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ミステリの祭典

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ロマンさんの登録情報
平均点:8.08点 書評数:177件

プロフィール| 書評

No.57 5点 長い家の殺人
歌野晶午
(2015/10/20 16:50登録)
トリックは見取図で見当がつく。長い廊下と壁に非常口がないこと、ギリシャ文字も逆効果。泥棒が壁を汚す記載でほぼ確定。彼に睡魔が出た時点で被害者だと見当もつく。「部屋にいくのか?」の一言で奴が既に容疑者っぽい。知性が高い描写と酒を持参したことも怪しい。トリックを仕込むタイミングでの動きでほぼ確定。その為、鞄のミスリードも回避しやすい。第二の犯行は動機が隠蔽行為で手法も同じと判断可能。アレが動機なのも探偵役の無駄な描写で予測可能。暗号は怪しいとは思ったがやられた。叙述の部分はやられた。


No.56 9点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2015/10/20 16:45登録)
屋根の上の奇妙な死体。人喰い楠の木。風見鶏のオルゴール。謎の建造物、巨人の家。おどろおどろしい雰囲気、得体の知れない異国人など、雰囲気満点の舞台に引き込まれました。レオナの強気かつ繊細なキャラクターも良い。楠の木から実際に遺体がゴロゴロ発見されるシーンは秀逸。肝心の大胆なトリックには啞然、のちにじわじわ笑いが込み上げて来たけれども。傑作ですよ。


No.55 7点 家蝿とカナリア
ヘレン・マクロイ
(2015/10/20 16:40登録)
家蝿とカナリアというユニークな手掛かりもさることながら、劇中の最中堂々と犯行が起こる、事件状況も魅力的。訳も読みやすく、各登場人物も個性的で描き分けができており、物語としても純粋に楽しめるだろう。ミステリとしては、巧妙に張り巡らせている伏線を回収し、蠅とカナリアから導かれる解決が見事。ただその反面、二つの手掛かりの片方に気づくと犯人が簡単にわかってしまうというのが難点か。また、本格ミステリとしては犯人を追い詰めるロジックがなく、あくまで物証の手掛かりだけの解決というのが弱いというか、気になったりも。


No.54 6点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2015/10/20 16:37登録)
トリックや動機に驚きはなかったものの、雰囲気に引き込まれて一気に読んでしまった。 火山の噴火により孤立したうえ、夜な夜な人が消えていくという極限状態が、リアルなのにどこかコミカルに描かれていて、エンターテイメント性十分。 難点としては、ダイイング・メッセージの解釈が少々強引なこと、やはり登場人物が多すぎて、最後までキャラ立ちしてない人も多かったことと、メインでない人達の性格とかを掘り下げられなかったため、言動が唐突に感じるところが多かったこと。


No.53 9点 悪意
東野圭吾
(2015/10/20 16:26登録)
完全に野々口(東野圭吾)の手のひらで踊らされた。前半で、こんなにさくさく解決していくのに、本の後半には何を書く必要があるんだと思ってしまった。推理が急変していく、加賀が指摘した4つの違和感。確かに、最初にその箇所を読んだときに、自分も若干感じてたなと思った。でも、なぜ違和感だと思ったか、それが何を意味しているのかっていうのには、全く考えも及ばなかった。久々に大どんでん返し(自分の予想を大きく裏切る)の真相にビックリ。「悪意」は、途中まで日高のものだと思っていたが、野々口のものである方がすごく根深い。


No.52 8点 三幕の殺人
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 16:23登録)
あまりにも大胆。ポアロの一言も、実に当を得た発言。故にアガサ・クリスティーが構成した三幕の演劇としてこの小説を読めば、あまりにも犯人は明白である。それでいて、ポアロの立場に立った時にはミステリの難易度が跳ね上がる。怪しい人物が乱立し、完全なる証明が難しい。けれども正しい論理でなければ頂点まで組み上がらない。そのバランスは流石クリスティ。


No.51 7点 エラリー・クイーンの冒険
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 16:18登録)
十編からなる短編集。謎自体が魅力的だっのが『七匹の黒猫の冒険』猫嫌いのお婆さんが毎週一匹おなじような黒猫を購入するという、地上から30センチだけ浮いたような、奇妙なお話。それを解き明かすエラリイの論理、発想は、こちらもいちいち現実感が薄い。なのに、やっぱり、手がかりから一番現実的に推論するとそれしかないから、奇妙な味わいがある。また、謎の真相=犯人ではなくその二つをきちんと論理で繋いでいるところが好印象。『アフリカ旅商人の冒険』はロジックが美しかった。三人の学生たちの間違い推理も愉しい。


No.50 9点 ギリシャ棺の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 16:15登録)
格段に複雑な構成の作品。『論理』を軸にして、このように展開が二転三転する長大な作品を組み上げるのは流石としか言いようがない。また、読者への挑戦状でも自信をのぞかせているように、犯人の意外性という点でもトップクラスだと思う。ただ、複雑であるがゆえに、全体を通した論理の明快さには欠ける印象も受けた。


No.49 9点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2015/10/20 16:10登録)
大邸宅でゲストを招いて行われた推理劇は被害者役の人物が本物の死体となって発見され、嫌疑を掛けられたピンカートンは素人探偵シェリンガムに助けを求めるが……ピンカートン氏の草稿・独白には途中まで苛々させられたが、そこには二重三重作者の巧妙な仕掛けが・・それは巧いズルい、そして見事!


No.48 7点 館島
東川篤哉
(2015/10/20 16:05登録)
天才建築家・十文字和臣が自分が、建てた家で墜落死した。半年後、和臣の妻の意向により、当時の事件関係者たちが集められ、新たな殺人事件が…。そこに居合わせた刑事と女探偵が事件解決に挑む。斬新かつ大胆なコンセプトで建てられてた舞台の館。トリックも大胆である。


No.47 8点 十三番目の陪審員
芦辺拓
(2015/10/20 16:02登録)
裁判員制度導入前に書かれた、陪審員制度での法廷ミステリ。面白かった。DNA鑑定も欺く人工冤罪という壮大なアイデアからの状況の反転、そしてスリリングな法廷での駆け引きまで一気通読。DNA絡みのネタの真相には若干脱力するし、冒頭の原発事故の話は全体の中でどうにも浮いてる感が強いけれども、「裁判の結果がどっちに転んでも最悪」という状況をきっちり積み上げた上での、陪審員というシステムを利用した鮮やかな解決はお見事。


No.46 9点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2015/10/20 15:58登録)
ミステリー王道の舞台、登場人物、設定でペダンチックに如何にもそういう物語を進め、その実全ては読者への目くらましという驚異的な構想を現実化した作品。そう考えると副題にも納得。しかし真相へのフェアな推理要素もしっかり含まれている(推理できる人は皆無だろうが)。登場人物の警戒心が足りないとか、犯人の筋力など疑問点は多々あるが、それ以前にもっと皆が違和感を感じるポイントを用意し、真相の違和感を際立たせている点は上手いと感じる。ただし確実に読者を選ぶ作品であり、会話の発言者が分かり難い等、技術的問題も感じる。


No.45 9点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2015/10/20 15:53登録)
雪の降りやんだ別館で、女優の遺体がみつかる。そこは発見者の足跡のみがついた、まさに雪密室。〔足跡なき犯行〕型の、カー氏お得意の密室事件。H・M卿の推理を紐解く一言で、あっという間に心を持って行かれる。分かってみると、普通に起こり得る犯罪に、トリックも込み入っているわけではないが、犯行に向かう人間心理の論理のわかりやすさや、犯人にしか有り得ない言動、考え方をさらりと折り込んでいるのは流石としか言えない。読者と正面から、向き合っているミステリーだと思う。


No.44 8点 ポアロのクリスマス
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 15:47登録)
クリスマスの華やかさと殺人の血の滴りのアンバランスが効いた良質の本格ミステリー。偏屈な当主を始め一族の人物描写が鮮やかで、不穏な空気をかもし惨劇を予想させる。このハレの雰囲気こそが読者の目をミスリードする著者最大のトリック。盲点を突くフーダニットと、何気ないダブルミーニングの言葉の巧さに舌を巻く。血みどろの密室殺人や謎の盗難事件というお約束をあえて踏襲しつつ、そこに“Why”の引っ掛かりをつけ状況を逆に見る推理に繋げる捻りといい、よく考えられている。


No.43 9点
F・W・クロフツ
(2015/10/20 15:42登録)
謎のひとつひとつを様々な角度から検証し、丁寧に解きほぐして真実を明らかにしていくその過程が非常に面白かった。奇想天外なトリックや大どんでん返しで驚かせる、というタイプの本ではないが、全てきちんと説明がつくように精緻に組み立てられており、読み終えた時の充足感は大きい。アリバイや、決定的な3つの証拠が覆された時は思わず唸った。


No.42 8点 赤毛のレドメイン家
イーデン・フィルポッツ
(2015/10/20 15:40登録)
犯人像が怪物的過ぎるなど、一部の人物造形が過剰なきらいはある。だが、推理小説としての構成は、それによって不自然になっていない。言うなれば、構成を有機的なものにするため、登場人物をその枠の中で十全に利用できており、作者が彼等に流されない冷静さを感じた。これは当時としては新しかったのかもしれないし、故に推理小説の姿勢の手本として、名作とされ、読み継がれているのだろう。現在となっては珍しくもないトリックだが、推理小説初心者の頃に読み、驚くことができて良かったと思う。


No.41 9点 黒いトランク
鮎川哲也
(2015/10/20 15:33登録)
黒いトランクの中に入っていた死体を巡って、鬼貫警部が推理していく。トランクと人間が西へ東へ移動し、その中でアリバイやトランクすり替えのトリックを解決していくが、自分では解けなかった。よく読むと細かな伏線が序盤にあり、作品の精緻さがうかがえる。福岡―東京間の移動がやけに長かったり、殺害の動機に時代を感じたりして、それがまた作品に一味加えている。


No.40 8点 彼女が死んだ夜
西澤保彦
(2015/10/20 15:16登録)
帰宅したらリビングに死体があった。明日からは夢だったホームステイに出発予定。悩んだ彼女は死体を遺棄する…。西澤保彦の匠千暁シリーズシリーズ第1作。いくらなんでも死体遺棄するかという突っ込みをしつつ一気読み。大学生が酒盛りしながら事件を解決するという珍しいパターン。意外な真相でなかなか面白かった。


No.39 8点 エジプト十字架の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 15:08登録)
愉しく読み終えて振り返ったときに、総じて緻密な構成力に唸らされる傑作。国名シリーズ既作と比して外連味のある事件立てだが、そのこと自体がトリックの重要な要素として機能する無駄の無さ。首なし死体から想起される詐術も二段構えで手強い。にも関わらず、解決編での単純にして明快な指摘が意外な犯人を明らかにするスマートさ、複雑な全貌を一瞬にして解きほぐす爽快感が素晴らしい。


No.38 9点 招かれざる客たちのビュッフェ
クリスチアナ・ブランド
(2015/10/20 15:01登録)
皮肉の利いたブラックなオチと冴え渡るどんでん返し、本角度抜群の多重推理と様々な趣向の名品が楽しめるブランドの傑作短編集。それにしても短いページ数でもとことん魅せるプロット作りが巧い作家で、ベスト級の短編ばかり。「カップの中の毒」「スコットランドの姪」「ジャケット」「メリーゴーラウンド」「この家に祝福あれ」などが大好きだが、個人的ベストは細かな伏線と推理の捻りが利いた多重推理の傑作二編「婚姻飛翔」「ジェミニー・クリケット事件」。ブランドの凄さを再認識。

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