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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:570件

プロフィール| 書評

No.150 4点 仮面幻双曲
大山誠一郎
(2015/04/09 14:34登録)
第一の犯行のメイントリックは、双子と整形手術を活かした非常にシンプルな仕掛けで、事態を鮮やかに反転させており巧妙。
しかし、このメイントリックにより自己矛盾とも言える重大な副作用を孕んでしまい、犯人が非常にリスキーな綱渡りを随所で演じている点で、犯行の合理性に疑問。
第二の犯行は、これに輪をかけて合理性とフィージビリティの点で無理筋であり、この犯行を成立させるために警察の無能性は異常な水準に達している。
少ないボリュームの中、随所に散りばめられた伏線のバランス、回収の妙など、ディテールは一定程度評価。
ただ全体としては、メイントリックのワンアイデアを活かすために、無理に無理を重ねた机上の空論と言わざるを得ない。


No.149 7点 妖異金瓶梅
山田風太郎
(2015/04/09 14:32登録)
各短編はスケール感に乏しい小粒なハウダニットなのだが、本作の最大の見所は恐らく前例がないと思われる探偵役と犯人のユニークな関係。
四大奇書「金瓶梅」の舞台設定を活かして、この構想を実現したところが抜群の奇想。
エロティックな描写が満載であるにもかかわらず下品さを感じさせないストーリーテリングや、魅力的な人物造形も見事で、世評に違わぬ作品。


No.148 4点 木製の王子
麻耶雄嵩
(2015/04/06 18:32登録)
アリバイトリック自体は脱力モノで、なぜこのアリバイトリックを仕掛けることができたのかというホワイダニットが本作の核であり、読みどころ。
そのためにプロットが練りに練られているのだが、本作のプロットだとどのような不可解な謎でも説明がついてしまうため、カタルシスを感じるには至らなかった。
ディテールには作者らしい稚気あふれる仕掛けが随所に見られるものの、全体としては満足とは言えないデキ。


No.147 5点 邪馬台国はどこですか?
鯨統一郎
(2015/04/03 11:22登録)
う~ん、微妙…
敷居の低いライトな歴史ミステリが狙いであることは重々承知しているが、それでも敢えて言わせてもらうならば、やはり圧倒的に掘り下げが足りない。
いずれの短編も着眼点としては面白いのだが、「特定の史実のみに依拠すれば、一応このような解釈も成り立たない訳ではない」という乱暴な仮説を列挙しただけのもの。
仮説に対して反論すべき2人の語り手は全く反論しておらず(あるいは反論が効果的ではなく)、機能していない。
そもそも議論をしていないから、反証を許さないことが検証される訳でもないので、「ふ~ん」で終わりのレベル。
歴史ミステリは好きなジャンルだし、難しさは理解しているものの、やはり踏み込み不足と言わざるを得ない。


No.146 6点 ネジ式ザゼツキー
島田荘司
(2015/04/03 11:20登録)
本格ミステリとしての核は小粒であり、かつ強引さとアラが目立つので5点の評価。
ただ、冒頭に示される謎(タンジール蜜柑共和国への帰還)の壮大さ・不可解性と、それを生々しいリアルな犯罪に落とし込むプロット、物語世界に力強く引き込んでいく求心力の強いストーリーテリング、島田作品に特有の不幸な境遇に翻弄されながら懸命に生きる登場人物の生き様に好感。
以上、本格ミステリとしては評価し辛いものの、読物としての抒情性を買ってこの評価。
キライな作風ではないのだが、著者に求めているものはこれではない。


No.145 6点 夜歩く
横溝正史
(2015/03/27 20:09登録)
横溝としては本格色の強い作品。
夢遊病を犯行の隠蔽に活かしつつ、凶器である日本刀の保管を巡る状況証拠から真相解明に至る手口は鮮やか。
メイントリックについては、登場人物が少なく、かつ犯人と目される人物が相当に限定的であることから、想定した効果を挙げているとは言い難い。
プロットの相違点も含めて、同じ趣向の高木彬光の作品よりは高く評価。


No.144 6点 扼殺のロンド
小島正樹
(2015/03/26 20:41登録)
本格ミステリのガジェット尽くめにしたうえで、謎の不可解性を連打しての力押しなのだが、個々のトリックのクオリティはチープで、粗製乱造の印象が拭えない。
見せ方や活かし方もおざなりな印象。
こうしたトリック小説では、強引さやご都合主義をカバーするだけのプロットや舞台設定の妙が求められるが、その点でも今一つ。
ストーリーテリングは堅実で論理性を感じる反面、スピード感やサスペンスに欠け、探偵役はじめ登場人物の造形も弱い。
以上、欠点ばかりをあげつらったカタチだが、個性的な作風で嫌いではない。
ただブレイクスルーにはもう一歩


No.143 7点 造花の蜜
連城三紀彦
(2015/03/26 20:39登録)
定番ともいえる誘拐モノとしては最大限にトリッキーでアクロバティックな真相。
事件の構造を活かした反転の妙がこのうえなく鮮やか。
ボーナストラック的な最終章は、本編の着地が美しく決まっているだけに、蛇足の印象は否めない。
また事件があまりにも壮大かつ計画的すぎて、リアリティやフィージビリティの点ではやや弱さも感じるところ。
それでも本作で示された構想力は素晴らしいもので誘拐モノの傑作と評価


No.142 6点 OZの迷宮
柄刀一
(2015/03/20 17:10登録)
各短編の骨格はしっかりと本格なのだが、作り込みが細かすぎる点、随所に強引な力業が散見される点で、犯行のフィージビリティや真相判明時のカタルシスとしては弱い。
ただ連作短編集ならではの趣向に意外性と面白さがあるのは間違いない


No.141 2点 痙攣的 モンド氏の逆説
鳥飼否宇
(2015/03/11 11:40登録)
相当な作品であろうと推測していたが、悪い意味で期待を超える作品。
プロット全体がもはや常識や論理とは無関係な、読者を置き去りにした破壊的なものだが、提示される謎に一応の解決が与えられるという点で、かろうじてミステリの範疇には止まっている。
ただ、その解決は納得感やカタルシスにはほど遠く、バカミスというよりトンミスという評価が相応しい。
私のミステリ観の許容範囲を超える作品


No.140 2点 スティームタイガーの死走
霞流一
(2015/03/09 15:42登録)
あまり批判的なスタンスに立つつもりはないのだが。
まず文章の拙さに関しては、他に類を見ないもので、商業出版としてちょっとどうなのかというレベル。
そのうえ書きたいネタが十分に説明されないまま詰め込まれ、駆け足に進んでいく展開で、読んでいて終始違和感が拭えない。
トリックについても、思い切ってバカミスに徹し切ったのではなく、単なるスケール・アイデア不足による脱力感。
最後の仕掛けは伏線を配しつつ巧妙に決めているが、必然性に乏しく唐突感は否めない。
以上、冷静かつ公平に評価して最低クラスと言わざるを得ない


No.139 6点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2015/03/09 15:41登録)
「死刑囚パズル」「黒衣の家」「カニバリズム小論」はいずれもホワイダニットとして秀逸。
「土曜日の本」は謎に回答が与えられておらずミステリとしては未完成。
収録されている各作品のクオリティ、志向性の異なる作品を1冊の短編集としたことに起因するまとまりのなさ等、他の短編集よりもデキは確実に落ちる。
それでも長編作品を超えるクオリティを維持しているのは間違いない。


No.138 8点 聯愁殺
西澤保彦
(2015/03/04 20:18登録)
本書のプロット・構成に対してアンフェアとの意見も散見されるが、氷川透氏による解説が的確だと思う。
一見して、本作の大半が「犯人はなぜ主人公を殺そうとしたのか?」という謎に対する「解決篇」を装いながら、実は大半がより上位の謎に対する「問題篇」であるという構成が絶妙。
主人公の思考を読者に対しての伏線としつつ、逆にミスリードする仕掛け、真相を隠蔽するトリックのいずれもが実に巧妙。
犯人の動機は陰惨な犯行と犯人を待ち受ける壮絶なラストに相応しく、読み応えのある傑作。


No.137 3点 黒い仏
殊能将之
(2015/03/02 17:38登録)
作者がやりたかったであろうことは理解するし、意味のないことだとは思わない。
与えられた条件での探偵による真相解明にもある程度の合理性がある。
ただ、クロフツを標榜するにはネタがセコすぎて、狙いが効果を挙げているとは言い難い


No.136 6点 能面殺人事件
高木彬光
(2015/03/02 17:34登録)
海外有名作品のネタバレや犯行方法等で大きく評価を下げている作品だが、全体としては相応のレベルと評価。
犯行現場を密室とした必然性も説明されているし、真相解明に至る伏線も巧妙。
プロットは当時としては画期的であっただろうが、全編が手記という構成故に、真相が見えやすくなっている点が難点。


No.135 7点 ここに死体を捨てないでください!
東川篤哉
(2015/02/27 17:39登録)
犯人・探偵サイドが意識しないまま接近し、限定された情報から誤った推理をぶつけ合う展開が楽しめる。
メイントリックは非現実的との批判は免れ得ないものの、アリバイ工作としては他にないユニークな仕掛けであり、作風が違和感を緩和。
解明に向けた手がかりを巧妙に配し、犯人の所在不明や提示された謎に一定の説明を与えている。
ユーモアあふれるストーリーテリングもこなれている部類。
以上、数ある著作の中では完成度は高いのだが、作者の立ち位置・作風からするとややエッジは不足気味。
まとまりのない長打か、まとまった単打になってしまうあたりに、物足りなさは感じる


No.134 9点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2015/02/25 16:22登録)
「木は森の中に隠せ」の王道を地で行く作品で、本来のターゲットに、やむを得ざる殺人と無関係な殺人が混然一体となったプロット、「不連続殺人事件」のタイトルは非常に秀逸。
一方、犯人当て懸賞付小説として発表されたフーダニットという経緯からして、ある程度やむを得ないものの、登場人物が極めて多く整理不足、全員が個性的すぎて書き分けが不徹底である点は難点。
従って、犯人の行動の非合理性からその心理を推測し、真相解明に向かう手筋は鮮やかであるものの、登場人物の普段の言動がトリッキーすぎることで効果が半減している点は事実。
文体の独特さと読み辛さが指摘されることが多いが、概ね当時の仮名遣いや言い回しの慣習によるものであり、筆致自体は簡潔で非常にわかりやすかった。
反面、異様な連続殺人にもかかわらず緊張感には乏しいのだが。
以上、毀誉褒貶相半ばする作品だが、個人的には壮大なスケールの連続殺人を僅かな手掛かりから解明する手際の良さ、随所に散りばめられた伏線の妙を高く評価


No.133 5点 女囮捜査官  触姦
山田正紀
(2015/02/23 12:54登録)
シンプルな事件の真相を巧妙に隠蔽しつつ、再三にわたるどんでん返しが読み処だが、結局犯行状況から真相が見えやすくなっている点が難点。


No.132 4点 江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)
江戸川乱歩
(2015/02/23 12:53登録)
各作品の歴史的意義は無条件で認めるものの、リアルタイムで冷静に評価するならば、やはり相当に古さを感じると言わざるを得ない。
本格寄りの作品より「赤い部屋」等の怪奇小説寄りの作品に良さを感じた


No.131 7点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2015/02/23 10:41登録)
提示される謎の不可解さは強烈。
メイントリックは複数の材料を組み合わせたもので、幸運に支えられたご都合主義、ある登場人物の言動が釈然としない、解明の手がかりが少ないといった難点はあるものの、ミスリードとしては巧妙。
一方、犯行自体は無計画かつ突発的なもので、綱渡りのトリックが犯人を隠蔽している中、2番目の犯行が犯人を特定する決定的な材料となっており、プロットとしては脆弱と言わざるを得ない。

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