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ミステリの祭典

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疑わしきは罰せよ
赤かぶ検事奮戦記①

作家 和久峻三
出版日1976年05月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 斎藤警部
(2024/11/21 01:14登録)
寒さの中でほんわりするような田舎風の諧謔味が面白い面白い。 人生は生きてみる(或いはやり過ごす)価値があると思わせるほどに面白い。
名古屋地検高山支部の柊茂(ひいらぎ・しげる)検事は、司法試験を(たぶん)受けてもいない、検察事務官からの叩き上げ。 娘は法曹エリートで弁護士。

何しろドラマで主演したフランキー堺さんのイメージが強いもんでてっきり、ズングリがっしりの体格で押しの強い顔力の検事さんだと思ってたんですが、原作では真逆の長身痩躯、と言うよりヒョロ長い弱そうな体形にショボっとした風貌の人物で驚きました。 でも赤かぶとちりめんじゃこが何より好物ってんだから、むしろやせ細ってなきゃ平仄が合わねえってなもんですよね(←日本語おかしい)。

さて一作ずつ。

疑わしきは罰せよ
椎茸栽培のビニールハウスにて一酸化炭素中毒死事件。 死んだのは女房。 自動車修理工場を営む亭主が被告人だが、発言は揺れ動く。 ある意味犯罪実録風なのが意外な、展開と結末。 予測変換で 「宇田川咲は罰せよ」 と出て来た。 アイドルの方ですか?

片眼のジャックを追え
色と欲が絡み、横領と詐欺を噛み合わせた事件へとズブリ。 舞台は神社。 扇の要に陣取るのは、色抜き欲一方らしき稀代の悪党。 ちょっと、話がスルスルと早すぎるよ ・・ と思わせといて、前半と後半とでガラリと色合い変わる。 マッチの擦り方の機微。 殺人教唆の構造の機微。 殺すべき理由の機微。 煮ても焼いてもフランベしても喰えねえ可愛くない悪党が暗躍しやがる。

火魔走る
連続放火事件の捜査はなかなか複雑な様相を見せた。 中でも或る放火に纏わる真相には虚を突かれた。 それは意外な真犯人暴露の道筋にも繋がっていた。 しかし、◯◯◯◯に火をつけるシーンは、びっくりしただよ・・

古銭はもの言わぬ証人
生活に余裕はあるが金持ちにはまだ遠い、欲で眼を眩ますにはもってこいの歯科医師を相手とした土地転がし詐欺に、意外な所で殺しが絡んだ! 弁護士の娘とシビアな親子対決が見られるが、変化球はそれだけじゃなかった。 化学や医学の要素も手伝い、何とも皮肉で奥の深い真相を暴露。

全四篇、柔らかくも厳しい柊検事が良い。 仲間たちも最高だ。
起承転結の「転」が上手い。 刳(えぐ)りの深い、小細工無しのカットバックが上手い。 これでもう真相に向けて一直線、結末見据えて詰めの段階に入るかと思わせて実は 。。 という具合に落とし穴を掘っておくのも上手い。
あんまり言うとアレですが、真相に、或る独特な統一性めいたものは確かにあった。 (要は◯◯と本格の融合みたないな事か。。 あまり単純化もしたくないが。)

角川文庫、高木アキミッつぁんのしみじみ巻末ノートが地味に良い。

No.1 6点 kanamori
(2012/09/12 22:11登録)
”赤かぶ検事”こと柊茂(ひいらぎ・しげる)検事が活躍する連作短編集。シリーズはなんと100作以上出ているらしいのですが、本書はその記念すべき第1作です。

シイタケ栽培用のビニールハウスで中毒死(第1話の表題作)など、飛騨高山という舞台を活かした話がなかなか味があっていいです。娘の弁護士との父娘法廷対決(第4話)なんていうシチュエーションも地方都市ならではでしょう。検事に転勤はつきものとはいえ、大都市に異動になってからのシリーズは、楽しめなくなったような気がします。

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