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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.738 6点 月明かりの男
ヘレン・マクロイ
(2023/09/15 22:54登録)
ヘレン・マクロイ第二作。対独(対日もオマケ)戦時下の米国大学で起きる連続殺人のWho・Whyミステリ。加えて全編被うナチススパイねたがサスペンスしてて面白い。如何にもクセある教官、理事、学生ら容疑者達。逃走者の風体が目撃者三人三様に異なる「心理」ロジックや、供述の虚偽を見破る客観的ロジック・・読み返せば見取図ないままにキチンと描写されてた・・が、美味しい。「事実を述べる時には心情は隠されるが、本音が出て来ると物語=噓が始まる」・心理的推理良いが、客観的証拠のタイピングネタがいまいち。


No.737 2点 ベローナ・クラブの不愉快な事件
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/12 23:03登録)
ドロシー・セイヤーズ第四作。前作「不自然な死」に続き相続殺人もの。クラブで死体で見つかった老軍人。当初見立てられた自然死が、「捻くれた」遺言書に死亡順番が絡む毒殺疑惑へと変じ、居合わせた「貴族探偵」が首を突っ込み、真相は、前作に輪をかけてシンプル(=ひねり無さすぎ)な相続金目当Whoダニットだった。
※英国の「クラブ」って、男性専用かつ極めて階級的な存在に思えるが、大富豪貴族ボンボンとカミさんに喰わせて貰ってる失業軍人上がりが、一緒のクラブに加入しているって普通なのか? 会費、どれ位なんだろ。


No.736 4点 死の舞踏
ヘレン・マクロイ
(2023/09/09 22:36登録)
ヘレン・マクロイ処女作。怪死した社交界(どんな世界じゃ)売出しの少女。容疑者・・影武者の従妹、少女の継母、そのツバメの画家、伯父、執事、コンサルタントの女、求婚実業家、ゴシップ屋・・達によるWho・Whyミステリ。
※クリスティ「鏡は横にひび割れて」、て言うより、映画「クリスタル殺人事件」思い出す。動機は「違う」けどね。


No.735 3点 不自然な死
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/07 20:37登録)
ドロシー・セイヤーズ第三作。暇つぶしの好奇心から、自身には何の関係もない老婆の死に、犯罪の臭いを嗅ぎ付けて嗅ぎまわる「貴族探偵」。しかも、公僕の友だち巻き込み、女スパイまで雇って・・都合よく別件起きるけどね(*^^*)
※この作の、真の主題=裏のテーマは、lesbian版「Farewell, My Lovely」だな。


No.734 4点 すり替えられた誘拐
D・M・ディヴァイン
(2023/09/05 21:37登録)
ディヴァイン第八作(これで全13作の邦訳揃った)。原題は、"Death Is My Bridegroom"=「死が我が花婿」。詩的な死を感傷しながら、身体の痛みを恐怖した女子大生の悲惨な最後。実の花婿と名目の花婿、二人の死を迎えた大学職員の女。初めての男に宿命の花婿を重ねた少女。そして、最後のヒロインが、人を愛せなかった学者の男の心の壁を砕き、死ではない生きた花婿を得るのか、の希望は余韻として残る。サスペンスロマンとしては見事。ミステリとしては・・あと、一トリック、一捻りあれば・・6~7点だった(かな)。
※てことで、ディヴァイン全十三作の採点を完了したが・・順位付けは止めとこ・・


No.733 7点 死体の汁を啜れ
白井智之
(2023/09/02 22:19登録)
識字力喪失のミステリ作家、守銭奴(「パンツ売ろうかナ」)女子高生、悪徳の美人刑事、深夜ラジオマニアのヤクザ・・奇矯極まる面子による、架空小都市を舞台にした連作短編集。
   「豚の顔をした死体」・・皮を剝がされ豚の頭を被せられたヤクザ組長死体のWhy。5点 
   「何もない死体」・・手製ギロチン惨殺巡るトリック解釈のファンキー三段落ち。8点(長編に膨らませてほしい) 
   「血を抜かれた死体」・・逆さ吊り男女惨殺死体と仰天密室How(斬新な密室ネタに間違いなし)。8点 
   「膨れた死体と萎んだ死体」・・アリバイトリックのトンデモ(笑)顛末のロジック。6点 
   「折り畳まれた死体」・・展示処刑具で死んだ少年・・からのツイストちょっとイイ話、からのbadな・・ 6点 
   「屋上で溺れた死体」・・水無き屋上で水死したカルト教祖の謎(これワラける)。5点 
   「死体の中の死体」・・大女の屍体に縫い込まれた子供の死体のWhy・What。8点(これも長編にできるな)
   「生きている死体」・・四肢切断され眼球抉られ鼓膜破られ・・残虐ここに極まる殺人未遂事件の顛末。5点
各編冒頭に付く、探偵役作家のライバル(と言うより宿敵)ミステリ作家の事件コメントが、中学生レベルなのに、一回りして「正解」着地てな趣向に唸らせられる。全体で、7点。


No.732 8点 イン・ザ・ブラッド
ジャック・カーリイ
(2023/08/30 20:59登録)
作者第五作。「毒蛇の園」は、「リベラル派」富豪一族の偽善を嘲る劇画だったが、これは、「白人至上主義・宗教右翼」の偽善(むしろ偽悪かな)を暴く戯画。ミステリであり、かつ、SFを掠めたファンタジー、いやもう、メルヘン! この、信じられないまでの「希望」は、信じたい気にさせられる。
※ミステリとしてはオマケしても、5点だが・・もう、おーまけにオマケ(^^♪・・8点!


No.731 2点 雲なす証言
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/08/28 00:01登録)
ドロシー・セイヤーズ(ミドルネーム「L」入れないと作者お冠だったらしい)第二作。主人公「貴族探偵」の妹の婚約者が「射殺」され、主人公の兄にあたる「公爵」に殺人容疑が。兄を絞首刑から救うべく奔走(どう見ても愉しみ半分)する弟「貴族探偵」。だが、肝心なアンちゃん本人がアリバイ証言を頑なに拒み・・真相は「本陣殺人」「そして誰も~」等であった・・・なかなかに面白く、でも、「密室」「不可能」じゃないのがねぇ・・


No.730 3点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/08/24 20:53登録)
ある朝、民家の風呂場に突如出現した死体と、離れた屋敷から消えた金融家ユダヤ人。二人の相貌は似て非なる・・・
ん?「唇の捩れた男」オマージュ?てワクワクさせといて・・・ありゃりゃあ・・(+o+)。
※「貴族探偵」のおカアちゃん(先代公妃!)とイカにもな英国執事キャラがgood、1点オマケ。


No.729 5点 蜘蛛と蠅
F・W・クロフツ
(2023/08/22 22:05登録)
クロフツ第二十六作。邦題「蜘蛛と蠅」。蜘蛛=金貸し・恐喝者。惨めな蠅達が絡み取られる蜘蛛の巣は、賭博と情事と「好事魔多し」・・いつの世も。十八番のアリバイトリックに犯人Whoネタがタイトに決まり、素人女探偵達のプチ冒険譚も付く。前作同様、必要条件=「犯人であり得る」だけで、確証のないまま、有罪=絞死刑の危機が迫る被告。しかも官憲に悪意はない(こういうのは、もう勘弁してほしく)。今回、フレンチは救い主役だが、活躍は脇役。


No.728 6点 そして誰も死ななかった
白井智之
(2023/08/19 22:14登録)
作者の第五(前作の連作短編集も数えて)長編。これまでのグロあざとタイトルに比べると、グッと「保守的な」標題で、ん?作者、守りに入ったか?思わせて、ところがドッコイ、とんでもSF(?)設定、グロへど描写に、マニアックロジック相変わらず・・よいなぁ。(特に、風俗嬢作家のダミーばかネタ、じつーにgoodよ!「鯨爆発」\(^o^)/って・・)
※マズいことに、この作者のこと、好きになってしまいそうだ・・我ながら不本意ながら・・


No.727 7点 お前の彼女は二階で茹で死に
白井智之
(2023/08/17 00:55登録)
拉致した異形少女を探偵役に使役する暴虐警官。へど・グロ・残酷コミックにして、「超」本格ミステリな連作短編集。
    第一篇・二編の、緻密かつ変態的ロジックに、各6点。
    第三篇の、閉ざされた山間旅館での、密室二件付き連続殺人のトリック・ロジックに8点。
このまま行くか? と思わせといて、三篇終盤でトンデモどんでん返しが来て、
    第四編の、密室・人物入換えトリック及びロジック等てんこ盛りに、7点。
で、とりあえず、HappyなEndだが・・・こいつら、こんなに幸せにしといてイイの?と、腑に落ちない所で、
    「後始末」エピローグで、めでたくBad End・・・腑に落ちた(かな)
※あの異形少女を探偵役に残して、警官とのコンビシリーズ物にしても、良かったか・・・ちと、日和り過ぎか。


No.726 6点 死まで139歩
ポール・アルテ
(2023/08/14 23:07登録)
「幻の女」浪漫、「赤毛連盟」展開、足跡と鍵の二重密室からの犯人消失と屍体出現、貫くは「クツ収集狂事件」。そして、なんちゅう居直った・・実際ツイスト博士に居直り語りさせてる・・ベタ道具トリック。虎ステッキやカーテンナイフ同様、こういうチンプ(ホメ言葉よー)で笑ける脱力感、いかにも、アルテらしくて・・(*^^*)


No.725 4点 ブラッド・ブラザー
ジャック・カーリイ
(2023/08/12 00:08登録)
第四作目。面白い! 処女作二作目にチョイ出の、魅惑的な殺人鬼サイコお兄さん、ついに主役に。本拠地アラバマからマンハッタンに舞台を移し、女性屍体の下腹部に、切断頭部を埋め込む猟奇殺人を巡る、警察 vs 殺人鬼の虚々実々サスペンス。皮肉なことに、オモシロ度アップに連れて、ミステリ度はダウンするこのシリーズ。ディーヴァー「コフィン・ダンサー」ツイストが決まるが、兄のシリアルキラー汚名の雪辱Happyとは祝福できず、作者のヒヨリと失望せざるを得ない。ので・・減点。   ・・・思えば、レクター博士クラリス捜査官の逃亡エンドは見事だった・・・


No.724 4点 誘拐犯の不思議
二階堂黎人
(2023/08/09 17:08登録)
水乃サトル不思議シリーズ第五弾。アリバイ時間トリックに特化した長編。なかでも、内臓が掻き出された死体ネタ、島田荘司小島正樹以外にも、こんなWhy利用もあんだなあ、とカンプク・・「バカWhy」だけどね。


No.723 6点 だれもがポオを愛していた
平石貴樹
(2023/08/07 21:27登録)
ポオ見立て連続殺人。「黒猫」に「ベレニス(知らんぞ)」に詩ネタが二編付くが、メインは「アッシャー家の崩壊」の見立て。何で見立て殺人?、をアクの無い二階堂蘭子の様な和人姉さんが、クイーン・有栖川有栖の如きロジックで解読して、その見立Why設定に感服した。「ポオは単なる推理作家ではない」等、子供の頃からサンザ聞かされる耳にタコ話だが、ここでは、耽美ポオより論理ポオに比重が傾いて・・作者はヒロインの口を借りてアリバイめいた言い訳をしているが・・チト残念。あと、せっかくのポオオマージュなんだから「猿密室」も欲しかった(いろいろワガママやね) 
バドワイザー、ハインツ、ナビスコ、ケロッグ、ジョン・ハリスン、ポール、ロン、ヤース・・・警官マスコミ等脇役たちの名前に微(苦)笑 (*^^)v

※ちなみに、ポオねたでは、オムニバス映画「世にも怪奇な物語」の、フェデリコ・フェリーニ「悪魔の首飾り」が素晴らしかった。


No.722 4点 山師タラント
F・W・クロフツ
(2023/08/01 21:36登録)
クロフツ第二十五作。原題「(James)Tarrant, Adventurer」。山師=アドベンチャーねぇ。アドベンチャーには冒険家の匂いがするが、山師って言うと詐欺師の臭いが・・・。もともと和英共に「起業家」てな趣なんだろが、資本主義米国と違い、階級社会英国でも家系社会日本でも、起業家・資本家には「成り上り者」の胡散臭さが付きまとう。
で、この作品、その詐欺師まがいの起業家男の死を巡る殺人法廷劇がハイライト。たとえ死刑でなかろうとも、被告を有罪として裁くには、「Aは犯人であり得る」=必要条件だけでなく、「Aは無罪ではあり得ない」=十分条件を満たさねばならんだろうが。ましてや、死刑判決においてをや・・にも拘らず、フレンチも、検事も、ついでに結局は判事も、必要条件:「あり得る」をもって被告を弾劾可能としている。そもそも、あれが殺人だったって言う確実な十分条件の証拠さえないじゃん。クイーン「ニッポン何とか鳥」の親父警視とかの「ロジック」まだしも・・これは・・我慢できんなあ。もちろん、取って付けた様な冤罪救済をトってツけてるけどねぇ。 ※話自体は法廷サスペンスとして面白い。


No.721 6点 おやすみ人面瘡
白井智之
(2023/07/26 18:43登録)
第三作目。これまた、トンデモSF設定・・体中に意識ある人面瘡(!)が繫茂する伝染病て(*_*;)・・を大道具に、緻密なロジックとイマイチな入代りトリックで展開される本格ミステリ。コミカルにしてグロい不快感を残す登場人物達、目を背けさせる程の残虐行為、吐き気を覚えさせる位のヘド描写・・飛鳥部勝則思い出す・・。宿主大脳の推理を否定する人面瘡A、人面瘡Aの別解推理を否定する人面瘡B、笑かしてくれるが、せっかく、意識ある人面瘡・・むしろ奇形多生児・・設定なんだから、二階堂黎人「幽霊マンモス」や門前典之「灰王家の怪人」を飛び越えた、超トンデモ密室トリックの大技一発もの・・麻耶雄嵩「翼ある闇」発展完成形・・こしらえてほしく・・


No.720 4点 毒蛇の園
ジャック・カーリイ
(2023/07/24 21:12登録)
作者第三作目。如何にもな怪しげ倒叙、スピーディな(チト溜めに欠ける)カットバック、絵に描いた様な(悪役でないわけがない)超富豪ファミリー(ケネディ家パロディか)。お、今回こそ、ディーヴァーやんの?思わせて、特にツイストもない、実に楽しい刑事活劇であった。惜しむらくは、ラスボスを即死させちゃったこと・・あれは、も少しクルシマセナイとねぇ・・・あと、あの、サイコあんちゃん出さないと。


No.719 7点 東京結合人間
白井智之
(2023/07/18 20:21登録)
第二作。なんたるBいやC級タイトル。SFパラレル設定いいことに、とんでもグロ描写( 綾辻「殺人鬼」か)のやりたい放題と思わせ、何気に、王道の孤島かつ密室物。それ以上に、なんちゅうNiceなロジック!・・SF縛りとは言え。
 ※ 「X」は犯人。6人(A・B・C・D・E・F)の中の2人が「X」。うち4人(A・B・C・D)の中で、もし、Aが犯人であれば、
  Bは「X」で、Bもまた犯人となるが、この場合、CもDも連鎖的に「X」となり、「X」は2人という前提が崩れる。
  よって4人の中に「X」はおらず、したがって、残りのE・F2人が「X」で、E・Fが犯人・・・素晴らしい。
こんな、ミステリ的感銘、麻耶雄嵩「木製の王子」逆家系図以来よー。しかも、惜しげもなくダミーに使い捨てて・・

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