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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.27点 書評数:888件

プロフィール| 書評

No.828 7点 ずっとお城で暮らしてる
シャーリイ・ジャクスン
(2024/05/19 20:42登録)
第二人称の狂気ホラーが、Who(見え透いてるが)ダニットミステリ踏み台に、第一人称の狂気へ反照し、グリム童話風ファンタジーとして、限りなくメルヘンに近づく・・素晴らしい。
※当サイト見るまで、この作家の名前すら知らなかった(^^;) 興味そそられ、さっそく・・・


No.827 6点 逃げる幻
ヘレン・マクロイ
(2024/05/18 12:53登録)
こないだ、クリスチアナ・ブランド「薔薇の輪」を、なぜか途中から、ヘレン・マクロイ作品と勘違いして読み、「え、こんなポップだったっけ? マクロイ・・」と訝しく思い、「あっ、そうだブランドだった」と気付き(^^♪・・・。 で、この作品、そうだよ、この薄ドンヨリした重さこそマクロイだよ。40年代後半作の例に漏れず、これまた対独(ナチス)もの。美しくも淋しいスコットランド荒地を舞台にした、人物消失と密室殺人(両ネタ共ズッこけレベルだけどね)に、洗脳操りネタ付きWho(ダニット+正体)ミステリ。

※しかし、なんちゅうか、ナチスを反西洋側に弾き、古代西洋から耶蘇教、ルネッサンス・産業革命・近現代開花文明に至る人類王道を、西洋文明の道に擬える傲慢さ能天気さ。ナチズムだって西洋文明のリッパな落し子だろが・・。


No.826 7点 薔薇の輪
クリスチアナ・ブランド
(2024/05/13 21:44登録)
われながら何をボケたか、読み始めて、ヘレン・マクロイの作品読んでるって思い違い(表紙見返しゃわかんだろ ^^;)を起こしてしまい、ん?ヘレン・マクロイって、こんなにブラックユーモア弾かせる人だったっけ?て位、ファンキーに飛ばした語り口で・・そりゃ、クリスチアナ・ブランドだからね・・「唇の捩れた男」「闇からの声」スパイスも漂い、べりーぐっどよ。


No.825 6点 太陽がいっぱい
パトリシア・ハイスミス
(2024/05/08 21:38登録)
映画「太陽がいっぱい」、サスペンスと言うよりアランドロン映画で、鬱屈した超美形青年の残酷で切ないピカレスク浪漫だった。で、この原作の方の主人公、恵まれない環境を、器用すぎる・・経理・営業から執事・ジゴロ・食客・詐欺に至る・・溢れる才覚で、乗り切って行く青年だが、ただ飽きっぽい。一方、相手方の大富豪ボンボン、映画では、如何にもな高慢俗物青年だったが、ここでは、主人公にシンメトリカルなくらい複雑な感性持った疑似アート青年。あまりにも名作すぎたあの映画が無ければ、如何にも作者らしい、屈折した同性愛悲劇として読めたろう。
※はるか昔の対談で、映画評論家の淀川長治が「この映画、史上初のホモ映画なんですねェ」とドヤ顔で自慢して、対談相手の吉行淳之介が「え?まさか・・」て感じで驚いていたが、あの頃、日本ではまだ、この作者の事は知られていなかったんだろな。


No.824 6点 暗黒童話
乙一
(2024/05/06 06:06登録)
初長編とな。書いたの二十歳過ぎ頃とか。「早熟の天才」タイプなんだろが、その手の・・ランボー・ラディゲ(チト例がオーバーか)・・タイプの鼻持ちならない高慢さの微塵もない、なんと謙虚な文庫本自作解説。で、この長編、「記憶ある眼球」移植ネタ・・「ブラックジャック」に元ネタあったなぁ・・のWhoミステリと、シュールな残酷ファンタジー・・白井智之みたいなグロヘド描写にはならない冷たい抽象・・と、切ない胸きゅんメルヘンの切り貼り合成。


No.823 5点 夏と花火と私の死体
乙一
(2024/05/03 00:06登録)
十六歳(!⚙⚙)の処女作とな。坂口安吾「風と光と二十の私と」への次韻なんだろな、このタイトル。「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」風味も狙った、ホラーファンタジーまたは残酷童話の趣が良く、サスペンス巧みで、少しミステリ。この後のブラック展開が見え見えだが・・露骨に提示しているし・・手前で終わらせている所がよい。
※もう一作、短編のオマケつき。


No.822 4点 フレンチ油田を掘りあてる
F・W・クロフツ
(2024/05/01 20:43登録)
クロフツ第三十三作。ん?油田を掘りあて?、フレンチ、警視辞めてゴールドラッシュ山師にでも転身?・ではなく、油田をめぐる一族の殺人事件の「真相当て=油田掘り当て」だった。ナイスネーミングタイトルね。ラスボス操り真相なかなか面白く、毒殺~放火あたりの倒叙サスペンス具合もよく・・列車ネタは相変わらず、しょぼいトリックも相変わらずだけどね。
クロフツもあと一作で終わりかぁ。何か一抹の寂しさが・・もう読み返すこともないだろしなぁ(クロフツだし(^^))


No.821 5点 ドアの向こう側
二階堂黎人
(2024/04/29 23:38登録)
幼稚園児「ハードボイルド」探偵:シンちゃんシリーズ第三短編集。
  「B型の女」 お、時刻表ミステリのパロディ?・・からの意表つくWhy。4点
  「長く冷たい冬」 ゲレンデ犬ぞりレースと二つの犯罪。片方のWhoWhy分かり安過ぎ、キャラ安直すぎ。3点
  「かたい頬」 密室状態別荘地からの少女消失。おお、「妖魔の森」?期待させて・・2割方スケールダウン。7点
  「ドアの向こう側」  失踪事件と殺人疑惑のワンツウショット解決。5点
※この作者、トリック作家としては実に素晴らしいが、ギャグセンスに欠けて、ユーモア小説家としてはかなり音痴。生真面目な秀才が無理しておちゃらけても、痛々しく不快なだけで・・。


No.820 6点 クロへの長い道
二階堂黎人
(2024/04/28 23:05登録)
幼稚園児「ハードボイルド」探偵:シンちゃんシリーズ第二短編集。
  「縞模様の宅急便」 ロー(ハイでなく)リスク・ローリターンの身代金誘拐 3点
  「クロへの長い道」 そっか、ハードボイルドの道って、あのホームズ名作短編に至るんだ! 7点
  「カラスの鍵」 部屋と密閉ケース、二重密室からの宝石消失トリック 3点
  「八百屋の死に様」 見えない少年(チェスタトン+「姑獲鳥」)と見えてる入代りの二重ネタ 8点(この作者なら、この短編を元に長編拵えられるんじゃないか。)全体で・・平均でなく・・6点。


No.819 7点 切られた首
クリスチアナ・ブランド
(2024/04/26 22:45登録)
首切り連続殺人の雪密室付きミステリ。雪「密室」は在るけれど、本格物のHow妙味よりも、サイコホラー風味が美味しく・・「そろそろと押入れの扉が開き始めた・・」(ギャー)。
怒涛の波状ダミー解決・・デビュー時からやってたのね・・に、「最後の数行」の余韻エンド。あれって、ひょっとしてドンデン(・・)? いいねぇ。


No.818 6点 ハイヒールの死
クリスチアナ・ブランド
(2024/04/25 18:21登録)
クリスチアナ・ブランド処女作。高級ブティック舞台の毒殺事件。容疑者は、美女店員6人に美女でない少女1人、女たらしオーナー、おかまマネージャー(+お掃除オバさん)。毒薬の入手と仕込み、動機のWhoHow何よりWhyの見やすい一覧表付きパズルミステリで、Whoは納得、Why(Aでなく~Aの為)は面白く、Howは・・ちと後出しかな・・と。


No.817 4点 箱の中の書類
ドロシー・L・セイヤーズ
(2024/04/22 23:48登録)
手紙と供述書で叙述され、第一部の実に魅力的なサスペンスと、第二部の肩すかしHowミステリから成る、竜頭蛇尾の二部構成。被害者ジョージ・ハリスンで息子がポール・・Beatlesか(^^) あの貴族探偵、出て来ない方が面白いな、セイヤーズ。毒物がキノコか合成物質か解明するのに、生化学どころか、なんちゅう形而上学的、神学的会話・・ダンテ訳者の面目躍如か、セイヤーズ・・ああ、何とか言う著名人の協力付き作品なんだっけ。


No.816 4点 フレンチ警視最初の事件
F・W・クロフツ
(2024/04/19 23:14登録)
クロフツ第三十二作。如才なく世渡りする半汚れ色男と、少し愚かなお人好し女。犯罪には違いないが、断罪するにはイジマし過ぎる男女のピカレスク譚・・かと思いきや、自殺以外考えられない、「開かれた密室」殺人トリックのミステリへと、急速な方向転換。「密室」不可能トリックは、クロフツでなければ、リンゴぶつけたくなるレベルの後出し「機械」トリックで、ま、クロフツだからね。「判断材料は全て出したよー(犯人、当ててごらん)」てな、読者挑戦状付き。(ん、全て開示してるか?)


No.815 5点 ブラック・ハート
マイクル・コナリー
(2024/04/17 22:16登録)
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第三弾。今回は主役刑事が被告の法廷物、かつ、Whoダニットミステリ。敵は主張・戦略ともに「正しき」美人弁護士・・名前、ハニー・チャンドラー(^.^)って・・。刑事が4年前に射殺した殺人鬼の遺族による糾弾告訴と、既に亡き犯人と同手口の事件発生による冤罪疑惑。もしも裁判が、のっぴきならない刑事告訴で、解決困難な絶望的陥穽・・とかならば緊張感溢れる展開となったろうが、2$罰金を争う民事裁判で、ミステリとしてのWhoダニット解明も、あまり外連味の無い「意外な犯人」であった。話としては、一気読み出来る程に面白い文庫本上下の六百数十頁で、1点オマケ。※ところで前話までの憎まれ役ヤナ奴上司、すっかり丸くなっちゃったなぁ。


No.814 4点 牧神の影
ヘレン・マクロイ
(2024/04/14 19:10登録)
これも対独(チョびっと真珠湾)戦時下の匂いのする暗号解読・・ここまで行くともう数学(?_?)・・小説、かつ、山小屋舞台の暗闇と静寂の恐慌(パン-ニック)サスペンス、かつ、盲目の犬と暗号に絡めたWhoダニットミステリ。ところで、英語アルファベットに熟達した人なら、あのオチって愉しく理解できんの?


No.813 7点 水の墓碑銘
パトリシア・ハイスミス
(2024/04/12 20:35登録)
次々とオトコを拵える愛人依存症の妻と、それをシニカルに「許容」する夫。仏貴族のコキュ気取りや、我が国「スジモノ」が、女房にツバメや色事師持たせ悦に浸る「文化」とは違い、ピューリタン米国となると・・。ドストエフスキー的マゾヒズムの陰気な虚栄が、乱歩「踊る一寸法師」の狂気の狂喜へと暴発し・・ミステリとしては、言わば、ホワットダニットインサイド。この作家、「ミステリ」の尺度で採点するのは「勿体無い」思わせる人の一人。「本格」でなくとも、やはり点数オマケせざるを得ん。


No.812 5点 センチメンタル・シカゴ
サラ・パレツキー
(2024/04/08 07:07登録)
サラ・パレツキー第三作。カトリック大司教の不正資産マネーロンダリング目的の会社乗取り陰謀を巡る、教団秘密勢力 vs 一匹狼ハードボイルド女探偵の・・虚々実々駆け引きでなく・・超パワー肉弾バトル。カトリック vs 民主党王道(今で言う「リベラル穏健派」ね)価値観対立を背景に、愚直に明確に「リベラルかつフェミニズム(たーだ経済的エリート)」側へ肩入れしたバトル。面白い!断然点数オマケ。

※わが日本では、カトリックのみならず耶蘇教全般(及び某左翼政党)は、マイナーであることで、「腐敗」から免れていて幸運だったね・・メジャーになれば、それまでだけどね。

※ある種の女流作家に点数オマケし過ぎのMy傾向を、フカク反省<(_ _)> し、点数調整。


No.811 5点 私が捜した少年
二階堂黎人
(2024/04/04 20:22登録)
幼稚園児にして「ハードボイルド」口調探偵:シンちゃんシリーズ短編集。
 「私が捜した少年」 女子大生アパートからのヤクザ消失。カー名作の応用ナカナカ(パクリ言ったらそれまでだが) 7点
 「アリバイのア」 レコード演奏時間のアリバイトリック・・んなもん、知らんわ! 2点
 「キリタンポ村から消えた男」 失踪した殺人犯ヤクザの行方と消失トリック・・女紛れネタならなぁ(アキレスか) 5点
 「センチメンタル・ハートブレイク」 愛人殺し航空機アリバイトリック・・クロフツか!5点
 「渋柿とマックスの山」 スキーゲレンデを舞台にした殺人アリバイトリック。6点 ・・・で、全体平均で5点。

蘭子ちゃんシリーズの本格風味は良いが、サトル君物の痛くスベるギャグセンスから、懸念して読んだが、ナカナカに面白いジャン!はーどぼいるどシンちゃん。


No.810 5点 ミステリー・オーバードーズ
白井智之
(2024/04/03 21:27登録)
五編からなる短編集。
「げろがげり、げりがげろ」:平行世界SF設定・・これがまた感官にエゲツなくねじ込んでくるグロコミカルなトンデモ設定で・・の二重時間トリック(ま、錯覚やね)に、7点。
「隣の部屋の女」:マンション住まい妊婦の日常サスペンスが、叙述トリック転倒して女流イヤミス風エンドに。6点。 
「ディテクティブ・オーバードーズ」:4人の手記から2×2の事象を挙げての、あまりにもマニアックなロジック展開・・せっかくなので最後まで付き合った・・で、取りあえず感服<(_ _)>。(麻耶雄嵩「木製の王子」のあのアホみたいに精緻な時刻表も改めて追ってみるか(*_*; )・・。この人のロジック力、麻耶雄嵩夕木春央早坂吝等より凄いかもね。もっとも、この作に限ってみても、①犯人は一人 ②同じ幻覚は二人以上は見ない てな大前提が条件の、「穴」あるロジックだけどね・・オマケして8点付けちゃう。
その他、「グルメ探偵が消えた」「ちびまんとジャンボ」は各2点、で、平均で、5点。


No.809 8点 罪なき血
P・D・ジェイムズ
(2024/03/30 01:52登録)
学者で不妊症の養父と赤面症の養母に育てられ、大学入学を前にした18歳少女が知る事になる実親の正体は、通りがかりの幼女を犯した男とその幼女を殺した妻であった。無期刑釈放の実母を引き取り共同生活を始めるヒロインと、犯人の「処刑」に余世を賭ける殺された娘の父親。二人の交互視点で進む、暗く虚無的な小説にして、詩的で変に美しい濃密なロマン・・かつ、物語の骨格にさえなるWhatダニットどんでん返し(及び伏線)・・嗚呼! げにフィリス・ドロシー・ジェイムズ真骨頂此処に在らず哉?

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