白い陥穽 鮎川哲也のチェックメイト |
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作家 | 鮎川哲也 |
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出版日 | 2021年10月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 斎藤警部 | |
(2025/01/15 22:02登録) 思うに短篇の鮎川さんは、割り切ってA級作品とB級作品とをはっきり分別して書いていたのではないですかね。 本書に収められた八篇は思うに一つ残らずB級作品です。 鮎川さんの場合、B級作品がA級に較べると格段に旨みが落ちるというか、ほぼA級イコール一流品、B級イコール二流品の構図になってる気がします。 季節のお造り盛り合わせは文句無しに旨いのだが、焼きとんや牛モツ煮込みを頼むとイマイチ、みたいな。 氏の清廉潔白好みな生き様がそうさせていたのでしょうか。 とは言え、たとえ旨みは薄目でも無視して切り捨てることなど到底できない魅力は不思議と備わっておるし、どういうわけだか再読したくもなるのです。 白い盲点/暗い穽(あな)/鴉/夜を創る/墓穴/尾行/透明な同伴者/葬送行進曲 (光文社文庫) 偽のアリバイ作るならアッチだけでなくコッチもね、とか、素人犯罪だからそこは流石に見落としちゃうよね、とか、偶然くんのインターフェアは仕方ないよね、とかそういう、邪魔になった相手を謀殺したらどうしてすぐバレちゃったのか系の倒叙推理クイズ風なんばかりズラリと並んでいます。 音楽を含めた ’音’ が重要ファクターとなる話が多いですね。 中の一篇 「透明な同伴者」 なるタイトルはなかなか含蓄があって良いな。 ‘男娼’ ことホストさんやポピュラー音楽家へのムニャムニャには眉を顰めるなり苦笑する向きもあろうか。 「もう止めましょう、そんなお話。 ベッドのなかにいるときはそれにふさわしい話題があるのよ」 鉄道旅のお伴には、せっかくの風景見物を邪魔しない程度の緩やかさで丁度良い本かも知れません。 |
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