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ミステリの祭典

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私の大好きな探偵―仁木兄妹の事件簿

作家 仁木悦子
出版日2009年11月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 tider-tiger
(2015/12/19 10:20登録)
この短篇集は、後にいくほど(小説としては)作品の質が良くなっている印象です。
最初の『みどりの香炉』を読んだ時はちょっとこれはハズレを掴んだかと思いましたが、中学生一年生向けの雑誌に掲載された作品とのことで、まあそれならば。
『黄色い花』も兄の植物趣味を推理に活かした点は良いとしても、他は特筆すべき点はないかなあ。
三番手の『灰色の手袋』あたりから面白くなっていく。ミステリとしてもっとも楽しめるのはこれですね。ただ、少ない枚数の中に仕掛けを詰め込み過ぎかな。ちょっと余裕がない。
『赤い痕』これは雄太郎がいきなり調べ物を始めるのが唐突過ぎてポカーンとなりましたが、田舎の雰囲気がなかなかよく出ていて、読み物としてはこちらの方が面白かった。
『ただ一つの物語』これが一番遊びがあって好きですね。著者が童話作家として活動していたこともうまく活かされている。
厳しいことを言わせて貰うと、ミステリファンがわざわざ選んで読むほどの作品集ではないと思う。故に厳しく6点。私はけっこう好きなんですが。

No.1 5点 E-BANKER
(2012/07/08 20:42登録)
雄太郎&悦子の仁木兄妹シリーズの作品集。
最近ポプラ社のピュアフル文庫で出版されたものを読了。

①「みどりの香炉」=ジュブナイル向けに出された作品ということで、相応にデフォルメされてるのが特徴。作者特有の「弱者へのいたわり」の気持ちがよく出ている。トリックは実に何てことないが・・・
②「黄色い花」=巻末解説によると、本作は「猫は知っていた」に先んじて発表されたシリーズ初作品とのこと。雄太郎の植物に対する造詣の深さが事件の解決にストレートに結びついているのが特徴。アリバイは何だかよく分からなかったが・・・
③「灰色の手袋」=これが一番ミステリーとしては正統派な作品という感じ。ある人物の「企み」に別の「企み」が乗っかってしまい、一見すると事件が複雑化する、というプロット。何とはなしにこの時代の「のんびりした」感じがよく出てるのが好ましい。
④「赤い痕」=事件の舞台が東京ではなく奥秩父というのが珍しい。雄太郎の推理というか直観が冴えるのだが、これは読者が推理できるというものではない。まぁ因果応報ってことを言いたいのかな。
⑤「ただ一つの物語り」=結婚し二人の子供までもうけた悦子が登場(最初分からなかった・・・)。悦子と体の弱いある女性との交流がある事件を引き起こすことに・・・。よくあるプロットだとは思うが、雰囲気のいい作品ではある。

以上5編。
正直、ミステリーとしては喰い足りない作品ばかりという印象は拭えない。
ただ、何となくノスタルジックで心温まる気持ちにさせてくれるのは確か。好きな人は好きなんだろうね。
そういう雰囲気を味わう作品なのだろう。
(③がベストか。あとは②)

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