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ミステリの祭典

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弾十六さんの登録情報
平均点:6.13点 書評数:459件

プロフィール| 書評

No.59 8点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2018/11/10 04:00登録)
JDC/CDファン評価★★★★★
フェル博士第10作。1939年出版。新訳(2016)で再読。
記憶に残ってたのは、実験で何か書いてるシーンがあって凄い傑作だった、という印象のみ。今回、新訳で再読(といっても40年ぶり)してみたら、それ以外はすっかり忘れていて、冒頭などは今回の新訳で初めて翻訳されたんじゃないのか?と疑う始末。犯人もトリックも全く覚えていませんでした。
強烈で異常なキャラが異常な状況を作り出すJDC/CDの独壇場。実験は素晴らしいの一言。(錯覚や錯視やロフタスが大好きです) 罠の連続が実にいやらしく探偵小説としては非常に上出来、なんですが、この話、エリオットの視点だけで主観全開で語ったらもっと盛り上がると思うんですよ。小説的に良いネタをぶつ切りにしてぶん投げるアンチノヴェリストJDCらしさですね…
ところで宇野先生の訳が悪いはずがない、と思って昔の文庫を見たら… セリフがとても古臭くて新訳は大正解ですね。
(これもフェル博士に歌と酒が付き物、という真理の発見前だったのでトリヴィアの記録はありません。歌が出てきた記憶もないのですが…)


No.58 6点 アデスタを吹く冷たい風
トマス・フラナガン
(2018/11/10 03:36登録)
テナントものだけなら7点。ハヤカワ文庫で読了。
なぜテナントものが発表順に並べられていないのか、よくわからないのですが… 是非、発表順に読んでいただきたいと思いました。(アデスタ-良心-獅子-しきたりの順)
テナントものも「玉」も異常な状況が効果的、でもファンタジーとして楽しむべき作品群だと思います。いずれもバクチ要素が強く、現実世界では成立し難いのではと感じました。(なので現代ものは精彩を欠いている感じです)
「玉」p272であっさり間違いと切り捨てられている「14世紀」は架空のイタリア語原文のクァトロチェント(1400年代)を英訳したらうっかり間違えたテイで…という作者のお遊びかも。「陪審員」p209「高性能のライフル猟銃」は本当は「高速の狩猟用ライフル弾」かな?とちょっと疑っています。(原文未参照。宇野先生で銃器関係の怪訳を見たことがあります…)


No.57 5点 猫は夜中に散歩する
A・A・フェア
(2018/11/09 05:02登録)
クール&ラム第8話。1943年8月出版。ハヤカワ文庫で読了。
実は第7話や第9話と繋がりが悪い本作。ラム君は「休暇でヨーロッパ(He's in Europe, on vacation)」で不在、バーサはラムが帰って来るまで頑張ろう、と殊勝なんですが、第7話と第9話では明確に「軍務で不在だった」となっています… そしてセラーズ刑事が再び登場しますが、バーサとの関係性も変なんです。(第9話以降、本作が無かったような感じになっています)
バーサひとりの探偵家業が前作に引き続き始まります。コウモリ事件への言及があり、すぐあとの事件であることがわかります。日付は「19--年4月8日」とボカされてますが… (この日は木曜日と書かれてるので該当は1943年なんですけどね) 「8:45って表示してるけど実際は7:45のくせに」とぼやくバーサのセリフを翻訳ではUSA標準時が4つあるためのジョーク?として注釈していますが、これは戦時時間(1942年2月から実施、時計を1時間早める省エネ策)のことだと思います。筋立てはいつものように起伏が多く、解決は結構複雑です。(大ネタを割っているのでコミさんの訳者解説は先に読まない方が良いですね)


No.56 7点 検事封を切る
E・S・ガードナー
(2018/11/09 04:41登録)
ダグラス セルビイ第7話。1946年2月出版。Saturday Evening Post誌連載(1945-12-1〜1946-1-12)
招集され陸軍少佐となり検事を辞職したセルビイ、休暇を利用して久しぶりにマディスン シティに帰還。白いくちなしの花が事件を呼びます。A.B.C.の大型セダンは防弾仕様。戦時色はタクシー不足、不要不急の旅行制限。マディスン ホテルのマネージャーはノーウォークで、第1話のカッシングと違う人物。警察署長ラーキンは最近協力的、保安官レックスは後任の検事に困り顔。法廷シーンは民事訴訟。アイネズがA.B.C.と争いますが、昔風の田舎弁護士が邪魔をします。セルビイは飛び入りで見事な尋問。時間が切迫し、たった二つの質問しか許されない状況で、パズルのピースがぴたりと嵌る解決が鮮やかです。


No.55 8点 危険な未亡人
E・S・ガードナー
(2018/11/09 04:14登録)
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第10話。1937年4月出版
吠える犬の法廷を見て気に入ったという葉巻をふかす老婦人。このキャラが良い。わたし的に依頼人中ナンバーワンです。メイスンは賭博場のバーでトム・アンド・ジェリーを注文。事務所の入口ドアの文字はPERRY MASON (改行) ATTORNEY AT LAW (改行) Entrance。ドレイク探偵社の探偵システムの裏話(1日8ドルの日当)が興味深い。
騙しやハッタリに満ちた物語で、メイスンの大胆な行動とぬけぬけと押し通す鉄面皮がイキイキと描かれた傑作。
銃は38口径オートマチック(メーカー不明)と45口径オートマチック(多分Colt M1911)と謎の32口径スミス・アンド・ウェッソン・スペシャルが登場。最後の32口径S&W「スペシャル」というのは発言者が嘘をついている、ということを強調してるのでは?と最近気づきました。(38スペシャルはあるけど32スペシャルは存在しません)


No.54 6点 ピカデリーの殺人
アントニイ・バークリー
(2018/11/06 05:09登録)
1929年出版。
非常にリアリティ溢れる流れが良い(チタウィック氏が探索に乗り出す辺りまでが最高)ですが、だんだん後半になるにつれて精巧な作り物めいた状況が現れ現実感を失っていくのが技巧派探偵小説の欠点ではないかと思いました。(だからリアルを求めて倒叙形式になっていったのかな?アイルズを再読してないので大きなことは言えません…) 小ネタは結構驚きありですが、大ネタの方は途中で見当がついちゃいますよね。


No.53 5点 孔雀の羽根
カーター・ディクスン
(2018/11/05 20:50登録)
JDC/CDファン評価★★★☆☆
H.M.第6作。1937年出版。創元文庫(1980年)で読みました。
マスターズが再び不可能犯罪に出会う!という冒頭は素晴らしいのです。中盤の小ネタも効いています。珍しくキャラ立ちしてる登場人物もいます。でも解決篇は残念な出来でした。手抜かりや見落としを期待する不可能犯罪では面白くありません。いつものように2回目の犯行はやっつけ仕事。(ただし二度目の予告からの展開は素晴らしい) p304の解説は「そんなの知らねーよ!」と全員がツッコみを入れる内容ですね。
銃はレミントン六連発拳銃1894年製が登場。Remington Model 1890 New Model Army(弾は.44-40 Winchester)でしょうか。
p173 旧式のレミントン用弾薬で<ダック>: 不明。
p36「トールボットの二人乗り自動車」はTalbot(タルボ)のことだと思います。
p203 フリート街裏手の聖ブライズ教会(St. Bride’s Church): この近くにH.M.お気に入りの酒場<グリーン マン>があります。

<追記: 2018-11-29>
チェスタトン「奇商クラブ」の最初の方に、
…「十個の茶碗」(Ten Teacups)については、むろん一言の解説もあえてするつもりはない。(語り手のクラブ遍歴について回想する部分。「十個の茶碗」とは社交クラブの名前)
これが原題の由来ですね。さっき再読していて気づきました。


No.52 7点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2018/11/05 00:20登録)
JDC/CDファン評価★★★★★
フェル博士第9作。1938年出版 創元新訳(2012)で読了。
四十年前、創元推理文庫の旧版(中村 能三さん)で読んで、あんまりパッとしない話だな〜、という印象だったのですが、たまたま古本屋で新訳を見つけ再読。うわぁ冒頭から素晴らしい! これは実は凄い傑作だったの? と思ったら中だるみでちょっとガッカリしたものの、ラストは怒涛の超展開。いや〜JDCらしい怪傑作ですね! で読んでるうちに「中二病」が浮かんだんです。だってタイタニック、自動人形、悪魔信仰ですよ。秘密めかした態度とか、不器用な恋愛描写もまさに思春期男子。
ところでノウゾーさんの訳が悪いはずがない、と思って昔の文庫を見たら… 文章やセリフがとてもぎこちないですね。(本作をキッカケにJDC/CD再読が始まりました。なのでトリヴィアコーナーはありません。歌が出てきたかなぁ)


No.51 6点 どもりの主教
E・S・ガードナー
(2018/11/04 17:52登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第9話。1936年9月出版。ハヤカワ文庫で読了。
22年前が1914年と明記。舞台はLAとSF。レインコートで雨に濡れる登場人物の姿が印象的(皆、傘をささない) ドレイクは風邪をひき、p.125でAge before beautyとのセリフ、やはりメイスンより年上?自動車はステップが立派な30年代のもの。メイスンの冒険は控えめ、バーガーもまとも、ホルコム出番なし。誰もが嘘をついているように思える技巧的な筋立てですがギリギリ成立し、パズルのピースが上手く嵌ります。
ハヤカワ文庫では、ラスト後、助手ジャクスンが顔を出し第11話に続く…実は差し替えで米初版はちゃんと第10話に続きます。
銃は32口径コルト自動拳銃(M1903ですね)とメーカー不明の38口径リヴォルヴァが登場。


No.50 5点 地下室の殺人
アントニイ・バークリー
(2018/11/04 09:47登録)
1932年出版。
無駄な明るさが無くなってちょっと寂しいです。二段構えの導入部というのはとても上手い工夫だと思いましたが、(作中人物が作中人物をモデルにした作中小説!) 肝心の推理部分にアクロバティックな味が薄く、結末もモヤっと感が残りました。アイルズに栄養を取られちゃったのかな?原文にはおなじみの日付の矛盾があり、翻訳では訂正されてるようです。


No.49 6点 死者はよみがえる
ジョン・ディクスン・カー
(2018/11/04 09:36登録)
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士第8作。1938年出版。創元文庫(1972)で読了。 HPBちょっと参照。
美食に飽きた金持ちが何か変わったものない?と注文して偏屈なシェフ出が出してくるようゲテモノ料理、それがJDCの諸作品なんだと思います。
結末までは本当に素晴らしいのですが、最後は唖然とさせられました。フェル博士のみっともない言い訳(p344)が作者の後ろめたさを物語っています。
主人公はJDCの分身(南アフリカ=北アメリカ)で、人生の苦労なんて無意味と主張したり、「彼は前から人間を観察していないといわれてきた男だった」とか作家にあるまじき人物像を暴露されています。名言が一つ: beware of people who make you laugh, because they’re usually up to no good.(p140) 橋本訳ではハドリー(ぼく)とフェル(きみ)の関係が近すぎる感じですが、二人の関係性を思えば、これくらいが本当は妥当なのかも。(最初、HPBで読み始めたのですが、何か読みづらくて、創元文庫に切り替え。延原信仰がちょっと揺らぎました。)
フェル博士のお気に入り事件は「うつろな男」「ドリスコル殺人」「ヴィクトリア女王号」と自白。
ところでH.M.第3作「赤後家」(1935)に出てくる「ロイヤル スカーレット事件」は本作と関係あり?「ピカデリイのロイヤル スカーレット ホテルで起こった、アメリカの富豪リチャード モーリス ブランドン殺害事件…〇〇(伏字)というトリック…公刊予定…」H.M.が手こずったと明言されています。(ゆるく解釈すれば、〇〇は本作と合致します)
さて恒例の歌とトリヴィアのコーナーです。
p10 パターソン夫人「いったいなんの役に立つのよ?」(Mrs. Patterson: ‘What’s the use? It’s all a pack of lies.’): 何かの引用?それとも架空のパターソン夫人?
p121 「進め! 牧童」という新しい歌を披露(introduced the novel note of ‘Ride ‘em, cowboy!’): 同名の西部劇映画(1936)あり。
p122 夢中でバラッドを歌っている…(singing a ballad whose drift I need not repeat.): 口をはばかる内容らしいのですが題名が書かれていません。
p262 ジェニーはぼくにキスをした(Jenny kissed me when we met): a poem by the English essayist Leigh Hunt (1838) JDC作かと思ったら丸ごと実在の詩の引用でした。
銃器関係ではp154、12口径の散弾銃(a twelve-bore shotgun): 口径の前の数字は直径の意味となってしまうので12番・12ゲージと訳すのが正解。boreは英国表現で米国のgauge。(延原訳では12番の猟銃)


No.48 7点 蝙蝠は夕方に飛ぶ
A・A・フェア
(2018/11/04 08:51登録)
クール&ラム第7話。1942年9月出版。ハヤカワ文庫で読了。
ラム君は海軍に行ってしまい、バーサひとりで探偵家業、結構身軽に動き回ります。文体は三人称です。今回の依頼人は盲人のおじいさん。事件に関係ある日付として1942年1月25日が明記されています。(灯火管制用の懐中電灯が戦時を思わせます) 刑事フランク セラーズは今回が初登場。効果的に手紙を使い、起伏の多い展開は相変わらず。人物描写も愉快です。


No.47 5点 検事方向転換す
E・S・ガードナー
(2018/11/04 08:46登録)
ダグラス セルビイ第6話。1944年1月出版。Country Gentleman誌連載(1943-11〜1944-3)
犬を連れた検事。名前を当てたのはパーキンス。傘を持ち歩くのは男らしくない。戦時色が1カ所だけ、コーヒーは贅沢品で配給券のことを心配するセルビイ。A.B.C.の邸宅初登場。召使いはフィリッピン人です。法廷シーンはありません。ガードナーらしく起伏に富んだ話ですが、A.B.C.との対決もあまり盛り上がらず、解決は唐突です。


No.46 6点 夢遊病者の姪
E・S・ガードナー
(2018/11/04 08:37登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第8話。1936年3月出版。ハヤカワ文庫で読了。
Jackson2回目の登場。「事務員」と訳されていますが原文ではlaw clerk(弁護士の助手、書記、事務員、法修習生などの意味)と表現されています。(前作ではyoung lawyer) 見張りや尾行もこなしており、後年の「前例至上主義者」の弁護士とは別人のような活躍。受付のスミス嬢と呼ばれた女性は、この作のみの登場。ブラックストーンの大理石像(お気に入りの帽子掛け)が初登場。物語の舞台がカリフォルニアの実在の地名(ハリウッドとサンタ バーバラ)なのはシリーズ初。謎がうさんくさくて(夢遊病って…)メイスンの行動や策略も控えめ。ホルコムやバーガーとの掛け合いも低調。ちょっとヒネリの効いたネタですが…
なおサッジャー博士の「夢遊病と月光」Sleep Walking and Moon Walking: A Medico-Literary Study by Dr. J. Sadger of Viennaは架空の書物ではなく、独初版1914年、英訳1920年の実在本。


No.45 5点 パニック・パーティ
アントニイ・バークリー
(2018/11/04 01:11登録)
原作1934年 翻訳2010年
無邪気な明るさが消えた後期シェリンガム・シリーズ。ここでは、その憂鬱な雰囲気が不気味な旅にぴったりです。悪趣味なホストが謎のクルーズに誘い、島への上陸から次の朝に至る流れは素晴らしいのですが、その後の進展はいささか冗長で小ネタがあまり冴えていない感じ。でも結末はバークリーらしい出来栄えで満足です。時事ネタで「国際連盟と日本」が出てました。


No.44 6点 アラビアンナイトの殺人
ジョン・ディクスン・カー
(2018/11/04 00:45登録)
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士第7作 1936年出版。創元文庫(1961)で読みました。
急に思いついたのですが、この作品、荒木飛呂彦先生に描いてもらったらぴったりだな〜と。作者JDCの脳内にはそんなマンガ的イメージが常にあったんじゃないかな?冒頭から異常な設定が次から次に出てくるので、もーどーでもいいや、となってしまうのが欠点。投げ出さずに読めば、段々と解決してパズルのピースがきれいにはまってスッキリ、結構面白い作品です。相変わらず誰が誰だかわかりにくい人物描写下手なJDCで、舞台の位置関係もわかりにくいので図面が必要ですね。(原書にはついてたのかも)
さて恒例の歌のコーナーです。(フェル博士には酒と歌がつきもの) 原文が手に入らなかったので調べが行き届いていませんが…
p83 ミュージックホールの流行歌≪ミイラは死んでも生きている≫ : 不明
p92 おれたちゃカーノの兵隊さん: Fred Karno’s Army 第一次大戦時に流行。Webに音源あり。
p99 ≪水夫のバーナックル ビル≫: Barnacle Bill the Sailor、p101「きれいな娘のいうことにゃ」がその歌詞。WebにHoagy Carmichael(1930)他あり。
p130 ≪やつは陽気な男だから≫: For He's a Jolly Good Fellowのこと?
p133 ≪獣たちは二匹ずつ歩いていったよ≫: The Animals Went In Two By Two(ノアの箱舟の歌)のこと?
p136 ≪月明かりの入江≫: Moonlight Bayのこと?
余談: 登場人物のセリフを借りて超有名作品(1934)の悪口が書かれています…


No.43 7点 検事鵞鳥を料理する
E・S・ガードナー
(2018/11/04 00:32登録)
1942年1月出版
ダグラス セルビイ第5話。Country Gentleman誌連載(1941-9〜1942-1)
赤ん坊の世話をする検事セルビイ。A.B.C.再び登場、セルビイはその才能に魅せられます。ボブ テリイは保安官補に昇進。法廷シーンは検屍審問。ブランドン夫人にせっつかれ、セルビイは経略をたて、真相に至ります。解決は鮮やか。
銃は保安官の牧場時代の古い45口径、ブランドン夫人も銃は得意のようです。


No.42 7点 梟はまばたきしない
A・A・フェア
(2018/11/04 00:21登録)
クール&ラム第6話。1942年6月出版 ハヤカワ文庫で読みました。
ニューオリンズの騒がしい朝から物語は始まります。ジンとコーラが美味しそう。作中時間は三年前が1939年と明記。ヒトラーが殺人事件を警察に通報したり、絹のストッキング不足が言及されたりで時代を感じさせます。起伏の多い展開は作者お手の物、最後は慌ただしくラム君が旅立ちます。
銃は38口径のリボルバー「ポリス スペシャル」詳細不明。小実昌さんの脱線だらけの訳者あとがきも良いですね。


No.41 8点 門番の飼猫
E・S・ガードナー
(2018/11/04 00:08登録)
ペリー ファン評価★★★★★
ペリー メイスン第7話。1935年9月出版。Liberty連載(1935-5-15〜9-17) ハヤカワ文庫で読みました。
カール ジャクソン初登場。(one of his assistants, young lawyer) バーガー検事とのやりとりから「義眼」のすぐ後の事件です。冒頭2章ですぐに戦闘モードに入るメイスン、この流れが良いですね。本作はデラがシリーズ中随一の大活躍。(メイスンとデラの歳の差about 15と言う場面あり、ただし冗談めかしているので事実では無いかも) 休暇はN.Y.K. Line(日本汽船)でホノルル、ヨコハマ、コーべ、シャンハイ、ホンコンへ…とデラがメイスンに勧めていますが、これは後年実現されます。ちょっと腕を上げたホルコムとのドタバタ。とてもまともな判断力のバーガー。メイスンの策略は結構合法的。法廷では意外な証人が召喚されます。ところでFranklin teethはベンジャミン フランクリンがつけてたような古い義歯という意味?


No.40 6点 パンチとジュディ
カーター・ディクスン
(2018/11/03 23:52登録)
JCD/CDファン評価★★★☆☆
H.M.第5作。1936年出版。HPB(1959)で読みました。
当時の国際情勢を反映したようなスパイ・スリラーかと思ったら不運なスコットランド人ケンが酷い目にあう冒険ドタバタ劇。結構起伏に富んでいて楽しい読書でした。ネタには皆さんガッカリされているようですがJDC/CDとしては上手く扱っている方だと思います。
原文が手に入らなかったので調査が全く行き届いていませんがトリヴィアです。
p170 そしてメクリン教会の塔から半の時鉦が鳴り渡った/そしてジョリスが沈黙を破った、『まだ時間はある!』: 何かの詩?らしいのですがわかりませんでした。
p174 アンニイ ローリイ: Annie Laurie 詞William Douglas 曲Alicia Scott(1834/5) The song is also known as "Maxwelton Braes".
p201 『オイ、気取り屋』H.M.は引用した。: 何の引用か不明。

(2018-11-11追記)
And from Mecheln church-steeple we heard the half-chime,
So, Joris broke silence with, ‘Yet there is time!'’

How They Brought the Good News from Ghent to Aix
a poem by Robert Browning (Dramatic Romances and Lyrics, 1845)
かなり有名な詩らしいですね。

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