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ミステリの祭典

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世界短編傑作集1
江戸川乱歩編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1960年07月
平均点6.00点
書評数7人

No.7 6点 クリスティ再読
(2022/06/08 08:40登録)
乱歩編で昔からある5巻のアンソロの1巻目。乱歩の時代にもすでにクラシック扱いになるドイル以前&同世代作家のウェイトが高い巻。
「名探偵」確立以前と確立期のバラエティ、と見るのがいいと思う。考えてみれば、なぜ「理性による推論」で事件が解決するか?というミステリ成立の根幹部分での試行錯誤がなされている巻だ、と見ると面白い。コリンズの「人を呪わば」もチェホフの「安全マッチ」でも、インテリの理論的推論がハズレであり、ベテランの経験知が正解、という体裁をとる。これが本来の犯罪小説のフォーマットだったのを、ポオが力業でひっくり返し、ドイルがそれをヒーロー小説化した...こういうショックがミステリというジャンルの原動力になったのではないのだろうか?
だから「ホームズのライヴァル」世代のヒューイットもヴァン・ドーゼンも「ホームズというショック」という「現象」を証言するだけの、形骸だけのB級ヒーローのような気がしてならない。それでもダークヒーロー寄りで推理機械ではない「隅の老人」は独自ポジションなんだけどもね...
そういう意味では、ホームズ以前の最良の「探偵」小説のモデルに、「医師とその妻と時計」がなるようにも感じられる。浮ついた印象のホームズのライヴァルではなくて、こういうリアルでしっとりした話としての「探偵」小説..シムノン風家庭悲劇、というようにも見えるのだが。
そして「放心家組合」(「健忘症組合」の方が今は適切だろうね)は、リアル・タイプの探偵であるヴァルモンが、鋭いあたりを見せながらも裏をかかれる話。いやだって、今でも「リボ払い」ってあるじゃない?「名探偵(理性)の失敗」というコリンズやチェホフのテーマは、ホームズ以降でもけして失効したわけではない。

No.6 6点 斎藤警部
(2015/07/27 21:35登録)
大昔に読んだもの。当時から既に大昔の作品達でした。
美しさと悲劇性で印象に残るのが、アンナ・カサリン・グリーンの「医師とその妻と時計」。こういう萌芽期の匂いがするミステリ文芸は好きだ。 
他も、古式ゆかしい魅力の作品や、有名トリックのオリジナル作などいっぱい。

No.5 5点 ボナンザ
(2014/04/09 15:17登録)
今読むと流石に古いが、他の短編集ではこれらはカットされているので補完の意味で読んでおくべき。

No.4 7点 ミステリーオタク
(2012/09/11 23:37登録)
バラエティに富んだ古典的な雰囲気がいい
「十三号独房の問題」はちょっと無理と御都合でいただけない

No.3 6点 mini
(2012/02/20 09:57登録)
作家としてだけでなくミステリー研究家としての存在も無視出来ない乱歩が編んだことになっている
まぁそうなんだろうけど、乱歩は海外の里程標や名作リストを知らなかったはずは無く、おそらくはそれら資料を参考にして再構成したに違いない
オリジナリティという観点では弱点だが、結果的に長所として収録作品の質が優れていてセレクトに妥当性があるのは認めざるを得ない
編年体の配列順なので全5巻を通して見事に短篇ミステリーの歴史の流れを俯瞰出来る様になっていて、初心者が海外短篇の古典を学ぶのには最も適したアンソロジーだろう
欲を言えば、ミード&ハリファックスのハリファックス博士もの、マクドネル・ボドキンの親指探偵ポール・ベック、ホーナングのラッフルズなどのシリーズからも採用して欲しかったな

この第1巻ではミステリー創生時代の作品が並びいかにもな古典、古さは仕方が無い
探偵小説の創成期という時代を研究する巻という位置付けだろう
収録作中で好きなのは断然ロバート・バー「放心家組合」
謎は解明しても事件は解決しないっていう一見消化不良な感じが様式美嫌いな私に合う
多分合わない人には合わないんだろうけどね

締めは出版社創元に対するイチャモン
創元はアンソロジーに対して理解出来ない性癖を持っていて、他の個人短篇集の収録作品を平気で省く、当巻だとポーとドイルがそう
ポーとドイルを省いた理由は分かるよ、要するにこのアンソロジー読む人なら既に読んでるだろうし、重複を避けたと
しかしこのアンソロジーは短篇の基本図書みたいな意義位置付けだろ、だったら省いちゃ駄目だろ
逆パターンもあって、例えばH・C・ベイリーの『フォーチュン氏の事件簿』には「黄色いなめくじ」が入って無いが、このアンソロジーの第5巻に入っているからなのが理由だ
第1巻だとモリスンやフットレルもそう

しかしだ創元よ、何で”重複”をそこまで気にする、いいじゃないかダブったって、早川ならその点では大らかだぞ
収録作品がダブると読者からクレームが来るとでも思っているのか?創元は考えすぎだよ

No.2 6点 りゅう
(2011/04/05 20:20登録)
 昔、「十三号独房の問題」を読んで面白かった記憶があり、再読したいと思っていましたが、この度古本が入手でき、再読することが出来ました。いずれの作品も書かれた時代が時代なだけに、古色蒼然とした印象は否めません。個人的ベストはやはり「十三号独房の問題」で、次点が「レントン館盗難事件」です。
「レントン館盗難事件」
 盗難事件で使われていたトリックは、ユニークなものでした。
「十三号独房の問題」
 思考機械ことドゥーゼン教授が、脱出不可能と見做されている十三号独房からの脱出に挑戦する話です。今読むと、ドゥーゼン教授に都合の良い状況が揃いすぎているようにも思いますが、良く出来た作品であることには間違いありません。
「放心家組合」
 恥ずかしながら、読後、真相がよく理解できませんでした。ネット検索して確認し、なるほどということに。「放心症」という単語は、少なくとも現在では使われていない言葉ですね。

No.1 6点 kanamori
(2011/01/01 17:47登録)
日本で編まれた海外古典短編ミステリの路傍標的アンソロジー、全5巻の1作目。
本書には、19世紀後半から20世紀始め”ホームズ時代”の作品を中心に編集されています。

編中では、”思考機械”こと伴道全教授、もといヴァン・ドゥーゼン教授初登場の名作・フットレル「十三号独房の問題」と、昨年シリーズ連作が邦訳されたロバート・バー「放心家組合」の2作が双璧でしょう。
ウィルキー・コリンズやアントン・チェホフの作品は、さすがに歴史的意義しか感じませんでした。

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