home

ミステリの祭典

login
悪魔のような女

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1955年01月
平均点6.67点
書評数6人

No.6 7点 人並由真
(2024/10/21 21:42登録)
(ネタバレなし)
 30代のセールスマン、フェルナン・ラヴィネルは、5年間連れ添った29歳のブロンドの妻ミレイユの殺害を考えた。ラヴィネルは情人である女医リュシエーヌ・モガールの協力を得てアリバイを偽装し、うまく計画を進めたつもりだった。だが……。

 1952年のフランス作品で、おなじみコンビの公式合作第一弾。
(ただし1951年に別名義で「L'ombre et la proie」なる実質的な初の合作長編があるらしい。いま、初めて知った・笑。)

 文庫は持ってたかどうかわからないし、家の中のどっかにある世界ミステリ全集版を探すのも面倒くさいので、ネットで古書のポケミス初版を安く買った。訳者はどれも同じ北村太郎だから、問題はない(まあフィアリングの『大時計』みたいに同じ訳文でも、文庫化の際に編集部が大きく手を入れてある可能性もあるが)。

 大ネタは昔どっかでバラされたような気がするが、うまい具合に忘却したので、これはヨイと思って読み出す。

 保険金目当ての妻殺しのクライムストーリーだが、むしろ物語の形質はウールリッチのノワールサスペンスものに驚くほど近い。
 70年以上も前の旧作で先が読めるとかどうとかいうより、オチは落ち着くところに収まったという印象。
 しかしそれでも、ハイテンションでグイグイ読ませる作品なのは間違いない。
 ポケミス100番台のごく初期の時期(通し番号の順不同に出たとはいえ)、この強烈なリーダビリティはさぞかし反響を呼んだのでは、と思わせる。
 まあ最後まで読むと、あれこれ引っかかる点はないでもないのだが(もし主人公があーしてこーしていたら、どーなったとか)、これだけ読んでる間オモシロければ、70年前の翻訳ミステリファンには大ウケだったんじゃないかってね。
 
 良い意味で作者コンビの直球・剛球ぶりを実感させられた初期作であった。

No.5 5点 ボナンザ
(2019/01/27 12:09登録)
オチはタイトルから大体予想できてしまう。主人公の心理描写がメインですが、私は読んでてイライラさせられるところも・・・。

No.4 8点 クリスティ再読
(2018/09/05 19:30登録)
その昔「生きているひとは死んでいて、死んだひとこそ生きているような」というキャッチコピーの映画があったが、本作はまさにそれ。霧深い情景の中で、

死人も生きている人も、同じなのだ。われわれの感覚は粗雑だから、死人は別のところにいると思い、二つの違った世界があると信じこんでいる。そんなことはない!見えない死人はそこにいて、いろいろとこまかい仕事をつづけている。(ガス栓を忘れずに固く締めてくださいね)

と主人公が思い込むような、コッチとアッチの境界が曖昧な世界を描ききった力技が素晴らしい。「死者の世界」が最後のほうなぞまさに主人公の帰るべき家、心休まる世界なのだ!
というわけで、本作のミステリとしての結末なんぞただのオマケ。カーテンコールとかそういう部類だろう。超自然だったとしても、作品としてちゃんと成立しているさ。「ミステリ」であるのがタダの口実みたいに見える作品、ということでもイイんじゃない?

No.3 6点 蟷螂の斧
(2013/03/30 09:50登録)
(タイトル・女⑳)古典のサスペンスものとして読むのがよいと思いました。現在では、ネタはわかり易いものですね。ラストの一言が余韻を残します。

No.2 7点 kanamori
(2010/08/08 13:20登録)
ボア&ナル・コンビの合作ミステリ第1作で、サスペンスミステリの教科書のような作品。
逆にいえば、今では愛人と結託した妻殺しのプロットは定型すぎて、謎解きミステリとしては仕掛けがほぼ見えています。タイトルもある意味ネタバレ気味ですが、心理サスペンスの古典名作には間違いありません。

No.1 7点
(2008/12/05 21:00登録)
この2人がコンビを組んだ第1作だけに、ストレートな構造ですので、ホラーでなくミステリだということを知っていれば、結末は簡単に想像がつくでしょう。冷めた目で謎を分析しながら読むのではなく、ホラーのように雰囲気や文章を味わうべき作品だと思います。心理的に追い込まれていくクライマックス部分には息苦しくなるような緊迫感がありました。
原題の意味は「もう存在しなかった女」ですが、邦題は、小説の設定を逆にしたアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の映画の邦題を採用しています。しかし、「悪魔のような女(複数形)」で映画にも小説にも意味が通じてしまいます。

6レコード表示中です 書評