはテーマが単純で繰り返しが多いからつまんないんだよね。こっちの方が断然面白い。シャーロック聖典を理解するにも、こーゆー小説がベストセラーになってた、という知識があれば、かなり興味深いと思います。
中心テーマは現代にも通じる深いもの。どの時代を舞台にしてもウケるネタだと思います。現代日本を舞台にしても、すぐドラマが出来そうなくらいの普遍性。ヴィクトリア朝の最新流行っていうのも案外現代性があったんだね、「新しい女性」ってセイヤーズの頃の専売特許じゃなかったんだね、という感慨がありました。
まあラストの方はああなって、こうなってで、ここら辺は当時の限界ってことでよろしいのではないでしょうか…

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