家蝿とカナリア ベイジル・ウィリングシリーズ |
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作家 | ヘレン・マクロイ |
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出版日 | 2002年09月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 10人 |
No.10 | 6点 | レッドキング | |
(2023/11/01 22:28登録) ヘレン・マクロイ第五作。原題「Cue for Murder:殺しの合図」よりも、和題「家蝿とカナリア」の方が美的やね。 籠から放たれた小鳥が心理的な、凶器の柄に纏いつくハエが生理的な、犯人Whoの「証拠」てな結論を、初っ端に宣告するところがNice。糖尿病ネタが巧妙かつ鮮やかに伏線プレゼンされてたら、7点付けても良かった。 |
No.9 | 7点 | ボナンザ | |
(2020/04/26 13:44登録) 初期の最高傑作と言われるだけある。タイトルの意味もシンプルながらそうくるかと思わせる。 |
No.8 | 7点 | HORNET | |
(2017/08/18 20:14登録) 劇中に舞台上で殺人事件が起こるという、まさに「劇的」な展開は古典的な作品にでありながら読者を引き込む。 時代や国が違うため、情景を思い描いて読むのが難しいとは感じるが、文章としては仰々しさや余計な虚飾がないので抵抗感なく読めた。 タイトルが謎解きのキーそのものなのだが、それがどう真実への筋道になるのか容易にはわからないという自信がなす業だろう。 真相、そこに至る推理過程も十分面白い。やはりマクロイは手練れである。 |
No.7 | 9点 | nukkam | |
(2016/09/25 01:23登録) (ネタバレなしです) 1942年発表のベイジル・ウィリング博士シリーズ第5作で謎解きの伏線を縦横に張り巡らした本格派推理小説の秀作です。容疑者が少ないと往々にして取り調べが細かくなり過ぎてダレ気味になりがちですが本書は謎解きのスリルが最後まで持続しています。冒頭のカナリアの謎が後半になって再びクローズアップされる展開も見事だし、ベイジルのさりげない名探偵ぶりも好感が持てます。ポーストのアブナー伯父シリーズで既に使われているのと同じ謎解きネタがありましたがそれを差し引いても傑作の名に恥じません。 |
No.6 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2016/04/18 11:28登録) プロローグにおいて「一匹の家蠅と一羽のカナリアとを仲だちとして、ロイヤルティー劇場の殺人劇は解決を見たのだった。」と大胆なヒントを読者に提示しています。がちがちの本格(トリック、プロット、意外な犯人、フェア)のファン(1942年当時)には解けないだろうという自信の表れでしょう。主人公に精神分析学者(心理分析)を据えたところに著者の心意気を感じることができました。容疑者を絞り込んだ展開も読みやすく好感が持てました。 |
No.5 | 7点 | ロマン | |
(2015/10/20 16:40登録) 家蝿とカナリアというユニークな手掛かりもさることながら、劇中の最中堂々と犯行が起こる、事件状況も魅力的。訳も読みやすく、各登場人物も個性的で描き分けができており、物語としても純粋に楽しめるだろう。ミステリとしては、巧妙に張り巡らせている伏線を回収し、蠅とカナリアから導かれる解決が見事。ただその反面、二つの手掛かりの片方に気づくと犯人が簡単にわかってしまうというのが難点か。また、本格ミステリとしては犯人を追い詰めるロジックがなく、あくまで物証の手掛かりだけの解決というのが弱いというか、気になったりも。 |
No.4 | 6点 | mini | |
(2014/08/21 09:56登録) 本日21日に創元文庫からヘレン・マクロイ「逃げる幻」が刊行される、月内にはマーガレット・ミラーも予定されているのだが、マクロイの方は刊行前の相当早い時期に当サイトに登録されていたのにミラーの方は未だに、ミラーのがサスペンス小説だからなんだろうな、相変らず本格派以外は冷遇されてるのね 今回の新刊「逃げる幻」は1945年と「ひとりで歩く女」以前に書かれているので、マクロイがまだサスペンス風本格に転向する前のガチ本格を書いてた頃の作だ ウィリング博士が登場するが珍しく英国が舞台で、人間消失と密室殺人に彩られるという本格オタクが即手を出しそうな内容である 初期のガチ本格書いてた頃の代表作が同じ創元文庫の「家蠅とカナリア」である 時代背景が戦時中なのだが、灯火管制など戦時色が濃厚で、元々が独特の暗い雰囲気を持つマクロイらしさに溢れている しかも劇場ミステリーの一種という一見戦時下とは不似合いな設定が不思議な効果を醸し出して、大都会ニューヨークが舞台なのにまるでハリポタの世界に入り込んだかのようだ 謎解きに関しては”家蠅”と”カナリア”という2つのキーワードの意味するものについて読者によって評価が分かれそうだ たしかに作者が煽って強調するほどの驚愕の真意じゃないのだが、別段ガッカリするレベルでもないと思う |
No.3 | 8点 | E-BANKER | |
(2012/08/06 22:05登録) 1942年発表の作者第4長編作品。 作者のメインキャラクターであるベイジル・ウィリング博士が探偵役として登場。 ~精神分析学者のウィリングは魅惑的な主演女優から公演初日に招かれた。だが、劇場周辺では奇妙な出来事が相次ぐ。刃物研磨店に押し入りながら何も盗らずに籠からカナリアを開放していった夜盗。謎の人影が落とした台本。紛失した舞台用のメス。不吉な予感が兆すなか観客の面前で成し遂げられた大胆不敵な犯行。緻密な計画殺人に対して、ウィリングが鮮やかな推理を披露する。一匹の家蠅と一羽のカナリア・・・物語の冒頭、作者が投げつけた一対の手袋を果たして読者は受け止められるか?~ これはなかなか極上の逸品。 舞台は戦時下のNYの劇場。登場人物の多くは一癖も二癖もある俳優や舞台関係者たち、そして幕を開けた舞台で観客の目の前で起こる殺人事件・・・まさに本格ミステリーとしてはこれ以上ないほどの舞台設定だろう。 邦題となった「家蠅」と「カナリア」は、ウィリング博士が真犯人を特定するに至った「ヒント」そのものであり、それを作者は冒頭(プロローグ)で堂々と宣言しているところに、本作に対する並々ならぬ自信と矜持が窺える。 1942年といえば、クイーン・クリスティといったミステリー黄金世代からはやや外れるが、それらの作品に勝るとも劣らない作品だし、マクロイなら他の代表作(「暗い鏡の中に」など)よりも本作を押したい。 フーダニットの醍醐味や、クリスティばりの登場人物たちの心理描写の妙を味わうことができるだろう。 細かい齟齬についてはいろいろ考えられなくはない。 例えば、なぜわざわざ舞台上というややこしい環境で殺さなければならなかったのかについては明快な解答がなされていないし、「カナリア」を逃がした理由についても、心理的な理由にしてはあまりにも表層的に過ぎる気がする。(もし本当にそうなら、真犯人は籠のなかに飼われたカナリアを見るたびに放してやらないといけなくなる・・・のか?) でもまぁ、トータルでは十分に読み応えのある力作、自信を持ってお勧めできる作品、という評価。 (ウオンダとマーゴ・・・2人の女性登場人物に対する見方・スタンスというのが、いかにも女流作家という気がした) |
No.2 | 6点 | こう | |
(2010/08/16 00:44登録) 10年近く積読になっていたのを最近読了しました。古き良き本格作品といった印象で少し長いと思いましたが読み易かったです。訳もいいのでしょうが。 舞台でわざわざ殺す必然性はなくまた1度目の殺人が起きて、犯人が見つかってない中での公演はまずありえなさそうですがそれは眼をつむるしかないかなあと思いました。また「家蝿」は犯人が実は〇〇〇だという伏線の様ですが実際はその時の〇〇の数値により作品中の様に起きるとは限らないと思います。 作品そのものは不満な点もありますが楽しめました。 |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2010/06/13 15:03登録) ベイジル・ウィリング博士が探偵役を務めるシリーズ第5作。 原題は"Cue for Murder"で直訳すれば「殺人の手掛かり」ですが、そのものズバリの手掛かりを意訳して邦題としているのが何とも挑戦的です。 プロローグのカナリアを鳥籠から解放する謎の行動が、劇場の殺人事件にどう結びつくのか最後まで読者の興味をつなぐ構成が優れていて、派手な展開がなくても正統派の古典本格を読んだという満足感を得られました。 |