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ミステリの祭典

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初老人さんの登録情報
平均点:6.80点 書評数:130件

プロフィール| 書評

No.50 6点 緋色の囁き
綾辻行人
(2014/06/14 18:29登録)
著者がまだ20代の頃書き上げた長編小説(改めて刊行されるにあたり新たな修正は最小限に留めたとの事)ということで拝読。
文章に多岐に渡って緋い、という表現が用いられるなど拙さが目立ちます。章の合間の小話でミスリードを誘う手法自体は理解出来なくもないのですが、こちらにしてみればもう一捻りして欲しかった、というのが正直な所です。
読後に想像の余地を残すラストは良かったと思います。


No.49 4点 カナリヤ殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2014/06/12 10:55登録)
かなり前に読んだ作品ですが、使われているトリックは残念ながら子どもだましであり、犯人も再三に渡って不自然な言動が見られる事からポーカーの勝負による心理的分析を待つまでもなくその正体は明らかになっている、と言えるでしょう。
やはりヴァン・ダインの入門書としてはインパクトの弱い本書ではなくグリーン家か僧正、世界観に触れてみたいという方であればグリーン家をおすすめしたい所です。


No.48 5点 絞首台の謎
ジョン・ディクスン・カー
(2014/06/12 02:15登録)
考えてみれば、犯人を特定する手掛かりはそこかしこに散りばめられていたのですね。当事者しか知り得ない事実を元に犯人を特定したと思ったのも束の間、○○になり登場したいかにも怪しげな人物による初歩的なミスリードに引っ掛かり真犯人を取り逃がした悔しさを昨日の事のように思い出す事が出来ます。
死者が夜の街をリムジンで疾走したトリックについては、虚仮威しもいいところだと思いました。


No.47 10点 悪意
東野圭吾
(2014/06/10 20:11登録)
ネタバレあり

いやぁ、これは素晴らしい。10点を付けざるを得ない出来。
冷静に考えれば自らが犯した過去の忌まわしい出来事の証拠が法廷に晒される事などあり得ないと分かりそうなものだが、加賀が語っているようにそれは単なるきっかけに過ぎなかったのだろう。
加賀が最後に犯人に引導を渡すように 「法廷が待っていますから」といい放つのも私にとっては好ましく感じられた。まさしく犯人にとって生き延びた先に本当の地獄が待っている、という図式が出来上がった訳だ。
これ以上なにも言う事はない。未読の方がいれば是非ともおさえておいてほしい作品である。


No.46 6点 女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅
栗本薫
(2014/06/10 01:32登録)
(多少ネタバレ気味)

女郎蜘蛛として生きてきてこの物語において中心的な役回りをする事になる人物により、女郎蜘蛛への歪んだ恋愛感情を利用され道具として汚れ仕事をさせられる人物の心情を思うと なんだか哀れでもあり、滑稽でもあった。 ミステリ部分としては女郎蜘蛛の正体は明白であるため、彼女の[道具]の正体を示す ダイイングメッセージの解明という所にあると思うのだが、単純でありながら説得力があって良かったと思う。
物語は女郎蜘蛛の呪いは解けた、と宣言して終わるが、そこが 唯一の救いだったように思った。


No.45 6点 カブト虫殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2014/06/07 10:52登録)
ネタバレあり


この物語の構図は逮捕されたがっている犯人とそれを止める探偵、というもので今となってはそれほど珍しくもないのだろうが(私は不勉強にして逮捕を自ら望む事で何らかの利益を得ようとする犯人の構図しか知らなかった)、謎解き小説として一定の評価は出来るのではないだろうか。全編に渡って展開される衒学趣味が物語に彩りを添えている。


No.44 6点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2014/06/06 00:15登録)
叙述が一部分に集約されているのが惜しい。もっと全編に渡って騙しのテクニックが盛り込まれているような作品であって欲しかった。それでも今なおメイントリックを思い出せるという事は、読んだ当時の10年前にはそれなりに印象深かった作品、という事になるのだろう。


No.43 9点 後悔と真実の色
貫井徳郎
(2014/06/03 21:03登録)
こちらのサイトの高評価を受けて購入しました。読後最初の印象は、この作品は、デビュー作である慟哭を彷彿とさせる、というものでした。それくらい全体の雰囲気などが良く似ていますが、多視点での登場人物の書き分け等、明らかに進歩の跡が見て取れます。
西條の転落ぶりについては、自業自得と嘲りたくなるような気持ちと、ただただ気の毒に思う気持ちと、しかしそのような立場に追い込まれてもなお鋭い推理を発揮する姿に感心したくなる気持ちとが混ざりあい、自分でも複雑でした。
犯人については、試行錯誤した結果、やはりこの人しかいない、と考えた人が犯人でした。
全体としては、非常に楽しい読書の時間を提供してくれた作品でした。


No.42 8点 慟哭
貫井徳郎
(2014/06/01 02:30登録)
ネタバレあり


時系列が違う事は、大方の読者はすぐに察しがつく事と思う。利き手などの伏線も豊富で、フェアプレー精神にあふれている。それにしても、わずか20代の若さでこれほどまでにレベルの高い作品を書き上げた作者に、羨望の念すら覚える。文章は淡々としていながらも30代か、もしくは40代のものと見紛うほど完成されており、その後の活躍は知ってのとおりである。本当に非凡な才能であると、脱帽するしかない。


No.41 9点 電脳山荘殺人事件
天樹征丸
(2014/05/30 14:26登録)
ネタバレあり
叙述も、ハンドルネームの交換の結果成立するアリバイトリックのキレも文句なし。としたいところだが一点減らしたのはトリックの性質上仕方のない事とはいえ、用済みになった人間を立て続けに二人殺害したため。この犯人はもう少し慎重であって欲しかった(犯人は遺体の発見を遅らせる工作を行ってはいるものの、結果として早期に発見されてしまっている)。


No.40 5点 幽霊客船殺人事件
天樹征丸
(2014/05/29 19:37登録)
意外な犯人、大がかりなトリックと初読時にはそこそこ楽しめた印象がある。しかしながら電脳山荘、鬼火島といった傑作と比較してしまうとどうしても見劣りがするのは否めない。良くも悪くも、ミステリの入門書、といった感じの作品である。


No.39 7点 卍の殺人
今邑彩
(2014/05/28 09:00登録)
ネタバレあり
布施家と安東家の構造が全く同じ事を利用して殺人の場面(実際には首を絞める真似だったのだが)を目撃させるトリックなど、巧妙さが光る。その後の方向感覚を狂わす襲撃など幾分苦しい部分もあり、犯行を暴く決め手となる証拠の不確かさなどもやはりマイナスではあるが、犯人である二人の行く末を暗示する事で読み手の心情に訴える手法は中々のものでデビュー作としては十分及第点に達しているのではないでしょうか。


No.38 8点 鬼火島殺人事件
天樹征丸
(2014/05/27 00:23登録)
犯人の意外性も、犯人と死体が同時に消失するトリックの奇抜さも申し分ない。ただ細かい所に注文を付けさせてもらうなら、やはり見える光景に違和感があるのではないかという事と、トリックのタネの回収方法にもう一工夫欲しかった。だが気になる所はそれぐらいで、初読時の興奮を今でも良く覚えている数少ない作品の内の一つである。


No.37 6点 THE CHAT
椙本孝思
(2014/05/25 10:13登録)
前回読んだタイムカプセルよりは楽しめました。一連の犯行を行った犯人との決着を付けたと思っていたら更にもう一歩 進んだ真相が明らかになり、という趣向が良かったです。文庫版は長さ も丁度良く、持ち歩くのに適しています。


No.36 7点 「裏窓」殺人事件 tの密室
今邑彩
(2014/05/23 09:51登録)
(ネタバレあり)
貴島刑事シリーズを読むのはこれが初めてです。 時刻誤認をした結果として密室が作り出される、というのは 斬新な試みではないかと思います(もっとも私が知らないだけで前例があるのかもしれませんが)。しかも被害者の家に犯行当時男物の靴が置いてあった事から、もう一捻りした真相を作り出す事に成功しています。
最後のオカルト部分は今一つ好きになれないのですが、これを読んで貴島刑事が出てくる他の作品も読みたくなりました。


No.35 8点 獄門島
横溝正史
(2014/05/22 10:18登録)
ネタバレあり


犯行がそれぞれ別の人物による独立したもので、しかもそれらの犯行を計画した首謀者は既に亡くなっている、という着想自体万人には到達しえない領域である事に疑いの余地はない。しかも主となる三つの犯行それぞれに工夫が凝らされていて、まるで良く出来た精密機械を見るようである。にもかかわらず点数を若干減らしたのは了然和尚の犯行が推理出来てしまったためである。


No.34 7点 さまよう刃
東野圭吾
(2014/05/20 16:44登録)
(ネタバレあり)
犯罪を犯した少年グループの人物像が余りにも救い様のないものであるため(特に主犯)、娘を殺された長峰に終始肩入れしながら読み進めた。それだけにラストは消化不良の感がある。結局主犯の少年が生き延びた事に意味はあったのか。それはまた別の話、という事なのだろう。
密告者の正体は中々意外性があって良かったと思う。


No.33 8点 青い虚空
ジェフリー・ディーヴァー
(2014/05/19 01:20登録)
善玉ハッカーと悪玉ハッカーとのサイバースペース上での息詰まる攻防戦を描いたノンシリーズの長編もの。
物語が進みやがて興味は誰が犯人の協力者であるショーンなのかという事に推移していくのだが、警察内部にいるのか、それとも、というようになかなか的を絞らせない。そして明かされた真相は、大層意外ではあるのだがどこか脱力感を伴うものだった。しかし全体として見ればエンターテインメント作品として一級品であり、物語を堪能する事が出来た。


No.32 8点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2014/05/17 04:24登録)
(ネタバレあり)


今さら私が語るまでもなく、私に叙述トリックのレパートリーの一つを示してくれた本作品は本格ミステリとホラーの奇跡的な融合に成功している事により、ミステリ史に重要な1ぺージを記したといってもいいだろう。
大人になりきれていない父親、退職した元刑事、息子の行動を監視する母親、そうしたものが複雑に絡まりあい混沌の渦に巻き込まれていくのには一種の快感と、適度な緊張感があった。そして最後に各視点が収束していき解答が示された時には、慄然とさせられたのだった。


No.31 7点 秋期限定栗きんとん事件
米澤穂信
(2014/05/09 20:58登録)
いきなりこのシリーズのこの話から入ったので、小鳩君と小佐内さんが解消した互恵関係というのがどういうものか解らず、戸惑った。
それでも下巻に入ってからは物語に入り込む事が出来、一気に読み終えた。特に放火犯を特定するために小鳩君が仕掛けた罠は見事。少なくとも春にさかのぼって読んでみたい、と思わせるほどには十分な出来だったと思う。

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