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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1695件

プロフィール| 書評

No.675 5点 檻の中の少女
一田和樹
(2014/10/24 16:26登録)
第3回ばらの町福山ミステリー文学新人賞~<サイバーセキュリティ・コンサルタント君島のもとへ、「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺された」と老夫婦が訪れる。 ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。>~
選評・島田荘司氏によればハードボイルド小説になるらしい。一番は読みやすいことですね。真相の解明の段でやや駆け足になってしまった感じがします。その後、かなり長いエピローグで題名の意味や動機に触れているのですが、もっと簡単でも読者は分かるのでは?。


No.674 8点 殺す風
マーガレット・ミラー
(2014/10/21 21:51登録)
裏表紙より~『ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かい―それきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが…。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か?他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。』~                  
行方不明となっているロンと不倫をしたセルマ、その夫はロンの友人である。残されたロンの妻は・・・。ドロドロとした人間描写が凄まじい。おもわず引き込まれてしまい一気読み。各人それぞれの新しい道を歩み始める予感で、サスペンス小説であることを忘れてしまうほどでした(笑)。さて、ミラー風のラストのオチはどうなるのだろうか?と・・・。期待以上のものでした。著者の既読分では今のところ一番の好みの作品です。評判の「鉄の門」は手に入らず、残念ながら未読。


No.673 6点 潜伏者
折原一
(2014/10/20 19:04登録)
「BOOKデータベース」より~『ノンフィクション作家の笹尾は、容疑者の視点で生々しく綴られた小説『堀田守男氏の手2』をきっかけに、北関東で起きた少女連続失踪事件を追いかけることに。被害者家族との接触を続ける中、冤罪の疑いが晴れぬまま服役を終えた容疑者が出所し、事件は大きく動き出す。小説家は誰なのか?容疑者は無実なのか?そして、真犯人は誰なのか。』~      相変わらずの折原ワールド(叙述)ですが、やや趣が今回は変わっているとの印象。犯人は誰?がメインに打ち出されています。ただ、その点だけを見ると犯人は目星がつきやすいかも?。サスペンスものなので、ファンとしてはその点は許す?(笑)。もし、殺人事件が絡まなかったら、テーマ(冤罪・DV)がテーマだけに、かなり良い作品になったような気がしてなりません。長いけれど一気読みはできました。


No.672 8点 カリブ諸島の手がかり
T・S・ストリブリング
(2014/10/18 08:08登録)
裏表紙より~『殺人容疑を受けた亡命中の元独裁者、ヴードゥー教司祭の呪術、ヒンドゥー寺院の死体…多様な異文化が交錯するカリブ諸島を舞台に、アメリカ人心理学者ポジオリ教授が怪事件の数々に遭遇する、皮肉とユーモアに満ちた探偵譚。“クィーンの定員”にも選ばれた、ミステリ史上前代未聞の衝撃的名作。』~                                バラエティに富んだ連作短編集です。やはり「ベナリスへの道」が秀逸。同じようなモチーフで既読のものは、島田荘司氏、乾くるみ氏の作品がありましたが、どちらも衝撃を受けました。本作は1929年で先駆的な役割を果たしており、高く評価したいと思います。


No.671 6点 骨と髪
レオ・ブルース
(2014/10/12 19:50登録)
裏表紙より~『「従妹のアンが行方不明になった。財産狙いで夫が殺して逃げたにちがいない」。依頼を受けたキャロラス・ディーンが調査を進めてるうち、次第に不可解な事実が明らかになってきた。かつて夫婦が住んでいた場所でもアンは失踪し、やはり夫が殺して逃げたという噂が流れていた。しかしその「アン」はキャロラスが探しているアンとは別人としか思えない。背格好も性格も違いすぎるのだ。しかし本当に別人なのか?軽妙で洒落たストーリーテリング、巧みで切れのある仕掛けで読者に挑む本格推理。』~                                ミステリーの王道を外したユニークな作品ですね。真相(伏線はしっかりしています)はおもわず笑ってしまいました。


No.670 4点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2014/10/11 10:29登録)
(東西ベスト100の24位)読み込み不足か、理解力不足で今一ピンときませんでした。「緑は危険」同様、著者との相性は良くないですね(苦笑)。まず、見取り図(バルコニーの階段、部屋の状況)がないので殺害現場の状況が理解できなかったことです(情けない・・・)。そして登場人物の特に3人ぐらいの人物像が伝わってこないので、前記と合わせ、何がどうなっているのかよくわからないままの読書で、相当時間がかかりました。また、ある人物の妻が突然登場するのですが、その意味も分からないし・・・。トリックもかなり無理があるような気がしますのでこの評価としました。


No.669 6点 編集室の床に落ちた顔
キャメロン・マケイブ
(2014/10/03 19:55登録)
裏表紙より~『映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切って死んでいるのが発見される。自殺か他殺か。真相は、編集者のロバートソンが編集室に仕掛けた自動カメラが捉えていたはずなのだが、肝心のフィルムが消えている。捜査の難航をあざ笑うかのように、第二の事件が発生し……。“どんな探偵小説でも無限の終わり方が可能”と主張する作者が仕掛けた、二度と使えぬトリックとは? 「全ての探偵小説を葬り去る」と評された問題作。』~
題名は映画用語で「映画が完成したあと、何らかの理由で本編からカットされた俳優や女優をいう」とのことです。1937年(著者20歳)の作品で黄金期本格ミステリー最大の問題作とされているようです。今でいうアンチミステリーやメタミステリーに該当するのでしょう。この時代に書かれたことに敬意を表したいと思います。ストーリーは面白いし、主人公と警部のやり取りも楽しめます。読後は「犯人がどうしてこんなドジを踏んでしまうのか」と思いましたが、解説で詳しく説明されています。解説が必要な作品ですね(笑)。


No.668 6点 眼の壁
マーガレット・ミラー
(2014/10/02 09:01登録)
裏表紙より~『交通事故で視力を失い、ボーイフレンドとの婚約を自ら一方的に解消しながら、なぜか屋敷から彼を離さない富豪の娘ケルジー。眼の壁は彼女の心の傷が生み出した幻覚か?それとも本当に誰かが彼女の命を狙っているのか?バラバラな家族の絆が彼女のモルヒネ服用事件でにわかに、見えない緊張の糸でからめ取られ始めた。そしてついに不可解な死が…。』~
著者の作品に魅かれるのは、心理描写とトリッキーな結末がある点です。本作は初期(1943~20代)の作品なので、まだ心理描写が作品全体(特に後半)に生かされていないような気がしました。前半は、盲目の女性心理と、その家族の関係(軋轢)が描かれますが、著者の文学的表現?(例えば比喩など)やアメリカ的ユーモア(皮肉)が翻訳のせいなのかよく判りませんけれど、やや読みにくい。後半はがらりと展開が変わってしまいフーダニットものになります。トリッキーな結末は控えていますが・・・。本筋がいいので、組立次第でという感じがします。非常にもったいない作品ですね。


No.667 7点 能面殺人事件
高木彬光
(2014/09/27 10:53登録)
(再読~ネタバレがあります)かなり評価の分かれている作品ですね。第一点は作中での海外作品のネタバレ、第二点は殺害方法。ネタバレは若気の至りだったのでしょうか?(苦笑)。殺害方法は発表当時(1949)、検死でわからないはずはないというものだったようです。しかし、現在では殺害方法自体に?。「点と線」を今読むのと同様、時代の変遷を感じます。複数の海外有名作品(アクロイド、Yの悲劇)を彷彿させる内容ですが、構成(二重三重の罠)はよくできていると思います。機械的な密室はおまけとしてよいと思います(わかりにくいし・・・)。著者は次のように述べています。「描きたかったのは法律と正義の相克であった」「最初の題名は千鶴井家の悲劇」・・・その点は重厚な雰囲気で良く伝わってきました。


No.666 7点 赤い右手
ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
(2014/09/26 09:07登録)
裏表紙より~『結婚式を挙げに行く途中のカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、犬のように尖った歯をしていた…。やがてコネティカット州山中の脇道で繰り広げられる恐怖の連続殺人劇。狂気の殺人鬼の魔手にかかり、次々に血祭りに上げられていく人々―悪夢のような夜に果して終りは来るのか?熱に憑かれたような文体で不可能を可能にした、探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作』~           ミスリードのオンパレードで強引に騙されてしまったという印象です(笑)。色々問題点はあるのですが、その点は解説で非常に詳しく説明されています(これも珍しい~怪作だからか?)。解説では指摘されていない部分ですが、同一人物を「細くて肌の白い腕」→「顔も手と同様に日に焼け・・・」「体は堅固そのもので筋肉も隆々」と表現しています。これは語り部の表現なので、果たしてこの語り部は信用できるのか?という疑問を持ってしまいます。これは著者の作戦の一部であったのか?・・・。あと、題名のことには触れていませんでしたが、右手切断の意味もうまく収まっていると思います。不思議な気持ちにさせられる作品でした。


No.665 7点 硝子細工のマトリョーシカ
黒田研二
(2014/09/25 09:37登録)
裏表紙より~『生放送のテレビドラマ本番中に、スタジオ内で次々と勃発する事故。毒は本物にすり替えられ、脅迫電話は真実の声音となり、脚本に秘められた真実は、慟哭と贖罪の扉を開く。「完全なる虚構」と「不完全な虚構」という二つの世界が交錯する、入れ子トリックの博覧会。この物語は、著者自らが奏でる鎮魂歌でもある。』~                                                        よく練られたメタ・ミステリーです。作中作でありますが、TVドラマという設定なので判り易い。といっても混乱させられますが・・・(苦笑)。TVドラマ中に毒を盛られるという事件が起きるのですが、その点はやや複雑すぎるきらいがありました。自殺と処理された事件が実は・・・という方がインパクトがありました(前例のない密室?)。題名の「マトリョーシカ(入れ子構造のロシア民芸品)」の扱いがうまく、恋愛小説としても読めると思います。レオ(オタクなフリター)がいい味をでしていました。


No.664 5点 阿弥陀ヶ滝の雪密室
黒田研二
(2014/09/23 13:59登録)
読みやすいし展開も早いので楽しめました。しかし、評価としては、リアリティ(主に動機面)を考慮するとこの点数になってしまいますね。奇しくもエピローグで「・・・だなんて、リアリティーなさすぎるよね?・・・」と言っています。作者もわかって書いているのかも?(笑)。


No.663 8点 明治断頭台
山田風太郎
(2014/09/20 09:21登録)
著者の東西ミステリーベスト100のランクイン作品は、妖異金瓶梅(30位)、太陽黒点(48位)、本書(90位)とありますが、本書が一番インパクトがありました。裏表紙に「驚天動地のラストが待ち受ける異色作」とありますが、納得。惜しくは、川路(探偵役)が真相解明にもっと絡んでくれればと思う次第です。


No.662 7点 河原町ルヴォワール
円居挽
(2014/09/15 08:52登録)
シリーズ4の最終章。少なくとも第1作目を読んでいないと背景がわからない。落花の死というシリーズを読んでいる人にとってはショッキングな場面からスタート。撫子(主人公)は元恋人と兄を敵に回し、私的裁判で孤軍奮闘する。裁判での違和感、落花の死の真相はラストで判明する。伏線の妙であった。アンフェアと思われる点もありますが、完全に騙されました(苦笑)。


No.661 7点 ボディ・メッセージ
安萬純一
(2014/09/12 13:35登録)
真相への伏線は、サービス過剰と思えるほど提示されていましたがたどり着けませんでした(笑)。惜しいところは、犯人の手掛かり(伏線)がほとんどないと言ってよい点でしょうか。もう少し絡んでほしかった気がします。しかし、大胆な発想で楽しめました。


No.660 6点 見知らぬ乗客
パトリシア・ハイスミス
(2014/09/10 20:58登録)
(英ベスト100の38位)著者の処女長編(1950年)。著者は、「アガサ・クリスティもコナン・ドイルも読んだことはない。ミステリもサスペンス小説も書いているつもりはない」旨発言しています(解説より)。人間の心理行動を描いた文芸作品と言えるのかも。「罪と罰」を意識して書かれたのかもしれません。主人公の崩れてゆく心理描写はさすがと思います。本書は翌年(1951)にヒッチコックにより映画化されました。「太陽がいっぱい」も同様で翻訳より映画の方が先行して有名になってしまったようですね。交換殺人というテーマとしては本書が元祖になるみたいです。


No.659 6点 読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100
事典・ガイド
(2014/09/08 17:49登録)
紹介中(作品100冊、著者100名)、既読は作品20、別の作品を読んだことのある著者は35名でした。マストリードとありますが、本格とサスペンスを中心に読んでいますので、少ないのはやむを得ないところがありますね(苦笑)。東西ミステリーベスト100のうち、19作品はかぶっていましたが、代表作品の紹介だけでないところが良いと思います。代表作品は、「さらに興味を持った読者へ」でも紹介されています。「古本屋で探してでも読んでもらいたい作家たち」でマーガレット・ミラー、リチャード・ニーリイが取り上げられていますが、完全に意見一致しました(笑)。                         
なお、一番に参考とさせてもらっている本サイトでも、やはり海外作品の書評数は少ないのでは?との印象。ちなみに、採点者数ランクではベスト100のうち海外作品は「そして誰もいなくなった」(30位74名)、「Yの悲劇」(90位42名)の2作品だけです。評価順ベスト100(高評価順~10件以上書評)では21作品が海外作品と健闘しています。また、書評数上位50人(125件以上書評)の方が10点満点をつけた作品(2人以上)は45作品ありますが、そのうち海外作品は10作品でした。「そして誰もいなくなった」(12名)「アクロイド殺し」(7名)「Xの悲劇」(6名)「オリエント急行の殺人」(5名)「Yの悲劇」(4名)「幻の女」(3名)「ビッグ・ボウの殺人」(2名)「ナイルに死す」(2名)「薔薇の名前」(2名)「ケインとアビル」(2名)。結果、海外作品は国内作品よりかなり書評数は少ないのですが、評価は相対的に高いということが覗えます。                                 


No.658 7点 死の相続
セオドア・ロスコー
(2014/09/08 17:43登録)
アガサ・クリスティ氏の某作(1939)を彷彿させますが、本作は1935年の発表です。その点を大いに評価したいと思います。動機もユニーク(今まで読んだ中では初物)です。ゾンビの取り扱いがうまいし、それにひっかけた犯人の末路も笑えます。怪作と呼ぶにふさわしいのか?。解説(森英俊氏)で、超弩級の密室ミステリと紹介されていますが、その点はどうかなと思います。


No.657 8点 さむけ
ロス・マクドナルド
(2014/09/05 11:54登録)
(再読)東西ミステリーベスト100(2013版)では15位にランクアップ。さすが名作の感。本格色の濃い探偵小説ですね。ラストも好みです。捨てずに書庫に残してあったのがうなずけた(笑)。


No.656 5点 暗黒女子
秋吉理香子
(2014/09/02 11:54登録)
「告白」張りの衝撃度を期待していたので、やや期待外れでした。闇鍋に期待し過ぎたか(笑)。「藪の中」(芥川龍之介氏)や「毒入りチョコレート事件」(アントニイ・バークリー氏)を彷彿させる点は楽しめました。ミステリー的には予想しやすいのが弱点かもしれません。

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