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ミステリの祭典

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名探偵ジャパンさんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:370件

プロフィール| 書評

No.350 7点 兇人邸の殺人
今村昌弘
(2022/07/06 17:14登録)
 シリーズ第三弾も安定のクオリティ。最近の若い作者は本当に「ハズレ」を書きませんね。とはいえ、さすがに1作目、2作目のようなインパクトは薄れます。『屍人荘』以降、この手のミステリが爆発的に増えたという状況もあるのでしょうが。作者にはこの路線の第一人者として、今後も頑張ってほしいものです。
 ただ、文章だからかなり誤魔化されているのだと思いますが、この話が置かれた状況がかなり異常(事件そのものとかいう話でなく)で、「こんなことになるんかいな」と思わないでもありません。


No.349 5点 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
歌田年
(2022/07/06 17:05登録)
 探偵役のキャラクターと模型の蘊蓄だけで保たせた、みたいな話に感じられました。肝心のミステリ部分が弱く、だから「このミス」は信用できないんだよなぁ(笑)。ライトノベルのレーベルで出したほうが読者を獲得できたかも。


No.348 6点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
鴨崎暖炉
(2022/07/06 16:59登録)
 皆様の書評通り、これは好き嫌いが明確に分かれる作品だと思います。何だか最近の流行りとして「ミステリなんてトリックが面白ければそれでいいんだから、難しいこと考えないで素直に楽しもうぜ」というものが感じ取られるのですが、そうであれば本作はまさに時代にマッチしたミステリといえます。トリックのためのトリック。密室殺人のオンパレード。中には実現性に大いに「?」が付くものもありますが、その気概は凄いです。
 最後の大オチの密室トリックは、作者が定義した「密室を構成する15のパターン」のどれにも当てはまらない全く新しい密室トリック、としていますが、それを成立させるためには特殊な条件が必要不可欠で、非常に限定された条件下でしか実行できません。
 こういうハウダニットを前面に押し出した作品の場合、どうしても「早く答え合わせが読みたい」という意識に駆られてしまうので、解決編に至るまでの道中が余程面白いものでないと、さっさと流し読みされてしまいかねません。そういう「謎と答えの繋ぎも読ませる」意味で、人間ドラマや血の通った登場人物というのはやはりミステリにも必要なのでしょうね。

 以下、ネタバレ的な感想を。







「液体窒素万能説(笑)」


No.347 10点 忌名の如き贄るもの
三津田信三
(2022/07/06 08:52登録)
 これこれ、これですよ! これこそ刀城言耶シリーズ、これこそ三津田信三。
 本作の肝は、ラストで明かされる「ホワイダニット」にあるわけですが、これが凄い。少なくとも私はこのホワイダニットを初めて読みましたし、「どこかに前例がある」という話も今まで聞いていません。あれだけ古くからあるものなのに、今まで誰もそれをミステリのホワイダニットの要素として使おうとしてこなかったとは。やはり三津田信三、目の付け所が違います。
 逆を言えば、大オチ以外はそれのための前座、みたいな読み方も出来てしまうわけですが、私はそれでも満足です。久しぶりにミステリで「叙述トリックに騙された」や「構成が巧み」といった以外の、「そういうことやったんか!」という正当な(?)驚き方をしました。


No.346 6点 碆霊の如き祀るもの
三津田信三
(2022/07/06 08:50登録)
「刀城言耶シリーズ」の集大成、いや、完結していないのですから、別の言い方をすれば「最大公約数」的な、手堅くまとめた佳作という印象でした。
 ミステリとしてよく出来ているのは間違いないのですが、何かひとつ足らんのですよ。各事件のトリックを分割して短編集にしたほうが印象に残ったかも。
 シリーズもそろそろ息切れを起こしてきたかな? と余計な心配をしてしまいました。次作長編『忌名の如き贄るもの』を読むまでは……。


No.345 4点 月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言
倉知淳
(2022/02/18 11:21登録)
さすがにブランク長すぎ?
不可解な謎と鮮やかな解決、そこに猫丸先輩のキャラクターが加わることで魅力を出してきたシリーズですが、今回は過去作品と比べると数段落ちます。もはや猫丸先輩のキャラだけで保っているような話ばかりになりました。
その猫丸先輩も、もうこれ以上キャラを広げようがないというか、完成されたキャラクターなので、シリーズを引っぱっていくには、謎と解決の魅力は絶対に必要なのですが……次(あれば)に期待ということで。


No.344 7点 蒼海館の殺人
阿津川辰海
(2021/12/27 19:56登録)
 これはかなりの力作です。これだけのものをよくぞ書き切ったと、作者の苦労をねぎらいたくなる逸品ですね。
 ただ「騙しとどんでん返し」に特化した最新鋭ミステリの暴走とでも言いましょうか、ある意味「トリックのためのトリック」に一周回って帰ってきている気がします。本作に限らず、ここ数年の新作ミステリ全般に言えることですが。


No.343 8点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2021/12/27 19:51登録)
 年末のミステリランキングを席巻するかと思っていましたが、それほどでもなかったですね。審査員を務めるような人たちは、こういうのはあまり好きじゃないのかな?
「ベタベタな本格」にカテゴライズされるミステリを書いてこなかった作者ですから、各事件のトリックは正直、素人が考えたレベルのもの。ですが、それを逆手にとってこういう作品を書いてくるしたたかさが、プロのプロたるゆえんなのでしょうね。作中の、主に綾辻の「館シリーズ」をベタ褒めしているのも、トリックメーカーになれない作者自身のコンプレックスを表しているのかもしれません。


No.342 7点 invert 城塚翡翠倒叙集
相沢沙呼
(2021/12/27 19:44登録)
 前作はその性格からして、「世界一続編が出されるべきではないミステリ」だったわけですが、これだけの話題作の続編が刊行されないなどということがあるはずもなく、当たり前のように出ちゃいました(目次で「前作の結末に触れています」という注意書き付き)
 SNSなどの感想を見ると、みな判で押したように「反転が凄かった!」と書いていますが、タイトルの「invert」は、「inverted detective story(倒叙推理小説)」のことで、本作がことさら「反転」を売りにしているというわけではないですからね。
 それでも、前作で一皮むけた作者のこと、本作も高水準のミステリに仕上げ、「出されるべきでなかった続編」という悪名は払拭したかなと思います。


No.341 7点 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース
島田荘司
(2021/06/19 23:03登録)
久しぶりの島荘、そして御手洗! やっぱり好きだなぁ。出てくるだけでワクワクします。

本作のトリックについて、密室をどうやって作ったか、のハウダニットだけを取り出してしまうと、確かに、どうよ?となりますが(あんなこと、本当に起きるの?)、この話(トリック)の肝は、「どうして密室になったのか?」というホワイダニットにあります。そこに犯人の心情や、ある種の被害者であるヒロインの立場も絡んできて、そういう視点で読まないと、本作のトリックを味わい尽くすことはできないでしょう。作品からトリックだけを抜き出して語れないトリック、になっていますし、ミステリのトリックって、そういう使い方をするのが一番効果的なんだと思います。


No.340 6点 透明人間は密室に潜む
阿津川辰海
(2021/01/08 21:37登録)
特殊設定あり、法廷もの(?)ありと、バラエティに富んだ短編集なのですが、私は一貫性がなく「とりあえず書いたものをまとめただけ」という印象を持ってしまいました。作者はまだ若いのですから、それぞれのテーマごとの短編をもっと書かせて、一貫性のある短編集として出したらよかったのではないかと思います。表題作が明らかに浮いています。

この作者、「紅蓮館」がライトノベルレーベルの文庫で出て、本作はハードカバーですね。どういう扱いを出版社からされているのか、いまいち掴み切れません(個人的には逆がよかったと感じます)が、次世代の本格の旗手になる可能性は十分秘めていると思います。


No.339 7点 サーチライトと誘蛾灯
櫻田智也
(2021/01/08 21:25登録)
「虫に関する事件」という結構コアな縛りで、なかなかの短編集に仕上がったのではないかと思います。どの話も丁寧で職人芸を感じさせますね。
「キャラクターミステリ」という程には探偵も主張しすぎることなく、読者を謎解きに専念させているのも好印象です。続編も出ているので、そちらも読んでみたいです。


No.338 7点 東海道新幹線殺人事件
葵瞬一郎
(2021/01/08 21:19登録)
本サイトの皆様のレビューで興味を惹かれて読んでみました。これは確かに「隠れた名作」と呼ぶにふさわしいかもしれません。このタイトルからこの内容はちょっと想像できませんでしたね。逆に、このタイトルを信じて買って、「もっとユルいのを読みたかったんだ!」という逆クレーム(?)が来てもおかしくありません(笑)
続編もあるようなので読んでみたいと思わせる、思わぬ拾い物の逸品でした。


No.337 7点 ノッキンオン・ロックドドア2
青崎有吾
(2021/01/08 21:12登録)
当初の予定からかなり期間を空けての刊行となってしまいました。
キャラクター小説という側面がある以上、登場人物のキャラクター像や人物関係をおさらいしてから読むべきで、そうしないと面白さが半減してしまうのでしょうけれど、面倒くさくてそのまま読んじゃいました(登場人物の名前も含めて、「探偵が二人組」ということ以外、ほとんどすべての設定を忘れていました)
こういうことがあるから、キャラクター小説は読者の記憶が確かなうちに矢継ぎ早に出していかないと駄目なのです。

相変わらず手堅いミステリを量産できる器用な作家ですね。「ハズレ」のない良い短編集でした。
最後に登場人物の関係性の総決算が行われるので(少年漫画の打ち切りラストみたいな駆け足感でした)、できれば前作から続けて一気読みすることをおすすめします。


No.336 6点 たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説
辻真先
(2021/01/08 21:03登録)
本作がミステリ賞三冠というのは、確かに「?」と思ってしまいます。
他のレビュワーの方も書いているとおり、ミステリ部分というよりは、大ベテランである作者へのねぎらいの意味も含めての受賞なのかなと思います(それが悪いとは言いませんが)

作品の結構リアルな雰囲気と、二件の殺人のいかにもなトリック(金田一少年みたい)が嚙み合っていない感じがしますし、「三冠」という前情報を知ってから読んだため、勝手に期待値を上げてしまいました。まっさらな状態で読めたら、もっと違った評価、印象になっていたかもしれません。


No.335 5点 天城一の密室犯罪学教程
天城一
(2020/09/01 09:41登録)
頭の良い人の書く文章というのは、凡人には容易に理解させてもらえません。事件の謎ではなく、どういう状況なのか? 何が起きているのか?を読解するほうに余程頭を使いました。自作解説パートで、「一般の読者には受け入れてもらえなかった」みたいなことが何度か書かれていますが、そりゃそうだろ、と突っ込みたくなります。ミステリを楽しむのはインテリばっかりじゃないぞ。

問題の(?)「高天原の殺人」ですが、これ単体で読めば「そんなうまいこと行くんかいな」と懐疑的な目で見てしまいますが、本作がチェスタトンの「見えない男」にインスパイアされて、日本的「見えない男」というか、作者自身の体験を踏まえて「見てはいけない男」(ネタバレ?)に着目して書かれた、ということを知れば、なるほどと思います。ミステリの発想って、こういうところにあるんだなと面白く読みました。


No.334 3点 狼と兎のゲーム
我孫子武丸
(2020/08/06 11:36登録)
ちょっと、作者が何を書きたかったのか不明な一作。
あとがきによれば、作者は「逃亡もの」が好きで、ただ単にその系列で書いただけのようですが、トリック的な驚きもなく、悪人は最後にあっさり捕まるだけで、ひどい話という印象しか残りませんでした。
本作は元々、子供向けの「ミステリーランド」用に構想されていたものだそうですが、「ひどい話」で子供に読ませるのはどうか、と考え直して「ミステリーランド」には別の作品を提出したそうです。
作者は「子供のトラウマになるような話を書こう」と最初から考えていたそうですが、「子供のトラウマ」って、そもそも大人が狙って書いていいものなのか?と疑問です。「子供向けとオブラートに包まずに、大人が真剣に子供に向けてメッセージ性を持って書いたものが、結果的にトラウマになる」みたいなのが正しいトラウマ(?)だと私は思っています。メッセージも何もなく、端から「子供のトラウマにしてやろう」などと邪心を持って書くものは、ただの加虐趣味的な嫌がらせでしかないと思うのは私だけでしょうか。


No.333 7点 名探偵は嘘をつかない
阿津川辰海
(2020/08/06 11:24登録)
序盤から「死んだ人間が別の死体に魂を入れて『転生』する」とか出てきて、叙述的なトリック的な何かかと思ったら、マジものの転生でびびりました。特殊設定ミステリって、もう完全に市民権を得ましたね。本作なんて、それを匂わせるタイトルとか売りにする惹句とか一切ないまま、仕掛けのある館や、絶海の孤島みたいに、その世界に存在するのが当たり前のように普通に出てきましたからね。「この館は建築基準法に違反している」とかいう突っ込みを入れて楽しんでいたのも今は昔。読む側も頭を柔軟にしていかなければ、これからのミステリ業界で取り残されてしまいます。
そんなぶっとんだ本作ですが、殺人事件に対してのロジックなんかは驚くほど精緻に作られていて、本格ミステリとしての強度は十分に持っているといえるでしょう。「名探偵」が資格となってそれを育成する機関が存在するとか、中二な設定もありますが、楽しめることは確かです。

※以下、もしかしたらネタバレかもしれません※



ひとつだけ気になったのは、序盤の事件で阿久津が主人公を見殺しにする必要は、結局なかったような?
阿久津は犯人の動きを完全に把握して逆トリックを仕掛けていたわけなので、犯人がそれに乗っかるのを隠れて見ているか、監視カメラでモニターしておいて、いざとなったら乗り込んで現行犯逮捕しても問題なかったのでは? まあ、ここで主人公を殺さないと、彼が転生できなくなって以降の話が進まなくなるという事情があったのかもしれませんが。


No.332 7点 永遠の館の殺人
黒田研二
(2020/07/27 22:56登録)
「KillerXシリーズ」完結!
シリーズものとはいえ本作単体でも楽しめますが、この作品は前二作を読んだうえで(出来るなら連続して読んで、記憶が確かなうちに)取り掛かっていただきたいですね。
館に住む人たちの秘密、死体が消えるホワイダニット(ハウダニットではないところがミソ)などは、今どきの20代の若い作家が好んで書きそうな常軌の逸し方ですが、当時45歳の二階堂黎人(共作の黒田研二でも当時35歳)が書いているんですね。こういったものを書ける若い感性って貴重だと思います。


No.331 4点 黒い森
折原一
(2020/05/16 15:57登録)
折原一はときどきこういうことをやりますね。
本の前後がそれぞれ「生存者」「殺人者」というタイトルになっていて、その両方を読み終えたら、いよいよ完結編ともいうべき「206号室」に進みます。この「206号室」は袋とじになっていて、否が応でも期待を高まらせます。ですが……
完全な「ギミック負け」の一作になってしまった感があります。「前後どちらから読んでもよい」と言いながらも、「なるべく「生存者」のほうから読んでくれ」とも書いてあるので、こんなことなら普通に前後編にしたほうがよかったのでは。
作中の「ミステリーツアー」の目的も早々に察することができますし、ラストも特に意外性のあるものでもなく、「インパクトがあったのは本のギミックだけ」という作品になってしまったと思います。
折原一は多作ゆえか、当たりはずれの落差が他の作家よりも激しいように感じます。

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