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ミステリの祭典

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狼少年ABC

作家 梓崎優
出版日2025年10月
平均点6.40点
書評数5人

No.5 6点 まさむね
(2026/03/29 21:09登録)
 四編で構成される短編集。どれも綺麗に纏まっていて、それはそれで評価されるべきだと思うのですが、ミステリとしては解りやす過ぎる面も。④は別としても、もう少し捻くれるなり、突き抜けてもよかったような気もします。
①美しい雪の物語:舞台はハワイ島。巧く仕立てた作品で好感を持つけれど、歴史に詳しい方であれば…。
②重力と飛翔:傘と足跡の謎は、消去法からして自明かも。もうワンパンチ欲しかった印象も。
③狼少年ABC:幼少期の記憶を辿る…ってのは便利すぎる設定で、個人的にはどうかと。
④スプリング・ハズ・カム:アンソロジー「放課後探偵団」で10年以上前に既読。なので結末は分かっていたのだけれど、やはりこの短編集ではベストか。

No.4 7点 人並由真
(2026/03/04 04:09登録)
(ネタバレなし)
 割と読みやすい、口当たりの良い作品ばかり4本という中短編集。
 だが最初の二本は悪くはない……とは思いつつ、一年のなかで読んだあまたの国産短編ミステリの大海の中に埋没してしまう感じ。
 正直、三週間くらい前から一編ずつ間を置いて読んだが、3本目までは、ひとつ読んでも「面白い、次の読もう」というリビドーがほとんど生じなかった(汗)。さらに言うなら、もう自分は最初の二編の細部も真相も、頭から薄れかけている。結局、その辺は私にとってはあまり響かなかった、ということだろう。

 とはいえ「狼少年ABC」の真相というか、劇中での解釈は割とスキだ。
(一方で、そんなことリアルにあるのか、フィクションのリアルならギリギリか……という部分もあるのだが。)

 で、最後の「スプリング・ハズ・カム」である。
 本サイトのsophiaさんの激賞がなんか頭にひっかかりながら読み始め、それでも序盤~前半からの淡白っぽい筋立て(というか作劇&話術)に読む側もいつのまにかトーンダウンしていったが………………(中略)。さすがにこの一本は、数年たっても忘れないだろう、というか忘れたくない。
(黄金期欧米の某巨匠作家のあの中編や、少年時代に読んでショックを受けたあの海外短編を思い出した。)
 ラストの余韻までふくめて、これ一本に8~9点。あとの3本は6点。
 平均して、本全体で、この評点。
 わがままな私の採点だと、そーなる。

No.3 5点 虫暮部
(2026/02/07 15:38登録)
 “ちょっといい話” にしようとしたせいで、ミステリとしての切っ先が鈍ってしまった。
 その矛盾が如実に出たのが「スプリング・ハズ・カム」。この手の “害意に由来しない謎” の弱点は “そうは言っても、この中に嘘吐きが混ざってるんでしょ?”、故に “いい話” では完結し得ない、と言うこと。悪気は無いけど嘘を残したまま卒業してしまう話より、嫌な奴がはっきり害意を持った話の方がミステリ読みとして納得出来るなぁ。

No.2 7点 メルカトル
(2026/02/02 22:25登録)
「俺、昔、喋る狼に会ったことがあるんだよ」カナダの温帯雨林にやってきた三人の日本人大学生。狼の生態に関するフィールドワークのかたわら、ひとりが不思議なことを言い出して──(表題作)。
大人になる前の特別な時間を鮮やかに切り出した、四つの中編を収録。『叫びと祈り』『リバーサイド・チルドレン』の著者が贈る、ミステリ仕立てのエモーショナルな青春小説。
Amazon内容紹介より。

『放課後探偵団』を読んだのが12年前の事。その最後に載っていたのが本作品集の掉尾に収録されている『スプリング・ハズ・カム』でした。それを知ったのは第三話を読んでいた途中で、あれ?読んだっけとなりました。そしてそれを読み始めても内容が全く思い出せませんでした。いけませんね、年のせいでしょうか、一昔前の短編を忘れてしまっているとは情けない。

しかしながら再読して良かったと心から思いました。これは間違いなく傑作です。他の作品も水準をクリアしており、第一話の『美しい雪の物語』はミステリ色が薄いです。『重力と飛翔』に似たトリックは読んだ事があります。それでも表題作と共に佳作だと思います。これだけの実力を持っているのなら、もっと書けば良いのにと勝手な願望を抱く私なのでした。

No.1 7点 sophia
(2026/01/14 17:25登録)
ネタバレあり

●美しい雪の物語 7点・・・最後の一言で本人も知らず全てが明らかになる仕組みが巧み
●重力と飛翔 5点・・・どこで撮られたかを謎にしているのが苦しいところ
●狼少年ABC 6点・・・海外の知識がないと解けない謎ではありますが
●スプリング・ハズ・カム 9点・・・これがずっと読みたくて

東京創元社ミステリ・フロンティアの刊行予定にかねてより名前はあれど一向に刊行されない「スプリング・ハズ・カム(仮)」という中編集が、「狼少年ABC」とタイトルを変えて待望の刊行となりました。謎解きが自らのルーツを知ることにつながる「美しい雪の物語」と「狼少年ABC」。未来はきっと明るいという思いの末の行動が不可能状況を生む「重力と飛翔」と「スプリング・ハズ・カム」。「スプリング・ハズ・カム」の真相には、この著者はこういうこともするのかという意表外の思いを持ちましたが、そこに至るまでの多重解決の推理合戦も決して無駄にはなっておらず、同窓会という舞台設定も手伝って、15年前の卒業式当日の放送委員たちの微妙な心情を描き出すことに成功しています。各エピソード、ミステリーとしての出来不出来はありますが、切なくも希望に満ちた中編集でした。

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