| 人並由真さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.36点 | 書評数:2314件 |
| No.2314 | 6点 | 袋小路 ジョルジュ・シムノン |
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(2026/02/28 05:36登録) (ネタバレなし) 南フランスのカンヌから少し離れた港町ゴルフ=ジュアン。そこでは老富豪パブリエの妻で40代後半のジャンヌが、年頃の娘エレーヌとともに夫と離れて暮らしていた。放蕩の気があるジャンヌは持ち船のヨット「エレクトラ号」の「船長」こと船乗りの白系ロシア人ウラディミールを年下の愛人にしており、そのウラディミールはともにロシア革命から逃げてきた若者「ブリニ」の兄貴分だった。だが美男で温厚なブリニと若き令嬢エレーヌの親しげな関係に、嫉妬めいた感情を覚えたウラディミールは。 巻末の瀬名先生の詳細な解説によると、1936年春季に執筆されて同年秋に雑誌連載され、1938年に刊行された長編。 物語の縦軸は、男性主人公ウラディミールと中年ヒロインのジャンヌ、そして準メインキャラクターといえるブリニとエレーヌたちの交互の関係性の弛緩と緊張。さらにジャンヌが夫から任されたか贈られたかしたらしい屋敷に集う、有閑的な男女や使用人たちの群像描写でページが埋まっていく。 後半の山場以前に、ドラマ的な大きな転調ポイントは散在するが、登場人物たちの息遣いになじめないとややかったるい。 逆に言うと怠い、と思いかけるその直前のタイミングで、話の随所に起伏があり、そういう意味ではさすがシムノン、なかなか食えない作劇ではある。 で、瀬名先生、最後の1行に至るまで、帯でもベタボメだが、個人的には何を言いたい、書きたいかはわかるつもりだけど……という程度の感慨。 詳しいことを言うと小説の最終的な方向性のネタバレになりかねないので言葉を選びたいし、具体的な感想も控えるが、良くも悪くもグレアム・グリーンぽい文芸味を、あるパートでひしひしと感じる。いや直接、信仰などの類は出てこないが、それでも人間の(中略)という主題はグリーンあたりの諸作との共通項ではあろう。 くだんの瀬名先生が実際にそのようみたいだけれど、ハマる人にはハマるかもしれないと思える作品。ただし個人的には、作品が訴えたいことはなんとなく見えるようでありながら(?)、さほどシンクロできるわけでもないない。こういう流れだったら、こうなるだろうなあ……というのが、悪い意味で腑に落ちるからかも知れない。佳作以上の一本だとは思うけれど。 登場人物では、後半に出て来る若い看護婦のブランシュが妙にくっきりした存在感があって印象に残った。 |
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| No.2313 | 7点 | こちら幻想探偵社 清水義範 |
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(2026/02/28 05:04登録) (ネタバレなし) 「おれ」こと乾三四郎はかつて国体を目指す体操選手だったが、足の負傷から断念。大学を出た現在は正業に就かず、特撮テレビ番組『宇宙捜査官ギャレット』のスーツアクターのバイト業務をこなしていた。そんな三四郎に大学時代の悪友・真下昇がともに私立探偵事務所を開こうと誘いを掛ける。だが三四郎は、人はいいが世間知らずな御曹司・真下の思い浮かべる探偵稼業とは、あくまでフィクションの中の名探偵の模倣だと二の足を踏む。そんな三四郎の前に、遠宇宙の美少女プリンセス・ ライララが出現。彼女を狙う暗殺者のエイリアンを成り行きから撃退した三四郎はそのままライララの世話を見る事になり、彼女に自分の従姉妹の矢田知代という素性と偽名を名乗らせる。ライララ=知代の救助の際に、やはり成り行きからスーツアクターの仕事を失った三四郎。そんな彼に真下はなおも探偵稼業を勧誘するが、三四郎は真下の求める名探偵ごっこでは生活ができない、と警戒した。だがそんな状況を横から眺め、さらに地球の文明を独自の歩幅で解析した知代は宇宙の超科学を用いて、真下の探偵事務所に奇妙なミステリ事件の依頼が集中し、三四郎と真下、そして自分が探偵稼業で十分に生活ができる特異点を設けた。だがそのミステリとは推理能力を必要とする謎解きのミステリではなく、オカルトやスーパーナチュラルな怪異の方のミステリであった。 SF、オカルトありの世界観での連作ミステリで、なんでそういう状況になったかの理屈付け(上のあらすじ参照)がなかなか振るってる(笑)。 シリーズものの名探偵を増産していたツヅキはこの趣向を認めて、どう思ったろうか。もしかしたら、後進にオモシロイアイデアを思いつかれて悔しがったのでは? とも夢想する(まあ現時点では、あくまで勝手な想像だけどね)。 シリーズ1冊目の本書には、設定編の第1話を含めて4編のエピソードを収録。第1話の段階で出オチっぽい流れになるかな? とも思ったが、2話以降も前述のツヅキのトラブルコンサルタントもの(片岡直次郎シリーズ)とかのSFミステリ版……というよりは、SF範疇の解法もアリの連作ミステリ事件帖として、なかなか楽しめる。ホワットダニット、ホワイダニットと各編の謎の散らばせ具合もなかなかゆかしい。 本書の読了後、シリーズ2冊目も、すでにネットで古書を購入(注文)してしまった。 なお元版は1984年のソノラマ文庫で出たジュブナイルだったようだが、評者は1999年の新装版(ソノラマ文庫NEXT版)で読了。 ちなみにテレビで新作の意宇宙刑事ギャバンが復活したこの時期にこれを読んだのはあくまで偶然だが、どっかで何かの因果が働いてるのかもしれん(笑)。まー、不可知のことなので、考えてもアレなのだが。 |
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| No.2312 | 8点 | 真犯人はこの列車のなかにいる ベンジャミン・スティーヴンソン |
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(2026/02/21 06:13登録) (ネタバレなし) 「ぼく」こと新進ミステリ作家アーネスト(アーニー)・カニンガムは「オーストラリア推理作家協会ブックフェスティバル50周年記念プログラム」の催事に参加し、同伴の恋人とともにイベント会場であるオーストラリア縦断の豪華列車「ザ・ガン」に乗車。3泊4日の日程の中で、錚々たる作家たちそのほかと対面した。なかでも最大の花形作家は、人気ミステリ「モーパント刑事」シリーズの作者として高名なヘンリー・マクダヴィッシュだが、作家、編集者、ファンたちが一堂に会する車内には、各自の思惑がひしめいていた。やがて車内で殺人事件が起きるが。 前作も結構面白かったが、今回はそれに輪をかけて楽しかった! 序盤からメタ的な記述を含めて外連味たっぷり、サービス精神豊富な趣向に加えて、多すぎも少なすぎもしない登場人物各キャラの交通整理が行き届き、謎解きミステリとしても、起伏に富んだストーリーテリングのエンターテインメントとしても非常に楽しめる。 (特に全体の3分の2辺りでの、イベントに流れ込むお話の作り方とか。) あ、あと出版界の業界ドラマ的なネタの豊富さの面でもあれこれオモシロイな。 で、真犯人はアーネストの謎解き完遂前に気が付いてしまったが、これは逆説的に探偵役の推理の明快さの裏返し。登場人物の頭数を無駄にせず、使いこなした作劇(と事件の構築ぶり)の冴え、そして名探偵の見せ場のハイテンションぶりにシビれる。 (その上でかなり強烈な、真犯人のキャラクターで動機であった。) 全体として、出来のいい時の中期~後期のクリスティーみたいな仕上がりで、お話の面白さとミステリとしての結晶度が実に良い感じで融合している。 9点に近いこの点数で。 シリーズ3冊目の邦訳を、慌てずゆっくりじっくりと心待ちにしよう。 |
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| No.2311 | 6点 | 私の大好きな探偵―仁木兄妹の事件簿 仁木悦子 |
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(2026/02/17 17:02登録) (ネタバレなし) 仁木作品は『冷えきった街』を頂点に『枯葉色の街で』などの長編も好き。さらにそこそこの数の長編や短編をつまみ食いで読んではいるが、考えてみると看板役の探偵? である仁木兄妹のシリーズは、これまで大系的に楽しんでいるわけではなかった(……)。 というわけで例によってブックオフの100~200円棚で、本書の美本が目についたので買ってきて、現状の評者がの2025年度のSRのベスト投票用の新刊を精読する合間に、就寝前などに読んでいた。 しかし仁木兄妹といえば、昭和の国産ミステリ史上ではそれなり以上に高名な方の名探偵キャラクターだと思うが、その主役編の書籍未収録短編(『みどりの香炉』)が、本書刊行の2009年まで発掘されずに残っていた、というのはかなりのロマンである。 昭和のあの探偵とか、かの名探偵も、まだどっかに知られざる短編とかが眠っていたらいいなあ、と心から思う。 収録順で後の方に成るほど小説的・ミステリ的完成度が増すというtider-tigerさんのご意見は、まったく同感。ただし巻頭の『みどりの香炉』がダメというわけではなく、E-BANKERさんのおっしゃるような作者の持ち味(私的に言うならどこか良い意味で湿った詩情)はこの作品からも感じられて、悪くはない。 地方ロケーションの舞台設定の妙味とミステリ的なトリッキィさの融和では『赤い痕』が良い。ただしお話の完成度では、やはり巻末の『ただ一つの物語り』がベスト。 tider-tigerさんのおっしゃる、あえてミステリマニアに勧めるまでもない、という主旨のご意見には苦笑しつつ、まあそうですね、と思うものの、一方でタマにはこんなのもいかがですか? とあまたのミステリファンの袖をちょっとだけ引っ張ってみたい気もする、そんな短編集。 7点はあげられないが、その手前の6点の上限ということで。巻末の戸川センセの解説はちょっとネタバレがあるのはなんだが、愛情がこもった筆致でステキ。 ちなみにこの短編集、同じ一冊の本ながら作品単位で後の方の文字の級数が小さくなり、字組も密度感が増している。巻頭の『みどりの香炉』はジュブナイルだし、さらに作者の創作者としての成熟の深化を表すため、あえてそういう演出で行なった編集・製版だとしたら、ちょっと洒落ている。まあ実際のところはどうか知りませんが(笑)。 |
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| No.2310 | 6点 | コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く 笛吹太郎 |
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(2026/02/14 07:45登録) (ネタバレなし) 一冊目は未読でこちらから読んだけれど、特に大事はないですな? 「ブラックウィドワーズクラブ」の本家取りもの、その現行作品として水準以上の出来だろうし、各編のおまけにつくミステリトリヴィアについての話題トークも楽しい。 中身の方は「居酒屋の謎」の回が、文字で読む限り、そんなことって、あるのかなあ、という感じ。あとはそれぞれフツーに楽しめた(一部、感心はするが感嘆や感銘に至らず、というのもあったが)。 劇中劇の密室事件のネタは、なるほどこういう使い方ならオッケーだね。 それなりに楽しい一冊だったが、7点はちょっとキビシイということで、この点数で。 |
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| No.2309 | 8点 | その血は瞳に映らない 天祢涼 |
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(2026/02/14 06:30登録) (ネタバレなし) いやー! ……メチャクチャ面白かった! 数年単位で<最高傑作>を地味に更新し続ける作者だが、もしかしたらこれが自分にとっての現時点での著者の著作のベストワン! になるかもしれない。 メインキャラから脇役まで、話に絡む登場人物の造形が総じて出来がよく、記号的な役割の人物もどこか印象に残るキャラクターになっている(気弱で上司の命令を聞かなければならないサラリーマン社員だが、決して悪人ではない編集長とか)。そこがまずよろしい。 でまぁ、終盤の(以下略)。これはアレでないの、海外ミステリ黄金時代の(中略)ではないの! 雑多な人間模様を見つめてその上で、ちゃんと謎解きミステリとしての仕掛けとサプライズにこだわりながら、同時に、主題として作者が小説の形で言いたいメッセージ性もしっかとそこにある。 というより、中盤までは<ミステリとしてはまずはともかく、小説として面白い>だったのが、最後の最後でその枠を突き破った破壊力にシビれた。 優秀作。 9点に近い、この点数で。 |
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| No.2308 | 8点 | 魔法使いが多すぎる 名探偵倶楽部の童心 紺野天龍 |
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(2026/02/11 06:15登録) (ネタバレなし) 2019(2020?)年。「僕」こと東雲大学の薬学部2年生で、校内の先輩かつ「東雲の名探偵」金剛寺煌(こんごうじ きら)が創設した<名探偵倶楽部>の一員である瀬々良木白兎(せせらぎ はくと)は、ある夜公園で二人の若き女性魔法使いが対決する図を目撃する。その魔法使いの片方で母校の在学生でもある美女・聖川麻鈴から事情を聞いた瀬々良木は、後輩の美少女・そして名探偵の来栖志希とともに、10年前のクリスマスの時期に起きた「白ひげ殺人事件」の真実に立ち入っていくが、事態は思わぬ展開を繰り返していく。 2年半ぶりの<名探偵倶楽部シリーズ>第二弾。 前作『神薙虚無最後の事件』が相応の反響を呼んだのに、今回は本サイトでも誰も読みませんね? まあそういう自分も刊行後ほぼ1年目にしてようやく読了だけど(笑・汗)。 で、結論から言うと、とても楽しめた。 ケレン味満点で、しかも(中略)が続出する作劇パターンは昨年の某話題作(そっちは評者はまだ未読だけど)と趣向が似ちゃったらしいものの、それでもそのテーゼをひとつひとつ覆していく美少女名探偵・来栖さんが今回もカッコイイ。 まとめ方は良くも悪くも王道の新本格だな~というところもあるものの、謎解きミステリとしての完成度の向こうにある、作品全体が抱える某・主題が、個人的にはとても心地よい(逆に言うと今後のシリーズの方向性に、もしかしたら、とにもかくにも読者への予断を授けてしまうかもしれないけれど)。 あー、某キャラの去就についてちょっと大雑把なのがやや気になったけれど(一応は21世紀の話なので)、まあいいか。 9点に近いこの評点で。昨年の国産作品・現状でのマイベスト1……はちょっと辛いけれど、個人的には上位3~5位には入れておきたい。 シリーズ次作も楽しみにしておこう。 |
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| No.2307 | 7点 | 嘘つきたちへ 小倉千明 |
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(2026/02/10 05:40登録) (ネタバレなし) 表題作で、新設された短編ミステリの新人賞を受賞。それをハシラにあとの4編のノンシリーズ編を書き下ろし、一冊になる分量ということで(?)、最初の著作として刊行。 こういうパターンもかなり珍しいんじゃないかと思う。いや創元は現在もミステリ掲載誌(「紙魚の手帖」)があるんだから。それとも抱えている作家が多すぎて、新人作家に割く紙幅の余裕がそんなにないのか? ①このラジオは終わらせない ……いきなり、こってりした話。本書の方向性を読者に明示するという意味では、最初に読ませる作品としては的確かも。 ②ミステリ好きな男 ……「おそ松くん」の某エピソードの元ネタにもなった、かの名作海外短編へのオマージュ編。というか、後半のヒネリ具合は、海外の某単発ミステリドラマだな。 ③赤い糸を暴く ……オチは素朴ながら、話の見せ方で得点した一編。これも国産の某・名作短編を意識してるとは思う。 ④保健室のホームズ ……個人的には、一番良かった。読後感が、エリンの某短編を思い出してしみじみ(え?)。 ⑤噓つきたちへ ……最後の最後まで引っ張るトリッキィさで、なるほど出来はいい。特定の作品とかではなく、なんか佐野洋あたりの切れ味のいい短編を思わせる。 ④と⑤で稼いで、この評点。 |
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| No.2306 | 7点 | 美しい探偵に必要な殺人 藤石波矢 |
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(2026/02/09 04:58登録) (ネタバレなし) 「俺」こと、高校生・田坂眞人の前に現れた美貌の教育実習生・刀根美聖(とね みさと)。やがて彼女は、自分の病死した伯父・加茂肇(はじめ)の事務所を引き継ぎ、私立探偵稼業を始めた。刀根に初対面の時から心惹かれ、自主的に彼女の助手となった田坂はその後12年の間に警察に奉職し、ひそかに彼女に複数の事件の捜査情報を非公式に提供し続ける。そして先日、焼死したのはかつての田坂の母校の恩師であり、田坂と刀根が宿敵の巨悪として追い続けた男であった。田坂と刀根は電話で、彼らが出会ってから現在までの十数年の間に生じた複数の事件の話題を語り合う。 できれば帯もAmazonの内容紹介も見ないで、いきなり中味を読み進めて欲しい。 主人公二人の出会いの時からのいくつかの事件が順々に語られる連作短編集っぽい形式だが、中味は実際には書き下ろしの長編ミステリ。真髄に触れるには確実に全一冊、最後まで読み通す必要がある。 大枠の仕掛けはなんとなく読める部分もあるが、わかりやすい説明で語られる各事件の謎解き、さらに練りこまれた、一部の事件の意外な構造など、確かによく出来ている部分も多い(かたや、そううまく行くかな、と思える箇所が皆無ではないのだが)。 ネタバレを警戒しながら言葉を選んであえて不満を言えば、主人公コンビとは別のキーパーソンの動きがやや甘い、と思える事。(中略)のために、ああいうことやそういうことをしようとは思わなかったのだろうか? と少し疑問が生じた。 それでもミステリとしてのパワフルなどんでん返しに乗っかる形である種の文芸性と独特の情感があり、それら全部を総合した作品として結構惹かれる。 着想と勢いで書いたような部分と、計算されたいくつかの細部。その相乗でなかなか面白かった。タイトルの意味は……まあ、ねえ。 |
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| No.2305 | 5点 | 退職刑事6 都筑道夫 |
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(2026/02/07 18:59登録) (ネタバレなし) ブックオフの100円棚で見つけた、元版の徳間文庫版(文庫オリジナル)で読了。つまり評者が手に取った文庫の通巻表示は「6」でなく「5」である。ややこしい。 『新・必殺仕事人』は仕事人シリーズパート2だが、『新ハングマン』はハングマンシリーズパート3。なんかその辺を思い出してしまう。 本シリーズはリアルタイムで2冊目までは読んだ記憶があるが、3冊目はどうだったか心もとない。4冊目と5冊目はたぶん確実に読んでない。つまみぐいでこの最終巻を、例によって就寝前とか病院での待ち時間とかに少しずつ読んだ。 推理も何もなく、直感で一応はつじつまの合う? 話をヒネリ出すだけ、というのはこのシリーズの途中……あるいは晩年のツヅキ作品の多くへの悪口だが、今回は当初からそんなもんだろと思って読み始めたので、あまり腹も立たない。というか、なんか今となってはこのマイペース? な作劇がちょっと懐かしくもある。 ウワサの「拳銃と毒薬」は(中略)オチで、そのぶっとび具合そのものよりも、老境の、もはや国産ミステリ界での第一線にいるとはいえなくなった当時のツヅキが、なんか世の中(本邦ミステリ文壇)に爪痕のひとつももうひとつ遺しておこうと願いながらこんなのを書いた? という感じで微笑ましい。 個人的に割と面白かったのは、最後の2つ前の「針のない時計」。しかしこれ、出題に回答がない(一応説明はあるのだが、う~ん)ヘンな話だね。いや、正にソノ辺こそが後年のツヅキ作品か。あと(中略)投げるな。 あとがきを読むと5年かけて、このシリーズ6冊目の全9編を執筆。まだ書こうと思ってたらしいが、単行本未収録、あるいは他のシリーズとあわせて補遺的な短編集とかあるのかしらん。ちょっとだけ思い付きで、気になった。 |
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| No.2304 | 6点 | 月射病 ジョルジュ・シムノン |
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(2026/02/06 23:15登録) (ネタバレなし) あらすじと断片的に目についた作品解説、さらにネットでの感想&ウワサなどから<広義のミステリとはいえる、事件性のある小説>を予期して読み進む。その意味では、いつもの(大半の)非メグレもののシムノンの一冊。 で、実際にその通りの作品なのだが、中盤はアフリカの奥地での黒人現地人の文化描写がやや長めであった(といっても大した事はなく、読むこっちの辛抱が足りないだけかもしれんが)。 しかしながらヤマ場で物語のコアに分け入るあたりの手応えは、正にいつもの&のちのちの、シムノン。主人公のジョゼフ・ティマールは、ある意味で、<異国の地でメグレに会えなかった若者>であった。 ラストの叫びなど生硬だな~と思えるところもあるが、それもまた本作の個性ではあろう。 たぶんシムノンの非メグレものの中でも上位にくることはないと思うが(作品の出来不出来というより、単に作者の著作の絶対数が多すぎるため)、シムノンに薄く長く付き合ってきた者として、記憶の片隅に残したい一編。 巻末の瀬名先生の解説はとてもお勉強になると同時に、良い意味でのファントークで非常に楽しい。 |
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| No.2303 | 8点 | アンジェリック ギヨーム・ミュッソ |
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(2026/02/04 05:24登録) (ネタバレなし) 2021年9月6日。コロナ禍のパリのアパートの6階から、元トップダンサーのバレリーナで52歳のステラ・ペトランコが転落。死亡した。ステラの娘で、飛び級医大生でもある17歳の美少女ルイーズ・コランジュは、入院中のパリ警視庁元警視で47歳のマティアス・タイユフェールに接触。事故死と認定された母ステラの死の経緯の再調査を願うが。 2022年のフランス作品。 結論から言うと、非常に面白かった。 これで評者が呼んだミュッソ作品は4冊目のはずだが、これがダントツに一番、出来がよろしい。 中盤でいきなり物語の外側が割れ、中味が見えたようになる……? が、当然ながら紙幅はまだまだ残っているので、このあと何があるのかとハラハラワクワク読み進めるが……(後略)。 とはいえたぶんミュッソの頭の中にあったのは、1950年代の欧米の某・名作ミステリだろうね。だがそれを良い意味でパーツのファクターとして取り込み、プロットレベルで二つ三つヒネることで独自の作品にしている。 全部で300ページ足らずだが、エネルギッシュでパワフルな展開。 サプライズのために一部の登場人物の思考をゆるくしてあるような箇所もまったくないではないが、まあ許容範囲。 (逆に本作を低めに評価する人は、その辺のラフさを突いてくるかも知れんが。) 作者は20作以上も長編を書いていながら、邦訳はまだ3分の1以下? というのがもったいないなあ。翻訳者の吉田氏はこれで翻訳家業を引退だそうだけど(長らくお疲れ様でした&ありがとうございました)、今後もミュッソの未訳の秀作が紹介されることを願う。 |
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| No.2302 | 6点 | ルーカスのいうとおり 阿津川辰海 |
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(2026/02/03 04:18登録) (ネタバレなし) 小学五年生・沢城タケシは2年前に児童書の編集者だった母あずさを事故で失い、今は市役所で市民からのクレーム応対役の父・裕一郎と二人暮らしだった。そんななか、裕一郎が同じ市役所の若い女性職員・丸岡美樹との再婚をタケシにほのめかす。タケシは、亡き母が童話作家・はないあきとともに生み出した創作児童文学のキャラクター「おおどろぼうルーカス」の人形に執着するが。 今回はホラー×パズラーの趣向だけれど、 ・どういう形で謎解きの要素があるのか ・後味は良いのか悪いのか ・そもそもスーパーナチュラルな要素はあるのかないのか ……もちろん全部言いません(笑)。ネタバレになるので。 で、まあ読んでる間はそれなり以上に面白かったけれど、作者が作者だけにちょっと<エンターテインメントとしてはフツーだな>という印象の一冊でもあった。他の新人の作品だったら、もうちょびっと(死語?)高い評価になってたかも。 (いやところどころで、例によっての達者さは見受けますが。) タケシの友人となる転校生の少年・森恭介とその父親の心霊探偵。彼らはいずれまた、何らかの形で再登場させるのであろうか? そんな気配がないでもない。 |
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| No.2301 | 8点 | ゆるやかに生贄は ドロシイ・B・ヒューズ |
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(2026/01/31 07:25登録) (ネタバレなし) その年の5月初旬。ロサンジェルスの青年インターン、ヒュー・デンズモアは、20歳の姪クライティの結婚式に出席するため、アリゾナ州フェニックスに愛車で向かっていた。だが砂漠のハイウェイでヒッチハイクをしているアイリス・クルームと名乗る10代の少女に出会い、仏心を起こして彼女を乗せてやったことから、ヒューは予期しない事態に巻き込まれていった。 1963年のアメリカ作品。ヒューズの第16番目の、そして最後の長編。 ヒューズの翻訳がある長編のうち、「別冊宝石」掲載の2作を除いて、書籍化された邦訳は3冊とも読んでいる。十数冊の著作の中からセレクトされて? 翻訳された作品がそれなりに出来がいいのはまあ当然といえば当然だが、どれもそれなり以上に面白かった。 いずれにしろ本書は、先の訳書『青い玉の秘密』の邦訳刊行から、ちょうど10年ぶりの旧作発掘新訳紹介である。それで少し楽しみにしてはいたが、刊行されてから半年以上たってようやっと読んでみた。 全体の4分の1くらい読み進んだところで、ああ……というサプライズがある。 本書の解説(吉野仁氏の担当)ではネタバレを断った上で解説してあるのでまだいいが、Amazonの内容紹介はちょっとアブナイ。なるべくなら目にしない方がいい。 (ちなみに現状でレビューをくれている数名の購読者各人は、ちゃんと配慮した物言いをしており、リテラシーが高くてよろしい。) とはいえそのサプライズ自体がミステリ的な大ネタ、という訳では決してなく、むしろ巻き込こまれ型のサスペンス作品としてはその(軽い?)驚きを経た中盤以降がヤマ場となる。 話の起伏の付け方に、ページタナーとしての職人性を実感。 さすがこの作品までに実績20年以上のベテラン作家(どちらかといえば寡作で、本書の前の作品は11年前の1952年だったそうな)という貫録で、良い意味で話の幅を広げず、クライマックスのギリギリのギリギリまで主人公を追い込んでいく作劇はパワフルの一語に尽きる。 まあ悪く言えばシンプルすぎるくらいシンプルな、曲のない……とまでは言わないにせよトリッキィさなどとは無縁な話、ではあるのだが、読み物小説として最高級に面白い。 (なお作品の内容に、時代性・社会派的なメッセージを感じてもいいが、むしろ<そういう主題>を具材にしたエンターテインメントとして楽しんだ方がいいだろう。) 重ねていうが、ヒューズ面白い! これまで読んだなかでは本書が最高だったが、未訳長編がまだ10作近くあるのはもったいないなあ。もう少しどんどん発掘してほしい。 |
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| No.2300 | 8点 | 死の絆 赤い博物館 大山誠一郎 |
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(2026/01/30 15:22登録) (ネタバレなし) 今回は全5編収録。 良い意味でとても安定した面白さで、個人的に比較・連想するならホックのレオポルド警部シリーズあたりを読む愉しさに通じる(加えて、石沢英太郎の牟田刑事官ものあたりの雰囲気にも近いかも?)。 第4話のホームレスと国会議員の同じ現場での同時他殺? 事件など、ああこれはジェイムズの『死の味』(評者はまだ未読だが、ジェイムズご本人が来日の際に新作構想の形で御当人から話を伺った)ネタだな? と思いきや、本書の巻末に作者自身の各編のメイキング記事あとがきがあり、正にこれはそちらへのオマージュ、と語ってある。ほかにも各編がいかに既存の名作へのオマージュ、新世代作家からの挑戦という主旨で書かれたか、ミステリマニア作家としての愛情たっぷりに(特にネタバレはないと思う。そこにも感心)語られており、本書の評点もこのあとがきで一点……いや0.5点おまけ。 その4話など冴子の推理がやや直感に過ぎるかな? というものもないではないが、最後の名探偵イヤー・ワン編がなかなかぶっとんでおり、良い感じにいかにも奇想パズラーという味わいで面白い。 (もし、この程度で? という方は、さぞミステリを読まれているのだと思うが。いやイヤミや皮肉ではなく。) いずれにしろ今回もとても楽しかった。作者自らが一番、自作の連作のなかではトリッキィなシリーズと自負しているんだけど、ここ(本サイト)ではあまり読まれないのね。少し残念である。 |
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| No.2299 | 6点 | 今日未明 辻堂ゆめ |
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(2026/01/30 01:34登録) (ネタバレなし) 一定の地域内で生じた、別々の5つの<人が死んだ逸話>。 それらの出来事をニュース報道(たぶんネットの)が最初にダイジェストで概要を伝える……という形で各編が開幕。 あとはそれぞれのエピソードごとに、その局面に至るまでの経緯を深掘りしていくストーリー……という形式のミステリばかりを集めた、登場人物などはまったく異なるものの、広義の連作といえる中短編集。 Amazonのレビューで総じてべらぼうに評判がいいので、仕込みかサクラじゃなければ、それなり以上には楽しめるだろう? という期待を込めて、読み始めた。 うーん。アベレージでいうと100点満点で、60~70点くらいの諸作の出来が大半。 で、基本はイヤミスだが、やはり中にはちょっと毛色の違う読後感のものもあり。ソレがどれか、あるいは後味がどうとか言ってしまうと、ある種のネタバレになるので、控える。 中堅作家の手堅い短編集、という感じだが、一本だけ、個人的にこれはミステリ的にもなかなか……というのがあった。これも何で良かったかが言いにくい作品なので、口をつぐむ。ただ、私的には見事にうっちゃられた、とだけ言っておく。 ヒューマンドラマ的ミステリから青春ミステリとか、職人的に幅広い作風の著作を書き連ねている印象の作者で、こういうものも書けます、と地味に才気を示した感の一冊。 Amazonでの絶賛はちょっと過剰じゃないかい、とは思うけれど、一冊まとめて佳作~秀作の中か下。 【2026年1月30日追記】 イヤスミ基調の作品集だから仕方がないかもしれんけど、5本の中に一本(?)だけ、ある種の、あるいはある状況の読者には、これは絶対に読ませたくない! とj本気で思った話がある。どれかかはここでは言えない(言わない)が、当該の方はサブタイトルと最初の1ページ目のイントロ部分で警戒して、そこで読むのをやめるのを老婆心ながら推奨したい。 |
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| No.2298 | 8点 | 百年の時効 伏尾美紀 |
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(2026/01/28 12:55登録) (ネタバレなし) 三日かけて(実質2日で)、昭和編→平成・令和編とその区分で、それぞれイッキに読んだ。 巻頭の主要登場人物表をコピーして余白に各キャラの情報を書き込み、さらに自作のメモで登場人物一覧リストを補遺しながら、読み進む。 非常に腹ごたえのある作品だが、こちらの現代史の記憶に訴えて来る物語の流れ、さらに相応の格調はあるがリーダビリティの高めの文章とあいまって、スラスラ頁がめくれる。 昭和編の主人公コンビ、鎌田&湯浅もいいが、平成編の方の主役・草加の、ややこしい立場のなかで苦悩するキャラもいい。 最後まで読了すると、事件の内実は込み入ってるようで、実は存外に良い意味でシンプルな面もあり、その辺は得点要素。しかし情報の物量攻撃のなかで、中盤で一度疑った大ネタを失念し、最後にムニャムニャ……。 これも確かに昨年の国産の収穫のひとつであろう。 数年後、文庫化されて誰か解説を書くミステリ評論家は、ユーナックの『法と秩序』とかウッズの『警察署長』とか引き合いに出すんだろうな、と予見(ちなみに評者はまだ後者は未読)。 いやミステリ的なネタバレともなんとも関係なく、単に三世代ものの大河警察小説ロマンというだけの話だけど。 |
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| No.2297 | 8点 | 抹殺ゴスゴッズ 飛鳥部勝則 |
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(2026/01/20 15:49登録) (ネタバレなし) 作者の御方は、自分が国産の新刊ミステリからほとんど離れていた時期に活躍されていたようなので、これまでの作品にまったく縁がない(汗)。 何やらスゴイ作品をいくつも書いているようなので、自分が2010年代の半ばにミステリファンとして本腰を入れて(?)再動してから、およそ10年、そのうち、この人の作品の良さげなのを読もう、読もうと思っているうちに、今回の新刊が出てしまった(……)。 で、シリーズものでもないみたいだし、じゃあこの新作から読むかと思い、二日に分けて、しかし実質、一日もかからずに読了。 かなり破格な方向性を感じつつも、最終的には新本格のパズラーに決着するのだろう……そんな予感を抱きつつ、それでもバリンジャー風の並行ストーリー同時進行形式とあわせて、かなりスリリングな読書を楽しむ。 ちなみに登場人物一覧は、平成編と令和編、それぞれ別のシートにメモ書き。ともに登場人物(ネームドキャラ)が40人前後に及び、相応の総数だが、単なる脇役・モブキャラはわざわざ名前を設定したりしておらず、読み手をわずらわせないのは親切。 一方で、登場人物リストの一覧を作ったおかけで、ある程度、先のサプライズが読めてしまった面もないではないが、まあそれは、成り行きみたいなものか。 600ページを超える紙幅に量感と質感があり、同時に思ったよりはマトモな新本格ミステリであった、という感慨もある。終盤の正に<波状攻撃>風の謎解きにも満足。 他の皆さんがおっしゃっている通り、青春小説としての味わいも、あれこれ豊潤でよろしい。 期待通りに、面白かった、というところ。 |
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| No.2296 | 6点 | ハウスメイド フリーダ・マクファデン |
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(2026/01/16 07:36登録) (ネタバレなし) ●ミステリが読みたい! 第1位(ハヤカワミステリマガジン2026年1月号 海外篇) ●週刊文春ミステリーベスト10 2025海外部門 第3位(週刊文春2025年12月11日号) ●このミステリーがすごい! 第3位(2026年 宝島社 海外編) ……こんなに高評でなければ、良い意味でもうちょっと期待値が下がって、もっと楽しめたであろう。その意味ではソンした作品。まあ、こっちも評判だったから読んだところも大きいんだけど(なんなんだ)。 シーソーゲームの最初のあたりはふーん、ああ、で、その後の2つ目3つ目のツイストの方がちょっと面白い。最後はまあ。 最後まで<評判>に振り回されたような読書ではあった。 つまらなくは無かったが、いずれにしろ、これが昨年のベスト上位と聞くと、あ、そう、という感じがそれなりに。 2作目? 読むんじゃないの? たぶん。 |
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| No.2295 | 6点 | 松本清張編 黒い殺人者 アンソロジー(国内編集者) |
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(2026/01/13 18:42登録) (ネタバレなし) 松本清張編(名義貸し?)の、翻訳短編ミステリアンソロジー「海外推理傑作選」(全6巻)の第3集目。収録作は以下の通り。 けちんぼハリー / リチャード・ハードウィック 血なまぐさい家系 / リチャード・デミング サマー・キャンプ / ドナルド・ホニッグ 相続人の死 / エド・レイシー 黒い殺人者 / ロバート・C・アクワース うそつき / ウィリアム・ブリテン 静かなる逆流 / スタンレー・アボット テーブルの男 / C・B・ギルフォード 観察 / アーサー・ポージス 七番目の男 / ヘレン・ニールセン 久々にこのアンソロジーを読んで、収録作品のほぼ全部がごっつう面白かった第4集「密輸品」に比べると、さすがに全巻あのボルテージは維持できない、という感じで、こっちはトータルではやや弱く感じた。 それでも巻頭の3本(ハードウィックやデミング、ホニッグ)など、往年の日本語版「ヒッチコック・マガジン」の掲載作みたいな歯応えで、小粋な短編ミステリを読む愉しさが満喫できる。表題作は、ああ、そういう意味(趣旨)のタイトルの作品ね、という思い。 レイシーがなあ、作者の狙いはわかるし、よく出来ているのかもしれんが、ちょっとこの路線アンソロジーで読むのは違うだろ、という感じ。 いや、もっと破格なのは最後のニールセンで、1960~70年代の日本語EQMMかHMMの巻末に載ったボーナス中編みたいな感じで、その意味では懐かしく良かった(&まあ、読み応えもあった)が、いかんせん、レイシー以上にほかの作品と共存する空気を読まない(?)場違いな作品が来てしまった、という印象(笑)。 だがその前のギルフォードとポージスはなかなか良かった。ギルフォードはどっかでこの2020年代に、日本のミステリ研究家による個人作家短編集出してくれんかな、という感じ。ジャック・リッチーみたいな感じで需要があると思うんだけど。ポージスは死体処理テーマの作品だが、トリックの創意もさながら全体の奇妙に静謐な雰囲気がとても良い。終わりの方に当たりが出た! という手応えであった。 なんだかんだ言っても、残りの巻も一冊ずつ消化するのが、とても楽しみではある。 |
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