| 袋小路 シムノン ロマン・デュール選集 |
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| 作家 | ジョルジュ・シムノン |
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| 出版日 | 2025年04月 |
| 平均点 | 6.50点 |
| 書評数 | 2人 |
| No.2 | 7点 | クリスティ再読 | |
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(2026/08/26 07:45登録) ロマン・デュールの中でも「非ミステリ」系の名作だと思うよ。いや確かに事件もあって逃亡劇もあるんだが、本質的には「非ミステリ」だと思う。 というか、ミステリの論理では話が全く動いていない小説だね。近いタイプは「片道切符」とか「新しい人生」。なんだけども人間が犯す「悪」という視点では、「雪は汚れていた」に近いニオイを感じていたりもした。結構終盤展開は「雪は汚れていた」に近いんじゃない? 大金持ちの中年女性ジャンヌの愛人兼使用人として「囲われる」主人公ウラディーミル。ヨット「エレクトラ号」の船長待遇なんだけど、「自由」の象徴かもしれないヨットさえ全然出航もせずにメンテナンスと浜辺のビストロで飲んだくれる日々。そしてジャンヌの反抗的な娘エレーヌがヨットに居座って、ウラディーミルをあからさまに蔑視する。まあ「エレクトラ」って母を殺す娘の話なんだけどもねえ。ロシア革命から一緒に逃れてきた相棒のブリニはそのエレーヌと? で、かなり特徴的なのは多少の同性愛ニュアンスがあること。これは主人公のウラディーミルとブリニ、それにエレーヌと看護婦ブランシュにそんなニュアンスを感じるところがある。まあ事件の説明も論理的な動機でもないし、もちろん同性愛感情といった「わかりやすい」言葉で説明できる問題でもない。同性愛感情で説明するならば、逆にロシア人風来坊がコートダジュールの享楽的な環境への違和感で説明してもいいくらいだろう。「嫉妬」と説明するけども、どちらか言えば「平時に乱を起こす」ような脱出願望込みのしなくていい「反逆」の部類なんだろう。しかしその脱出願望もリアルか、といえばそうでもない。そういうラストなんじゃないのかな? という具合に、主人公の行動は小説がちゃんと説明していないし、またわかりやすい小説的辻褄もない。しかしその心理はシムノン読みとしては「腑に落ちる」ところがある。 (まあブリニくん、ラストシーンの後には迷惑っぽい感情を抱いたのでは?ちなみに評者はあの看護婦は苦手キャラ) |
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| No.1 | 6点 | 人並由真 | |
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(2026/02/28 05:36登録) (ネタバレなし) 南フランスのカンヌから少し離れた港町ゴルフ=ジュアン。そこでは老富豪パブリエの妻で40代後半のジャンヌが、年頃の娘エレーヌとともに夫と離れて暮らしていた。放蕩の気があるジャンヌは持ち船のヨット「エレクトラ号」の「船長」こと船乗りの白系ロシア人ウラディミールを年下の愛人にしており、そのウラディミールはともにロシア革命から逃げてきた若者「ブリニ」の兄貴分だった。だが美男で温厚なブリニと若き令嬢エレーヌの親しげな関係に、嫉妬めいた感情を覚えたウラディミールは。 巻末の瀬名先生の詳細な解説によると、1936年春季に執筆されて同年秋に雑誌連載され、1938年に刊行された長編。 物語の縦軸は、男性主人公ウラディミールと中年ヒロインのジャンヌ、そして準メインキャラクターといえるブリニとエレーヌたちの交互の関係性の弛緩と緊張。さらにジャンヌが夫から任されたか贈られたかしたらしい屋敷に集う、有閑的な男女や使用人たちの群像描写でページが埋まっていく。 後半の山場以前に、ドラマ的な大きな転調ポイントは散在するが、登場人物たちの息遣いになじめないとややかったるい。 逆に言うと怠い、と思いかけるその直前のタイミングで、話の随所に起伏があり、そういう意味ではさすがシムノン、なかなか食えない作劇ではある。 で、瀬名先生、最後の1行に至るまで、帯でもベタボメだが、個人的には何を言いたい、書きたいかはわかるつもりだけど……という程度の感慨。 詳しいことを言うと小説の最終的な方向性のネタバレになりかねないので言葉を選びたいし、具体的な感想も控えるが、良くも悪くもグレアム・グリーンぽい文芸味を、あるパートでひしひしと感じる。いや直接、信仰などの類は出てこないが、それでも人間の(中略)という主題はグリーンあたりの諸作との共通項ではあろう。 くだんの瀬名先生が実際にそのようみたいだけれど、ハマる人にはハマるかもしれないと思える作品。ただし個人的には、作品が訴えたいことはなんとなく見えるようでありながら(?)、さほどシンクロできるわけでもないない。こういう流れだったら、こうなるだろうなあ……というのが、悪い意味で腑に落ちるからかも知れない。佳作以上の一本だとは思うけれど。 登場人物では、後半に出て来る若い看護婦のブランシュが妙にくっきりした存在感があって印象に残った。 |
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