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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:558件

プロフィール| 書評

No.158 4点 アリア系銀河鉄道
柄刀一
(2015/05/07 15:10登録)
仮想現実を舞台とした本格ミステリの場合、何にも増して前提条件を明らかに、限定的にしておく必要があるが、本作は作り込みに甘さがあり、真相解明時のカタルシスを大きく減じている印象。
真相解明にあたっても、不可解な点が多く、論理性に綻びを感じる


No.157 7点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2015/05/01 13:24登録)
プロット全体としては本筋からの脱線も散見されるなど、完成度としては今ひとつであり、アリバイトリックも凡庸。
しかし、そのトリックを補強するために使用されているサブトリックの奇想が際立っている。
エピローグで明かされる伏線も実に巧妙。
犯行全体の合理性・フィージビリティ、犯人の人物造形との親和性等も高く評価


No.156 6点 三毛猫ホームズの推理
赤川次郎
(2015/04/28 17:39登録)
いまや大衆作家と言われる著者だが、キャリアの最序盤には正しく本格ミステリ作家だったことを物語る作品。
見所はシンプルかつ豪快な物理トリックで、伏線も含めて見事に着地。
ご都合主義、犯人特定の容易さ等は目につくものの、ユーモアあふれるストーリーテリングによるリーダビリティの高さも評価して6点の上位


No.155 7点 戻り川心中
連城三紀彦
(2015/04/28 17:37登録)
短編集として常にオールタイムベストの上位にランクインする本作。
収録作品はいずれも優れたホワイダニットで、手段としての殺人や心中に冴えを見せる。
特に「戻り川心中」「藤の香」「桔梗の宿」が上位。
大正・昭和の暗い世相や舞台設定を伏線として活かし、プロットを反転させる手法で生み出す意外性と、高い抒情性を両立させており、世評に違わぬ作品。


No.154 6点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2015/04/24 14:43登録)
本作もクオリティの高いパズラーがズラリと並んでおり、相変わらず短編では群を抜く存在の著者。
真相の意外性では「背信の交点」「身投げ女のブルース」「リターン・ザ・ギフト」が上位。
ただし、「身投げ女のブルース」を筆頭に、ご都合主義の印象が強く、完成度としてはもう一歩。


No.153 6点 亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
(2015/04/21 20:12登録)
多くの投稿者が評価されているように、一見すると推理の論理性は低く飛躍が散見。
しかし、これは人間性を逆説的に捉えた奇妙な論理に徹したことの副作用であり、これを著者のオリジナリティや稚気と解することができれば高評価。
無駄のないミステリパズルのようなプロットと、遊び心あふれるストーリーテリングには好感


No.152 2点 天帝のはしたなき果実
古野まほろ
(2015/04/21 20:11登録)
ルビ塗れで口語体と文語体が混在した、異様な文体は慣れれば読めないことはない。
衒学趣味は聖書・源氏物語・十字軍にはじまり、果てはアニメ・コミックまで、思い付きを全部投入した闇鍋状態で、しかもプロットとは何の関係もない。
登場人物がほぼ全員高校生という舞台設定と、描かれる世界の間には親和性もヘッタクレもない。
中盤の推理合戦はロジックの追求こそ不十分であるものの、本格の片鱗を感じさせたが、結局はすべてを放り出して大風呂敷を拡げるだけ拡げて読者を置き去りに。
通常、ミステリは冒頭に拡散させた謎を真相に向かって収束させていくものだが、拡散させる一方で全く収束させないままラストを迎える。
結局は、そもそも読者に理解してもらおうなどと顧慮さえしていない、高度に自覚的というか確信犯的なマスターベーションと見るべきだろう。
ストーリーテリングは独特のリズム感もあり決して下手ではないし、プロセスには見るべきものもあるのだが、そうした点を部分的に評価することなく、ミステリとしてのあり様を真正面から捉えてこの評価


No.151 4点 官能的 四つの狂気
鳥飼否宇
(2015/04/14 18:45登録)
メイントリック勝負の作品なのだが、素直に、前向きに評価するのは難しい。
仕掛け自体が完全にアンフェアなのはまだいい。
問題は各短編がそもそも正統的な本格ではなく、ぶっ飛んだ内容なので、メイントリックがサプライズに繋がらないという構造的な課題。
加えて、各短編は一旦暫定的な解決を迎えるのだが、メイントリックの必然性を説明する根拠としては弱く、しかも違和感が残るラスト。
上手く伝えられないのだが、ストレートを見せ球に使って変化球を投げないと、全球変化球では効果に乏しいということか


No.150 4点 仮面幻双曲
大山誠一郎
(2015/04/09 14:34登録)
第一の犯行のメイントリックは、双子と整形手術を活かした非常にシンプルな仕掛けで、事態を鮮やかに反転させており巧妙。
しかし、このメイントリックにより自己矛盾とも言える重大な副作用を孕んでしまい、犯人が非常にリスキーな綱渡りを随所で演じている点で、犯行の合理性に疑問。
第二の犯行は、これに輪をかけて合理性とフィージビリティの点で無理筋であり、この犯行を成立させるために警察の無能性は異常な水準に達している。
少ないボリュームの中、随所に散りばめられた伏線のバランス、回収の妙など、ディテールは一定程度評価。
ただ全体としては、メイントリックのワンアイデアを活かすために、無理に無理を重ねた机上の空論と言わざるを得ない。


No.149 7点 妖異金瓶梅
山田風太郎
(2015/04/09 14:32登録)
各短編はスケール感に乏しい小粒なハウダニットなのだが、本作の最大の見所は恐らく前例がないと思われる探偵役と犯人のユニークな関係。
四大奇書「金瓶梅」の舞台設定を活かして、この構想を実現したところが抜群の奇想。
エロティックな描写が満載であるにもかかわらず下品さを感じさせないストーリーテリングや、魅力的な人物造形も見事で、世評に違わぬ作品。


No.148 4点 木製の王子
麻耶雄嵩
(2015/04/06 18:32登録)
アリバイトリック自体は脱力モノで、なぜこのアリバイトリックを仕掛けることができたのかというホワイダニットが本作の核であり、読みどころ。
そのためにプロットが練りに練られているのだが、本作のプロットだとどのような不可解な謎でも説明がついてしまうため、カタルシスを感じるには至らなかった。
ディテールには作者らしい稚気あふれる仕掛けが随所に見られるものの、全体としては満足とは言えないデキ。


No.147 5点 邪馬台国はどこですか?
鯨統一郎
(2015/04/03 11:22登録)
う~ん、微妙…
敷居の低いライトな歴史ミステリが狙いであることは重々承知しているが、それでも敢えて言わせてもらうならば、やはり圧倒的に掘り下げが足りない。
いずれの短編も着眼点としては面白いのだが、「特定の史実のみに依拠すれば、一応このような解釈も成り立たない訳ではない」という乱暴な仮説を列挙しただけのもの。
仮説に対して反論すべき2人の語り手は全く反論しておらず(あるいは反論が効果的ではなく)、機能していない。
そもそも議論をしていないから、反証を許さないことが検証される訳でもないので、「ふ~ん」で終わりのレベル。
歴史ミステリは好きなジャンルだし、難しさは理解しているものの、やはり踏み込み不足と言わざるを得ない。


No.146 6点 ネジ式ザゼツキー
島田荘司
(2015/04/03 11:20登録)
本格ミステリとしての核は小粒であり、かつ強引さとアラが目立つので5点の評価。
ただ、冒頭に示される謎(タンジール蜜柑共和国への帰還)の壮大さ・不可解性と、それを生々しいリアルな犯罪に落とし込むプロット、物語世界に力強く引き込んでいく求心力の強いストーリーテリング、島田作品に特有の不幸な境遇に翻弄されながら懸命に生きる登場人物の生き様に好感。
以上、本格ミステリとしては評価し辛いものの、読物としての抒情性を買ってこの評価。
キライな作風ではないのだが、著者に求めているものはこれではない。


No.145 6点 夜歩く
横溝正史
(2015/03/27 20:09登録)
横溝としては本格色の強い作品。
夢遊病を犯行の隠蔽に活かしつつ、凶器である日本刀の保管を巡る状況証拠から真相解明に至る手口は鮮やか。
メイントリックについては、登場人物が少なく、かつ犯人と目される人物が相当に限定的であることから、想定した効果を挙げているとは言い難い。
プロットの相違点も含めて、同じ趣向の高木彬光の作品よりは高く評価。


No.144 6点 扼殺のロンド
小島正樹
(2015/03/26 20:41登録)
本格ミステリのガジェット尽くめにしたうえで、謎の不可解性を連打しての力押しなのだが、個々のトリックのクオリティはチープで、粗製乱造の印象が拭えない。
見せ方や活かし方もおざなりな印象。
こうしたトリック小説では、強引さやご都合主義をカバーするだけのプロットや舞台設定の妙が求められるが、その点でも今一つ。
ストーリーテリングは堅実で論理性を感じる反面、スピード感やサスペンスに欠け、探偵役はじめ登場人物の造形も弱い。
以上、欠点ばかりをあげつらったカタチだが、個性的な作風で嫌いではない。
ただブレイクスルーにはもう一歩


No.143 7点 造花の蜜
連城三紀彦
(2015/03/26 20:39登録)
定番ともいえる誘拐モノとしては最大限にトリッキーでアクロバティックな真相。
事件の構造を活かした反転の妙がこのうえなく鮮やか。
ボーナストラック的な最終章は、本編の着地が美しく決まっているだけに、蛇足の印象は否めない。
また事件があまりにも壮大かつ計画的すぎて、リアリティやフィージビリティの点ではやや弱さも感じるところ。
それでも本作で示された構想力は素晴らしいもので誘拐モノの傑作と評価


No.142 6点 OZの迷宮
柄刀一
(2015/03/20 17:10登録)
各短編の骨格はしっかりと本格なのだが、作り込みが細かすぎる点、随所に強引な力業が散見される点で、犯行のフィージビリティや真相判明時のカタルシスとしては弱い。
ただ連作短編集ならではの趣向に意外性と面白さがあるのは間違いない


No.141 2点 痙攣的 モンド氏の逆説
鳥飼否宇
(2015/03/11 11:40登録)
相当な作品であろうと推測していたが、悪い意味で期待を超える作品。
プロット全体がもはや常識や論理とは無関係な、読者を置き去りにした破壊的なものだが、提示される謎に一応の解決が与えられるという点で、かろうじてミステリの範疇には止まっている。
ただ、その解決は納得感やカタルシスにはほど遠く、バカミスというよりトンミスという評価が相応しい。
私のミステリ観の許容範囲を超える作品


No.140 2点 スティームタイガーの死走
霞流一
(2015/03/09 15:42登録)
あまり批判的なスタンスに立つつもりはないのだが。
まず文章の拙さに関しては、他に類を見ないもので、商業出版としてちょっとどうなのかというレベル。
そのうえ書きたいネタが十分に説明されないまま詰め込まれ、駆け足に進んでいく展開で、読んでいて終始違和感が拭えない。
トリックについても、思い切ってバカミスに徹し切ったのではなく、単なるスケール・アイデア不足による脱力感。
最後の仕掛けは伏線を配しつつ巧妙に決めているが、必然性に乏しく唐突感は否めない。
以上、冷静かつ公平に評価して最低クラスと言わざるを得ない


No.139 6点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2015/03/09 15:41登録)
「死刑囚パズル」「黒衣の家」「カニバリズム小論」はいずれもホワイダニットとして秀逸。
「土曜日の本」は謎に回答が与えられておらずミステリとしては未完成。
収録されている各作品のクオリティ、志向性の異なる作品を1冊の短編集としたことに起因するまとまりのなさ等、他の短編集よりもデキは確実に落ちる。
それでも長編作品を超えるクオリティを維持しているのは間違いない。

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