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ミステリの祭典

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クイーンの定員Ⅰ
各務三郎編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1984年05月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 弾十六
(2018/12/30 04:41登録)
1951年出版のEQコメント付き傑作リスト。日本版はそのリスト(1969年改訂の#125まで。EQコメントは一部のみの翻訳、各務 三郎による解説付き)と、リストに挙げられた短篇集からセレクトした短篇を収録。(ハードカヴァー1984年、全3巻; 文庫1992年、全4巻)
Ⅰ(文庫版)の収録作品は、[⑹は文庫版のみ収録]
⑴王妃の犬と国王の馬(ヴォルテール)、⑵盗まれた手紙(ポー)、⑶人を呪わば(コリンズ)、⑷舞姫(トマス B. オルドリッチ)、⑸世にも名高いキャラヴェラス郡の跳び蛙(トウェイン)、⑹バチニョルの小男(ガボリオ)、⑺クリーム パイを持った若い男の話(スティーヴンスン)、⑻赤毛連盟(ドイル)、⑼サミー スロケットの失踪(モリスン)、⑽罪の本体(ポースト)、(11)ダイヤのカフスボタン(グラント アレン)、(12)代理殺人(ボドキン)、(13)ディキンスン夫人の謎(ニコラス カーター)、(14)ラッフルズと紫のダイヤ(ホーナング)
私は単行本版で読んでいます。(文庫を発注したつもりだったのに…) アンソロジーを一気に読むのは無理。暫定評価を5点として、各作品を読了後に更新してゆきます。なお初出はFictionMags Index調べ。
(2018-12-30記載)

⑴The Dog and the Horse by Voltaire (単行本1747、EQMM 1954-10) 小鷹 信光 訳: 評価5点
推理力の高い知恵者の話は古今東西にあるはず。(一休とかナスレッディンとか) ただし大抵は作者不詳。作者が明確なのはこの作品が初ということか。知恵は権力から危険視される、という常変わらぬ真理。(今、ふと思ったのですが、英国TVシリーズSherlockの最終シリーズは、そーゆーテーマにすれば良かったのにね。)
金400オンスは現在なら5600万円相当。(ここ数日相場が荒れてるので1トロイオンス1300ドルで換算)
(2019-8-7記載)

⑵The Purloined Letter by Edgar Allan Poe (1844) 深町 真理子 訳: 評価5点
Purloinと言えば、この作品が連想されるめったに使われない単語とのこと。「偸まれた」としてる翻訳もあり。ドイルの『ボヘミア』がこれの変奏曲というのは指摘されるまで気づきませんでした。デュパンの解説が非常に長くてびっくり。愉快な話ですがこの程度のトリックで本当に警察の徹底探索から逃れられたのか。
報酬五万フランの換算は、作中時間が不明確(18--年秋)ですが、金基準(1840)で1フラン=0.1997ドル、米国消費者物価指数基準(1840/2019)で29.44倍なので、50000フランの現在価値は3109万円。
(2019-8-8記載)

⑼Martin Hewitt, Investigator. II. The Loss of Sammy Crockett by Anon. [Arthur Morrison] (Strand 1894-4、雑誌中2番目の小説、挿絵Sidney Paget) 山本 光伸 訳: 評価5点
マーティン ヒューイットもの。華のない探偵です。最初の2篇は作者名無しで掲載されました。タイトルにもなっている中心人物の苗字は雑誌では上記クロケット、単行本でThrockettに変更しているようです。ストランド誌のこの号は広告を除く全内容がWeb公開されています。ちぎった手紙の切れ端の図がちゃんと掲載されていました。英国の田舎の賭けレースの裏側が興味深い。探偵ものとしては平凡だが語り口で読ませる。
(2019-5-16記載)

⑽The Corpus Delicti by Melville D. Post (単行本1896、初出誌不明。単行本書き下ろしとは考えにくいのですが…) 池 央耿 訳: 評価6点
悪徳弁護士ランドルフ メイスンもの。気持ち悪い描写があるのでご注意。この結末でいいのかなあ。(まー金持ちってのは鈍感ですからね)
(2018-12-30記載)

(11)An African Millionaire, II. The Episode of Diamond Links by Grant Allen (Strand 1896-7、雑誌中5番目の小説、挿絵Gordon Browne) 池 央耿 訳: 評価6点
クレー大佐もの。シリーズ第2話。(第1話「メキシコの予言者」は『シャーロック ホームズのライヴァルたち①』(早川1983)に収録)
50シリング程度(消費者物価指数基準1896/2018で129.21倍。現在価値約45000円)のまがい物?に300ポンド(約545万円)出そう、と平気で言うのが大金持ちの嫌らしさ。(しかも本当の価値は3000ポンド以上と見抜いている) ネタは単純明解ですが、面白い話に仕上げています。(まー金持ちってのは鈍感ですからね)
(2018-12-30記載)

(12)The Murder by Proxy by M. McDonnell Bodkin (Pearson’s Weekly 1897-2-6、ただし雑誌掲載時の探偵はAlfred Juggins。単行本1898でPaul Beckに変更) 深町 真理子 訳: 評価5点
親指探偵ポール ベックもの。元のジャギンズ中年探偵の活躍はシリーズ第1作目が『シャーロック ホームズのライヴァルたち①』(早川1983)で読めます。こちらはシリーズ第3作、単行本では4番目の話。作中で言及されてる「サザン公爵のオパール」事件はシリーズ第2作By a Hair’s Breadth(単行本3番目)です。
8月12日の事件。「年千ポンドの手当」は英国消費者物価指数基準(1897/2019)で128.9倍、現在価値1736万円。本作のネタは乱歩先生が「この着想はアメリカの古い探偵作家P…と、フランスのL…が使っている」と書いてるやつ。実は本作が一番早い発表。説明過多になってないのが良い。
銃は「古い“マントン”の先込め銃(old ‘Manton’ muzzle-loader)」が登場。「撃発雷管(caps)… 火薬をニップルに振りいれた(had shaken the powder into the nipples)…」とあるのでパーカッション式の狩猟銃です。(ニップルにキャップを被せて発射準備完了。撃鉄がキャップを叩くと点火し弾丸発射。ニップルに入れたのは導火用の火薬と思われる。キャップを外すと発火しません。) Joseph Manton (1766-1835)は英国ガンスミスで猟銃の改革者、とのこと。「なまじ照準器つきのなんかより、よっぽど強力だし、遠くへも飛ぶぞ。それに、二発撃つごとに掃除をしなくても、錆が出る心配もない」元込め式の現在の猟銃と比べると色々利点があったのですね。よく考えると、古い銃なら発火機構が表に出ているので… (以下自粛)
(2019-8-7記載)

(14)A Costume Piece by E. W. Hornung (Cassell誌1898-7) 浅倉 久志 訳: 評価5点
ラッフルズもの。単行本の第2話。ルパン三世みたいなノリ。言及されてる「ポンド街の冒険」(第1話The Ides of March)はどんな話なのか気になります。
p298 [それぞれ]二万五千ポンド(fifty thousand pounds): 二つで五万ポンド。英国消費者物価指数基準1898/2020で130.83倍、25000ポンド=4億6千万円。
p299 ばかでっかい拳銃(a whacking great revolver!)… 弾丸で自分の名前を書く(write his name in bullets): シャーロックの狼藉はMusgrave Ritual(Strand 1893-5初出)。名前(イニシャル?)を書くには、拳銃だと一度にまとめて6発しか撃てないので、かなりの手間だと思います。
p315 十シリング: 9223円。馬車の御者への手間賃。
(2020-1-5記載)

No.2 7点 mini
(2012/11/12 09:59登録)
まず最初に、そもそも”クイーンの定員(Queen's Quorum)”って何だ?という問題から
これは作家だけでなく評論家・編集者、そしてミステリー書籍収集家(特にダネイ)としての存在も大きいエラリイ・クイーンが、膨大なコレクションの中から、ミステリー短編史上の里程標たる短編集を選び簡潔なコメントを付したものである
あくまでもアンソロジーではなくて単なるリストに過ぎない
しかも”簡潔なコメント”と言ったが、本当に簡潔なんだよな(笑)、もう少し語ってくれよ(さらに笑)、そもそも各短編集の収録作すら載ってないし
コメントは簡潔だが各短編集には、”内容”、”歴史的重要性”、”初版本の希少価値”の3つの要素を表す記号が付けられている、作品によって選ばれた理由が内容重視だったり希少価値だったりするわけだ
その中で注目すべき要素は3番目の”初版本の希少価値”である
もちろんクイーンが選ぶのだから、例え超レア本であっても内容・歴史的重要度が選ぶに値しないものは流石に自重?したのか避けているが、でも選ばれた中には”これの初版本持ってる俺ってすげ~だろ”、みたいなクイーンの自慢が垣間見えるのだよなぁ(笑)

この各務三郎編のアンソロジーは、言わばリストに過ぎなかったクイーンの定員をアンソロジーに仕立てたまさに夢のようなアンソロジーなのだ
特に舌足らずだったクイーンの原本コメントを補完するかのように、収録作の調査や詳細な解説が加えられており、資料的価値だけなら10点満点を付けられる代物なのだ

それにしては中途半端な採点だなとお思いの貴方、そうなんです、アンソロジーとしては不満なんだよなぁ
この第1巻目では、オルドリッチ「舞姫」やガボリオ「バチニョールの小男」やマクドネル・ボドキンの親指探偵ポール・ベックものなど他では纏めては読み難い短編も多いのでまだマシなんだけど、2巻目以降ではkanamoriさんも御指摘になられていた問題点が鮮明に出てくるんだよね
アンソロジーは何を選んだか、というのが評価の大きな要素だと思うけど、つまりねえ、ポーやドイルみたいなのを入れる必要が有ったのかという事だよね
これが例えばね、創元文庫の『世界短編傑作集』みたいな基本図書的な志向ならば入れるべきだと思う、創元文庫では他の短編集との被りを異常に気にしているが、あの創元の編集は良くない
しかしこの『クイーンの定員』みたいな目的こそ、他でも読めるものは省いて、一般的に知名度の低いものや他のアンソロジーでは読めないものを優先すべきだったんじゃないかなぁ
もしかすると翻訳権上の問題が深く関わっていたのかな

No.1 6点 kanamori
(2011/01/03 11:23登録)
「クイーンの定員」(Queen's Quorum)とは、エラリー・クイーンが選定した歴史的に重要なミステリの個人短編集のリストです。
その125冊に及ぶ短編集の中からのダイジェスト版が、本書以下4冊にまとめたアンソロジーです。年代順に収録されていますが、”歴史的に重要な作品イコール面白い作品”でないのは止むを得ないところでしょうか。
第1集では、ポオ"Tales"から「盗まれた手紙」、ドイル「赤毛連盟」などの有名作のほか、ポオより100年以上前に書かれたヴォルテールの珍品などが楽しめます。

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