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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:570件

プロフィール| 書評

No.430 4点 天に昇った男
島田荘司
(2019/11/03 20:05登録)
1個の物語を構成し、読ませる筆力はあるものの、ラストシーンには愕然とした。
変化球でゴマカシてはいるものの、その本質は夢オチそのものではないか。
読後に本作の全体像を俯瞰すれば、結局ファンタジーの枠組みを借りた死刑廃止論文でしかなく、この評価が妥当と思料


No.429 5点 聖女の毒杯
井上真偽
(2019/10/19 11:39登録)
前作より「多重解決」における仮説の数を増やそうとしたことによる副作用が強すぎる。
犯行の機会が限定されにくい毒殺を採用した結果、奇蹟の証明と言えるような、前作ほどの強烈な不可能状況ではなくなってしまった。
常識的には考えられない証拠隠滅が平然と行なわれている点は非常にいただけない。
多くの仮説を成立させるために、大量の伏線を配さなければならず、作品として不自然さが否めない。
以上、構想時点での大きな失敗が強く印象に残る作品


No.428 6点 さよならドビュッシー
中山七里
(2019/10/19 11:38登録)
まず、青春小説としては叙述の拙劣ぶりが目に余る。
ピアノのパフォーマンスの凄さを伝えようと力が入っているのだが、陳腐な言葉が上滑りし躍るばかりで、読んでいて興が醒めること、甚だしい。
一方、ミステリとしては既視感、フィージビリティの低さ、ご都合主義等を指摘されているものの、一定のサプライズを演出できたと評価してよいのではないか。
毀誉褒貶の激しい作品だろうが、力作感を好意的に評価して6点の下位


No.427 5点 無理
奥田英朗
(2019/10/19 11:34登録)
格差社会の実態を迫真のリアリティをもって描き切った、綿密な取材と高い筆力は手放しで評価する。
一方、本作の着地、ラストシーンには落胆した。
散々、発散してきたストーリーを収束させきれず、処置に困って投げ出したというだけにとどまらず、1個の作品全体として何の意味も残さないのである。
「負け組」にカテゴライズされる人々、「いまはそうではないものの、いつしか自分も負け組になるかもしれない」という不安を抱えている多くの人々が本作を読んでいる。
著者はこんな絶望的な、何の救いもない未来を描くことで、こうした人々に何を伝えたいのだろうか。
それがまるで見えてこない。
「よく書けてますね。So What?」という評価にならざるを得ない


No.426 6点 Wの悲劇
夏樹静子
(2019/09/07 16:57登録)
よく考えられたプロットと、手堅いストーリーテリングは買うのだが、本作の核となる法令が紹介された瞬間に、真犯人が看破できてしまうのが大きな難点


No.425 6点 夜よ鼠たちのために
連城三紀彦
(2019/09/07 16:55登録)
各作品の終盤における伏線の回収は見事だが、舞台設定・プロットがリアリティに欠け、ご都合主義が目立つ印象からこの評価


No.424 5点 返事はいらない
宮部みゆき
(2019/08/03 17:23登録)
いずれの短編も上手にまとめているが、ふみ込みが足りない。
リアリティも弱いし、何より胸に迫る、強い印象を残すものが何もない。
軽量コンパクトな作品群


No.423 6点 消えたタンカー
西村京太郎
(2019/07/30 19:47登録)
タンカーの消失に秘められた真相は、サプライズこそ不十分であるものの納得性は強く、それがもたらすプロットの反転は鮮やか。
「赤い帆船(クルーザー)」と類似した、スケールの大きいハリウッド映画的なプロットではあるが、その点で本作の方を断然上と評価する。
ただ、タンカーの消失も連続殺人事件もやや大味で、合理性やフィージビリティの面では難があると言わざるを得ない。
それが両者が1個の事件として融合しきれていない、1つのプロットとしてこなれていない印象を生んでいて、減点材料とした


No.422 4点 友達以上探偵未満
麻耶雄嵩
(2019/07/28 14:23登録)
各短編にはややスムーズさを欠き、無理が感じられる部分もあるものの、本格ミステリとしてそんなにデキが悪い訳ではない。
ただ、それらを1個の作品として見た時に、「オーソドックスではあるが平凡」と映るのである。
悪いところはないのだが、尖った、エッジの効いたところもまたない。
著者への期待感が高すぎるが故に、この評価


No.421 5点 エジプト十字架の秘密
エラリイ・クイーン
(2019/07/05 20:31登録)
推理プロセスの一部における論理性の高さには、目を見張るべきところがあるのは事実。
一方、本格ミステリとしての骨格に比してプロットが冗長すぎ、かつ一部に破綻が感じられる点、ご都合主義の印象が強い点等があり、世評ほどの傑作とは感じられなかった


No.420 4点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2019/06/26 18:42登録)
著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性が特色であるが、そのいずれにおいても本来のポテンシャルが発揮されていない。
最近の読了作は軒並み同様の評価であり、近年における低調ぶりを裏付ける作品


No.419 5点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2019/06/26 18:41登録)
チャラけた作風であり、真相の一部には無理も感じるものの、伏線やトリックには妙味も感じられ、思った以上に本格の出来栄え。
メイントリックも趣向こそ目新しさはないものの、そのために用意された舞台設定や、底流する思想には好感。
ただ問題は、本作が持つ唯一無二のオリジナリティと言うべき「タイトル当て」の解答に全く面白みがなく、その趣向自体に意味がないのである。
「タイトル当て」が我々読者が期待するような、メタレベルのミスディレクションになっている訳ではなく、タイトルが判明したところで作品世界に何らの影響も与えないのである。
これでは話題性を狙って奇をてらったものの、消化不良な作品という誹りは免れないだろう。
以上を総合考慮して5点の上位


No.418 4点 死の枝
松本清張
(2019/05/11 18:47登録)
例によっていずれの短編も、小さな瑕疵や偶然から事態を反転させ、真相を判明させるというプロットであるが、犯人の行動に合理性が感じられず、またはご都合主義的に感じられる等、どの作品からも違和感が拭えない。
この点で「黒い画集」はもちろん、「張込み」「影の車」にも遠く及んでおらず、この評価


No.417 4点 十三番目の人格―ISOLA
貴志祐介
(2019/05/06 17:54登録)
その後、傑作・佳作を多数残している著者であるだけに、本作がデビュー作であることを割り引いても、この不出来ぶりは予想外と言わざるを得ない。
まずもって、人物造形やストーリーの運びに、とにかくリアリティが感じられないのである。
主人公は家出して風俗産業で働いているが、キスの経験さえない処女。
最終学歴は高卒で、中学時代には不登校も経験しているはずなのに、マイナーとも言える古典作品の知識があり、独学をベースに心理学者と対等に会話し・・・
20代前半で東京在住の美女だが、イケメンとは言え、30代後半の世慣れない学者に、自宅を遠く離れた甲子園で唐突に一目惚れ・・・
しかし、それ以上に問題なのは、本作の主題が拡散を続け、全く不明確なまま完結する点である。
本来、本作の主題は「多重人格者とエンパスのやり取り」であるべき(と私が勝手に考えている)ところ、終盤に唐突に「恋愛」と「幽体離脱」のゴッタ煮に移行し・・・
これならIsolaが13番目の人格である必要など全くない。
著者は「13」という数字が持つイメージが何となく欲しかったに過ぎない。
にもかかわらず、「十三番目の人格」を副題にまでしている意図は一体何なのか・・・
いやそもそも、作品前半の各人格とのやり取りに、こんなに紙幅を割く必要があったのかどうか。
もっと言えば、主人公が「エンパス」である必然性も・・・
読了後に本作のプロットに対する、さまざまな疑問が頭を駆け巡る作品


No.416 6点 鬼の跫音
道尾秀介
(2019/05/06 17:45登録)
どの作品からも確かなテクニックが感じられる一方、既視感も強い。
したがって、完全に外している作品がない一方で、突き抜けた作品もない。
短編集として水準には達しているものの、軽量コンパクトな印象が強い


No.415 6点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2019/04/29 18:00登録)
ミステリの新たな地平を切り開いた点で、非常に歴史的意義が大きい作品であることは認める。
しかし一方で、1個のミステリとしては、謎そのものが魅力に乏しい、犯行計画が杜撰、偶然の影響が大きい、推理における論理性・必然性が弱い等、多くの点で相当に甘さも感じてこの評価


No.414 5点 メイン・ディッシュ
北森鴻
(2019/04/29 17:59登録)
連作短編集であるにもかかわらず、真相を示唆する伏線や手掛かりに乏しく、読後の納得感は弱い。
料理というガジェットを除いて全体を俯瞰すれば、小粒な作品と言わざるを得ない


No.413 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2019/04/02 08:49登録)
足跡のトリックは一見して無粋・無骨な印象を受けるものの、被害者が仕掛けている点、犯行時間の誤認をリードしている点等、考え抜かれたもの。
老医師の手記という構成がもたらす真犯人の衝撃も含め、地味な印象が強い作品だが、完成度の高い佳作


No.412 7点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2019/04/02 08:46登録)
ライトノベルの仮面を被ったゴリゴリの本格ミステリというプロフィールは、古野まほろの再来を思わせる。
毀誉褒貶が激しい作品であろうが、非常に斬新なアイデア、着地姿勢が乱れたものの、それでも1個のミステリとして着地させ切ったプロットの構想力、論理性の高さを高く評価したい


No.411 4点
麻耶雄嵩
(2019/04/02 08:45登録)
全体として著者の意図を掴みかねる作品。
本格ミステリとしては、アクロバティックな真相を成立させるだけの説得力に欠けており、この評価

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