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ミステリの祭典

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りゅうぐうのつかいさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:84件

プロフィール| 書評

No.44 7点 プリズム
貫井徳郎
(2016/07/02 15:18登録)
小学校の女性教師の死を巡って、その教え子、同僚の女性教師、元恋人、教え子の父親の4人の視点で繰り広げられる調査と多重推理、疑惑の数珠つなぎ。
各人の推理の課程をたどっていくのが楽しい作品だ。
その構成の妙と、それを可能にした被害者を取り巻く人間関係構築の妙が目を引く。
周囲の男性を手玉に取り、同僚女性教師には負い目を感じさせる、悪魔のような無邪気さを持つ被害者の性格設定が光っている。


No.43 6点 死者はよみがえる
ジョン・ディクスン・カー
(2016/06/27 17:20登録)
掟破りの真相、この作品を一言でいえば、そうなるのだろう。
無銭旅行後の無銭飲食、その後の死体発見と逃亡、という冒頭のエピソードから読者を作品世界へと引き込み、次々と不可解な謎が提示され、事件に関する捜査と議論が繰り返され、事件を巡る人間関係が明るみになっていく構成は、満点と言えよう。
しかしながら、「え?そんなことが可能なの?」と思わざるをえない真相は、事前の説明が不足で、故意の隠ぺいとしか思えず、本格的視点から見ると零点だろう。
ホテルの事件での犯人の侵入経路に関しても、図は示されているものの、意図的に議論が伏せられている。
また、途中で示された「12個の不可解な謎」の内で、鍵が鍵穴に差し込んであった謎について、十分な説明がなされていない点も不満。
作中で、ニセの手掛かりをばら撒いている可能性があることや、犯人が必ずしも合理的な思考をするとは限らないこと、こういったことを登場人物に語らせている点に興味を引いた。
タイトルの意味、死者とは誰なのか、真相を知るとわかる仕組みになっているのが面白い。


No.42 5点 天啓の殺意
中町信
(2016/06/20 17:38登録)
落ち目の推理作家が犯人当てリレー小説の原稿を推理雑誌の編集者に持ち込んだ直後に失踪。編集者は、その原稿が過去に起こった事件そのままであることに気づき、その真相解明のために調査に乗り出す。
作中にその原稿を取り込んだプロットが面白い。事件関係者相互の関係性の構築が巧妙。旅情性もあって、とても読みやすい作品だ。
『捜査』の章の最後まで読むと犯人がわかってしまうが、「この人物に本当に犯行可能なのか?」と不思議に思い、ページを繰りなおしてみた。確かに非常に意外性のある真相ではあるが、インチキすれすれというよりも、インチキそのものとしか思えない記述には、評価を下げざるをえない。

(ネタバレ)
犯人は、亀岡、片桐、尾道の3人にニセの顔を見られている。それなのに、この3人に真相解明のために聞き取り調査を行っているのはやりすぎだろう。特に、亀岡は客の顔を1度見たら忘れない優れた記憶力の持ち主なので、すぐに気づかれてしまう危険性が高いはずだが。
また、犯人が柳生の原稿を読んだ際に、「この小説のストーリーによく似た作品を、なにかで読んだことがあるような気がしたのだ」と感じ、過去の新聞記事を調べる記述があるが、いくらなんでもこれはひどすぎる(自分が実際にやった犯罪なのだから、すぐに気づくはずのこと)。


No.41 6点 ねじれた家
アガサ・クリスティー
(2016/06/12 11:55登録)
ねじれた家族に発生する、ねじれた殺人事件。
2件の殺人と1件の殺人未遂が発生するが、いずれも特別なトリックが使われているわけではないし、事件関係者の全員が犯行を行いうる状況であったため、アリバイに関する論議は一切なく、動機が主な議論の対象。犯人を特定する十分な手掛かりが与えられてはいないので、本格ミステリーとは言えない。伏線らしきものがいくつか見受けられるが、それも犯人を特定するようなものではない。
ポアロもマープルも登場しないのは、推理や捜査過程を中心に据えた物語ではないためだろうか。クリスティーが描きたかったのは、このねじれた家族関係そのものなのだろうか。
クリスティーの十八番、お金持ちの遺産相続をめぐる殺人事件で、シンプルな設定の人物配置、お互いの心理的関係の描写など、わかりやすく、読みやすい作品だが、あまり印象には残らない作品。
ちなみに、犯人は予想通り(予想以外の何物でもない)。


No.40 6点 世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午
(2016/06/07 05:15登録)
自分の息子が連続誘拐殺人事件の犯人ではないのか、そういう疑心暗鬼から生まれた「想像の巻き戻し」、シミュレーションの連続。この特異な小説のスタイルが印象的だ。
シミュレーションのそれぞれで面白いストーリー展開を見せ、リーダビリティーが高い。この先どうなるのか、曖昧模糊としたまま終了するラストも余韻がある。
犯罪加害者の家族が世間からどのような仕打ちを受けるのか、マスコミからどのように報道されるのか、そういったことが克明に描かれており、考えさせられる内容。実際の事件報道は他人事にすぎないこと、事件の当事者と第三者とでは大違いであることを改めて感じさせてくれる物語であった。
雄介の部屋という、パンドラの箱を開けた主人公は、箱の底に希望を見出すことができたのだろうか。


No.39 8点 ケンネル殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2016/05/31 13:00登録)
派手さはないが、良くできたパズラー小説で、古い作品だが、今読んでも古さを感じない。
矛盾をはらんだ、不可解な状況が次々と示されるが、真相はそれを十分に説明しており、納得できるもの。
犯人特定や、中国人料理人がある事実を知っていたことを指摘するヴァンスの推理も論理的。
密室トリックの方法も、図があって、わかりやすい。
登場人物の数やその行為、ストーリーの進行、ヴァンスの捜査内容等、いずれも無駄がない(スコッチ・テリアや中国陶器のことも、真相解明に関係していた)。
犯行が行われた図書室と、死体が発見された二階の部屋とで距離が離れていた理由は突飛だし、犯人の意図しない、複数の要因が複雑に絡み合っているので、読者には推理困難な作品。


No.38 6点 怪しい人びと
東野圭吾
(2016/05/27 23:23登録)
ロアルド・ダールの「あなたに似た人」と同様に、「奇妙な味」を持ったライトな短編集。
各短編ともに、冒頭からの興味深い話で関心を引き、不思議な謎が示され、それなりのオチが用意されている。
主要な登場人物が3人で、いずれもが"怪しい人びと"である「灯台にて」が最も面白い。
「寝ていた女」
友人の逢い引きのために部屋を貸してやると、見知らぬ女が居付くことに…。
「もう一度コールしてくれ」
2年前の高校野球のコール(判定)を巡る恨み。その時の審判宅に押し入って、再度聞いたコールの結果は…。
「死んだら働けない」
仕事のやりすぎにはくれぐれもご用心。
「甘いはずなのに」
新婚旅行で出会った老人が、重要な役割を担う。
「灯台にて」
僕と祐介との関係は、旅の前後でどのように変わったのか。
「結婚報告」
学生時代の友人からの結婚報告の手紙に同封されていた写真。友人の顔が別人のように変わっている…。
「コスタリカの雨は冷たい」
コスタリカで強盗に襲われる話。この短編集では、一番意外性のない真相。


No.37 7点 緑は危険
クリスチアナ・ブランド
(2016/05/24 15:50登録)
登場人物は限られており、冒頭で7人の中に犯人がいることが宣言されている、パズラー小説。
この7人と患者1人との間の恋愛模様を織り交ぜながら、2つの殺人事件と2つの殺人未遂事件が発生する。
犯行の可能性、殺人の方法や動機など、それぞれに工夫が凝らされている。
2つ目の殺人事件で、被害者が二回刺されていた理由、手術着を着せられていた理由の真相が面白いし、3つ目の殺人未遂事件の動機も面白い。
しかしながら、1つ目の殺人事件と4つ目の殺人未遂事件における手術中の殺人トリックだが、このような方法が実現可能かどうかを、読者には判断できない。
この方法がわかって初めて、誰が犯行を行いえたかを考えることができ、2つ目の殺人事件における「二回刺されていた理由」も説明できるので、読者には最後の方まで推理ができない。
また、犯行動機は登場人物の過去に根差しているのだが、そのつながりが直接的には書かれていないので、想像力が必要。
読者がこの真相を推理するのには、相当な推理力が必要ではないだろうか。
コックリルの捜査だが、容疑者を隔離しての焦らし戦術であり、事件に対する議論が不足しているのが不満。


No.36 8点 R.P.G.
宮部みゆき
(2016/05/17 22:28登録)
親子の絆が希薄になった現代社会で、ネット社会に絆を求めて生まれた「仮想家族」。それによって、引き起こされた殺人事件。社会派ミステリーとして、ユニークな視点で問題提起がなされていると感じた。
物語の終盤になり、犯人が判明した時点では、ありきたりな真相で平凡な作品だと思ったが、文庫本の285頁まで読み進むと、世界が一変した。この事実は、全く予想だにしておらず、意表を突かれた。
ただし、犯人が所田良介を殺害した理由は理解しがたい。
タイトルが秀逸。疑似家族のR.P.Gのことだと思っていたら、それだけではなかった。

(ネタバレ)
あとがきで、作者は、地の文の中に真実でない記述があることを詫びているが、その部分を読み返してみると、自己紹介の後にそのことを使っているので、個人的には特に問題があるとは思わなかった。


No.35 6点 死の猟犬
アガサ・クリスティー
(2016/05/15 11:59登録)
「検察側の証人」、「ラジオ」、「青い壺の謎」以外は、超常現象を扱った話。
超常現象を扱った話は、ストーリー自体に面白みがなく、すぐに忘れてしまいそうな作品ばかり(実際、既にほとんどの作品が思い出せない)。
唯一、「翼の呼ぶ声」は、お金持ちが持つ悲哀をうまく描けていると感じた。
「死の猟犬」は、意味不明な作品。"第六のみしるしの秘密"とは何だろうか。"円を閉ざさないように気をつけて"とは、どういう意味なのだろうか。なぜ、こんな意味不明の作品が表題作なのだろうか。
「ジプシー」と「S.O.S」は、ややこしい話で、一読では理解できずに読み返したが、たいした話ではなかった。
「検察側の証人」は、結末で読者をあっと言わせる短編小説の傑作。以前に戯曲版を読んだことがあるが、戯曲版では続きがあって、さらに驚くべき内容になっている。
「ラジオ」は、皮肉な結末が面白い。
「青い壺の謎」は、意外な真相ではあるが、こんな、確率が低くて、面倒くさいことをわざわざするとは思えない。


No.34 5点 メビウスの殺人
我孫子武丸
(2016/05/09 18:01登録)
犯人側の視点と警察官の視点が切り替わり、スピーディーに物語が進行していくので、読みやすい作品だが、この真相は、ミステリーとして見ると物足りない。
もう一人の犯人の正体、ミッシングリンクの意味、現場に残された数字の意味など、いずれも肩透かしであった。
椎名が独房で最後に考えたことを真相とした方が、まだしも面白いと感じた。


No.33 6点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2016/05/02 19:22登録)
ポアロとオリヴァが、過去の出来事を忘れない"象"を探し出して聴き取り調査を行い、過去の事件の真相を追求する話。
私は普段、ミステリーを読んでいて、ほとんど真相がわからないのだが、この作品に関しては、マーガレットとドロシアの関係がわかった時点である疑いを持ち、それ以降、それを補強してくれる事実が次々と出てきたので、最終章の手前では真相の大部分を予想できていた。
ヒントがわかりやすく、真相が予想しやすい作品ではないだろうか。
事件の背景にあるもの、時間的拡がり、人物配置、真相のまとまりなど、よくできた作品だと思う。


No.32 6点 体育館の殺人
青崎有吾
(2016/04/26 16:06登録)
事件は、学校の体育館で起こった殺人事件1件のみで、事件を取り巻く状況はいたってシンプル。「読者への挑戦」を付けた本格志向の作品(もちろん、私は真相も犯人も全くわからなかった)。
この作品は、ロジックが売りのようであるが、確かに論理的な推理が示されている部分もあるが、強引な決めつけによるロジックの綻びも随所に見られる。
犯人の密室からの脱出は意外な方法ではあるが、危険すぎるし、この方法が使えるかどうかを記述内容だけでは読者に判断できない。
現場に残された傘の存在が大きな欺瞞になっており、解決編はなかなか読みごたえのある内容であった。


(ネタバレ)
裏染が示した、DVDとビデオデッキのリモコン切り替えの論理だが、他の理由も十分に考えられる。
たとえば、次のような理由だ。
①演劇部員が前日にリモコンでビデオの電源を切った際に、誤ってDVDの切り替えボタンを押した。
②事件のあった直前に、朝島がDVDを見て、それを他人に知られたくなかったので、コンセントをビデオの方に戻した。
また、犯人がDVDの内容を直ちに確認しなければならなかった理由も説得力に欠ける。確認せずに、2枚とも持ち出せば良かったのではないだろうか。犯人が映像関連に重点を置いて捜査が進められることを危惧したから、という理由を挙げているが、まるで説得力がない。
傘の論理に関しても、ブランド品だから置き忘れの傘ではないと決めつけているのは強引だ。たとえば、部室に置き傘をしているようなケースなら、ブランド品でも構わないはずだ。また、傘を2本持って出入りする生徒が防犯カメラに映っていなかったことから、学校の外に出て傘を入手した可能性はないと断じているが、折りたたみ傘で外に出て、戻ってくる時には折りたたみ傘を畳んでバッグに入れれば良いだけではないだろうか。帰りのときだけ、ご都合よろしく、備品室の傘を借用したことになっているのは、どうにもいただけない。


No.31 6点 ABAの殺人
アイザック・アシモフ
(2016/04/19 12:55登録)
アメリカ図書館協会(ABA)年次大会の開催中に、新進作家デヴォアが殺され、親交のあった作家ジャストが、自分が約束を守らなかったせいで殺されたのではないかという疑念から、調査を開始し、紆余曲折の末、真相にたどり着く物語。
作者アシモフが実名で登場し、ジャストから本作品の原稿の素案をもらうという設定が面白い。
癖のある人物ジャストと他の登場人物との絡みを織り交ぜながら、軽妙な語り口で話は進んでいくのだが、事件が起こるまでが長く、必要な情報量から考えると、「本当にこんな分量が必要?」、と思わずにはいられない。
面白い真相ではあるが、そこに至るまでの課程がまわりくどい。また、真相の確証となる事実が、ジャストの直感的な気づきの後に確認されるものなので、読者が真相を推理できるような代物ではない。


No.30 6点 灰色の北壁
真保裕一
(2016/04/08 23:27登録)
ミステリー要素を兼ね備えた山岳中編小説3作。

「黒部の羆」
舞台は、剣岳源次郎尾根。
矢上と瀬戸口の2人組パーティー間のわだかまりによって、事故が起こる。救助に向かう元山岳警備隊員で、山小屋の管理人の樋沼。
最後の方まで読み進めていくと、「あれ?」と思い、ミステリー的な仕掛けがあることに気づく。

「灰色の北壁」
舞台は、架空の8000m足らずのヒマラヤの高峰カスール・ベーラ。
その山に初登頂した御田村と、御田村の妻を奪い、カスール・ベーラの難ルート「ホワイトタワー」を初登頂した刈谷と、御田村の息子との間の確執。刈谷の初登頂に向けられる疑惑。
ミステリー要素は、密告したのは誰か、刈谷が隠そうとしたものは何か、といったことだが、意外性のある真相で、その理由も人間性に根差した納得のいくもの。

「雪の慰霊碑」
舞台は、2435mの北笠山(架空の山と推定される)。
息子が遭難した冬の北笠山に単身入山した坂入、死ぬつもりではないかと心配する息子の元婚約者の多映子、多映子に想いを寄せながら、叔父の捜索に向かった雅司。
雅司が叔父に伝えたかったことは何か。
坂入が入山した理由は何だったのか。
予想外の理由が明らかになる。


No.29 6点 トレント最後の事件
E・C・ベントリー
(2016/04/06 07:17登録)
探偵小説と恋愛小説との融合であることに意味があったし、「最後の事件」であることにも意味があった。事件の状況づくりに工夫が凝らされているし、二転三転するストーリー運びも面白い。真相につながる証言が、さりげなく盛り込まれているのには感心した。
ただし、トレントの推理は、ある人物に特殊な能力があることを知らなければできないので、それを知らない読者には無理。その人物が最後に行う供述の一部は、判明している事実を無視したものなので、おかしいことに気づくのは容易。
アンチミステリーとしてみれば、面白い作品。


No.28 8点 白光
連城三紀彦
(2016/04/01 19:21登録)
事件そのものはシンプル。その背景に、過去の出来事、家族内の複雑な人間関係、裏切りと報復の連鎖がある。
後半は、各個人だけが知っている事実に基づく多重推理、多重告白の連続。芥川龍之介の「藪の中」を連想した。予想だにしていない人物の意外な告白もあって、意表を突かれた。
真犯人と言うべき人物は、想定外の人。エンディングも情緒があって、すばらしい。
ある意味では、「お互いに協力していないのにも拘わらず、全員が犯人」と言えるような物語。このような不思議なストーリーを実現させた作者の手腕に拍手。


No.27 6点 復讐の女神
アガサ・クリスティー
(2016/03/28 17:55登録)
本作品では、マープルと犯人が直接対決する危機一髪の場面があり、興味深い(しかし、あの場面で登場する二人も真相に気づいていたのではないだろうか)。
マープルの推理は、ロジックではなく、人間観察と直観に基づくものであり、本格的な妙味は薄い。
人間の持つ複雑な感情に根差した犯行動機や、殺人偽装とそれを行った理由は面白い。
しかし、なぜ、依頼者のラフィール氏は、マープルに依頼目的を具体的に示さなかったのだろうか。バス旅行に参加し、旧領主邸に宿泊するように指示したのはなぜか。ラフィール氏は真相がどこまでわかっていたのだろうか。最後まで読んでもわからなかった。


No.26 6点 虹を操る少年
東野圭吾
(2016/03/21 17:32登録)
ミステリーではなく、ファンタジー。
光楽、光のメロディーという概念が何といっても面白い。以前より、音楽が人を感動させることに不思議さを感じており、それと同じことを光でできないかという発想に斬新さを感じた。
カリスマ、教祖としての光瑠のキャラクター設定や、彼がやろうとしたことも魅力的。
夜の闇を失ったことによる人の光への感受性の低下、教祖と呼ばれる人物と光との関連性、ダーウィン進化論と関連付けて権力者との闘争につなげるなど、下地となるアイデアもすばらしい。
素材として、とても良い内容を持っていながら、物語としては消化不良の印象が拭えないのは何とも残念。
光瑠が功一に託した光楽の楽譜によって光瑠の居場所がわかるという設定には、いくらなんでも無理がある。


No.25 7点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2016/03/15 15:53登録)
亡くなった女性を夫と同じ墓に埋葬しようとしたら、出てきた身元不明のもう一つの死体の謎。それに、以前に起こったエメラルド盗難事件をめぐる謎、行方をくらました自称自動車修理工の謎、暗号の謎など、様々な謎が絡みあって、ややこしく、わかりにくい話。翻訳作品特有の読みにくさも相まって、読み進めていくのが大変で、なかなかページが進まなかった。真相につながる情報が小出しで出てくるので、読者が謎解きできるような話ではないし、暗号の謎やエメラルドの隠し場所の謎の真相もぼんやりとしかわからない。最後から2ページ目まで読み進めて、ようやく、こういう話だったのかと納得。まさしく、神の裁きであり、ナイン・テイラーズというこの作品のタイトルにうってつけの真相。

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