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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.898 5点 疑惑の霧
クリスチアナ・ブランド
(2024/12/23 23:15登録)
七人の容疑者、十八番の多重ダミーWho解明の法廷展開、「最後の一行」から「最初の五行」へのループエンド・・・
※野上彰って明治生まれ翻訳者の文体がイタダけない。


No.897 4点 ガーディアン・エンジェル
サラ・パレツキー
(2024/12/20 18:56登録)
ヴィクシリーズ第七弾。今回、話の取っ掛りは2件・・隣室老人の零落旧友の行方不明と、近隣お騒がせイヌ婆さんの飼い犬トラブル・・の「ザコ」件。金にもならない案件を追ううち、2件がヒロイン自身の前夫に絡む事件に繋がって・・が、明らかになって行く犯罪自体も、そう大した物ではなく・・付随の殺人がなければ・・せいぜい、「白昼の死角」証券詐欺やクロフツ産業犯罪の類なのだが、ヒロインの解決方法、まーた、派手なバイオレンスやっちゃって(*_*;。


No.896 5点 夜と少女
ギヨーム・ミュッソ
(2024/12/18 23:03登録)
25年前に行方を晦ました哲学教師と女学生。哲学教師を殺害した二人の元学生に迫る、25年後の犯行の暴露。女学生の身には何が起きたのか、をつりに進行するサスペンス。英米ハードボイルド物より、ずっと「複雑」な宿命・自由を持った人生描写にして、パトリシア・ハイスミスより、もっと「ストレート」な情緒・人格の登場人物達。突然に脚光を浴びせかける様な「ラスボス」唐突出現に、「オドロいた」感伏線ないのが残念だが、Who・Whatミステリとしてもナカナカ。


No.895 4点 殺人犯 対 殺人鬼
早坂吝
(2024/12/14 23:08登録)
嵐の孤島の児童施設での連続殺人。殺人者は二人。「合理的」な目的で動く殺人犯と、「非合理的」情動に突き動かされる殺人鬼。殺人者の倒叙による「もう一人Who?」ミステリが、女流イヤミス芳香を漂わせる殺人鬼の生立ち録を挟んで進行し、事件解明の諸ロジック披露から、叙述トリックツイストに、エンド。エンドに至る前までは、実に面白かった。
(〇り〇りネタは、処女作○○○○○○○〇ネタ並みに○○○○)


No.894 5点 ドローン探偵と世界の終わりの館
早坂吝
(2024/12/12 23:26登録)
ドローン移動する身長130cm探偵と、北欧神話・・オーディン、フレイア、ヘル、ヨルムンガンド等・・に擬えた諸設定。学生サークルが訪れた館ヴァルハラで起きる密室付き連続殺人。作者が最後に楽屋オチ話風に自慢している以上に、この叙述トリック設定(タイトルそれ自体が誤導誘引)、何気に「空前」のシロモノなんでは? 京大先輩の麻耶雄嵩にも言えるが、もっともっと「鈍き刃」(彼らキレ過ぎ)で、ゆったりと伏線を拵えてくれていたら、トリック解明で感銘が得られたんではなかろうか。


No.893 4点 RPGスクール
早坂吝
(2024/12/11 12:35登録)
超能力SFと学園ものゲームと足跡密室付きロジックミステリの巧みな融合。※「矛盾」「矛矛」「盾盾」・・てなネーミングセンスにクスり。


No.892 7点 ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
スティーグ・ラーソン
(2024/12/09 07:47登録)
「ミレニアム」第三部。一部とニ部の間には断層があったが、この三部は、まんまニ部からの継続展開。元々は、姑息な保身の陰謀話に見えた風呂敷が、亡命スパイと秘密公安組織とヒロイン逸話を包み込み、スウェーデン官憲の中枢内暗闘にまで広がって・・・ ミステリ要素は、既に第ニ部で、ほぼ解明し尽くされて、あとはひたすら、「善玉vs悪玉」虚々実々の攻防戦。が、この「善玉・悪玉」役者たちが豪華にして絢爛・・ヤリ手女弁護士に悪役精神科医、公安マッチョ女に野望検察官、殺し屋・ハッカーから首相に至るまでガン首そろえて、面白いの面白くないのって・・ホント、面白い(^O^)。ヒロイン、今回は重体入院と裁判被告で、バトル場面はないなあと諦めていたら、最後の最後に出ました、vs異常体質男(あれヒロインの実の○○なんだよな)驚嘆バイオレンス (^-^)// 一部二部よりもミステリ要素は少ないが、一番・・ホント・・面白く、7点にオマケ大盤振舞いしちゃおう。
※作者、この第三部まで執筆したところで、出版を目にすることなく急逝とか。第四部以降も作家を変えて出てはいるが、取り敢えず、ここで完結ではないのかな。


No.891 6点 ミレニアム2 火と戯れる女
スティーグ・ラーソン
(2024/12/04 22:16登録)
「ミレニアム」第二部。第一部ではサブ主役だった「竜の刺青の女」がメインを張るバイオレンスサスペンス。精神異常のレッテルを貼られながらも、まぎれも無く異能の天才である女。老若見境なく「いい女」に手を出しながらも、好色男の攻撃的猟食性はない「リベラル」な精神の男。それぞれに関わりある二件の射殺事件の、Whatミステリ巻き込んだサスペンスが、ハードに軽快に疾走して行く。終盤の手に汗握るバイオレンス感、半端なく面白い。(こんな面白くて、ミステリとしてよいの?)


No.890 6点 ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女
スティーグ・ラーソン
(2024/11/28 06:30登録)
主人公は二人の男女。財界の闇を暴く執念の四十路ジャーナリスト男と、ダークエルフの如き異形かつ異才の探偵娘。社会派風ハードボイルド進行が、1/4位から「島密室」本格と化し、いろんなミステリ要素を詰め込んで、実に軽快・・ディーヴァー・ライムアメリア物の如く・・にツイスト&スピードして行く。面白かった。

※原題含め小説の重低音部を奏でるミソジニィ(女性嫌悪)。E・トッド分類では、スウェーデンもドイツ・日本・ユダヤ・朝鮮等と同様に、「権威主義的・差別的」構造の社会なのだが、それ以前に、そうした分類以前に、全人類普遍にして不変のmisogynyが、この性的には極めて開放的平等的なスウェーデンにおいてもまた深刻そうで。


No.889 7点 パリのアパルトマン
ギヨーム・ミュッソ
(2024/11/24 06:33登録)
これもまた、先日このサイトで紹介されて興味を持って。芸術(=焼却)に死んだ天才画家の残した家に、偶然に同居するはめになった二人・・破滅衝動を持つアル中寸前の劇作家と、不妊治療にもがく元刑事の女・・の男女。画家の遺作を求める二人の「捜査」が、画家の妻子を巻き込んだ悍ましい事件の真相に繋がって・・・。
トマス・クック以外に、文学とミステリ共に満足させてくれる作家に出会えるとは。フレンチミステリ、とかく、ミステリ以前に、オシャレにニヒルな「ブンガク」してても、ミステリ度合がいまいち・・ポール・アルテみたいな例外ともかく・・のシロモノだが、これ、トレビアン。


No.888 7点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅰ
エドワード・D・ホック
(2024/11/19 23:34登録)
齢七十を超えた老医者探偵が、若かりし頃に扱った回顧事件簿。毎年の様に「密室」事件に出会い続けたんだねぇ(^^)。各話のマクラに、「まあ、御神酒でもどうかね」て聞き手に酒を勧める決めゼリフが付く。(米国の御神酒って何だ?)  
  「有蓋橋の謎」 あの「マディソン郡の橋」みたいな橋の途中で馬車ごと消失した男。雪足跡トリック付き。7点
  「水車小屋の謎」 半隠遁者の殺害と消えた金庫書類と古い頭蓋骨の連結や如何に。4点
  「ロブスター小屋の謎」 密室脱出ショーのさなかに密室刺殺された魔術師、密室トリック如何に。3点
  「呪われた野外音楽堂の謎」 祭りの最中に町長を刺殺して衆視現前で消失した幽霊、見事なWhoWhy伏線。8点
  「乗務員車の謎」 汽車の「密室」車両での車掌刺殺と宝石盗難。ダイイングメッセージ付き。5点
  「赤い校舎の謎」 校庭のブランコより忽然と消えた赤毛の少年。トリックもダミーミスリード設定も鮮やか。7点
  「そびえ立つ尖塔の謎」 教会尖塔「密室」で刺殺された牧師。両面構え二段オチ解決が見事。7点
  「十六号独房の謎」 独房扉とフロア入口、二重ロック密室から消失した仏怪盗の手口。5点
  「古い田舎宿の謎」 覆面強盗連続消失のドンデン返しオチがユニーク。ダミーねたは・・オマケかな。7点
  「投票ブースの謎」 四方を壁と衆視カーテンに囲まれた密室での凶器消失刺殺。4点(作者の前書には異議あり)
  「農産物祭りの謎」 祭りイベント「タイムカプセル」への死体現出(消失でなく)トリック。3点
  「古い樫の木の謎」 飛行機より降下のスタントマン絞殺事件。唯一同乗していた俳優に犯行は不可能だった。4点
※平均して、5~6点といったところだが、ほぼ全作の中心に、密室または不可能の殺人・消失(現出)を備える心意気を買って、全体で7点。※その他「長い墜落」て言う非シリーズのオマケもついてる。


No.887 6点 慈悲の猶予
パトリシア・ハイスミス
(2024/11/16 23:37登録)
夢想家で神経質な作家の夫と天衣無縫な画家気取りの妻。アーチスト夫婦の甘い生活が、倦怠と焦燥に囚われた日常となり、やがて、夫の妻殺害夢想と妻のカケオチ家出へと至る。官憲・隣人・知人の殺人疑惑視線に対して、半ば狂った自己陶酔から、容疑払拭どころか偽装自演さえする男。ミステリをグロテスクに屈折させた倒錯サスペンスだが、意外にも面白く。


No.886 4点 女嫌いのための小品集
パトリシア・ハイスミス
(2024/11/16 23:34登録)
原題にあるMisogyny、「女嫌い」どころか言わば「病的女性嫌悪症」、生理的・歴史的・宗教的に堆積した・女自身にさえ(にこそ)堆積した・精神構造。文庫本200頁足らず・しかも大きめ字体・に17作ぶちこまれた、コミカルにしてグロテスクなショートショート集。ミステリ苦味はイマイチ。


No.885 6点 九人の偽聖者の密室
H・H・ホームズ
(2024/11/12 22:48登録)
カー「三つの棺」オマージュと聞きさっそく。どラテン系陽気カトリック臭ふんぷんで、なんと、シスター探偵(^'^)登場。カー・トリックとカトリックの融合と行きたいところだが、そもそも、密室に「なって」おらず、ん? この、あえてのワンオープンドア、ひょっとして、京極「姑獲鳥」「陰摩羅鬼」祖先筋風ネタ? 思わせて、幻影カートリック軽量バージョンであった。スウェーデンうなぎカーの方が面白いかな。


No.884 5点 死の開幕
ジェフリー・ディーヴァー
(2024/11/09 22:32登録)
ルーン三部作(か?)その二。場末レンタルビデオ屋から、零細ビデオ制作会社に「栄転」したヒロイン。爆破テロ事件に巻き込まれたポルノ女優の死を追って、ビデオ作家への道の夢追い人となるが、同時に、テロ事件に絡んだ、数多の危険を呼び寄せる女探偵の道を突き進む羽目に。いかにも一癖ありそうな容疑者の男達が、三、四いや五人と出て来て、渋い壮年警官とのロマンス道連れに、すっかり、サラ・パレツキー風ヒロインみたいになっちゃった。犯人Who解明ナカナカだが、ツイストエンドは全くの予想通りで、逆に驚いた。
※ルーン三部作その三、「Hard News」の翻訳を希望。


No.883 8点 招かれざる客たちのビュッフェ
クリスチアナ・ブランド
(2024/11/06 22:45登録)
食前酒、メインディッシュ、口直し、デザートにコーヒーと、コース料理擬えの短編集。フルコース2コース分位ある。
 第一部:コックリル・カクテル・・・4作全体で、7点
  「事件の後に」 シェイクスピア劇団で起きたオセロ劇になぞらえた扼殺の真相は・・
  「血兄弟」 ろくでなしウリ二つ双子の非道犯罪の顛末。
  「婚姻飛翔」 暴虐な嫌われ者富豪の毒殺。キャラツイストに操りネタ、これこそジョロウグモのコトワリ。
  「カップの中の毒」 妄想にまで昇りつめた自己中女の咄嗟毒殺犯罪の陥穽。
 第二部:アントレ(肉魚料理)
  「ジェミニークリケット事件」 密室殺人の高級食材に、多重ダミー解釈・サイコ風味濃厚ソースのメイン一皿・9点
  「スケープゴート」 犯人消失の珍味食材に、ダミーHow解明とドンデン返しWho旨苦ソースがけサブ一品・8点
  「もう山査子摘みもおしまい」 小児とヒッピー達の夢幻的にして悲劇的ファンタジーの食材不明一皿・・採点不能
 第三部:口なおし 
  「スコットランドの姪」 真珠盗難を廻る、詐欺ペテンの二転三転いや四転・6点  (これを「口直し」って・・・)
 第四部:プチ・フール(スイーツ)・・全体で、7点
  「ジャケット」 妻殺し完全犯罪を企図する男の倒叙サスペンスで、最後は心底ぶったまげるオチ。
  「メリーゴーランド」 遺品ポルノ写真恐喝の二転三転メリーゴーランドショートショート。
  「目撃」 カー以前にポーに出てきそうな(当時は車ないが)トリック(このネタ、わかるんだなぁ)
  「バルコニーからの眺め」 メンヘラ主婦のサイコショートショートで、ラストは定番。
 第五部:ブラック・コーヒー・・全体で、6点 
  「この家に祝福あれ」 ヒッピー風赤子連れ男女と孤独な老婆のちょっといい聖話・・からの・・
  「ごくふつうの男」  「優しすぎる女」と性犯罪常習者たる「ふつうの男」のブラックなショートショート。
  「囁き」 虚言で父親を欺き、従兄を射殺させた少女の、これこそイヤミス。
  「神の御業」 愛娘と孫を轢き殺したロクデナシ男を弁護する警官の「御業」。最初の10行で展開が見える。
フルコース、こってりと2コース分位はあって、全体で・・平均でなく・・8点。
※クリスチアナ・ブランドの最高作って、「ジェゼベルの死」でも「はなれわざ」でもなく、この作品集ではあるまいか。


No.882 6点 叫びと祈り
梓崎優
(2024/11/01 00:12登録)
砂漠・スペイン・ロシア・アマゾンを舞台にした四短編に一編プラスして連作集に纏めてある(か?)。
  「砂漠を走る船の道」 小キャラバン隊での斬殺事件のユニークなWhyに、ユニークな叙述トリック付き。8点
  「白い巨人」 数世紀を隔てた風車密室からの人間消失。(京極の「あれ」やね) 5点。
  「凍れるルーシー」 ロシア正教修道院での聖女不腐屍体を巡る「事件」・・・ん? 4点。
  「叫び」 死病による絶滅を前にした未開種族での連続刺殺事件。第一編の逆を行く「構造主義的」Whyが見事。7点
  「祈り」 上の四短編を纏めた、ハッピーエンディングなプチドグラマグラ。採点対象外


No.881 6点 バーニング・シーズン
サラ・パレツキー
(2024/10/28 04:51登録)
アル中の叔母とのゴタゴタが、地域の政治・経済勢力との土地売買巨悪に絡み、知人警官達との暗闘に巻き込まれ、孤軍奮闘する一匹狼(+雌犬と隣人老人)の女探偵。今回の悪役背景にあるのは、保守=共和党ではなく、リベラル=民主党・・中には民主党シンパ時代のドナルド・トランプがモデルとしか思えないキャラ*も・・。分かり安い悪役の「保守白人男性」のみならず、「リベラル有色人種女性」の偽善も見逃さない、アグレッシブでヒロイック・・言い換えれば、短気・浅慮・猪突猛進・・なヒロイン、懲りずに凄い。今回も点数オマケ。
*まんま、「ドナルド・トランプにはなれなかったよ」って1章がある )^o^( 。


No.880 4点 汚れた街のシンデレラ
ジェフリー・ディーヴァー
(2024/10/23 23:13登録)
ニューヨークのレンタルビデオ屋で働くリベラル・・「リベラリズム(進歩的イデオロギーと社会的エリート臭の混合)」ではなく・・真にリベラル(=自由きまま)な二十歳の娘。夢見がちな娘が出くわした顧客の老人の死。老人が繰り返しレンタルした映画に、宝探しロマンを抱き、乗り出した冒険が危険なサスペンスを呼び寄せる。後のライムシリーズで花開く、倒叙・カットバック手法と、キャラ・設定ツイストが既に先駆されているのみならず、ライム物のテクニカルな彫琢=わざとらしさ、のない粗削りさが逆に魅力的。点数オマケ。


No.879 7点 アミュレット・ホテル
方丈貴恵
(2024/10/21 23:01登録)
ハイクラス犯罪者御用達ホテルの、「治安」管理をするホテル探偵が主役の短編集。
  「アミュレット・ホテル」 三人の男女犯罪者が容疑者の密室殺人。密室作成のWhyがユニーク。7点
  「クライム・オブ・ザ・イアー」 毒殺の不可能トリック・・伝統的模範的トリックの一つね・・6点
  「一見さんお断り」 脱出不可能ホテルよりの犯人消失。二重成りすましトリック見事。7点
  「タイタンの殺人」 密室での凶器発現・変容・消失トリック複雑系・・解明後の費用対効果感はイマイチ・・6点
で、全体で7点。 SFとは違ったユニーク設定においても、全編、「密室」付きサービス。何気に凄い作家 。

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