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ミステリの祭典

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沙高樓綺譚

作家 浅田次郎
出版日2002年05月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 ALFA
(2023/02/25 07:56登録)
都心の高層ビルに設けた謎めいたサロンで語られる、百物語形式の奇譚5編。
あえて分類すればミステリ1編、スリラー2編、ホラー1編、倒叙クライム1編となるが、いずれも「~ 風味」とつけたほうがふさわしい。

お気に入りはヤクザの大親分が語る「雨の夜の刺客」。大出世のきっかけになったチンピラ時代の出入りを語る倒叙クライムだが、人情噺として読ませる。
泣かせの浅田として知られるが、ここでもたった一つのセリフで涙腺を不意打ちするワナが二か所仕掛けられている。
他には刀剣の真贋を主題にしたミステリ風味「小鍛冶」。真贋物は清張が得意だが、もう少しドライな持ち味で面白い。
もう1編、「立花新兵衛只今罷越候」。撮影のたびに現れる侍姿のエキストラ・・・ 暗くないホラー。

以上3篇は高得点だが他の2編がピンとこないのでこの得点。読んで損はない楽しい短編集。

No.3 5点 八二一
(2023/02/20 19:15登録)
高級マンションの最上階、女装の主人のサロンに集まった各界名士が、秘話を語る。刀剣鑑定を巡る「小鍛冶」はじめ、会衆がとっておきの怪談を披露する「百物語」形式で進む連作短編集。
撮影所時代の映画界やガーデニング、任侠道と舞台は多彩で楽しめる。

No.2 8点 斎藤警部
(2016/11/22 23:24登録)
都心某所にて、各界の成功者達の会合。 一人ずつ、秘密厳守で過去のヤバい話を告白し合う。
小鍛冶 / 糸電話 / 立花新兵衛只今罷越候 / 百年の庭 / 雨の夜の刺客  の五篇。

「某作品」こんな反転ザマ見たことが無い。内や外からひっくり返すんでなく傍から追い越す一瞬の旋風。息が甘く詰まります。
「某作品」二つの歴史物語の分厚い重なりに、清水義範かと思う滑稽な趣向が炸裂。こりゃ面白い!
「某作品」ミステリと思えば軽い。人間の話と思ってもさほど。しかし時代の話と見ればなかなか。
「某作品」燻し銀の文章の果て、むむむむう、と困惑させる嫌らしい終わり方。
「某作品」重い活劇。面白さが人間ドラマへの感銘を上回ったり、また逆転されたり。こりゃァ。。

ミステリと呼べないのが一つ、ミステリ性の薄いのが一つ、ミステリ性の高めなのが二つ、ミステリそのものが一つ。どれを取っても一般的ミステリファンへの訴求力万全な円熟の力作揃い。何しろ気合いが入ってますよ、言葉選びのペイヴメントに、外さず適量に。

No.1 7点 ZAto
(2011/04/10 23:56登録)
最初に作品コンセプトを知ったとき、アイザック・アシモフを想像した。しかし中身は六本木をステージとした百物語だった。
それにしても、こういう小説は同世代や年下の作家の手によるものではなく、私よりも長く生きている、人生経験豊富な作家に読書時間を委ねるに限ると思った。30~40代の作家に人生を語られると、どうしても鼻白みながら粗探しに終始してしまいそうな気がするからだ。その点、雀師としてもあの黒川博行も一目置く浅田次郎ならば申し分がなかったといえるのではないか。

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