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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.70点 書評数:1303件

プロフィール| 書評

No.1143 5点 殺人者はへまをする
F・W・クロフツ
(2022/04/01 15:05登録)
MMM ... Murderers Make Mistakes .. 殺人者はへまをする .. ま、俺は例外だけどね。今まで一度たりとも捕まっちゃいねえや。

フリーマン・ウィルズ・クロフツ先輩が往年のラジオ番組用に書いたショート・ショート・ミステリーズ23篇。溢れる古趣。難事件をじっくり解決する長篇のフレンチと異なり、簡単なヤマなら容赦無く秒殺でホシを挙げてしまう掌篇のフレンチ。

出来上がってるクイズを小説の枠にねじ込み直したブツとは似て非なる、クイズ要素を織り上げて小説の形にまで仕立てた、ちょっとしたオードブルたち。一篇読んだら気の合う仲間とうっかりリッツパーティーでも開きたくなること請け合いです。

新しい出発(たびだち)の春、これから殺人にでも手を染めようかという方は、本書をじっくり研究して、殺人者がどんな時に失敗を犯すものなのかよく理解しておくのがよいでしょう。 先輩面してごめん。 ではまた。


No.1142 5点 カメラマン ケイド
ハドリー・チェイス
(2022/03/30 15:46登録)
「ほんとか! ぼくは五七九号室だ」
「知ってるわ。今朝部屋をかえたから」

ラストシーン、安っぽいが印象に残る。ここで0.5点上げた。。。 まるでソ連のような、ロシアのような・・公民権運動で不穏なヴァイブ溢れる米国南部の街イーストンヴィル。灼熱の報道写真を撮れと派遣されたケイドは酒浸りのフォトグラファー。かつては花形だったケイドが艶美なメキシコ娘に引っ掛かり『如何に落ちぶれたか』を時を遡りヴィヴィッドに敷衍した後、イーストンヴィルの仕事で案の定大失態をやらかした彼がいよいよ『最後の賭け』となる激ヤバなギグに勤しむ姿まで(+α)が描かれる、書き飛ばし(?)冒険譚。 全篇通じての安っぽさは拭いようが無いし、時系列往き来の惑わしが妙に中途半端だったり、展開に意外性も薄く(最後のアレだけはちょっとアレで意外!)、主役に心酔出来る魅力など無く、スリルを殺ぐ要素には事欠かない有様だが、ところがどうして、面白く読めちまうのは間違いないってんだから変なもんだ。 締め(?)のドタバタアクションも、緩々ながら愉しかった。 読了後、白のタキシードにサッと着替えて葉巻を片手に人生を語りたくなるようなブツでは決してないが、こんな本に時間を預けるのも悪くないと思えれば、まだ人生に余裕がある証拠かも知れない。 

ところで、古い創元推理文庫、登場人物一覧が明からさまなネタバレになってますが。。。。人数多いのがせめてもの目眩しか?? ともあれ最後の数名は読了前に見ないようにしといたほうがいいでしょう。(いや、むしろ最後から二番目、三番目の人物の異様な肩書を見ちゃったほうが、かえって興味が煽られて良い、かも・・??)  ← これで充分ネタバレかな。 ’66の作やしな。


No.1141 5点 ソクラテス最期の弁明
小峰元
(2022/03/28 11:54登録)
「美しく素晴らしく死にたいと思ってる若者は多いのですから。」

N’夙川BOYSの先輩達が神戸⇔大阪間で繰り広げる、犯罪◯◯◯青春ダークサイドストーリー(のくせにタッチは明るい)。 須磨海岸で年増女の全裸屍体が上がる所からスタート。屍体の横には男子高校生。見ていたのは監視員の男子大学生とワケあり爺。 視点人物転換やらストーリー交錯やらで自然と「探偵役を探せ」興味が湧き上がる。なんなら被害者の意外性も。更に言ってしまえば■■まで・・・このへんの込み入った関係性、けっこう最後は炸裂します。 「解決篇」の構成、現在の会話と過去の◯◯との短いカットバックが醸し出すスリルや良し。 物語にしっかりした軸が一本通ってない感はちょいとある。そのおかげで謎が深く見えている効果も一方にあるけど、トータルでは微妙な所か。 小技効かせて効果は大きい物理トリックも、明かされる全体像(それなりにビックリ!)も、人間関係描写も、どこか締まりを徹底してないよな悪い緩みが残ります。でも全体的に、早く話の先を知りたくなる推進力、面白さはあるんですよね。 単独の人間描写で言うなら、一人(ギリ二人?)だけ突出してヴィヴィッドに浮かび上がる魅力的キャラクタがいたな。他にも、魅力あるかはともかく、クセの強い登場人物群には事欠きません。 ところで、自動車事故の物理トリックに直接繋がった、或る人物の或る「癖」だが、ちょいと気持ち悪くないですか。


No.1140 7点 犠牲者たち
ボアロー&ナルスジャック
(2022/03/25 11:40登録)
<<けっしておのれをあらわさずに存在する権利を持っているのは、神だけだよ>>

創元推理文庫旧版、カバーと本体で「登場人物表」の人数が違う! 本体の方が一名多く、その人物だけ説明が無い!  これは、わざとだよね。。。。

奇妙な内省に満ちた◯◯◯(??)四角関係と、異国でのダム工事、その顛末。 巧妙に隠匿された●●の暴露に強い意外性が宿っているのは、作者の文章感覚在ればこそでしょう。 ほぼ観念的恋愛小説。 人に依っては読むに堪えないであろう、当てのない堂々巡りの面倒さで九割方できているような、短い長篇。 
人並由真さんコメントの 「かなりシンプルかつ大技の着想があり、それは、ヘタに書くと、たぶん本当にとてもつまらなくなってしまいそうなもの」 ← フムフムですね。。 人を騙すにはどうするか、の大ヒントを曝した一冊でもあるかも知れません。

“ぼくは本を書こう、きみのために。ぼくらの愛がふたたび始まるのだ。”


No.1139 7点 マリオネットの罠
赤川次郎
(2022/03/23 06:24登録)
富豪の地下室に幽閉されていた人物が、或る契機に乗じ逃げ出して、動機不明の連続殺人を犯す。最後のターゲットに向かって人群れの中を堂々と、手に汗握るクライマックスの行き着く先は・・・・ 最終章の締まり具合が見事! 嵐の前の静かな幕切れも良い。

要はミッシングリンクに◯手間置いたってわけか、そんな大層な形で。。。そのミステリとしての重さと奥行きを思えば、ちょいと唐突の気のあるどんでん返しもまぁ許せるか。ただ、最後にいきなりソレで、全体のバランスがグラグラしてないか? 真犯人(と分かってみると、その人の)人物描写に違和感も感じましたよ。 他にも、そんな源義経みたいな殺人の天才が仮にいたとしてアレなのかとか、貴族的人物の貴族性がさっぱり表せてないぞとか、セコい文句の二三も言いたくなりますが、やっぱり床下から一気に持ち上がるような作品の底力には黙らされます。 第一章、所々生硬な表現や展開にぶつかり、おいおい君こんな所で文学気取りの練習するんじゃありませんよと注意してあけたくなったけど、作者の第一長篇なんだし、まあ許容範囲でしょう。

本作の題名、アナグラムで「縄の練馬夫」となるのはいいですが、略して「マリワナ」になるのはちょっと気になりました。

第一長篇とは言えこんな作品(オープニングシーンからしてアレですぜ..)を「母に」捧げる赤川さん。幼少の頃の訳あり家庭環境が影響してるんだろうか、なんてちょっと想像しましたが、まあ実はそんな深い連関も無いのかな。

不意を突く短いフーダニットが途中で襲ったり、某分署の某エピソードを思い出す要素が出たり、ちょっと面白い趣向もありました。 作者も何気に尊敬してそうな賢い大悪党、大悪党以上に許せない行為に走る馬鹿な小悪党、明確に心の欠損が有る中悪党(?)等、作者の人間不信の深淵(?)が覗き見えるような人物像配置も印象的でした。その極め付けは、やはり真犯人設定ですかね。。。。 やめてえーー。。。。  さてさて、タイトルの意味する所は、第一にはあの「メモ」ということになるのかな。もっと広い隠喩にも解釈出来ましょうが、敢えて狭くその「メモ」に留めておいたほうが、ミステリの味わいはより拡がろうと思います。


No.1138 3点 青斑猫
森下雨村
(2022/03/18 21:34登録)
読みは「アオハンミョウ」。 身寄りのない不良上がりの青年が或る日、見知らぬ弁護士を通じ「富貴兼ね備えた人物の後継者に指名された」との連絡を受けた。 ここから始まる、昭和初期の芸能界やら司法界やら引き連れて展開する、恋愛要素沁み込んだ惨酷絢爛ストーリー。。。 なのでありますが、平易ながらアンリーダボーな文章、電話帳の如し。 これじゃ退屈もしのげねえ。(←すみません、言い過ぎました) 

間接的にたいへんお世話になっている、日本探偵小説の父であらせられる大先生ですが、実作に当られた作品を拝読するのはこれが初めて。 きっと他に、私の嗜好に合うものも書かれていらっしゃると期待します。 本作はちょっと、肝となる●●のベクトルやら因縁やらアケスケだ。 ここは清冽なチラリズム精神を発揮し、ミステリ的にぐいぐい攪乱、堂々立ちはだかって欲しかった所。 キャラクタにしても、カックワリンだかカッケンだか分からん不良老年とか、もっと輝いてくれたら良かったですな。 気の抜けた二人二役? おっと、意外な被害者が一人いたな。(ここはちょっと好きだった) 

先生、いくら当時の主潮とは言え、地の文に闖入する神の視点いや筆者視点が煩(わずら)わし過ぎます。 サスペンス小説(ちょっと違う?)なのに、何より大事な(?)サスペンスってやつを手当たり次第、消去して回っていらっしゃいませんでしたでしょうか? 音速でカーブ切りまくりのジェットコースターストーリー、追う気にもなりません。 ごめん、興味が湧かないのよ。。 と、ここまでが物語前半への想い。 

ちょうど真ん中のあたり、筆致に微妙な変化が見られ、ちょっとスリリングなグルーヴを内在し始めた。悪くないかも。。。 しかしやがてそのスリルも摩耗を見せ、いつの間にやら擦り切れた退屈の側溝へとまたグラリゆらり。。嗚呼。。。(だども硫酸の雨て!!) 一瞬感動の光が差したエンディングだけど、締めは陳腐よ。

問題は、現代の読み手から見て大時代的とか陳腐化したとか、そういう事ではない気がします。 そっか、ストーリーのどの断面見ても、一律に何らかの異常事態ばかりで、時には普通にゆったりさせてくれってか、あまりにもメリハリが無いんだな、きっと。 メリー&ハリーは新婚旅行にでも行ってたのかな? 残念ですが、またいつか、先生の別な作品に当たってみようと思います。 ありがとうございました。


No.1137 6点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2022/03/16 18:21登録)
□□時計じかけのオレンジ□□ 中学生の読書感想文にケチがつく。ちょっとグラグラなミスディレクションを一旦ハネノケといて、バレバレの落ちには、更に奥があったんだな。。 「じゃ、店を閉めてからでいいですか」 
□□名言随筆 サラリーマン□□ 昔の因縁ある人の家へ”宅買い”に。 “上品さを失わない舌打ちを見るのは、生まれて初めてだった” 様々の人生、曝け出されたり暗示されたり。無理も多いが、それより泣ける。 「うん。遠足に行く前日の小学生みたいだった」
□□UTOPIA 最後の世界大戦□□ 持込査定待ちの男が消えた。軽ホームズ趣向良し。真相の深さ更に良し。そこでもう一突き尚更良し。善意の第三者、架空の犯人。 「結局、私も三十年○○○○やっていることは大して変わりません」
そしてこの、プロローグとエピローグ □□クラクラ日記□□ にさりげなく込められた、強い牽引力、収束力。 

「これってもしや、結構やばい話?」とハラハラさせて、「そうでもなかったか」と軽く平常に戻し、その虚を突いて、ジ~ンワリと心を動かしに掛かるような構成の作品たち。 さりげなくも徹底した伏線の絡み合いと回収は見事。 長いスパンの謎チラホラも快し。 知識の殻に閉じ籠らない蘊蓄波状展開も素晴らしい。
やっぱ鎌倉、北鎌倉いいな。大船の呑み屋が登場するのもグッド。(そいや火事になったあの店が心配) 
我が老父がハマったシリーズだってのも、分かる気がして来ました。

今後の展開(私は未読)に想いを馳せると、なんとなく、今を時めく「カムカムエブリバディ」を彷彿とさせるものが無くもない。


No.1136 6点 シルエット
ウィリアム・アイリッシュ
(2022/03/14 18:18登録)
■■毒食わば皿■■ 家賃を払えず窮した男女。「もう一時間もしたら、あの世で会おうぜ」 どうしようもない馬鹿の馬鹿話と思ったら、いつの間にか"アンダルシアに憧れて"を彷彿とさせる泣ける展開に。或る落とし前、哀しくもきっちり付けた。だからその最後のオチは(伏線ちゃんとあったし、ミステリには必要なんだろうが)、いらないよ。。 と思ったけど、やっぱりこのオチ込みで泣ける人情話。
■■窓の明り■■ 恋人の家を訪れた帰還兵。ああ、また馬鹿な奴が出て来た。。陰性の巧みな比喩と、ハードボイルド式表現がナイス。前半と後半でガラリと姿も内面も変わる、妖気と冷風の中のストーリー。或る事件(事故)が起きるかどうかの緊張で何気に引っ張ったのも良かった。「二股」と叙述トリックとは、げにこれ程までに相性が良い、という再認識を見事な陰画の形で突き付けてくれた。
■■青ひげの七人目の妻■■ 妹の結婚相手を怪しむ兄。コミカルなバカ解決譚からスタートし、怪談落語めいた進行。しかしこれ、そろそろ短篇集内「同一パターン」の予感が。。未来への布石じみたキーワードさえ。。おっと、後半はそう来なさるか!.. これはなかなか。。 ええっ!?
■■死の治療椅子■■ 歯科にて不審死。熱い友情(リアリティを傷つけかねないほど感動的!)のドタバタ喜劇。しかしこれ、「アレ」ですよね?「アレ」の元祖的な?! 仮に推理クイズネタを知らなくともすぐピンと来そうな流れではあるけれど、クイズではなく小説だけに犯人、動機、犯罪構造はもちろんのこと、捜査過程のスリルは流石、厚みが違う。
■■殺しのにおいがする■■ カーのルームメイトはジョン・ディクスン(!)。その恋人が行方不明に。推理クイズ的な失言解決はちょっと弱いか。。「きみだよ、きみ自身だよ」 最後はほんのりしみじみと。
■■秘密■■ 仲良し夫婦、大恐慌を挟んでの激動。どうも夫にはディープな怪しさが、妻には先の悲劇を予見させる不安定さが付き纏うのだが。。 最後、この皮肉ストレートパンチの深い食い込みには、なかなか立ち直れないぜ。
■■パリの一夜■■ お笑いコント風の妙に早口な状況説明の出だしがなんか笑う。軍隊をちょこっとだけ抜け出した二人が向こう見ずな滑稽冒険譚を繰り広げる。雪崩れ込む○○○○エンドも文句無し!
■■シルエット■■ 家庭内殺人の現場らしきものを目撃した、通行人の夫婦。 愛憎ドラマのはずが、いつの間にか想定外のバカ真相、バカ法廷に。ほんとの意味でリアリティ無い、作者の恣意でどうにでもなったとの感触が表に出過ぎ。。むしろそういうの自体のパロディかと思わせたり。。ところがさ。。。。(!!) 表題作に指名されただけの事はある一品じゃった。
■■生けるものの墓■■ 墓場にて、不審者として捕らえられた青年。予想外の◯◯◯社が大暴れするストーリーだが、、ホラー感はよく演出されていると思うが(そのへんの感覚欠如の自分にも感知出来ました)。。恋愛ドラマの側面が意外と伸びたのは心地良かったが。。最後の(ホラー感覚正常な人にはなかなか重いと推察される)ちょっとした逆説の決めフレーズ含め、なんだかあっけないね。


No.1135 7点 動機
清水一行
(2022/03/09 06:13登録)
衝撃の、そして謎と疑惑の急襲オープニング! いきなりのクライマックス! もはや結末!.. と思われたが.. 参った、揶揄語として使われがちな『会社派』の本当の神髄、その矜持炸裂!!

中堅都銀(死語!)「本州銀行」の取締役だった男が或る夜、雑誌編集者の男を訪れ、逃げも隠れもせず堂々と殺害、その妻の前で、自ら警察へ通報。

殺人シーンの後、物語は数年前に巻き戻る。 「本州銀行」支店長だった男に、取締役への昇格が内定する。 そこへ高級週刊誌「週刊内外」の編集者という男が面会を求めてやって来る。 編集部に或るただならぬ「投書」が来たと言うのだが。。 さあここから飛沫(しぶき)をあげて一気通貫、暴力的リーダビリティで読者の胸ぐら掴んで引きずり回します。やがて見えて来る、おそるべき爆発ポテンシャル秘めた、補助線ならぬ、たった一つの補助点の存在! コンプライアンスもクソもチ●●スもねえ、とんだショワハラ突貫工事完遂の果て、断固たるエンディング、熱量半端無えラストセンテンス。冒頭の殺人シーンで発せられた「ドラマはこれから始まる」って、そういうコトだったか。。。 時の流れは全てを灌ぐのだろうか。。 タイトル「動機」の深さに思い当たり、拳で膝を殴ります。 目次にストーリーネタバレの精霊が宿っているような気がしたのだが、実はこれ、敢えて晒してたんだねえ。。。

「いや、わたしは・・・・・・」
「それでもこだわるというのか」
「職業だと思うからです」

『著者あとがき』の熱さ、真摯さ、構成の妙の煌めきも刺さりました。


No.1134 6点 田園交響楽
アンドレ・ジッド
(2022/03/07 11:22登録)
「あなたが授けてくださる幸福は、何から何まであたしの◯◯◯◯◯◯◯◯◯いるような気がしますの」

聾唖の老婆に育てられた全盲の少女(!)が、偶然出遭った妻子持ちの中年牧師に引き取られ、やがて聡明な美少女に育ち、或る日、晴眼者となる外科手術を受ける。その後に起こるショッキングな「事件」までを語る、二部に渉る手記によって構成された物語。
本作のクライマックスである「事件」の謎は瞬殺で解かれてしまうが、実は事件が起きる前の物語進行が、予感に基づいて外周からじわじわ攻め上がる謎解き予行演習、のようで実は先物買いの謎解きそのものであるような、思い切った匂わせ構成がサスペンスを醸造する、特殊環境下の愛の物語。手術を受けたジェルトリュードに「見えた」ものとはいったい何だったのか。。。。

キリスト教(新教/旧教)も、つまるところ媒介に使われている気もしますけど、そもそも物語の始まるきっかけとして重要であることには変わりなし。 まあ多様な角度から解釈される余地ってやつが、こんな短い話でありながら、一見結末一直線風のシンプルな筋ながら、たっぷりありそうなんですよね、流石は純文学というか。。そのくせライトイヤミスとでも呼べそうなちょっと水底浅い感触も、否定は出来ませぬ。
ところで、生まれつき全盲の人が突然に視覚を得て、その即日に「こんな反応」を示しうるものだろうか、との違和感はかなりあります。 でもそこでゆったり時間を取っていると、このショッキングな物語構成に持って行くのは難しい、のかな。

題名に込められた、或る理想。 ここは流石に心奪われる所。


No.1133 3点 緋の鯱
西村寿行
(2022/03/04 19:18登録)
日本の司法界を急襲する“灼熱の残酷”で迫る冒頭から、いきなり不可能犯罪連発!! ところがそこにはチャッカリ特殊設定が! ローリング某の「新橋ホーザデボー」歌詞世界を思わせる進行。 ある種の歴史イフ。 そんなルール設定の話だとはつゆ知らず、まそういうンでも本気で面白けりゃ文句は無いんじゃが。。 バッドな荒唐無稽、やり過ぎSEKUHARA上等で無計画な(?)ツギハギまみれストーリーは不恰好なこと極まり無し。中途半端に微量のシリアスネスを込めずにいられなかった痕跡の薄っすら沁みてんのが、物語土台をグラグラさせてる元凶かも。 んで最後の急なシリアス転換が、それまでの無茶苦茶な乱行を、責任持って受け止めたか?? とっとと見捨ててどっか行っちまったじゃねえか。 んんーー、最後数十頁はもう読むのがつらかったな。もういいよ、ってなアレで。 たまたま古本投げ売りを買ったちゅう切実な理由があって、いきなりシリーズ五作目から読んでしまったの。 もしや、シリーズの中では伝説の堕落作だったりして。そうだ、一作目「赤い鯱」はいつか読もう。どうもそっちはかなりイイらしい。そいや本作、「赤い鯱」中心にシリーズ先行作のネタバレ(?)復習部分が結構あったけど、そこは逆になかなか良い。 謎の深すぎる敵を相手に、ハイパーな能力を持つ四名の昭和日本人男子(首領は老人)が、アメイズィングで容赦無い大活躍で、空さえブッ飛ばす物語。 日本に始まり、ポーランド、ソ連、米国へと主舞台が変遷(..それどころか!!)する物語。 まぁ最後に意外な真相がドドーンと明かされるのではありますが。。。。

"保安官のロス・ウイルソンが電話を受けて駆けつけたときにはもう手がつけられない状況になっていた。"

それにしても本作のこの、寿行氏のイメージを地の底まで突き落としそうな勢いの、PCコスパ極低のバカエロ国際不謹慎絵巻には参った! もし寿行氏がその昔シングルレコード『レッツゴー・ボイン c/w 尻なめロック』なんてのを出してたって、アタシぁ驚かないヮ!!
口濯ぎに、今年の夏はハードで渋い寿行を一冊キメようと思います。


No.1132 5点 警(サツ)官
エド・マクベイン
(2022/03/02 07:31登録)
"過去現在未来のジャズがすべてまざり、緊張のその十秒間は小さなスクリーンに七つの映画を同時に映しているようだった。" 
いっやー、警察小説でもバカミスが出来るんですなあ。 ドタバタぐたぐた終わりなのか、深遠な思想の宿るオープンエンディングなのか、デフマン続編があるのは承知の上で、ちょっと迷います。 高評価の対象ではないけど、「電話魔」にも及ばないけれど、面白くなかァないですよ。 tider-tigerさん書かれてるように、作者ちょっと投げやりな気配はありますけどね。 最後に、●●頼みとは言え、読者の気を引っ張った事案群が一つに纏まったのもまあ良し。 「警官(さつ)」じゃなく「警(さつ)官」って書かれると、漢字テストかと思いますね。


No.1131 6点 推理クイズ ルパンからの挑戦状
草野唯雄/川辺豊三
(2022/02/28 11:33登録)
ある年代の方々には郷愁を誘うかも知れない「学研ユアコースシリーズ」(小学校高学年~中一向け?)の一冊です。
肩慣らしの「ミニクイズ編」以外は比較的ありふれてないネタ中心で、有名推理小説の大トリックを大味にパクったりせず、推理クイズならではの良さを前面に押し出した良心的ジュヴナイルの一冊と言えましょう。

執筆は草野唯雄と川辺豊三の二名ですが、全篇にちりばめられたイラストやら劇画は総勢二十名によるもの。絵柄はヴァラエティに富んでいるけど、全体的にはおどろおどろしい、怖い、又は不気味なイメージ、そこに時折コミカルな味が闖入し、ルパンというよりむしろフェル博士かHM卿でも登場しそうな雰囲気。(ちょっと違うかも..)
出題の合間に「豆知識」みたいなページも挿入されるのですが、『本格もの』日本の代表的作品で「本陣」「刺青」「点と線」に混じってちゃっかり「女相続人」(草野唯雄)が入ってたのは、クスリしました。

各問のタイトルがなかなか面白いので(中には不謹慎なのもありますが・・)記しておきます。 「ミニクイズ編」は除きます。
ルパンの脱獄大予告/超高層ホテル殺人事件/スリラー館は殺しの館/あかりは闇にのまれた/ドッキリ!鼻毛の見える丘/消えた身代金/満腹ラーメンうますぎた!?/願掛け最後の日/殺人タイムは寒い朝/華麗なる記名帳/コールサインは死神を呼ぶ/娘十七、トイレに死んだ、ジャンジャン/白と赤のバラード/カラーテレビでスイマセン/太めのおばちゃん気をつけて!?/松本城だけが知っている/命短しガスシューシュー/時速二百キロのアリバイ/実録・兄弟仁義破滅編/ハイウェイ監禁旅行/パーティに殺意は舞った/九十九点の完全犯罪/夕立のあとさき/松の木はエレジーを運ぶ/倒産を告げた通知音/居直り強盗の落日/朱に染まった昼下がり/水浴もときによりけり/サースガァ、女の直感/両替屋撲殺於寝間/うぬぼれコックが泣いたとさ/海を越えた悪女の執念/コインロッカーは消失ゾーン?/カメラがとらえた死の構図/港町脅迫状は殺意の船出!?/ハイウェイの墓標はくぎ一本/ハガキが語る不在証明/飛び込み自殺で二度死んだ!?

推理小説ではダミートリック等にしか使えないような、だけど推理クイズとしては充分光る小ネタを擁した問題が多いけど、もう一ひねり半すれば堂々短篇ミステリのメイントリックになりそうなのも混じってる。
いい意味で(絵も含めて)印象深いのは、「超高層」「願掛け」「記名帳」「コールサイン」「時速二百キロ」「コインロッカー」「港町脅迫状」あたりかな。 中でも「港町脅迫状殺意の船出!?」の大小アリバイトリックの、郵便を大胆に使った大トリックの方、ちょっと深みがあって良かった。仕立て直せば鮎川短篇ギリ水準作にも匹敵しそう(若干バカトリックの気はあれど)。


No.1130 8点 十二人の手紙
井上ひさし
(2022/02/25 06:20登録)
エピローグが有るのはいいとして、何故、他篇と同列の感じなのに、第一話だけ特別扱いでプロローグなんだ!? .. という強い違和感背負いつつも、あまりの読ませ力にずいずいドカドカ行って、気付けばもう読了、もったいない! 旨くて深くて軽くてもう最高のタパス群揃い踏みにはシェリーで乾杯するしかないね!!

プロローグ 悪魔/葬送歌/赤い手/ペンフレンド/第三十番善楽寺/隣からの声/鍵/桃/シンデレラの死/玉の輿/里親/泥と雪/エピローグ 人質

先行の皆さまも書いてらっしゃる通り、十二人の主人公が特定の人物に宛てた書簡、または特定人物との往復書簡でほとんど全てが占められた連作(?)短篇集(?)です。 この「ほとんど」に含まれない部分に、胸を衝くギミックなり膝を打つトリックなりが籠められているとかいないとか。。 放送作家出身の井上ひさしさん、流石の手練れっぷりを遺憾なく発揮してくださいました。 十三篇(えっ、十二篇じゃないの?!それにプロローグ/エピローグ除いたら十一篇しかないよ..)の懐中には悲劇あり謎あり、策略あり狡知あり、涙あり苦笑あり笑顔あり、すれ違いあり慈しみあり、叙述●リッ●当然あり(だが、そこで使うとは!!)、、 人に歴史あり、まさかの駄●●あり、暗●(?)あり、作中作あり、忘れ得ぬ大演説あり、虚を突く大胆企画あり(これには驚いた、見得切ってくれたわ)。。。。

ところで、あの「ガーヴ」の件は結局何だったのでしょうか。(鮎川さんに、共通要素光る短篇があったような..)


No.1129 7点 霧笛荘夜話
浅田次郎
(2022/02/23 12:29登録)
いやいやいや、文庫裏表紙や帯にあるような「ほんとうの幸せ」だの「比類ない優しさ」だの、そんな単純な話じゃありませんって。そういう側面も勿論ありますがね。「老婆」と「あんた」の来し方(回想で語られない部分)と今この瞬間(結末)を思うと、希望と淋しさ両方からの風圧で、立っているのもやっと。 何しろ、あんな事も乗り越えた上で、現在□□□□□□□□いない事になるわけですもの。。

横浜北部?港湾地区にある「半地下と中二階」の古いアパート。 ある夜訪ねて来た一人の男を迎え、大家で管理人の老婆が、六つの空き部屋それぞれの元住人(数え方で女三人男三人)に纏わるブルージーで賑やかな深堀り話を聞かせ、どの部屋に暮らしたいか選べと言う。この、ちょっと深堀りし過ぎじゃないのってくらいの話が、どれもこれも、良くてねえ。

第一話 港の見える部屋/第二話 鏡のある部屋/第三話 朝日のあたる部屋/第四話 瑠璃色の部屋/第五話 花の咲く部屋/第六話 マドロスの部屋/第七話 ぬくもりの部屋

連作短篇集の体裁ですが、既に序盤から、それに偽装した長篇小説の匂いが芬々。そこには二つの大きな謎が解かれる期待が宿っているわけだが。。 訳知り浅田次郎らしい沁みる話でいっぱいの本だけど、少しばかりファンタジーに飛び過ぎだったり、作り物っぽい展開を引っ張ったりもある。だが全体で見ればリアリティは充実、迫り来る登場人物それぞれの人生を慈しみたくなる重みのある一冊です。 トリッキーな小説構成が働きを見せる要素もあり、ミステリファンへの訴求力は大きい。 この小説、無敵そうやわ。。

ところでこの、文庫表紙の美女って、まさか(もしや)。。。。


No.1128 7点 エコール・ド・パリ殺人事件
深水黎一郎
(2022/02/21 11:18登録)
目次を見たら飛び込んで来る 「第八章 事実上の真犯人」! 独特な「読者への挑戦状」、文面と言い、その機能と言い! そして直後から文字通り「急展開」。 作中作の在り様も見事に決まっています。作中作とそれ以外で文章の格調に差があり過ぎなのは、、まあいいでしょう。 安っぽい文章と退屈な設定ながら高い可読性に背中を押されて読み進めた挙句、思いもよらぬ、複雑で興味深い..奥深いとは微妙に言い難い..真相が明かされた逆転劇にはとりあえず以上のブラボーでした。ワクワクさせる冒頭部や謎提示が最後はギャフンでションボリ終わるよりずっといい。 「挑戦状」を境に、あからさまに確変してくれましたね。

被害者(大手画廊オーナー)の”最期の表情”の意味。これはヤラレた..と思ったが、考えたら別解も普通にあるんじゃないかと。 まあ言うても密室構築のアイデアはなかなかマブイんじゃないすか。 密室部分の真相暴露に於ける、人間ドラマ的感動に繋がる重い要素と、軽いというかチャラいスットコ要素との段差感というかアンバランスが、特にそれが明かされた直後は結構気になったものではありますが.. さて或る人物の「まるで二重人格」な行為の件、◯◯◯というより■■の名誉を重んじたという捉え方は無いでしょうか、作中作の内容に鑑みるに。そうだとしたら、あの豹変に纏わる何気な瑕疵感も消えるのではないかと、思ったりして。

或る人物の死んだ背景には、足元すくわれる意外性と、泣ける人情味とが共存していました。更には複数の伏線までしっかり。 捜査上の瑕疵、ちょっと看過しがたい所が諸々あるようだけど、、言っちゃなんだが安い文体のお陰で?良い意味で見逃しちゃってましたね。 ところで、スーチンの絵、夢野久作を思わせますね。


No.1127 8点 事件屋稼業
レイモンド・チャンドラー
(2022/02/18 14:32登録)
“彼のような男が大勢いれば、この世はきわめて安全で、しかも生き甲斐がなくなるほど退屈でもないといった、そんな世界になることであろう。”

表題作”TROUBLE IS MY BUSINESS”(邦題名訳!)、雰囲気勝負で快走の末、意外な犯人の花束を渡された。カラフルな絵が浮かぶ物語。いい女よりいい酒が残る話。仄かなセルフパロディ?もあった気がした.. がたぶん気のせい。 他篇に個別コメントするまでも無く、とにかく全体的に良い。 矜持は失わんが気ぃ失い過ぎのマーロウ、及びちょっと似てるが違った個性の仲間二人が、慎み深く主役を張る四つの中篇。 敵を騙すにはまず読者から。こんだけ魅力ある文章世界の中に、不安な謎がしのびこみ、連続殺人やら汚い騙し合いやら心理トリックやら充満しているんだもの、そりゃあたまらんのですよ。ラストセンテンスの響き渡る深さはチャンドラーの美点を象徴していますが、そこに至るまでの中身こそ更に深く響き渡っている。 風景描写も心地良し、刺身のツマさえじっくり味わった。 時に苦笑せんでもない毎度のパターンにさえ、それぞれの味がある(でもドタマは大切にして、探偵さん!)。 最後のエッセイ、言わんでエエ事まで言ってる気もするが、内容より先に、またしてもその文章の熱さに魅了されてしまうのは仕方が無い。

事件屋稼業/ネヴァダ・ガス/指さす男/黄色いキング/簡単な殺人法  (創元推理文庫)

我が偏愛のレッドハウス(ジミヘンのよりこっちが好き)を細部に渡りよくも鬼ディスってくれたな、憶えておけよ(笑)。 てか古典有名作のネタバレ総決算ジャンボリーやってる部分がありますんで、そのへん把握する前に「簡単な殺人法」お読みになる方は要注意です!
「訳者あとがき」と、その中で披露されるチャンドラーが或る人物に宛てた特殊な手紙、どちらも素晴らしい! というか、「あとがき」全体の半分を優に超える作者本人の強力な手紙に圧殺されず堂々と回転椅子に座り微笑する訳者の筆力には打たれる。


No.1126 8点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2022/02/11 12:18登録)
“犯行の全体像を把握されないかぎり、凶器を発見されることもないのだから。”

物理密室トリックに惹かれない私だが、この物理トリックは、熱かった!! なんちゃって密室でなく、正々堂々物理的に本物の密室が相手! 密室である事の必然性は強く、トリックと不可分!! 自分も気を付けないと。。(って??) 夥しいダミー解決案も素晴らしく魅力的。 タイトルが何のミスディレクションやら隠喩やら大ヒントやら、気を持たせてくれ心地良し。 これはもしや、ミステリ読みならではの先入見をどえらく長いテコでもって手玉に取ろうって企画なんじゃ.. なんて妄想は愉し。探偵役の憤り弾け、ザックリ刺さる第一部サドゥンエンドを抜け、真っ新な地点から大いなる憶測引き連れズイズイ進む第二部が頼もしい。(ホームズ長篇を彷彿と) 本格とクライムの時間差ジャンル融合、というより、第二部のクライムノヴェル部分を包み込み、全体では本格ミステリですね。この「意外な■■設定」で100%フェアな本格に仕立てるために、第二部が必要だったのかもな.. 最後のちょっとしたオチも素敵。 ちょっと大きい瑕疵やら緩いとこあると読後気付いたのですが、、読中は全く眼中の外でした。


No.1125 7点 チョコレートゲーム
岡嶋二人
(2022/02/07 16:39登録)
刺さるぜベイベー、痛いくらいのリーダビリティ。序盤より仮説は溢れる、時に定まる。いっけん甘い感じのタイトル、これはつまり、何のアナロジーだったら渋いわけだ? よく考えるんだ。。。。。。。
主人公は小説家の男。近頃様子のおかしい中学生の息子が或る日、青あざだらけになって帰って来る。父親と口論の末出て行った息子の行方が知れない時間帯、クラスメイトが屍体となって発見される。息子のつぶやきによれば、何もかも「ジャック」のせいだと言うが。。さあ、ここからの高速展開が凄い。読者諸氏、疾走しよう!

しかし、昔の講談社文庫表紙絵はネタバレに何の躊躇もないみたいで、いくらなんでも引きますな。。 新装版の、意味ありげで(いちげんさんには)何も悟らせないような絶妙なイラスト表紙、素晴らしいです。

..丁度ど真ん中ストレートの位置で、そのホップしまくる激アツ、激悲な激ミステリ分水嶺展開! すぐさま満ち出でる両サイド攻め上がりまくりの制圧力! 圧倒的状況証拠の竜巻急襲! そこに熱い涙で沁み渡らせんとする、誰も知らないもう一つの状況証拠。そして、文字通り斜め上からの容赦ない逆流。ごもっともな違和感反論。。得体の知れない大きなホワットダニット興味持続から、終盤の或る地点を境に切っ先鋭いフーダニットの糾弾へと突入! ラジカセ、タオル、◯◯の話題。。カナリヤなんとかへの意地悪いオマージュかと錯覚するトリック譚もあったりして。。アナログ家電トリックの盲点はそこそこ上手く突いてたかな。アリバイ偽装に関わる何気に興味深いロジック展開などもあるが、やはり本格のスリルよりサスペンスの冷気が上回る。 チョコと言えば、バレンタインか、「アレ」か、、んー、結構ミスダイレクトされまして、青あざ等の原因がまさか「アレ」の延長のナニにまつわるソレのコレかと妄想してたら、、普通に●●の結果だったのか。。そこんとこちょっとまあ、本格と見たら弱い。 そういや冒頭近くに大胆伏線もあったよなあ(ちょっとバレバレでしたが..) 狂気と、理知と、狂気と、理性と、、 親子、夫婦、友人、恋人、、ラストシーンは哀しいだけでなく、静かに熱い。泣けますね。

これ、伏字にしたところでネタバレ一直線かも知れませんが、本篇、岡嶋二人「○○シリーズ」の一篇にカウントされるんですかね。


No.1124 6点 毒を食らわば
ドロシー・L・セイヤーズ
(2022/02/04 15:23登録)
「じっと目を見つめる人間を信用してはいけない。彼は相手の視線を何かからそらしておきたいのだ。その何かをさがせ」

何事も、やり過ぎては賢者の目を引いてしまうのでした。。。。  読者を包むのはふんわりとした、やさしいユーモア。 謎多き毒殺事件、まずは「動機の追究~絞り込み」に労力を傾け、容疑者決め打ちとなって漸く「毒殺機会~トリック」の検証に入るというスタイル、その頃は既に話も終盤でスリルが急に熱を帯びだす読みどころ。 ユーモア基調は絶やさず、ライトな冒険シーンや軽ドタバタの一幕も魅力あり。淡い恋愛要素は綺麗な装飾(か?)。 しかし、このメイントリックを安易に推理クイズへ適用するのは良くないな。何気にクイズ化しやすいのは分かるが、長篇小説の中でこそ映える、味わいの深さだと思うのですよ。 それはつまり、Tetchyさんご指摘の「先入観を与える事を見越して」というのがポイントでしょうかね。

"ウィムゼイはもう一度礼を云って別れた。一マイルばかり道路を走らせて、彼は後悔しだした。そこで彼はくるりと愛用車マードル夫人をまわすと、教会にすれすれに走らせて、一つかみの紙幣をやっとの思いで「教会維持費」というラベルの貼ってある箱の口に押しこみ、町への道へとって返した。"

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