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ミステリの祭典

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文豪の探偵小説
山前譲編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2006年11月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 蟷螂の斧
(2017/11/21 10:30登録)
江戸川乱歩氏の前の時代、明治から大正の作品集です。よってミステリー要素を含んだ純文学といって良いかも。現在のカテゴリーに無理やり当てはめてみました。敬称略、( )は採点。
「途上」谷崎潤一郎・・・プロバビリティの殺人(5)
「オカアサン」佐藤春夫・・・安楽椅子探偵(6)
「外科室」泉鏡花・・・衝撃の動機・ホワイダニット(8)
「復讐」三島由紀夫・・・ラストの一行・ホラー系(7)
「報恩記」芥川龍之介・・・ホワイダニット(8)
「死体紹介人」川端康成・・・猟奇風・奇妙な味(7)
「犯人」太宰治・・・どんでん返し(7)
「范の犯罪」志賀直哉・・・リドルストーリ―(8)
「高瀬舟」森鷗外・・・社会派(8)
ミステリー要素だけを評価すれば、もっと低くなるのですが、さすが文豪と呼ばれているだけのことはあります。読ませます(笑)。

No.1 7点 斎藤警部
(2015/08/25 18:28登録)
熟達の旧き良き薫る文章で書かれた探偵小説はまた格別の味。

論理を主眼とするものから犯罪心理に焦点を当てたものまで、探偵小説(≒推理小説)の名の下の幅広いスペクトルに軸足を掛けた愉しい短篇がいっぱい。

中でも心惹かれる佐藤春夫「オカアサン」は、夜店で買ったオウムが元の飼い主一家の物真似を聞かせる話。新しい主人はこのオウムの喋る多種多様な人々の幸せな発言内容と、もう一つの重大な事実、すなわち元の家で相当可愛がられたと思しきオウムが何故かその家から手放されたという事、これらを手掛かりに一つの推論を導き出す。その推論が実に泣けるわけです。

芥川龍之介「報恩記」の、極めて特殊な事情下にある人間関係の濃密さ、激烈さにも強く心打たれるものがある。

他の作品群も、超の付く有名作からオプスキュアな拾いものまで質の高さと読み応えは流石の文芸人達だ。

谷崎潤一郎「途上」 佐藤春夫「オカアサン」 泉鏡花「外科室」 三島由紀夫「復讐」 芥川龍之介「報恩記」 川端康成「死体紹介人」 太宰治「犯人」 志賀直哉「氾の犯罪」 森鴎外「高瀬舟」
(集英社文庫)

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