| ALFAさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.63点 | 書評数:246件 |
| No.166 | 8点 | 十戒 夕木春央 |
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(2024/04/18 17:24登録) 大ヒット作に続く「旧約聖書」シリーズ第二作。それにしてもクローズドサークル二連発とは大胆な。 今回は登場人物の描き分けも的確で、落ち着いて展開を味わえる。 終盤、緻密なロジックで開示されたあげくの反転は見事。こちらは情が絡まない分、好ましい。 そして「・・・いっつも、自分が助かることしか考えてないかも。」ウーンこの趣向、嫌いではない・・・ 考えようによっては今回の方が大技かも。 曖昧な書きようだが、そういえば何かが奥歯に・・・ ウ~ン高評価。 |
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| No.165 | 6点 | 亜愛一郎の狼狽 泡坂妻夫 |
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(2024/04/14 16:04登録) キッチュで楽しい、作り物感に満ちた短編集。と思ったら、そういえば作者はマジシャンでもあった。たしかにマジックショーのような作品が並ぶ。 お気に入りは本格風味の「曲がった部屋」と設定がユニークな「掌上の黄金仮面」。 ただ、どの作品も構成はモッサリと単調。冗長な展開部と名探偵亜による急転直下の謎解き。「DL2号機事件」などチェスタートンばりの逆説なのに構成で興が削がれる。 どの作品も本筋と関係ない部分が妙に可笑しい。 |
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| No.164 | 5点 | サロメの断頭台 夕木春央 |
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(2024/04/14 15:24登録) シリーズ最新作。 精緻なロジックが張り巡らされているが、そもそもの謎、つまり「誰が何のために贋作を描いたのか。」の真相があまりに貧弱。 そのためせっかくの多彩でドラマチックなトピックが活きてこない。 これでは富豪ロデウィック氏も登場のしがいがないだろう。 大技一発の「方舟」や軽快なテンポの「サーカスから来た執達吏」に比べると今一つ締まりのない読後感になってしまった。 |
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| No.163 | 8点 | サーカスから来た執達吏 夕木春央 |
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(2024/04/10 09:42登録) 旧約聖書シリーズと交互に発表される大正シリーズの快作。 デフォルト状態の子爵家に乗り込んだ借金取りのユリ子と、担保として身柄を拘束された令嬢鞠子との冒険ミステリー。 元サーカス少女ユリ子のキャラ造形がほとんど特殊設定レベルで愉快。 立派な黒馬の名前が「かつよ」だったり、「こんにゃくが入ってます」の置き手紙(読んでのお楽しみ)など笑いのツボもたくさんあるが、本筋はちゃんとした乱歩風味のミステリー。 ただ、時効狙いの「逆監禁」はいささか強引かな。 二人の姉との関係を通して、令嬢鞠子の心の成長が描かれるのも好感度。 ミステリーも、トリックがどうのロジックがどうの、という前にまずは豊かな物語として楽しめるのが肝心。 ユリ子鞠子コンビの続編を期待!! |
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| No.162 | 1点 | 容疑者Xの献身 東野圭吾 |
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(2024/04/08 09:24登録) まあ今さらの感もあるが・・・ ミステリーであるからには、落ち度もない人間を何かの都合で殺すことはあり得る。だからこの作品の胸くそ悪さはそこではない。 アリバイ作りのために身寄りのない人間を殺し、一方で自らの「献身」に酔う鈍感な犯人の造形や、一連の行為を純愛ものと読ませてしまうプロット。つまりは作者東野圭吾のアザトさが見えてしまう。 ミステリーとしての完成度が高くない上に、純文学風味のマーケティング志向が鼻につく。 |
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| No.161 | 7点 | 名探偵のはらわた 白井智之 |
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(2024/04/03 08:38登録) 「津山三十人殺し」や「阿部定事件」など、現実の怪事件をネタに展開した4編からなる連作中編集。 「転生」という比較的馴染みやすい特殊設定で、精緻なロジックを楽しめる。人気作「名探偵のいけにえ」より本格味でいい。 テンポのいい文体で、心理や情景描写の味わいは薄いがノド越しがいい。 |
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| No.160 | 7点 | 秘祭ハンター 椿虹彦 てにをは |
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(2024/03/22 08:41登録) 清張の「日本の黒い霧」と平行して読んでいたので、文体のギャップにめまいがしそうだった。 B級的表紙絵、ラノベ文体、チャラいキャラ、にもかかわらず中身はなかなかのホラーミステリー。 マニアックな大学講師と富豪の女子学生が「秘祭」を巡る、三話の連作中編。 それぞれを三津田信三や知念実希人が長編化すればさぞ読み応えある名作になるだろう、と言えば雰囲気はお分かりいただけるだろうか・・・ 残念なのは秘祭巡礼のきっかけとなる、女子学生潮のトラウマ幻影が解明されていないこと。これはもしかして続編への布石か。 |
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| No.159 | 8点 | 日本の黒い霧 松本清張 |
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(2024/03/21 09:00登録) 小説ではない清張の代表作。 アメリカ占領下の日本で現実に起きた12の怪事件が主題。膨大な資料を読み込んで緻密に推理するという作法はミステリーに通じるものがある。 こんな作品を締め切りに追われる連載で書くのだから、やはり清張ただ者ではない。載ったのが文藝春秋というのも何だか今日の「文春砲」を思い起こさせて愉快。 最も読み応えのあるのは「下山国鉄総裁謀殺論」。ここにはミステリーのすべてが揃っている。 重厚なクライムストーリーだがラスボスの闇は「けものみち」や「点と線」の比ではない。 |
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| No.158 | 6点 | 孤島の来訪者 方丈貴恵 |
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(2024/03/03 17:56登録) 「プロローグ 船上にて 竜泉佑樹はこれから人を殺すつもりだった。」 いや、申し分ない書き出し。本格の倒叙か、はたまたそれを装った新手の叙述トリックか・・・と期待するのだが。 実態は特殊設定パズラー版「誰もいなくなった」だった。読み口は本格風だが、真の動機を考えるとやはりSFなのでは? プロットは精緻だが、もっと整理されていれば更に高得点。 それにしても特殊設定にする意味はあるかな。 |
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| No.157 | 7点 | 八点鐘 モーリス・ルブラン |
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(2024/02/17 09:29登録) 半世紀ぶりに再読。以前のは子供向けの抄訳版と思っていたがディテールに覚えがあるのでそうでもなかったのか・・・ なかでも記憶に鮮明なのは 「女をさらって逃げる時には、パンクなんかしないものよ」 ウーンそうなのか!そうなんだ!と深く納得した小学生でした。 8編の連作短編ミステリであり、ロマンチックな長編冒険小説にもなっている。 お気に入りは「塔のてっぺんで」と「テレーズとジュルメール」どちらも動機やトリックが現代的な本格味。 ミステリ味は薄いが「ジャン=ルイの場合」も皮肉が効いていて面白い。 モーリス・ルブランってコナン・ドイルに劣らぬトリックメーカーだったんだ。 |
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| No.156 | 6点 | 黒後家蜘蛛の会1 アイザック・アシモフ |
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(2024/01/16 08:47登録) 12編からなる有名連作短編集。 常にメンバー6人、給仕1人の閉じられた空間。提示される「日常の謎」(事件そのものは必ずしも日常的ではないが)。そして謎を解くのはいつも安楽椅子探偵(給仕なので常に立っているが)。 徹底したワンパターンの枠組みで、読者が謎解きをする余地はあまりないが語り口の面白さで楽しめる。 各編ごとに付けられた作者のコメントもいい。 |
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| No.155 | 8点 | 底惚れ 青山文平 |
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(2023/12/12 11:09登録) 短編「江戸染まぬ」をそのまま冒頭に置き、230ページを加えて長編化したユニークな作品。「江戸染まぬ」はじわりと滲みるサスペンス風味と捻りのあるエンディングが効いた秀作だった。 ここでは刺された男が・・・以下ネタバレします。 実は命拾いしていた。 半端者の自分を始末してくれた女の恩に報いようと知恵を絞るうちに、やがて身上がって女郎屋の楼主として成功する。デュマの冒険小説を読む思いがする。 人物の出し入れが実に巧み。 謎の鍵を握る信との再会。主人公に手を貸す銀次との出会い。それぞれの絡みによって、けっこう都合のいい展開が自然なものに見えてくる。 信の人物造形もいいし、銀次の因縁話もプロットに奥行きを与えている。 最後に謎解きがあるが、ミステリ風味は薄い。 万事めでたしとはならない、ふわりとしたエンディングがいい。 |
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| No.154 | 5点 | 泳ぐ者 青山文平 |
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(2023/12/05 15:37登録) 徒目付片岡直人を主人公とする長編。 連作短編集「半席」から数年後、30歳近くなった直人が関わる三つの話。 離縁された女が元の夫を刺殺した件、大川を泳いで渡って切り殺された男の件、上司内藤から持ち掛けられる海防の話。 それぞれが無関係のまま終わる。ミステリ長編としては纏まりがいかにも悪い。 切り分けて連作中編に仕立てたらさぞいい作品になっただろう。 メインテーマである直人の内省的な物語も、そのほうが流れが良くなったのではないか。 |
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| No.153 | 9点 | 白樫の樹の下で 青山文平 |
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(2023/11/29 15:39登録) 第18回松本清張賞受賞作。 作者は若者を描くのがうまい。この作品にも三人の若い武士が登場する。ともに少年時代から同じ道場に通う腕達者だが無役。彼らの屈託や青臭さや危うい情熱が丁寧な文体で綴られる。 もとよりただの青春譚にはならない。互いの亀裂は次第に深まっていく。「たぶん、俺たちがもう十歳ではないということだろう」主人公の登にかけた昇平の言葉が滲みる。 四人目の若者、巳乃介も魅力的である。富裕な商家の次男坊ながら剣の腕がたつ。気に入った刀を身近に見ていたいから、といって登に名刀を預けるが、これはやはりよくできた口実だろう。この時すでに養子縁組で武士になることは決まっている。身近にというなら自分が差せばいい。見ていたいのは在るべき処を得た名刀と、それを帯びた凛々しい登の姿ではないだろうか。このあとも巳乃介改め岡倉武明は献身的に登を支える。 大江戸の辻斬りという茫漠とした事件を、巧みな人物造形で精緻なミステリに仕立てている。途中で示されるダミー解もスリリングでいい。 唯一残念なのは・・・以下ネタバレします。 二つの事件の複合であること。 |
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| No.152 | 7点 | 遠縁の女 青山文平 |
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(2023/11/29 07:13登録) 作者はあるあとがきに、「構成ではなく考証から始める」と書いている。 時代物に限らず、多くの作家はまず構成を考えてから資料を読み込むが、この作者の場合は徹底的に資料を読み込むなかでおのずとストーリーが降りてくるということだ。 今回は織物の流通、新田開発、藩の財政などの資料が読み込まれていると伺える。 中編3編のうち、お気に入りは「機織る武家」。 主人公の嫁、婿、姑三人が絡むドラマだが、主人公の心の持ちようで婿と姑の人物像が変容していく様が面白い。 ミステリの要素はないがウェストマコット名義の名作を読む思いがする。 表題作は唯一のミステリだが終盤の急展開がいささか慌ただしい。 遠縁の女の人物像をもう少し丁寧に描いてほしかった。主人公の人生を変えるほどの存在なのだから。 |
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| No.151 | 7点 | やっと訪れた春に 青山文平 |
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(2023/11/23 11:20登録) 端正な文体で綴られた長編時代物ミステリ。 情景描写、人物の造形、過去の因縁話、いずれも申し分ない。 冒頭、主人公が濠に落ちる話はミステリ的興趣があって面白い。 (少しネタバレ) 一方本筋の謎は、残念ながら犯人推定のプロセスが物足りない。なぜ暗殺者は鉢花衆でなければならぬのか。鉢花衆の残るひとりがなぜあの人物と推定できるのか。 クローズドサークルならともかく、町あるいは藩というオープンな設定においてはこのロジックではいかにも弱い。 さらにはいくら主君の命とはいえ、三代にわたってあの強烈な「斬気」を保ち続けられるのか。などミステリの根幹部分で腑に落ちないところがある。 とはいえ、上質な時代物としては十分楽しめた。 |
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| No.150 | 8点 | 江戸染まぬ 青山文平 |
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(2023/11/23 08:19登録) 作者の端正な語り口が気に入って選んだ2冊目の短編集。 中でもお気に入りは表題作「江戸染まぬ」。じわりと滲みるサスペンス風味から一気に捻りの効いたクライマックスへの構成が見事。 「日和山」「台」もいい。片や活劇、片や人情喜劇からいきなり歴史が顔を覗かせてのエンディングというのが痛快。 このサイト的にマッチするのは表題作のみだが、楽しめたので1点オマケ。 なお、作者による文庫のあとがきは、作品の制作過程がとても平易な言葉で綴られていて面白い。 |
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| No.149 | 8点 | 半席 青山文平 |
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(2023/11/15 08:55登録) すべてホワイダニットというユニークな時代物連作短編集。主人公は20代の徒目付、片岡直人。下級とはいえ幕臣である。旗本への出世を目指してはいるが「爺殺し」と揶揄される青臭く誠実な人物像がいい。 ホワイダニットを探ることで必然的に犯人や被害者の心に深く分け入ることになる。というわけでこの話、頼まれ御用を通して成長していく直人の物語と読むこともできる。 どの話も直人が仮説をたて、犯人が自白するパターンで、読者が謎解きをする余地はあまりない。 お気に入りは「見抜く者」。「己よりも強い相手ならば、心おきなく剣が振るえる。」逆説的な動機が面白い。 表題作「半席」は89歳にしてなお現役にしがみつく老醜を描いて深いが、もはやミステリの枠を超えているのでは・・・ 端正な楷書のような文体も好ましい。 |
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| No.148 | 6点 | 殺人鬼(角川文庫版) 横溝正史 |
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(2023/10/17 06:47登録) 横溝の雰囲気を軽く楽しむにはいい。 表題作はスリラーテイスト。 一方「百日紅の下にて」は本格味。典型的な過去の犯罪もので、こちらの方が出来はいい。 |
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| No.147 | 6点 | 陰陽師 龍笛ノ巻 夢枕獏 |
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(2023/10/13 11:17登録) このシリーズ、晴明と博雅が主役とすると酒は重要な脇役になる。 書き出しはたいてい晴明の屋敷。二人が季節の風情を愛でながら飲んでいる。 肴は鮎であったり、焼いたキノコに味噌を添えたものであったり・・・読んでる方が思わず飲みたくなる。 二人とも酒飲みのお手本のような品格ある飲み方である。 ひとしきり飲むと、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。・・・ここは徹底したワンパターン。 この巻のお気に入りは「飛仙」。中途半端な通力しか持たぬ仙人が引き起こしたトラブルを晴明が後始末してやる話。 ことが収まって、晴明に酒をごちそうになった仙人が、バルーンのように浮き上がって帰って行くシーンはなんともいえず可笑しい。「こういう生き方も、淋しいながら、そこそこには楽しゅうござりまするぞ・・・」 |
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