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ミステリの祭典

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灰色の北壁

作家 真保裕一
出版日2005年03月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点
(2016/05/31 09:39登録)
書評数、500件記念。
山岳物3連発。

「黒部の羆」 大学の山岳部の二人が冬山で遭難。そのうちの一人が怪我で動けず、救助を呼び、山小屋管理の山男が一人救援に向かう。学生二人の間には確執があった。
ミステリー的な仕掛けよりも、中途の情景描写と彼らの心境描写で読ませる筆力に唸らされる。

「灰色の北壁」 書体を3種使い分けているのは少し抵抗がある。こんなヒントがなくたって解けるぞと言いたい。もちろん真相はわからなかったが(笑)。
本作もあっと驚く真相が控えている。囚人のジレンマみたいなところがあって、かなり好み。

「雪の慰霊碑」 遭難死した息子の命日に合わせて、息子が死んだ山に挑む父親。
その理由当てだってことは、すぐにわかった。真相もピタリと当てた。
本作もシリアス物だけど滑稽にも見える。最後まで描かなかったのが救いか。
ミステリーというよりは・・・

山での描写が作者のハードボイルド文体に合っていた。
1,2作目は大絶賛したい。3作目もまずまずの出来だった。

No.2 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/04/08 23:27登録)
ミステリー要素を兼ね備えた山岳中編小説3作。

「黒部の羆」
舞台は、剣岳源次郎尾根。
矢上と瀬戸口の2人組パーティー間のわだかまりによって、事故が起こる。救助に向かう元山岳警備隊員で、山小屋の管理人の樋沼。
最後の方まで読み進めていくと、「あれ?」と思い、ミステリー的な仕掛けがあることに気づく。

「灰色の北壁」
舞台は、架空の8000m足らずのヒマラヤの高峰カスール・ベーラ。
その山に初登頂した御田村と、御田村の妻を奪い、カスール・ベーラの難ルート「ホワイトタワー」を初登頂した刈谷と、御田村の息子との間の確執。刈谷の初登頂に向けられる疑惑。
ミステリー要素は、密告したのは誰か、刈谷が隠そうとしたものは何か、といったことだが、意外性のある真相で、その理由も人間性に根差した納得のいくもの。

「雪の慰霊碑」
舞台は、2435mの北笠山(架空の山と推定される)。
息子が遭難した冬の北笠山に単身入山した坂入、死ぬつもりではないかと心配する息子の元婚約者の多映子、多映子に想いを寄せながら、叔父の捜索に向かった雅司。
雅司が叔父に伝えたかったことは何か。
坂入が入山した理由は何だったのか。
予想外の理由が明らかになる。

No.1 7点 白い風
(2015/02/24 23:08登録)
たった一人で雪山を登る登山家の3編の物語。
内容はやっぱり題名の「灰色の北壁」が秀逸でしたね。
どの作品もラストが意外な展開になってミステリのような展開が楽しめました。
ただ、私なら「灰色」の刈谷のような行動は絶対できないけどね(笑)

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