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ミステリの祭典

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青い車さんの登録情報
平均点:6.93点 書評数:483件

プロフィール| 書評

No.403 7点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2019/07/06 20:22登録)
 ノンシリーズものが多い短編集でありながら、作者の持ち味であるコミカルな筆致は共通しています。飛び抜けて高得点の短編はないのですが、久しぶりに猫丸先輩の飄々とした振る舞いと活躍が読めたため充足感がありました。


No.402 7点 退職刑事1
都筑道夫
(2019/07/06 03:20登録)
 安楽椅子探偵ものの代表格で、法月綸太郎&法月警視などの先輩ともいえるシリーズ。白眉は最初の『写真うつりのよい女』で、推理が飛躍するカタルシスと納得度を両立させており、シリーズの方向性を示した快作です。次点は『妻妾同居』『ジャケット背広スーツ』ですが、どの短編も親子のディスカッションのみで飽きずに読ませることに成功しています。短い分量ながら極めて密度の濃い短編集です。


No.401 9点 奇術探偵 曾我佳城全集
泡坂妻夫
(2019/06/29 19:58登録)
 マジックにも造詣が深い泡坂妻夫ならではの、さまざまな技巧が存分に詰まった大好きなシリーズです。収録作はストレートな本格もあれば奇妙な味もあり、耽美もあればコミカルなタッチもありと、幅広いものとなっています。個人的ベストは『カップと玉』と『消える銃弾』で、特に前者はマジックでお馴染みのアイテムを暗号に絡めるという冴えた発想がお気に入りです(同意する人は少なそうですが)。


No.400 8点 或るエジプト十字架の謎
柄刀一
(2019/06/29 18:56登録)
 南美希風が久々に登場した連作短編集。クイーン国名シリーズから取ったタイトルに読む前は名前負けも危惧しましたが、どの短編も水準以上です。特に『或るローマ帽子の謎』の、凝りに凝った論理展開と意外なところから犯人を引っ張り出す手際に快感を覚えました。ただ、相変わらず若干読みにくい文だけが気になります。


No.399 4点 アリバイ崩し承ります
大山誠一郎
(2019/06/27 08:05登録)
 本ミス1位にしてはイマイチな印象が拭えません。どう考えても無茶というか犯人の心理的にやらないだろうというトリックが目立ちます。(例えば、被害者の体内を調べられることを期待してそれだけで偽装などできるでしょうか?そのために○○に見える○○というのも何だかヘンテコです)かといって最終話のダウンロードのアリバイは一番無理がない分面白味に欠けていて、どっちに行っても中途半端に感じます。『赤い博物館』などはもうちょっと面白く読めたのですが。
 そして会話の魅力の無さも気になります。キャラクターの発言が上滑りしていて人が血が通っている気がしないのです。作者の目指すべきところはトリックの改善以上に文章をもっと向上させることかもしれません。


No.398 8点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2019/06/27 07:39登録)
 前作以上に地味な印象ですが、予言と人間心理を中心に展開される推理やラストサプライズなど、作者の力量を裏付けた秀作だと断言できます。腕時計の推理もいいですが、何といっても穴が無いよう随所で丹念に説明をしている辺りが強みではないでしょうか。ロジックを重んじているといっても、派手さを志向する青崎有吾氏とは違い堅実で手厚いタイプといえます。今後のミステリ界の新鋭として続編を強く期待。


No.397 8点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2019/06/27 07:16登録)
 大ネタ一発勝負というより、小刻みにポイントを稼いで面白く仕上げている作品。「いいアイデアが湧いたから書いてみました」ではなく「書き方を熟知して書いた」という感じで、作者がミステリ一辺倒ではなく幅広いジャンルの本好きと知って少し意外でした。舞台の屍人荘を活かした殺害方法やその解明も新鮮で、画的な派手さよりも理詰めによる快感が味わえる最近では稀有な収穫ではないでしょうか。


No.396 4点 邪馬台国はどこですか?
鯨統一郎
(2019/06/23 21:33登録)
 登場人物に魅力がない(若しくは役割をこなせていない)、半分お遊びのフィクションと割り切っても暴論が過ぎる、ワンパターンな展開、といった感心できない要素が目立ちました。個人の好みとして歴史ミステリそのものが肌に合わないのもあるのでしょうが。一番楽しめたのは本能寺の変の真実にまつわる話でしたが、この説が本当だとすると光秀があまりに損です。歴史に詳しい人ならこの本を読んでどう思うのでしょうか?


No.395 6点 猫丸先輩の空論 超絶仮想事件簿
倉知淳
(2019/06/23 21:16登録)
 神出鬼没の探偵役・猫丸先輩の奔放さはこの本でも十分に楽しめます。脱力もののネタもあるものの、そこも含めて作風にマッチしているので気になりません。ただし雰囲気はそのままで満足度が落ちるという意味で、前短編集『推測』の下位互換という印象も拭えないです。6.4点を四捨五入して6点と辛めに評価。


No.394 7点 本と鍵の季節
米澤穂信
(2019/01/29 08:08登録)
 また高校生が主人公?と若干悪いマンネリも疑っていたのですが、読んでみると最近の流行に媚びず端正にまとまった良作だと感じました。『913』の暗号(江戸川乱歩短編に類例あり)の扱いや、『ない本』のシリアスで哀しみを帯びたオチが印象的です。安易にハッピーエンドで締めないのが米澤作品らしく、それは初期の頃から変わってない所です。


No.393 8点 血みどろ砂絵
都筑道夫
(2019/01/28 21:00登録)
 江戸を舞台に紡がれるトリック満載の短編集です。特に好みなのは『三番倉』で、倉での殺人事件を利用して他の事件を解決しようとするなめくじ長屋の面々の策略が光ります。時代物でありつつ作品世界の雰囲気を壊さず華麗な本格に仕上げている点も感心します。


No.392 7点 友達以上探偵未満
麻耶雄嵩
(2019/01/28 20:47登録)
 他の麻耶短編集と比べてチャレンジ性のある試みやアクの強さは控えめです。強いていえば女子高生コンビというキャッチーな設定が工夫といえますが、それでも大人しく刺激に欠けるのは否めません。とはいえ、三つのどの短編でも随所で人を喰ったひねりや入り組んだロジックが散りばめられているのは作者らしくて見事です。


No.391 3点 ミステリークロック
貴志祐介
(2019/01/01 21:33登録)
 基本的に貴志祐介氏はギャグが不得手だと思います。他の作家なら受けてるにしても滑ってるにしても不快にはならないのですが、この本はどれもだらだらページ数ばかり稼いでいて、とにかくストレスが溜まるようなギャグが頻出しています。加えて表題作はトリックが辟易するほど盛り込まれていて「やりすぎ」の極致にあり、せっかくのアイデアがまるで生きてないような印象です。『硝子のハンマー』は感心しただけに、この出来は大いに不満です。


No.390 5点 占い師はお昼寝中
倉知淳
(2019/01/01 21:18登録)
 どの話でもユーモラスなタッチが貫かれている点は作者らしくてとても好みです。しかし、発想の飛躍があまりに小さく、いずれも手堅い所に落ち着いてしまっているのは頂けません。軽い読み物としては楽しいですがミステリとしての満足感がないという意味で厳しめの点数です。


No.389 4点 Bハナブサへようこそ
内山純
(2018/12/14 17:22登録)
 最終話を除いて登場する事件はビリヤードと特に関係なく、ごくオーソドックスな体裁の連作です。持ち込んだ独自の素材が話と溶け合わず分離したままなのが残念で、事件の鍵をビリヤード用語になぞらえるという範囲にしか活かされてないように思えます。よけいな設定をどけて普通のミステリ一本で勝負した方が面白いのでは?


No.388 9点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2018/12/10 06:52登録)
 まさに島田荘司ワールド全開といった感じ。細かいリアリティ云々といった批判が通用しない本格推理作家というのはこの人ぐらいじゃないでしょうか。後半の目くるめく展開などは最早ミステリの枠を飛び越えているような気さえします。説明しきれない箇所はすべて偶然で片付けている所など普通なら到底許容されないのですが、それをものともしない勢いが驚異的な傑作です。


No.387 7点 聖女の毒杯
井上真偽
(2018/12/09 14:42登録)
 前作から更に複雑化した論理展開が面白いです。トリックの提示と破棄を長い一覧表にして説明するなど、凝りに凝った推理が楽しめます。残念なのは、毒殺の方法をこれだけ考えておきながら、最後あっけなく小ぢんまりと着地してしまった点です。前作の好き放題にトリックを連発した豪快さと比べ、明らかにスケールダウンしています。題材的に仕方ないとはいえ、もう少し派手さを期待していました。


No.386 8点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2018/12/09 14:31登録)
 犯行を「証明する」のでなく「否定する」探偵という特殊な着想が活きた快作。連発されるトリックとそれを打ち消すロジックだけでなく、終盤に探偵の推理が矛盾を来してしまう展開など、飽きさせない面白さがあります。ただ、こういう特殊すぎる作品が生まれてしまう事は、ストレートなパズラーを書く道が遂に袋小路にぶつかってしまっている証拠のような気がして、危機感も覚えます。


No.385 7点 OZの迷宮
柄刀一
(2018/12/09 14:20登録)
 個々の短編というより全体の構想に感心した作品集。偶然が多かったり、根拠に乏しかったりなどの詰めの甘さも散見されますが、魅力的な謎を提示する作者の腕は確かです。よけいな遊びのない文体にも好感が持てます。好きなのはユニークな犯行の『逆密室の夕べ』です。


No.384 6点 ゴーレムの檻
柄刀一
(2018/12/09 14:10登録)
 『アリア系銀河鉄道』と比べ、異世界の設定が面白さに直結してないのが目立ちます。表題作をはじめ、どれも辻褄は合うけれども突き抜けてないトリックなのが大きく不満です。他の誰もやってないアイデアで勝負している所は評価されるべきだと思いますが。

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