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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.205 7点 世界短編傑作集4
アンソロジー(国内編集者)
(2015/07/28 18:43登録)
フィルポッツの「三死人」は抒情性と文学性を備えた美しくもトリッキーな本格推理として忘れ得ぬ逸品。 まるで「戻り川心中」のよう。 私にとってのイーデンと言えば「赤毛」よりもこちら。
この抒情ミステリをアーネストとダシールの元祖ハードボイルド二巨頭が挟むという何とも文芸の薫り漂う出だし、とは対象的に後半は、後味の悪さや、如何に人を喰ってやるか、を俗っぽく追及したような作品が目立つ。もちろんそちらも悪くない。


No.204 6点 世界短編傑作集1
アンソロジー(国内編集者)
(2015/07/27 21:35登録)
大昔に読んだもの。当時から既に大昔の作品達でした。
美しさと悲劇性で印象に残るのが、アンナ・カサリン・グリーンの「医師とその妻と時計」。こういう萌芽期の匂いがするミステリ文芸は好きだ。 
他も、古式ゆかしい魅力の作品や、有名トリックのオリジナル作などいっぱい。


No.203 7点 黄昏の囁き
綾辻行人
(2015/07/27 17:49登録)
色彩的記憶に残る、美しい作品。 雰囲気に呑み込まれました。
過去の出来事を、少しずつ再構築しながら。。 眞犯人のみならず、結末の意外性が光ります。
日本のサスペンスはこれだな。


No.202 8点 迷路館の殺人
綾辻行人
(2015/07/27 17:45登録)
館、第三弾もやっぱり面白いです。 複雑構造の謎物語が意外にもスッキリ解決される様子に身をゆだねるのは気持ちが良いものです。

(以下ネタバレ有り)
「作中作中競作」のアイディアが魅力的ですね! まず「作中作中作」の企みを、上滑りすること無く具現化させているのが一番。そして「作中競作」の興味深さはえも言われず、もちろんその「作中競作」で目を引いておいて実はもう一つ外に「作」があったという結末に持ち込む綺麗なミスディレクション。そしてその「最外作」視点で語られる「真ん中の作」を書いた理由。。 いくつかの叙述トリック(さてそれはどの「作」にある?)も見事にやってくれますね。。

ところで最後に、まるで「作品」についてのコメントじゃなくて恐縮ですが、このまえ実家に帰ったら、昔置いてったこの本を父が読んでいてびっくりしましたよ。普段ミステリと縁遠い人が、よりによって。。 これ読んだ結果、脳が活性化して健康で長生きしてくれたらいいな。


No.201 8点 孤島の鬼
江戸川乱歩
(2015/07/27 17:20登録)
我が変態人生永遠のバイブル。。 とは惜しくもなり得なかった本書ですが、流石に必読中の必読と言える内容を誇る一冊です。 本格ミステリらしい前半と幻想/怪奇/冒険小説風後半とで随分と様相が変わってしまう構成も大きな魅力。 冒頭に述される「妻の惨たらしい傷跡」の正体は。。まさかの逆転の発想、まさかの伏線!! 私はこの傷跡が「どうやって出来たか」を考えると、たしか何かのミステリ小説の「心理的物理トリック」に、これと一脈通じるものがあったよなあ、とうっすら思うんだけど、どうにも思い出せない。。
しかし、当時は伏せ字で済んだ本作も、現在なら発禁どころか出版不可ではなかろうか、少なくとも日本(語)では。。。。

(これよりネタバレの匂いがします)
それにしてもこの物語の主人公の立ち位置は不思議ですよね。「探偵役は誰か?」が途中までなかなか見えづらい物語だけど、「この主人公は果たしてワトソン役なのか?」「まさか実はこいつが眞犯人なのか?」なんて疑問も浮かんでは消え。。  
パット・マガーに「ワトソン役を捜せ!」なんて趣向の作品、無いんでしたっけ? とふと思ってみたり。


No.200 5点 六死人
S=A・ステーマン
(2015/07/27 15:31登録)
時代に先んじた企画性は感心ですが、滑り出しの雰囲気も悪くありませんが、
中盤からのサスペンス薄く、何より結末の意外性が欠けている。。。のではないかな。
旧い作品を読んだ感慨はあり、さほど酷い点数付ける程でもありません。


No.199 5点 殺人四重奏
ミシェル・ルブラン
(2015/07/24 18:55登録)
(ネタバレの一種でしょうか)

構成は面白いけど、その割に仰天するような筋運びや結末は無い。とは言え。。この軽さも悪くない。
悪いふうに映画界焼けしたバカな人たちばっかり出て来る(それも年長になるほどどんどんバカになる)なあ、嗚呼嘆かわしや、、と思って読んでたら中でもいちばん救いのありそうな若者が最後のオチで、まさかの。。
ま洒落てるっちゃ洒落てるね。 目論んだ完全犯罪は如何にして挫かれたか、というお話でしたがそれだけでもなく。。
そうそう、叙述トリックの人にとっては貴重なヒントがそこかしこに隠れている小説かも知れないね。この作品じゃそういうのは使ってないけど、「ここで、ナニをそうしないで、こっちの方でこうしちゃったら、あら立派な叙述トリックになるでないの!?」みたいにインスパイアされる人もいるんじゃないかしら、って思ったんだ。何しろ構成が構成だから。


No.198 7点 新参者
東野圭吾
(2015/07/23 19:02登録)
「日常の謎」の連作短篇群、かと思うと前の話と次の話が連関していたりする、かと思っていると最後に。。 こりゃちょいとヤラレました。

泣ける場面も結構登場、爽やかで深みのある一冊。 君に、読んで欲しいんだ。。(誰だよ)


No.197 8点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2015/07/23 18:59登録)
悪魔的密室トリックと言えば「全F」。 さて、この作品の中核にあるのは悪魔的アリバイトリックと、報われぬ恋、。。なんて言っておきましょうか。 いえ「悪魔的」は言い過ぎですね、だけど犯人(さて誰の事?)の行ったアリバイ偽装工作の中心に、後々まで非難の絶えない悪魔的行為が陣取っているわけでね。。

直木賞作品と聞いて予想した程の文学的感動は無く、ミステリ興味に偏った感慨を得たのは意外でありました。

悪魔のアリバイ・トリック(いやXXトリック?)は全く見破れませんでしたが、「容疑者Xは何故投獄される事をよしとしたのか?」の、恋情以外の大きな理由、ある種のホヮイダニット、天才数学者ならではのその理由は読書中ずっと予感していた通りで、正解と知ってちょっと気持ち良かったぜ。


No.196 5点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2015/07/23 13:52登録)
(ネタバレ有り)

人物入れ替わりの絡んだ犯人当ての困難さはなかなかのもの。 殺人方法を偽装(!)した密室殺人トリックも物語の禍々しい雰囲気によく合って印象的だが、それにしては解決篇のHM卿が二言三言で済ませ過ぎでは? 犯人を暴くのと同じくらい、もっと勿体ぶって思わせ振りにこの名トリックを解説して欲しかった。
物語としては、若干すれ違いの不満有りかな。 邦題は「黒死荘」がいいね。


No.195 8点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2015/07/23 13:33登録)
相当に若かりし頃、不埒な推理クイズか何かでトリック完全ネタバレだったんですが、そんなんお構いなしに最後までハイテンション読破してしまいました。 誰かに嵌められ窮地に落とされた若き主人公がHM卿に救われる迄のジェットコースター・ストーリーはその大半が裁判所の中!!

それにしても、この密室殺人のメイントリックこそ「心理的物理トリック」と呼ぶに相応しい代物ですよね、小説の題名付けも含めて。 ただ、どうもやる事がせせこましい(?)のと、やはり「被害者さんは、バカだったんですか?」と犯人さんに聞きたくなる例の大前提があるせいか、個人的にこの殺人方法にはさして賞賛を与えたくない。それでもなお歴史的密室トリックだと思う。

まトリック云々はともかく、物語自体とても良かったですよ。 構成美にもやられた。


No.194 7点 海の牙
水上勉
(2015/07/23 12:02登録)
昭和30年代ド真ん中、社会派推理小説全盛期の良作。
未だ原因が世に知らしめられる前(!)の水俣病に関する告発こそが前面に立ちますが、なお文芸としてもミステリとしても良質な硬派作品。たぁ言え気負いが強すぎるのか、アンバランスな点も数あるんだけどね。。そんな構成美の破綻も気にならないほど憤りのエネルギーに圧倒されます。
探偵役とワトソン役の遣り取りが意外とお茶目で、重苦しい物語の中でなかなかの息抜きとなっていたような記憶が。。


No.193 10点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2015/07/21 21:20登録)
(ネタバレ的表現含む)

読了後、職場の友人に読ませたくて読ませたくて、老婆心で登場人物一覧表を作ってしまったものです。
犯人は誰か、(次に)殺されるのは誰か、に加えて事件を解決する探偵役になるのは誰か、の興味まで重なったフーxxxイットの三面鏡状態に、そして異様な人物描写の連続に目眩ましされた巧妙な叙述(犯人隠匿)トリックに最後まで騙され通し!
文学臭がきついわけじゃ無いが、流石に良い文芸小説に仕上がっている。そこもやはり大きな魅力。
兎に角、これほどずっしり重い『やられた』感を背負わされたミステリーは今のところ他に無いですかね。「葉桜」でさえここまでは。 私にとってはまず完璧な作品です。

因みに、海外の某作品より先に読みました。某作品の方は、ほとんど最後まで犯人像に気が付きませんでした。 が、ふとこちらの作品を思い出し、「もしや。。」と。 そちらも相当に好きな作品ですが、こちらの比ではありません。  

「Friend族殺人事件」じゃないよ!


No.192 7点 朱の絶筆
鮎川哲也
(2015/07/21 21:00登録)
「りら荘」と異なり、ハクい女(スケ)がいっぱい出て来ます(笑)。

(以下ネタバレ有り)

「片腕」がそこで活きるとは。。 「原稿」を焼いた理由がそれとは。。(ちょっぴり綾さんの殺人方程式思い出す) オルゴールがメロディのどこで止まったかまで気にしてなかったよ。。

犯人は瞬殺で分かった(いや、実は途中まで候補は二人いた)。 作者もそれは承知の上。 何故連続殺人を展開したか、それを星影はどこで見破ったか、そしてあの(どの?)アリバイトリック。。 このへん諸々を当てないと正解とは認められないわけです、「読者への挑戦」付きの本作。

まあでも、業界事情があったとは言え、どうせ改編するなら短篇のままで、より引き締まった筋肉で武装した入魂の一作に仕立て直して欲しかった。「達也」等に並ぶ鮎川屈指の名短篇になれたのではないか?
或いは、せっかく長篇化でけっこう長い第一部(各容疑者の事件前経緯を思わせぶりに描写)を新たに継ぎ足したのなら、事件の展開する第二部、名探偵登場の第三部にもう少し深い人間ドラマ(本格の流儀でもちろん結構)を刻み込んで欲しかったね。

「下着の紐」の件は、短篇オリジナルのサラッとオチで流した方がバランス良くて粋だと思う。
だけど長篇オリジナルのエンディング、「コーヒーを飲む様子を見られていた理由」に思いを馳せるシーンはちょっと優しくていい。長く印象に残る。

ふと思うのですが第一殺人のアリバイトリック、これの原稿の動きを「黒いトランク」並みに複雑にしてみたら、どうなりましょうかね。


No.191 7点 夜行列車(ミッドナイト・トレイン)殺人事件
西村京太郎
(2015/07/16 13:49登録)
タイトルが紛らわしい「寝台特急」とは似て非なる鉄道京太郎の初期作品。謎は強烈だが割と地味な場面に始まるかの作と異なり、いきなり国鉄(!)総裁に列車爆破脅迫状という派手な立ち回りでスタート。脅迫状の出し方がまた変わっててケレン味上等! 時を同じくして、脅迫とは無関係と見える、しかし謎多き殺人事件が発生。 さてその後は、、京太郎さんの筆に任せて安心、いや安心する隙も無いサスペンスで最後まで力走だ!


No.190 7点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件
西村京太郎
(2015/07/16 13:41登録)
京太郎さん鉄道ミステリ第一号。 ちょっとホームズを思わせる冒頭の謎の畳み掛けがやはり光っています。 駅で撮影したフィルムが盗まれ(被写体はちょっと気になった若い女性!)、列車内で盗難に気付いた雑誌カメラマンは睡眠薬で眠らされ、気が付きゃ別の列車に! そういや最初乗った列車の食堂車で正体不明の男と知り合ったが、あいつはいったい誰だ? 翌日、盗まれたフィルムに映した若い女性と思われる屍体が見つかった、が。。 続く謎と事件の展開、捜査途上の描写は濃密。背後に、数年間の大物政治家名刺を利用した巨額詐欺事件が見え隠れ。果たして今回の殺人事件との連関は!? トラベル・ミステリーに食指の動かない人にこそ読んで欲しい、魅力満載の一冊です。


No.189 8点 僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2015/07/15 13:06登録)
明瞭に「グリーン家」派の私でも、この作品の、読んでいて背筋が伸びるような、周囲の空気を冷却浄化してしまいそうな厳粛たる雰囲気には敬意を表さざるを得ません。

この小説の眞犯人は。。まるで登場シーンから「はい、私が犯人です」と言わんばかりに私には見えましたが、まさかの「異様な動機」までは気付かなかったな。。怖ろしい人もいたものだ。
ラスト怒涛の眞犯人追い詰めシーンは、凄かったです。 刻まれますね、記憶に。

昔の創元推理文庫のカバー(茶色い手、グリ-ン家の緑と対になっている)が美しくて、ちょっと不気味で、好きです。


No.188 7点 カシノ殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2015/07/15 11:51登録)
‘Je suis .. ’ ってヴァンスが気障なフランス語を喋ってるのかと思ったら .. ‘重水’だったか!
後半六作に属する中篇(のような長篇)ですが、これが存外面白くて得した気分w 上品ぶっちゃいるがB級サスペンスの良さがある。
事情あって「ケンネル」とぶっ続きで読んだんで、その余韻の勢いも多少手伝ったかも知らんが。。 いや、やっぱりサスペンスの持続が読ませるポイントだったと思う。終始ざわついた雰囲気もいい。短時間一気読みでした。


No.187 7点 殺人名簿
島田一男
(2015/07/14 13:14登録)
夏こそ島田一男、この短篇集も快調な飛ばしっぷり。
どんな内容だったか、こちとらウッスラ忘れちゃったけどさ、
ちょっと残酷な、キツめの話が多かったかな。
勿論、それがイイんだけどさ。

地獄河岸/拳銃と香水/刑吏/殺人名簿/奇妙な夫婦/魔女の檻
(春陽文庫)

表紙の女子(春陽文庫版)もなかなか魅力的だよ。


No.186 8点 沈黙の函
鮎川哲也
(2015/07/14 11:51登録)
ははん、こりゃ鮎さんが古いレコードや歌曲の薀蓄を世に向け語りたくて書いたな、と思って読んだものです。たまたま私もその方面は興味がありましたし、ロシア語を習った事があり文字の読み方は知っておりまして、ましてそこに殺人事件が絡むとなればこれはもう面白くない筈がありません。いや、鮎さんの文章と小粋なトリック等々あってこそですけどね。 小ぶりな作品ですが、悪くありません。 個人的に高得点です。

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