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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.165 4点 奇妙な花嫁
E・S・ガードナー
(2015/07/06 19:00登録)
相変わらず題名(特に邦題)付けは清張並みに秀逸で実に興味をそそる。だがしかし矢張りどうしても最初から最後まで強く引き込まれるものが無い(退屈で本を投げ出したくはならないけど)。 量産型に転向して以降の西村京太郎などは導入部から必ずどこかしら読者を捕らえて離さない強烈なミステリ興味の網を投げ掛けて来るが、この量産作家さんからは個人的にそのような挑まれ方を感じない。文化の相違も大きかろう。
ひょっとして、冒頭、必ず事務所への依頼で始まるという余計な安心感が良くないのかしら?


No.164 10点 張込み
松本清張
(2015/07/03 07:23登録)
世界に誇るこの傑作短篇集だけは10点超を付けたいんですけどね、流石にそれは無理なので10.499点、四捨五入でぎりぎり10点とします。
普通の厚みの本だけど、中に入っている8つの短篇たちがどれもこれも、普通だったら長篇小説に盛り込むような質量の内容を清張氏の怖るべき情念で圧縮された上で備えているため(良い意味で濃淡はある)、一度中身を知ってしまうとあたかもストーリーとサスペンスと悪意と謎と人生でパンッパンに膨らんだこの本が今にも破裂してしまいそうな錯覚を覚えます。

張込み/顔/声/地方紙を買う女/鬼畜/一年半待て/投影/カルネアデスの舟板
(新潮文庫)

ミステリともサスペンスとも言い難い(ややハードボイルド文芸タッチか?)表題作「張込み」からおもむろに幕を開ける。この静かにジワジワくる、読者を引っ張って離さない力と、人情の絡んだ哀切な(そしてやはり静かな)エンディング。。 いきなり一遍の長篇小説を読了した様な酩酊感ないし覚醒感のうちに、比較的軽めの、しかしスピード感と恐怖のエネルギーに圧倒される「顔」と「声」。北島三郎師匠とはまた一味違う「漢字一文字シリーズ」サスペンスは快調だ! 本格ミステリ色の強い二つの犯罪女子物語「地方紙を買う女」「一年半待て」に挟まれるは、無惨極まりない「鬼畜」! 中身の濃密過ぎる地獄絵巻は言うまでも無いが、一番最後に突如話の流れがトップギアに、最高の速度を一瞬出して急に話が切れる! この、余韻と言うにはあまりに巨大で重過ぎる”その後”を、暗示どころか確実に読者それぞれの頭の中に一瞬で刻ませる終わらせ方、最高にシビれました。。(映画では”その後”も残酷に描いています)
最後の二作「投影」「カルネアデスの舟板」がまた白眉中の白眉、最高に爆発しています。 嗚呼、クラクラするぜ。。


No.163 7点 分離の時間
松本清張
(2015/07/03 00:12登録)
タクシー運転手からふと耳にした噂が気になった、一般人の主人公。
何人もの男色家が登場し、権力界のギヴ&テイクと絡み合う。 当然そこには殺人も。。。
毎度の事ながら擦り減ることを知らないサスペンス。流石です。

併載「速力の告発」はミステリーとちょっと違う様相を見せる。 森村誠一を思わすストレートな物言いの演説っぷりは貴重。


No.162 7点 生けるパスカル
松本清張
(2015/07/03 00:01登録)
最後のところ、うっかり夫を応援してしまった。。
清張さんにしては軽いタッチですが、純文学仕込みの文章で書かれた容赦無いサスペンスは格別のエンタテインメント。
心の病持ちとは言え酷い妻だが、夫だって酷い事をする。出口の見えない夫婦のいがみ合い。夫は浮気性の画家だ。。

同じく中篇の併録「六畳の生涯」も老人の暗い心の炎を強烈に描いて秀逸。


No.161 8点 危険な童話
土屋隆夫
(2015/07/02 11:44登録)
鮮烈な読後感を残します。 暗く重苦しい話ですが、哀しくも邪悪な閃光を一瞬放って終わる。

お手軽な(?)心理の盲点トリック、ちょっと実行難しそうな物理トリック、手間が掛かる上に道義的に躊躇される総大な心理トリック、いろいろ出て来るよ。。。そしてその組み合わせはね。。 子供はこれからどうするのだろう。。。。。。。。

かなり若い頃に読んだ事もあり、折を見て再読したいですね。


No.160 8点 七歳の告白
土屋隆夫
(2015/07/02 11:30登録)
つらい内容の短編集。文学性高い氏の作品だけに、辛さを愉しむエンタテインメントであると同時に、本当に辛くていたたまれなくなって来る、それがまた良い。
「いじめられた女」のさりげなく残酷極まりないラストシーン。 「小さな鬼たち」のあまりにも皮肉で酷い勘違いの悲劇。
中には軽妙な味の小品や、ちょっと幻想的雰囲気が混じるものも少し挿入されており、それが救い。
表題作は泣けます。

七歳の告白/夢の足跡/二枚の百円札/白樺タクシーの男/奇妙な招待状/いじめられた女/小さな鬼たち/狂った季節/暗い部屋/マリアの丘 
(角川文庫)


No.159 7点 孤独な殺人者
土屋隆夫
(2015/07/02 11:13登録)
測量ボーイさんも言及されていますが、鮎川哲也ファンにもアピールしそうな、充実の作品集。
また、土屋さんにしては、佐野洋の短編的な艶っぽい題材の扱いが目立ちます。
(「加えて、消した」はそのタイトル付けからして佐野氏の作品としばらく記憶違いしておりました)        

淫らな骨/加えて、消した/情事の背景/淫らな証人/正当防衛/孤独な殺人者/ゆがんだ絵/肌の告白
(光文社文庫)


No.158 7点 Yの構図
島田荘司
(2015/07/01 18:39登録)
最後の「           」に唖然愕然騒然!! しかしどちらかと言うと肩透かしに近い、バカ結末の一種と言っても過言では無い。。のではなかろうかあ。。

アリバイ崩しのハード本格にハード社会派を継ぎ足し損ねた感はある。 作者の意気は買う。 言い遅れましたが、かなり面白い。


No.157 7点 火刑都市
島田荘司
(2015/07/01 17:58登録)
何を措いても動機にびっくりの一品。決してバカ動機ではありません(たぶん)。スケールで圧倒する物理的大動機(??)とでも呼びたくなっちまう。
無理を感じる所もあるが、ミステリ小説として充分アリでしょう。
「ブラタモリ」と「宮部みゆき」が一緒になったような趣も。 こういう勉強させてもらう本はいいね。


No.156 8点
北方謙三
(2015/07/01 17:31登録)
終盤近くまでハードボイルド・ミステリと勘違いして読んでしまったが、それでも大満足の出来!
スーパーマーケット乗っ取り攻防の中で、堅気になりきった主人公が徐々に野獣へと戻って行く展開かと思いきや、最初っからブッ飛ばしててびっくり! そうそう、この小説は書き出しが最高に引きずり込む。そのままいつまでも引っ張り続ける。清張さんと同じ匂いが結構した。敵役の中年刑事、味方(たぶん)の探偵、旧い友、妻、愛人の父親(ダメな奴!)、雇った店長x2、ヤクザや不良たち、程度の差はあれ造形のくっきりした魅力的な準主役~脇役~端役がそれぞれの持ち場で躍動。そいや中年刑事のキャリア上司が、チョイ役だが妙に魅力ある奴だった。

北方さんはこの本出した時まだ三十台半ばだったんですね、驚きです!


No.155 7点 告白
湊かなえ
(2015/06/30 14:33登録)
章に依って語り手が変わりますが、やはり第一章、最も主役感のある女性教師の語る怖るべき告白が秀逸。元々この一章だけの短篇作品だったと言うのも頷けます。しかしながら、多少密度濃度は下がるとは言え第二章以降様々な登場人物の口から語られる、当事者の立場に立ってみなければ分からないそれぞれの事情、それぞれの苦悩や落ち度や悲惨さが長篇小説全体の中でもつれ合って互いを押し潰そうとするからこそ醸造される一種の暗黒感が、わざわざこの小説を長篇に仕立て上げた甲斐だと思います。最高に救いの無い内容と結末だが、何故か爽やかだ! すっごい短時間で読み切りました。


No.154 8点 火車
宮部みゆき
(2015/06/30 14:25登録)
定番コースで「理由」の次に手に取った作品。 かの作の様なワン&オンリーの圧倒感は無かったが、やたらな読みやすさと快い怖さで一気に最後まで。 その最後がまた、予想外の不思議な終わり方! 思わず「宮部みゆきの火車も、俺達の夏も、まだまだ終わっちゃいないぜ!!」って海に向かって叫んでしまいそうになるね! それにしても、この作品における犯人像の不思議な描かれ方は格別だ。


No.153 6点 ウッドストック行最終バス
コリン・デクスター
(2015/06/26 20:12登録)
結末近くまでは(例の爆笑計算シーンを除いて)なかなかに退屈、まさかのバカアンチミステリじゃねえだろなあと案じながらチョィとあくびを噛み殺してたんだけど、モースの切れ味鋭い"最後の"論理展開で目が醒めました、一気にプラス1点半! ロジック<トリック<意外性の私も、こういうワクワクするロジックなら歓迎です。 何故某氏はわざわざまだるっこしい連絡手段を取ったのか、とかね。 真相が明かされてみると、漠然と思ってたのと随分違う人間関係、そして各人の実際の行動だったんだなあ、と感心。 実は某女子はモースの事を何とも思ってませんでした、ってサブオチなのかと一瞬思ったら、、違った! 犯人の殺人動機描写を巧みにぼかす優しさには読後気付きました。 まあでも、絵が浮かぶいい文章書きますよね。。


No.152 5点 六枚のとんかつ
蘇部健一
(2015/06/26 19:30登録)
島田一男に「ふざけるな」という本がありますが、この著者に是非プレゼントしてあげたいですねWW おふざけは好きだけど、ちょっくら緩いぜ。 T-BOLAN風に言うと「詰まらなくはない」。


No.151 4点 マダム・タッソーがお待ちかね
ピーター・ラヴゼイ
(2015/06/24 18:42登録)
歴史的背景はまず興味深く勉強させていただきましたが、物語そのものはどうにも掴みどころが無く、終始ワクワク出来ませんでした。 肌が会わないのだと思います。。


No.150 7点 時間の習俗
松本清張
(2015/06/24 17:01登録)
清張中庸の美を放つ良作。 「点と線」の流れを汲む(担当刑事も同じ)社会派興味はほど薄い鮎川哲也風アリバイ崩し本格推理。 トリック自体もさる事ながら、手掛かりが晒されトリックが崩されて行く過程が実に滋味溢れるもの。 程よい旅情あり、或る性風俗(当時の言い方)への言及あり、物語背景のイメージは豊か。昭和30年代の日本がありありと眼前に浮かび上がって来ます。


No.149 6点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2015/06/24 06:38登録)
副題の通り、ゲーム的トリックが数学的愉悦を運んで来る~
茶道の複雑な作法に基づいた一連のナニは、まさか「黒いトランク」への遠回しなオマージュじゃないでしょうね?


No.148 7点 同級生
東野圭吾
(2015/06/24 06:33登録)
東野さんが書くと学生モンも素敵。眼が醒めるほどのサムシング・ショッキングは無いけど、やっぱり確実に何か仕掛けて来る。悪くないぜ。 たしかいつかのフジロックフェスに持ってって読んだ筈。 


No.147 6点 暁の死線
ウィリアム・アイリッシュ
(2015/06/24 06:24登録)
いくら創元さんアイリッシュの主役とは言え「幻の女」の対抗馬と見るにはあまりに無理が。こちらはぐっと軽い「青春サスペンス」ですね。 悪くはないですよ、もちろん。 若くてどこか余裕があるからこそ真夜中の緊張をちょっとは愉しむような、だけど、同じ若さゆえ必要以上にジリジリ焦ってもしまう感覚がよく描かれており、もう無意識下に沈んでる自分の様々な記憶がうっすらと浮かび上がり掛かります。匂いだけでも振り返ると悪くないものです。
邦題で「死線」なんて謳ってるからっておどろおどろしいものを期待してはアカんですな。「DEADLINE(締め切り)」を物々しく訳しただけですから。
ところで真犯人って誰なんだっけ??


No.146 4点 殺意
フランシス・アイルズ
(2015/06/24 06:08登録)
バカ主人公にアホプロット。 読んでる間はそれなりだったが、これを名作と呼んで良いものか。 中途半端に白っぽいブラックユーモアのオブラートに包まれてるのが良くないのか? うむ、締まらんな! でも読んでる間は確かにそれなりだったんだ。 だから4点さ。

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