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ミステリの祭典

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死まで139歩
アラン・ツイスト博士シリーズ

作家 ポール・アルテ
出版日2021年12月
平均点6.80点
書評数5人

No.5 7点 ROM大臣
(2023/10/18 15:31登録)
一九四〇年代末、法学士のネヴィルは、謎の女と嗄れ声の人物が暗号めいた会話を交わしているのを耳にした。また、ロンドン警視庁のハースト警部と犯罪学者ツイスト博士のもとに現れたパクストンという男は、嗄れ声の人物によって毎日封筒を運ぶ仕事のために雇われたが、その中身は白紙だったと語る。やがてパクストンが殺害され、現場には六足の靴が並べられていた。一方、ロンドンは無数の靴だらけの屋敷で、五年前に死んだ男の遺体が発見されたが、現場は完全な密室であるのみならず、床には埃が積もっていて、遺体を運び込むことは不可能だった。
現場に犯人が近づいた痕跡がない「足跡のない死体」というシチュエーションを、作者は異様な執着すら感じさせるほど好んでいるが、本書ほど奇抜なシチュエーションが提示された例はないだろう。本当に解けるのか不安になるくらい不可解な謎は、ツイスト博士の推理によって確かに解き明かされる。だが、そこに説得力を覚えるかどうかは意見が割れるだろう。

No.4 6点 レッドキング
(2023/08/14 23:07登録)
「幻の女」浪漫、「赤毛連盟」展開、足跡と鍵の二重密室からの犯人消失と屍体出現、貫くは「クツ収集狂事件」。そして、なんちゅう居直った・・実際ツイスト博士に居直り語りさせてる・・ベタ道具トリック。虎ステッキやカーテンナイフ同様、こういうチンプ(ホメ言葉よー)で笑ける脱力感、いかにも、アルテらしくて・・(*^^*)

No.3 7点 ボナンザ
(2023/08/03 19:40登録)
トリックは凄まじい・・・。アルテ作品の翻訳が続くことを期待。

No.2 8点 人並由真
(2022/01/10 04:22登録)
(ネタバレなし)
 1940年代末の4月の英国。30歳代初めの法学士ネヴィル・リチャードソンはある夜、美しい謎の女性(のちに勝手に「アリアドネ」と仮称)に出会い、心を奪われる。一方でロンドンの周辺では、手紙を運ぶメッセンジャー役の中年ジョン・バクストンが、とあることに不審を抱き始めた。やがてこの二件の案件は、名探偵アラン・ツイスト博士の視界で、ある接点で結び付く。そんな博士の前には思わぬ人物の死体が転がり、さらに密室状況の中に突如として死体が出現した。

 1994年のフランス作品。久々のツイスト博士シリーズの翻訳で、しかもアルテの長編の邦訳が同じ年に2冊出るのは昨年2021年が初めてという快挙であった。
 とはいえアルテ修行中の評者には、その素晴らしさがまだいまひとつピンと来ない(汗)。2002年からリアルタイムで読み続けている古参のファンの方、どうぞよろしく喜んでください。

 しかし内容はエライ面白かった。ツイスト博士シリーズはまだこれで3冊目だが、本作に関しては詳しい素性をこのサイトではnukkamさんが、さらに実際のポケミスの巻末解説では法月先生が語っているとおり、シリーズの中でも結構な秀作のようである。
 個人的には、これまでに読んだバーンズシリーズも含めて、今までで一番、いい意味でカーのB級路線の秀作のような感触の楽しさだった。

 登場人物が少ない分、犯人のサプライズ感は出しにくいだろなと予見したが、ちょっと思わぬ切り口の真相で意外性を感じさせた。

 ホームズの時代の某短編を想起させる奇妙なバイト仕事の謎、やたらと靴を集める変人の存在、さらに特殊な密室空間にいきなり捨て置かれた死体の謎、など、とにかく絢爛たる不可思議な事象を連発するサービス精神がステキ。中には例によって、よくよく考えればなんでソコまで、と言いたくなるものもあるが、まあいいでしょう。確かにアルテは趣向優先の天然パズラー作家である。都筑道夫が存命でこれ読んでいたらキライそうな気配もあるが、まあいいや。

 特に前述の謎のなかのひとつに対する、最後の最後のフィニッシングストロークで与えられる真相のアンサーには泣けた。これもまあ、もうちょっと伏線とか地味に丁寧に張っておいたら、もっと数倍泣けた気もするけれどね。それでもまあ、これはこれで。
 
 まんまカーの中期作品風のヌカミソサービス=ラブストーリー部分や、ネヴィル青年を相手にまくしたてるツイスト博士のミステリ談義、密室談義もほほえましい。
 とにかくご機嫌な一冊。
 まだ読んでないアルテの邦訳がそれなりにあるのが評者はウレシイ。ツイスト博士シリーズの未訳のものも結構あるというのが、不安半分、期待半分で怖くて嬉しい。未訳のまま終わったら哀しいし、最後の一冊まで出してくれたらたぶん幸福になると思えるので。

 評点は0.5点くらいオマケ。

No.1 6点 nukkam
(2021/12/08 22:47登録)
(ネタバレなしです) アルテを日本に紹介するのに貢献した殊能将之(1964-2013)が「狂人の部屋」(1990年)と並ぶ傑作と評価していたのが1994年発表のアラン・ツイスト博士シリーズ第10作の本書です。謎を盛り沢山にする作者ですが本書でもツイスト博士が「次々押し寄せる奇々怪々な出来事」と述懐するように謎また謎のオンパレードで圧倒します。真相も色々な意味で手が込んでおり、馬鹿々々しくて信じられないと感じる読者もいるでしょうけど本格ミステリの将来(作中時代は1940年代末)について議論したり、密室トリックのカテゴリー分けしたりと本格派推理小説にこだわりぬいた作品です。トリックについては小粒なトリックの組み合わせであまり印象に残りませんが、ツイスト博士が最後に解明した「狂気のなかにある論理」の悲しい結論は強く印象に残りました。

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