home

ミステリの祭典

login
レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.778 7点 皮膚の下の頭蓋骨
P・D・ジェイムズ
(2023/12/10 23:00登録)
舞台は孤島の館。古典観劇会に集まる人々。猟色家の女優、夫の将官貴族、ピアニストの義理の息子、大富豪の館主、元女教師の従妹、付人の女、演劇評論家、館の執事夫妻、そしてヒロインの女探偵:コーデリア・グレイ。コーデリアシリーズ第二弾・ていっても2作のみだが。女優に送られ続ける「脅迫詩文」に備え、夫の老貴族に身辺警護に雇われた若き女探偵が出会う、孤島の館の殺人。絵に描いた様な本格設定だが、そこはドロシー・ジェイムズ、見どころは容疑者達の人間描写。普通の「島もの」なら、周りの人間が殺されて行き、己に迫る恐怖サスペンスを描くところ、「ここにいる誰かが殺人者であるという人間存在への絶望感そのもの」が濃密に語られる。「女には向かない職業」同様、ラストにハラハラ展開のサービスも付いてる。


No.777 6点 十戒
夕木春央
(2023/12/09 07:36登録)
これも面白かった。 「方舟」「十戒」ときて、次は、「原罪」「預言」あるいは 「黙示」ってあたりか・・・

※2日後追記。なんか「方舟」と同じ匂いが・・思ってたら・・おおサーガ!(ここの諸兄の評読んでナットク(^.^))


No.776 3点 名探偵水乃サトルの大冒険
二階堂黎人
(2023/12/05 23:06登録)
水乃サトル君シリーズ短編集。
  「ビール家の冒険」 空き家の如き一軒家に残された大量の缶ビールの謎。5点
  「ヘルマフロディトス」 女子高生マル文字日記に仕込まれた殺人Who手掛り。3点
  「『本陣殺人事件』の殺人」 本家イチャモン付けと新機軸の提示・・唯の「針糸トリック」だが・・4点
  「空より来る怪物」 天窓以外は密室だった山小屋での密室焼殺トリック。6点
※短編ミステリ集として平均5点。が、第四編キャラ・「宇宙神~」同様・のヘキエキ感と、余計な後書「~が許されるのは島田荘司先生(! °o°) だけ・・」云々にマイナス2点。


No.775 5点 英雄の誇り
ピーター・ディキンスン
(2023/12/04 23:27登録)
ピーター・ディキンスン第二作。対独戦争の英雄将校にして大富豪貴族の一族。その広大な敷地と豪壮な館は、古英国の記念碑に見えて、米国成金達の擬古的観光スポットでもあった・・日光江戸村と変わらん・・。館で起きた自殺と行方不明事件。遠景では勇壮な獅子達も、貪欲にして狡猾な単なるケダモノに過ぎなかった。「栄光ある国軍」 「歴史的勝利」の醜い実像・・敗者日本ならば自虐内攻となる告発も、勝者の大英帝国自身が行うと、苦い諧謔の風味を醸し出す・・ちょっとしたトンデモ銃弾ロジック(トリック)も付いてるし・・


No.774 7点 名探偵のはらわた
白井智之
(2023/11/30 09:55登録)
ラストで突然に名探偵へ飛翔する助手:原田亘(はらだわたる≒はらわた)が主役の四中短編集。「阿部定事件」「津山三十人殺し」「帝銀事件」等、日本犯罪史上のレジェンド達の「魔界転生(!)」トンデモ設定に、目も眩むばかりに豊富なロジックの百花繚乱・・よくぞここまで・・。「阿部定事件」「津山事件」の史実を、フィクションで再構築して新事件に繋げる手管も見事。出て来るキャラはいつも同じ・・人物造形の抽斗小さい・・だけどね。
(※表紙画は、三話の「チェシャ」が、四話の猟銃を持ったコンセプトと思われ。)


No.773 5点 ガラス箱の蟻
ピーター・ディキンスン
(2023/11/28 22:38登録)
ピーター・ディキンスン処女作。ロンドンに集団移住し半ば耶蘇教に改宗したニューギニアの架空種族。酋長が殺され、SF設定でないまでも異世界コードミステリ?と振っといて、現世的なWho・Why落ちだった。同じWhyなのに、「エンジェル家の殺人」の方は何か「面映ゆかった」が、こっちは「腑に落ちた」。邦題の「異生物を観察する支配者」センス以上に、原題(Skin Deep)の醸し出す「どうしようもない宿命感」が痛い。にしても、ニューギニアの原住民もアフリカ系も一緒くたに「黒人」と呼び下す何と「らじかる」な言語センス・・半世紀前といえ・・


No.772 3点 二重の悲劇
F・W・クロフツ
(2023/11/27 22:21登録)
クロフツ第二十八作。狷介な資産家の遺産相続に絡んだ、身代りアリバイトリック付き連続殺人。序盤1/3は倒叙ノワール、中盤にフレンチ「正」叙本格に転回し、終盤は交互カットバックサスペンス。安定のオモシロ(つまらな)さは流石。


No.771 5点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2023/11/22 22:01登録)
乱歩「三角館の恐怖」の元ネタと言うより、ほぼ原作(「幽鬼の塔」の場合と違って)。見どころは二点。エレベーター刺殺トリック・・島荘「斜め屋敷」より精確度感高いが、カー「仮面劇場」と同様に凶器有効感に乏しく(殺せる?)・・と、Whyダニット・・憧れ女へのストーカーならまだしも、あの執着は、ちとピンとこず・・の二点。面白いが、乱歩の読んどきゃ十分だな、逆でもいいけど。


No.770 6点 サン・フォリアン寺院の首吊人
ジョルジュ・シムノン
(2023/11/20 22:10登録)
意味不明の自殺と大量の首吊り画。怪奇にして貧寒、神秘にして俗臭の謎を追うメーグレ(メグレでなく)警部。行き着いたのは、浪漫的ニヒリスト、ボヘミアン気どりだった嘗ての若者達。残酷な青春の支配から卒業できなかった彼らの、「超俗的行為」の明かされた真相は・・・「ところが、ただの子供だったのさ」 ※「幽鬼の塔」の方は、「青春」ではなく「カルト」だったな。でも、同じ様なもんか、「カルト」と「青春」。それを喝破した「夏と冬の奏鳴曲」は見事だった。


No.769 6点 ナイトホークス
マイクル・コナリー
(2023/11/17 07:48登録)
ボッシュシリーズその一。ロサンゼルス警察の一匹狼刑事:Hieronymus Bosch・・ルネサンス期の有名なシュール怪奇コミカル画家と同姓同名・・が主役のハードボイルド(?) マーロウ直系筋なんだろが、第一人称語りでないのがよい(中高年男の、上から目線グダグダ長語りはウザく・・) 訳題「ナイトホークス」にして原題「The Black Echo=暗闇のこだま」で両方とも意味あるが、「トンネル鼠」「闇よ鼠たちの為に」てのもよく。相棒のFBI女のセリフを、「~だったわ ~なのよ」等、女言葉に訳したのは失敗・・あの女には「~だったんだ ~なんだ」と喋らせねば。ドンデン返し・・見えすいてるけど・・面白かった。愉しみなシリーズが一つできた(^o^) ので、初回サービスで点数オマケしちゃう。


No.768 6点 わが職業は死
P・D・ジェイムズ
(2023/11/14 11:53登録)
犯罪証拠を検査判定する研究所を舞台にした殺人事件。始めから、Whom:被害者が誰になるかは明らかで、容疑者達に如何に納得できる動機があるか詳述されて行く。固陋・頑迷・小心な科学者達より、女達のキャラ・・猟色家の美女、愛されて育った愛すべき娘、愛されずに育った狷介な女、人好きしない女流作家、病的な少女(この娘の将来を憂える)、哀れっぽい街娼・・女達のキャラ描写がユニーク。秘儀的情事・兄妹相姦・レズビアン等の爛熟した珍味を醸しながらも、直球・・「捻り」さえストレート・・で進行するWhoダニットミステリ。


No.767 5点 赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
(2023/11/11 06:10登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その六。山陰地方を舞台にした、三部構成、女三代クロニカル。ミステリとしては、巻頭と終末の「人体ストップ映像」ドンデン返しに尽きるてのが、逆に凄い。※これも、オマケ点数。


No.766 6点 私の男
桜庭一樹
(2023/11/11 06:06登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その五。生ぬるくかつ果てまで行っちゃったダークな男女・・何気に真の父娘(オトろしかぁ)なのね・・のピカレスク。時系列を逆に遡ったところが、ミステリ。※点数オマケ。


No.765 4点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2023/11/11 06:01登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その四。「青い鳥はいつも傍にいた」ならぬ「黒い悪魔はすぐ隣にいた」落ちサスペンス。オープニング ” 夜は若く、彼も若かった(シビれるぅ)・・”と、女が被っていたカボチャ帽子のインパクトだけに、この点数あげちゃう。ミステリとしては、うーん・・・


No.764 5点 冒険の国
桐野夏生
(2023/11/09 06:30登録)
「幻の処女作」とな (別ネームでロマンス小説だかがあるらしいが)。「第三の新人」(吉行淳之介安岡章太郎でなく島尾敏雄庄野潤三)の家庭危機小説や向田邦子ドラマ、後の沼田まほかる等と同臭の、一見、平穏な日常情景に潜む緊迫と狂気。本格では・・いや、そもそもミステリでさえないかもしれないが、点数オマケにあげちゃう、「この手」のに甘いんで。


No.763 5点 キリング・ゲーム
ジャック・カーリイ
(2023/11/07 23:17登録)
「刑事が追い求めた殺人鬼も、刑事を追い求めていた・・」 「ロカールの交換法則」「メンヘラ倒叙と驚きの操り・・」ジェフリー・ディーヴァー既視感、+フロストシリーズ十八番の vsやな奴上官バトル。(犯人の真の標的は上官だったんだよーん、てバラして、憎まれ役上官に赤っ恥かかせた方が、スッキリ面白かったと思うが・・)
※この作家の翻訳、滞っているねぇ。じゃんじゃん訳して出版してほしく。


No.762 6点 家蝿とカナリア
ヘレン・マクロイ
(2023/11/01 22:28登録)
ヘレン・マクロイ第五作。原題「Cue for Murder:殺しの合図」よりも、和題「家蝿とカナリア」の方が美的やね。
籠から放たれた小鳥が心理的な、凶器の柄に纏いつくハエが生理的な、犯人Whoの「証拠」てな結論を、初っ端に宣告するところがNice。糖尿病ネタが巧妙かつ鮮やかに伏線プレゼンされてたら、7点付けても良かった。


No.761 7点 少女を殺す100の方法
白井智之
(2023/10/28 22:17登録)
5編から成る中短編集。全作に、「サトコ」と言う名の左半身赤痣(あしゅら男爵!)の女が登場するが、連作ではない。
    「少女教室」 クラス21人中20人惨殺から犯人1人を特定する、麻耶雄嵩ばり「超」ロジック。
    「少女ミキサー」 乙一「SevenRooms」にアニメ「Blood-C」をソースした、おぞましくもロジカルなサスペンス
    「「少女」殺人事件」 「超」ロジックは面白いが、「ノックス十戒」全部掲げとかなきゃ、「ふぇあ」でないじゃん。
    「少女ビデオ」 目を背け吐き気を催す、グロ・残虐・ヘド・・吉本隆明(古いか)なら「倫理」と表現した程の
           「果てまで行っちゃった」描写。ここまで行くと、過激表現と言う以前に、作者の心底に澱んだ
           何か、としか言いよう無く、それが・・信じがたいことに・・「救い」ある未来と両立する。
    「少女が街に降ってくる」 出ました、十八番のトンデモ「SF」設定・・真相解明、バタバタ立て込み過ぎだが。
文庫本の解説では、1編につき20人殺され×5編でタイトルの「100」だと・・ん?そーか?  全体で(平均でなく) 7点


No.760 2点 殺戮の狂詩曲
中山七里
(2023/10/25 23:06登録)
御子柴礼司シリーズ第六弾。今回の依頼人は、老人施設入居者9人を惨殺した介護士。かたや、幼女バラバラ殺人犯14歳元少年あがり弁護士、こなた、悪びれず屈託もなく老人殺戮の「正義」を語る被告。まんま、「神戸少年生首事件」と「相模原身障者殺戮事件」がモデル。有罪明白で死刑判決以外あり得ない事件。何でこんな分かり切った裁判の弁護を引受けたの?Why? がミステリ主幹のはずが、「操り真犯人」落ち・・これが見え透いたネタで・・にシンプルに接ぎ木される。


No.759 6点 吸血鬼の仮面
ポール・アルテ
(2023/10/24 00:25登録)
ドラキュラ・青髭・カーミラ・幽霊といったホラーの定石に、密室殺人や降霊会・・ディクスン・カー十八番を重ね、そこへ、カー定番ベタドタLOVEろまん混ぜて、カー必殺「鏡トリック」サービスまでも付けちゃって・・・

958中の書評を表示しています 181 - 200