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ミステリの祭典

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夕萩心中

作家 連城三紀彦
出版日1985年03月
平均点6.43点
書評数7人

No.7 5点 ボナンザ
(2021/12/05 21:25登録)
どの作品も表面部分の描写は流石だが、真相の説明が無理にミステリにするために意外な真実用意しました感がある。

No.6 7点 じきる
(2021/06/17 21:38登録)
悍ましさ極まった「花緋文字」が個人的ベスト。この後味の悪さが堪らないですね。思わず溜め息が溢れるような美しさの中に捻りの効いた結末を潜ませた「夕萩心中」、花の持つ性質を色鮮やかに生かした「菊の塵」も高クオリティ。流石は花葬シリーズ。
「陽だまり課事件簿」は……花葬シリーズとの落差にズッコケてしまったのは許して欲しいです、ハイ(苦笑)

No.5 6点
(2020/12/23 16:33登録)
 昭和六十(1985)年に出版された著者の第十作品集。『瓦斯灯』と同じく『恋文』での前年度直木賞受賞を受けて、急遽纏められた短篇集と思われる。巻末あとがきでは〈三篇ずつ、それぞれ別の連作として書き連ねたものだが、共にあと二篇を残したまま中断し、作者が見捨てた形になってしまったもの〉と形容されている。初期代表作〈花葬シリーズ〉三篇を収録している重要なものだが、それ故か最後のユーモアミステリー「陽だまり課事件簿」のみ180°雰囲気が異なっている。村上昴氏の装画・装丁で『戻り川心中』から連続刊行された、五冊の和装本の最後を飾る作品でもある。
 年代順に並べると、ごく初期の花葬シリーズ第二作「菊の塵」を筆頭に「戻り川~」の次作である「花緋文字」。そこから一年半以上間を空けて「夕萩心中」、さらに半年余り置いて「陽だまり課~」へと続く。1978年9月から1983年10月まで、約五年間と収録作のスパンは長い。
 表題作には苦闘の後が伺われる。「桜の舞」となる筈だった短篇「能師の妻」を挟むとはいえそこからも約一年。前記あとがきには〈書き進めるうちにミステリーと恋愛とが分離していき、遂にその溝は作者の乏しい才能と意志では埋められなくなってしまった〉と記されている。心中行の背景に歴史事件を据えた時代ミステリとして完成させてはいるが、同系列の初期作品「菊の塵」と比べると分量は倍ほどにも増え、もはや短めの中編と言っていい。
 真相は確かに意外だが、心理的な無理筋や後出し気味なところも目につき素直に感興には浸れない。男女双方が一種の道具に堕とした心中を強行することに、果たしてどれほどの意味があるだろうか? とは言え闇に零れる萩の花の扱いや、各種恋愛シーンの造りは例によって上手い。シリーズ中屈指のエグさを誇る「花緋文字」よりも、トータルでは上である。
 図抜けているのはやはり「菊の塵」。不具の身に成り果てたもと陸軍将校が、病臥の末にサーベルで喉を突いて自害した謎を解くもので、事件直前に主人公が障子を通して透かし見た「軍服姿の男」の影が物語のカギとなる。被害者は寝巻姿で息絶えていたのに・・・。
 ALFA さんの問いに答えれば〈正装させないと被害者は殺せなかったが、犯人は彼をもはや軍人とは思わなかったので、死後に軍服を剥ぎ取る事によってそれを示した〉である。他にも「菊の花」の意味するものなど、解決にはいくつかの知識が必要とされる作品だが、それを差し引いてもヒロイン・田桐セツが随所で見せる白刃のような殺気には凄味がある。短い枚数に過不足なくトリックと伏線を張った、花葬シリーズに相応しい緊張感溢れる傑作と言える。
 連作シリーズ「陽だまり課事件簿」は、『運命の八分休符』の流れを汲むドタバタコメディだが、ワンアイデアの趣が強く内容的には遠く及ばない。以前読んだ時にはかなり面白く感じたのだが。ミステリアスな発端と爆弾男の行方を巡る謎で引っ張る第三話「鳥は足音もなく」がベストかと思うが、やや先が読めるのが難。ただし連城短篇としてはいずれも恋愛模様優先の仕上がりで、高くは評価できない。
 全体的には玉石混交で、行っても6.5点。昔なら文句なく7点を付けていたかもしれないが、今だとこんな所である。

No.4 8点 青い車
(2019/08/15 21:49登録)
 もう連城三紀彦の十八番といっても過言ではない「構図の逆転」が美しく決まっている『夕萩』は『戻り川』以上にお気に入りです。本当に花葬シリーズは外れ無し。後半に収録されている陽だまり課事件簿も楽しいですが、一冊の本としてみるとアンバランスになっていることが唯一残念です。

No.3 5点 ALFA
(2017/03/06 10:49登録)
(若干のネタバレ注意)
花葬シリーズの3編とコメディタッチのミステリ1編で、短編集としてのまとまりはない。
評点は「花緋文字」5、「夕萩心中」6、「菊の塵」4、「陽だまり課事件簿」5。
「夕萩心中」はこのシリーズらしい抒情的で重厚な作品。構図の反転も申し分ないのだが基本的なところで腑に落ちない。
心中というのは魂の純化の行為である。そこにこんな大きい不純物(不純な動機を持った嫌悪すべき人間)を伴うことはあり得ないと感じてしまう。
物理的にはともかく心理的には受け入れがたい「解」である。
「菊の塵」にはわからないところがある。何のために死者の服を着替えさせたのか?
どなたか解説してくれませんか?
「陽だまり課事件簿」はミステリとしてはともかく、ドタバタぶりがイタい。「どうです面白いでしょう?」と言われながら読んでるようで困ってしまう。
ドタバタはこの作者のキャラではないということか。

No.2 7点 まさむね
(2016/02/22 00:00登録)
 光文社文庫版で読了。花葬シリーズ(全8編)のうち、「花紋文字」・「夕萩心中」・「菊の塵」の3編と、連作短編「陽だまり課事件簿」が収録されています。
 花葬シリーズは文句なし。特に表題作「夕萩心中」の流麗なタッチで描かれる三者三様の想いが印象的です。「菊の塵」の、まさに“歴史的”反転にも驚きで、ある意味でハウとホワイの絶妙な組み合わせ。花葬シリーズ、素晴らしい。
 なお、後半の「陽だまり課事件簿」は、完全にユーモアタッチで、花葬シリーズとは一変。舞台も、花葬シリーズの明治・大正・昭和初期から、戦後の現代へ一気にジャンプ(と、言っても昭和後期なのでしょうから、今と比すれば相当に古いのですがね。携帯とか無いし。)これらのギャップは面白いし、単なるキャラ短編ではない発想も流石だとは思うのですが、花葬シリーズと比べると、どうしても落ちますねぇ。
 総合して、この採点とします。

No.1 7点 こう
(2010/04/26 01:19登録)
 花葬シリーズ3作品とユーモアミステリが併録されている作品集です。ハルキ文庫なら「戻り川心中」に花葬シリーズが一挙収録されています。
 戻り川心中の世界に浸りたい方にはお薦めできる作品で相変わらず抒情性たっぷりです。
 ユーモアミステリの方は個人的には「運命の八分休符」もそうですが作者の本領ではないと思いますが読み心地は悪くないです。 

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