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ミステリの祭典

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毒のたわむれ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1958年03月
平均点5.33点
書評数6人

No.6 5点 クリスティ再読
(2023/09/14 03:19登録)
バンコラン物番外編みたいな本作だから、語り手のジェフ・マールくんは「バンコランがいてくれたら...」なんてよくボヤく。しかし、舞台は花の巴里じゃなくて、アメリカ・ニューイングランドのどこか(っぽい)。今更ながらカーはイギリス人じゃなくてアメリカ人だということを想起させる。
旧家の狭い家族関係の中で毒殺(未遂を含み)が連続することで、家族が疑心暗鬼に駆られて...という設定から、評者はクリスティの「ねじれた家」とか「無実はさいなむ」といった作品をどうしても連想してしまう。前半そんな陰鬱な雰囲気が素敵なんだよね。「毒殺」というのは、どこに何が入っているかわからない、という面で、実はかなり「怖い」ものなんだ。この「毒の怖さ」と家族の誰かが殺人者の「怖さ」が、結構よく出ていると思う。
けどまあ、後半は話が動かなくなって退屈する...と思ったら超展開みたいな事件も起きて??となるし、納得度の低い心理学的動機とか、無理して作った探偵像とか、後半になってまとまりを欠いてしまうのが大きな問題。クリスティのように「事件で解体する家族のドラマ」がしっかり描かれるというものでもないしなあ。
「残念な作品」でいいと思う。
(そういえば、「魔女の隠れ家」で、ロンドン警視庁の「ロシター総監」への言及がチラっと出る。カー的にはブリッジ的な作品なんだけど、前後に少しづつ重なり合っているわけだね)

No.5 6点 弾十六
(2021/08/09 09:09登録)
1932年出版。ジェフ・マールもの第5弾。JDCはマール語り手のバンコラン探偵ものを4作続けた後、語り手はそのままに、何故か探偵だけを変えた本作を発表。まあ私の妄想(『四つの凶器』をご覧ください)では、次作でこの探偵VSバンコランをやるつもりだったJDCならば当然の布石なんだが… (この構想が何故ポシャったのかは1933年に超有名シリーズ最終作が発表され、JDCが先をこされちゃったから… というのが私の妄想。同時期に似たような構想を思いついちゃうってあるよね。EQが1939年『そして誰も…』の連載を読んでガーン!となったのは有名な話)
実はジェフ・マールものは舞台が国際的なシリーズで、第一作パリ、第二作ロンドン、第三作ライン川、第四作はパリに戻っちゃったが、第五作は満を持してJDCの生まれ故郷米国ペンシルヴァニア州ユニオンタウン(名指しはされていないが「青年ワシントンがネセシティ砦で最初の一戦をまじえ(p18)」とかで明白)。JDCとしては米国が舞台の小説はこれが初めてだ。
それで第一印象は、登場する陰気な旧家の感じがJDCが嫌になって飛び出した米国の田舎名家っぽい雰囲気の反映なのか?と思ったが、あとから、仲の良かった叔父さん夫婦やいとこを小説に登場させた悪趣味な内輪ネタがなんじゃ無いか、と考え直したりした。「わしが被害者役か、ガッハッハ」とか「もっと私に良い役を振って頂戴よ」みたいな感じ。(ここはまたまた根拠のない私の妄想)
さて発表の1932年はWikiによるとJDCが英国女性Clarice Cleavesと結婚した年。ということは花嫁候補を連れて久し振りに里帰りしたJDCの姿も浮かぶ。小説の中で町一番の美女の名前はクラリッサ(Clarissa)だし… (だがその扱いはフィアンセに割り振る役としては最悪の部類。ここでも作者の悪趣味が発揮されている。JDCの役はクラリッサの夫、ツイルズだろうから自分も軽く笑い者にしてバランスをとっていると言えるか…)
マールの回想で12年前の若い頃の思い出が語られる。JDCの実年齢なら当時14歳。マールはもうちょっと歳上のイメージだが、ほんのちょっとだけ描かれる、往時の高校生、大学生のほろ苦い回想が本作では一番印象的だった。
ミステリ的には、探偵に魅力が薄く(細身の長身はJDCでは流行らない)、ストーリー展開もごたついた印象でメリハリに欠けている。強烈な謎も無いし、恐怖感もコレジャナイ風味。村崎さんの翻訳は実は悪くなくて、かなり堅実。でもバンコラン新訳四部作を完成させた創元さんにはぜひ新しい翻訳をお願いしたい。
さて、これで『三つの棺』を読む準備は完了。JDCがバンコランにどんな最後を用意してたのか(しつこいようですが妄想です)とても楽しみだ。
以下、トリビア。
p9 提琴軒(The Old Fiddle)♣️何故冒頭がウィーンなのか。JDCの新婚旅行はウィーンだったもかも。そして幻の『バンコラン最後の事件』(ur三つの棺)はウィーンを経てトランシルヴァニアを舞台にするつもりだった?(またしても根拠のない妄想です…)
p9 キュンメル酒(kummel)
p14 十二年前(a dozen years ago)…ダンスオーケストラ(あの頃はていねいな言葉が使われていた)が「ささやき」や「ダルダネラ」を演奏した(A dance orchestra—the polite term was then employed—played "Whispering" and "Dardanella.")♣️今なら「ジャズバンド」という無粋な言い方だが… という趣旨か。登場する二曲はいずれもYouTubeにオリジナルと思われる音源あり。翻訳には便利な世の中になったものですなあ。
Whispering: 1920年の流行歌。Malvin Schonberger詞、John Schonberger曲。録音Paul Whiteman(1920-8)、11週全米No.1ヒット。シングル盤のリズム指定はFox Trot。(昔のレコードにはリズム指定の表記が大抵付いていた。ダンスの伴奏音楽として捉えられていたのだろう)
Dardanella: 1919年の流行歌。Fred Fisher詞、Felix Bernard & Johnny S. Black曲。録音Ben Selvin(1919-11)、13週全米No.1ヒット。シングル盤のリズム指定はFox Trot。
p30 外国人の不思議な物の考え方と切り放すわけにはいかない—フランスのコーヒーやドイツの巻煙草と同じようなもの…(like the coffee of France or the cigarettes of Germany — inseparable from the weird minds of foreigners)♣️仏国コーヒーはファイロ・ヴァンスも大いにクサしていた(『スカラベ殺人事件』1930)が、ドイツ煙草というのはイメージに無かった。嫌な匂いなのか?
p32 一八七○のシェルラクのシェリー酒(Ferlac cherry, 1870)♣️ググっても出てこない。架空?
p36 ドービル(Deauville)でバンコランと一緒にテリア事件(the Tellier case)で働いたときに彼にもらった… ジッと見つめている目と「パリ警視庁」という文字が書いてある有名な三色のバッジ(the famous tricoloured badge, with the staring eye, and the words Prefecture de Police)♣️これは「語られざる事件」なのだろう。言及されてるバッヂを探したが合致するデザインが見当たらない。架空のもの?
p37 あの十一月の気味の悪い晩に、ロンドンのブリムストン・クラブでバンコランとぼくが… ジャック・ケッチと自称する悪党を見張っていた(in that weird November night at the Brimstone Club in London when Bencolin and I watched with Scotland Yard to trap a criminal who called himself Jack Ketch)♣️これはバンコランもの第2作『絞首台の謎』の一シーン。
p42 ゴルフもやれないし、ブリッジもできないが、それをとほうもなくよろこんでいます— それにダンスもできません(I can't play golf, and I can't play bridge, and I'm damn glad of it—oh, and I don't dance, either)♣️当時の社交の代表。作者も嫌いだったろう。
p45 ローゼンバーグ服とフランク靴(wore Rosenberg suits and Frank shoes)♣️服は1898年New Haven創業、1920年代New Yorkで知られていた男性服飾店Arthur M. Rosenberg Co.のものか。靴は1865年創業のFrank Brothers(Fifth Avenue in New York)か。老舗の衣装に身を包んだ、やや古めかしいキャラという感じ?
p58 フットボールのスター(football star)♣️サッカーではなくアメフトの方。大学フットボール対抗戦は1869-11-6 Rutgers対Princetonが最初。Webを探すとHaverford High Schoolのアメフト記録が1887年からあった。
p58 ベランダの蓄音機(ビクトローラ)が「だれも嘘などつきやしない」をうたっていた(A Victrola on the veranda was playing "Nobody Lied.")♣️ Nobody Lied (When They Said That I Cried Over You)は1922年の流行歌。Karyl Norman & Hyatt Berry詞、Edwin J. Weber曲。レコードはMarion Harrisの歌(1922-6-7録音Columbia)、Ross Gorman指揮The Virginiansのインスト”Fox Trot”(1922-6-2録音Victor)が見つかった。歌の方はWebに音源あり。
p64 子供の時分からいつだって白髪のおじいさんみたいだった(always the little white-haired boy)♣️お気に入り、という意味。
p71 電気椅子に送られる(send you to the electric chair)♣️ペンシルヴァニアでは1913年採用。1915〜1962に350人が電気椅子送りになった(うち二人だけが女性)。”Capital punishment in Pennsylvania”(Wiki)より。こーゆー項目があるのがWikiの凄いところだと思う。
p73 サイホン(syphon)… 炭酸水(soda-water)… 空き瓶を返すと戻りがある(You get a rebate on the ones you return)♣️瓶売りの炭酸水は1920から30年代に流行った、という。”Soda siphon”(Wiki)より。空き瓶を店に持って行くと小銭がもらえるシステムを実際に体験した人は減ってるんだろうなあ。
p80 まるであの殺人ごっこというゲームみたい(It’s like that game called Murder)… 誰かに『きみは有罪か?』ときく(say to somebody, 'Are you guilty?')… その人が『ハイ、そうです』と言って、そこでゲームがおしまいになる(the person will say, 'Yes,' and then the game will be over)♣️私が最近気になってる「殺人ゲーム」の起源、良いネタを拾ったので、いずれまとめを書きます。
p82 受取りに走り書きしてから、[メッセンジャー・]ボーイに1ドル(scribbled on the receipt and gave the boy a dollar)♣️米国消費者物価指数基準1931/2021(17.87倍)で$1=1970円。当時の1ドル銀貨はPeace Dollar、0.9 silver、重さ26.73g、直径38.1mm。チップとしてはちょっと多めに感じる。料金着払い?
p83 二つの心が一つになって鳴り響く(Two hearts that beat as one)♣️「訳注 19世紀べリングハウゼンの劇詩中の一句」とあるが、Webで調べるとU2の曲ばかり出てくるなかに、引用元無しでJohn Keatsの詩’Two souls with but a single thought, Two hearts that beat as one’からとしているのがある。正しくは独詩人、劇作家Eligius Franz Joseph von Münch-Bellinghausen(1808-1871、ペンネームFriedrich Halmで知られている)の劇“Der Sohn der Wildnis”(1842) Act 2から’Zwei Seelen und ein Gedanke, Zwei Herzen und ein Schlag’(英訳はMaria Lovell “Ingomar the Barbarian” (1870c)、グリフィスが1908年に映画化している)がオリジナル。この一節は”Bartlett's Familiar Quotations” 10th ed. (1919)に出てくるらしいので、結構有名な文句だったようだ。このタイトルの流行歌も二曲見つかった。1890年頃シカゴ出版、Harry B. Smith詞、J. E. Hartel曲。1901年シカゴ出版、Adam Craig詞、W. C. Powell曲、Jolly May La Reno歌。残念ながら音源データは見つからず。
ところでフリードリヒ・ハルムって日本で有名なのかな?と調べたら、作品『マルチパンのリーゼ婆さん』(Die Marzipanliese 1856)の紹介(水野光二1990明治大学)を見てびっくり。ハンガリーが舞台で主要登場人物がホルヴァートというのだ!そしてこの中篇小説はドイツ語による最初の犯罪フィクションとされているらしい… これで本作と『三つの棺』のつながりが見えた!というのは重度の妄想ですね。
p87 陰気なウィーン風の『おはよう』をとりかわし…『ピンク・レディ』から取ったあの歌を(exchange that doleful Viennese 'Guten morgen'… that song out of The Pink Lady)♣️”The Pink Lady”は1911年のブロードウェイ喜劇(312回公演)。台本・詞C. M. S. McLellan、作曲Ivan Caryll、フランス喜劇Le satyre(1907 Georges Berr & Marcel Guillemaud作)の翻案。このSatyre(仏Wikiに記載無し)はTheatre Royale, Parisで250回の公演を記録し、ベルリンとペテルスブルグでは公演が未だ続いている(NYTimes 1911-2-11記事)とあった。
p87「きれいなご婦人」♣️ “(My) Beautiful Lady”は上述のミュージカル第三幕の歌。オリジナルに近いYouTube音源あり。Gems from “The Pink Lady,” Victor Light Opera Co (1912)の2:00以降。インスト版は”The Pink Lady Waltz”のタイトルで新しい録音も多数ある有名曲。本作のBGMとして是非聴いて欲しい。
p93 きれいなご婦人、あなたにわたしは目を上げる(To thee, beautiful lady, I raise my eyes…)♣️上述の曲のリフレイン。
p108 探偵小説では、いつも本を取りに下へ行く(They always go downstairs for a book in the detective stories)♣️探偵小説への(メタ的な)言及は黄金時代の特徴。
p108 『アフロデイト(Aphrodite)』♣️古代アレキサンドリアを舞台にしたPierre Louÿs(1870-1925)の官能小説(1896)、英訳はAncient Manners(1900)、スキャンダルとなりVanity Fair1920年1月号に載ったDorothy Parkerの書評によると「入手がとても難しい本」だったようだ。
p125 昨夜の日附(Next appeared the date of last night)、一九三一年十月十二日(12/10/31)♣️後の方で、約二週間前が「11月28日金曜日(p137)」とあるので、ここは明白な誤り。本書の作中年月日は1931年12月10日。
p125 ラムベルトとグラーフシュタインを(Lambert, Grafenstein)♣️調べつかず。
p125 わたしを船でどこかスエズの東に送ってくれ(Ship me somewhere east of Suez)♣️キプリングの詩Mandalay(1890)の一節。
p135 ブランビリエ公爵(Marquise de Branvilliers)♣️原文では正しく「公爵夫人」、続くセリフに合わせた翻訳。
p149 ラフカディオ・ハーンから抜け出したような姿(You’re like something out of Lafcadio Hearn)♣️ Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things(1904 Houghton Mifflin)
p149 音楽コップ(musical-glasses)♣️グラス・ハープのこと。村崎さんお馴染みの直訳責め。
p149 サミットホテルのお雇い探偵(house detective at the Summit)♣️ ユニオンタウンの実在のホテル。Webに当時物の絵葉書あり。UNIONTOWN PA Summit Hotel & Golf Country Club Aerial view 1930's
p173 空気鉄砲(popgun)♣️原文では、おもちゃの鉄砲、の意味。
p177 黒い選挙バッジのような器具からかなり長い針金を巻き戻して取り出したふちなし眼鏡を手さぐりしながら、やっとそれを鼻にのせた(had unreeled a length of wire from an apparatus like a black campaign button, and fumbled with the rimless glasses until she got them on her)♣️状況がよくわからないが、ワイヤーが眼鏡についてて、使用するときに引っ張り出す仕組みなのかも。
p182 われわれは二度と♣️ここら辺の書き方は全然感心しないなあ。
p184 時計の向こうを一目見ることが出来たら♣️同上。
p184 誰でもよく知っている古いことわざ(a certain well-known Latin proverb)♣️酔っ払いの相手をする気になったのだから「酒に真実あり(In vino veritas)」か。
p197 ごまかし(eyewash)♣️ここは「出鱈目、駄法螺」という意味だろう。見当違いなだけで、誤魔化す意図は無いはずだ。
p190 週5ドル(five dollars a week)♣️月給4万3千円。あくせく働いてこれだけ、ということは凄い低賃金だ。
p212 クリーブランド♣️ふと思いついて調べると、この地に当時有名だった精神病院が見つかった。The Cleveland State Hospital(1852-1975)、最初はNorthern Ohio Lunatic Asylumという名称で、後にNewburgh State Hospitalとして知られた。
p241 ひねくれジャネット(Thrawn Janet)♣️R. L. スティーヴンスンの作品(1881)。
p241 五本の指のある野獣(The Beast With Five Fingers)♣️ W. F. Harvey(1885-1937)の短篇小説(1919)
p247 ブキャナン、アームストロング、ホッホ、ルイズ・バーミリア、バワーズ、ウエイト、バーサ・ギフォード、アーチャー夫人(Buchanan, Armstrong, Hoch, Louise Vermilya, Bowers, Waite, Bertha Gifford, Mrs. Archer)♣️有名な毒殺者たちのリストだが、調べるのが面倒なので参考まで原綴を書いておく。
p248 クラフト・エービング… わたし自身は、あの大将のたわ言を読むくらいなら、ヒマシ油を飲むほうがましだが(Krafft-Ebing. I'd sooner drink castor oil than read the chap's stuff, myself)♣️JDCの感想だろう。
p248アラゲニイの天使と呼ばれた陽気な貴婦人(the cheerful lady they called The Angel of Allegheny)♣️毒殺者らしいが調べつかず。

No.4 6点 レッドキング
(2021/03/31 12:36登録)
ゴシックの亡霊の様な館。「古き良き」価値信仰者の老いたる元判事と彼に支配される一族。連続する毒薬毒殺事件。「好きなミステリ作家は?」と聞かれれば「ジョン・ディクスン・カー!」と反射的に答えてしまうが、残念なことに彼の「毒殺好き」だけには共感できない。が、この作品の毒の差異による犯人特定ロジックは目からウロコだった。
※バンコランとフェル・メリヴェールをワンポイントで繋ぐこれ一作のみ登場の探偵、奇人青年:ロシター・・おそらく、金田一耕助御手洗潔の祖先筋なんだろな。

No.3 5点 ボナンザ
(2018/11/14 23:43登録)
意外な犯人とドタバタ劇、怪奇趣味というカーお得意の趣向が盛り込まれた一品。探偵役にあまり魅力がないのが残念。

No.2 6点 nukkam
(2016/01/06 13:02登録)
(ネタバレなしです) 1932年発表の長編第5作である本書はバンコランシリーズのワトソン役であるジェフ・マールは登場しますがバンコランは登場せず、パット・ロシターという青年が探偵役です。ロシターは本書のみの登場で、そのためかフェル博士シリーズ第1作である「魔女の隠れ家」(1933年)へのつなぎ的な作品のように位置づけられていますが本書は本書でなかなか個性的です。舞台をクエイル邸に限定し、登場人物もほとんどがクエイル家ゆかりの者に限定してクローズド・サークル的な世界でじわじわと緊迫感を盛り上げているのはカーとしては珍しいです(邸の見取図があればもっとよかった)。謎解き手掛かりやミスディレクションに気を配っており、本格派推理小説として十分に水準をクリアしています。ユーモア要素はほとんどありませんが最後に意外な「笑い」の理由が説明され、なぜタイトルに「たわむれ」を使っているのかが納得できました。

No.1 4点 kanamori
(2010/06/24 18:56登録)
これはパリ警視庁バンコランシリーズのスピンオフ作品と見るべきでしょうか、微妙な位置づけの作品です。
「蝋人形館の殺人」などで活躍したワトソン役のアメリカ人青年ジェフ・マールが登場しますが、探偵役はパット・ロシターという青年で、あまりぱっとしない魅力のない探偵でした。
ある判事邸での毒殺事件を描いていて、犯人は意外といえば意外ですが、その人物の造形は書き込み不足のように思えます。

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