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ミステリの祭典

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たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説
昭和ミステリシリーズ

作家 辻真先
出版日2020年05月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 2点 suzuka
(2024/11/17 21:16登録)
時代背景的な薀蓄が記述の少なくない部分を占めるが、あまり面白いと思えず……むしろ読むのが若干苦痛でした。
ミステリとしては凡庸で、ラストの〇〇〇も取ってつけたような出来栄え。安易にどんでん返しをやろうとして伏線を張ることを怠ると失敗するという典型のような作品だと思いました。

No.5 7点 makomako
(2024/01/11 20:02登録)
この作品はどうしても個人的に思い入れが入ってしまいます。
まず昭和24年は私が生まれた年、そして舞台は私が生まれ育った名古屋、学校は後に私が通うこととなったナンバー中学。
出てくる地名は毎日私が通勤に通っているところでもあります。
物語としては本格推理で、トリックもなかなかなのですが、探偵が話を聞いただけで謎を解いてしまうといったちょっと推理の過程を楽しむといったところが欠けているように思いました。
なにか問題が出て答え合わせをしているといった感が否めません。

No.4 7点
(2021/08/31 13:44登録)
 昭和二四年、ミステリ作家を目指す名古屋の料亭の息子・風早勝利は、できたての新制高校・東名学園三年生になった。旧制中学卒業後の過渡期における、たった一年だけの男女共学の高校生活。そんな中、〈巴御前〉とあだ名される顧問の女傑・別宮操の勧めで勝利たち推研は、映研と合同での一泊旅行を計画する。別宮も含めた総勢六名で奥三河の湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行だった──。
 そこで彼らが巻き込まれた密室殺人。さらに夏休み最終日の夜キティ台風が襲来する中で起きた、旧第六聯隊営繕棟での首切り殺人! 二つの不可解な事件に遭遇した勝利たちは果たして・・・・・・
 著者自らが経験した戦後日本の混乱期と青春の日々をみずみずしく描き出す、『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』に続く、"昭和ミステリ" 第二弾。
 リアルタイムで1932年生まれ、御年88歳の辻氏が、米寿の身で書き上げた本格ジャンルの佳作。誰もが認める大家でも、ここまでくると小説の中身が相当怪しくなってくるのだが、全くそういう事もなくむしろ全盛期より読ませるのは敬服の他は無い(しかもこの後まだ書いてる・・・)。ツイッターを見ると最新アニメや漫画の消化に日々精進なさっているようで、羨ましい限りである(アマゾン配信でやっとシンエヴァ観たとかもあるな)。この凄まじい吸収力が頭の柔らかさを保持する秘訣なのだろう。
 内容的には終戦直後の男女共学開始時を背景に人々の心に残る帝国主義教育の残滓と、新時代の民主教育とのせめぎあいが齎す事件と学園での出来事を、思ったよりのほほんとした雰囲気で描いた作品。主人公が空襲にもボヤ程度で焼け残った料亭の息子であるためか、食糧難や各種インフラ荒廃といった時代的な切実さはチラホラ透けて見える程度。互いを意識し合う推研・英研メンバー男女五名の甘酸っぱい青春の日々を軸にして、戦争の影に隠れた大人たちのエゴと犯罪、それを切っ掛けにして起きた二つの不可能殺人が暴かれてゆく。
 他の方の評にもあるように特に犯人を隠してはないので、興味は自ずとハウダニット関連に移るが、こちらは両方とも奇想天外。本書230Pに「読者への質問状」が挿入されているが、後者はともかく〈密室殺人はいかにして行われたか?〉を解くのはかなり難しいのではないか。結構な密度の伏線で堪能させてもらったが、シリーズ物なのを勘定に入れないと色々納得し難いような気もする。
 あまり構えず読了したがこれまで読んだ氏のミステリでも上位に来るもので、スーパー&ポテトシリーズや協会賞受賞作『アリスの国の殺人』ほどの毒は無い分、個々のキャラクターを生かして上手く物語を纏めている。悲劇なれど後味のいい良作で、ボリューム的には及ばないものの冒険畑の『あじあ号、吼えろ!』に並ぶ出来栄え。

No.3 7点 まさむね
(2021/02/28 22:04登録)
 ミステリとしては、密室殺人とバラバラ殺人(解体殺人)を扱った本格モノ。楽しく読ませていただきましたが、各々のトリックが全体の雰囲気に溶け込んでいないような印象を受けました。そして、特に第2の事件については「危険を冒してまでそのトリック使おうとするかなぁ。自分なら一人で夜に呼び出して目的達するけどなぁ。」といった、ミステリ読みとしてあってはならない?感情を抱いたりもしました。(トリック自体の評価は敢えて書きません。)
 一方で、昭和24年の名古屋を舞台とした青春群像劇としては非常に興味深かったです。その時代、その場にいないと書けないであろうリアリティを感じました。令和の世に、新作としてこういった作品を読めるのは素晴らしいこと。辻御大に敬意を評してこの採点で。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2021/01/08 21:03登録)
本作がミステリ賞三冠というのは、確かに「?」と思ってしまいます。
他のレビュワーの方も書いているとおり、ミステリ部分というよりは、大ベテランである作者へのねぎらいの意味も含めての受賞なのかなと思います(それが悪いとは言いませんが)

作品の結構リアルな雰囲気と、二件の殺人のいかにもなトリック(金田一少年みたい)が嚙み合っていない感じがしますし、「三冠」という前情報を知ってから読んだため、勝手に期待値を上げてしまいました。まっさらな状態で読めたら、もっと違った評価、印象になっていたかもしれません。

No.1 6点 HORNET
(2021/01/03 20:37登録)
 終戦直後の昭和24年。進駐軍により急激な民主化が進められる中、カツ丼こと風早勝利は、名古屋市内に急遽設けられた新制高校3年生になった。それまで決然と分けられた男女が民主化の方針によって共学に。すぐに順応するカツ丼たちを「軟弱なヤツラ」とさげすむ一派もある中、推研と映研に所属するカツ丼たちは、顧問と男女生徒5名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行へ。そこで事件は起きた。

 各ランキングで1位をとっている本作だが、それは多分に昭和24年の世情を描いた物語全体の味と、ベテランの作者への畏敬によるところが大きいのでは。と記すように、私も十分楽しんだが、本格ミステリとして傑出した出来とはさほど思わない。序盤から最も怪しかった人物が、その通り真犯人だった。これが物語の中では好人物で、読者の心情的には裏切ってほしくないという思いもあるが、第一の殺人での不審な行動や、第二の殺人での状況からはストレートに怪しかった。それが裏切られる結末を期待していたのだが、その通りだったところがミステリとしては拍子抜けの感がある。
 ただ初めに書いたように、終戦後2年当時の世情・風俗事情をリアルに描き、その中で青春時代を過ごす若者たちの青春群像劇は、それはそれで非常に面白かった。

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