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ミステリの祭典

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仮面の男

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1964年01月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2024/08/02 16:21登録)
そろそろ中期になるあたりのボア&ナル。

食い詰めたヴァイオリニストの主人公は、遺産相続を求めるための替え玉話を依頼されてそれを受ける。南仏の別荘で美貌の妻、その兄、怪しげな話を持ち掛けた使用人と暮らすことになるのだが...

という話だけど、人物紹介が「○○を名乗る男(女)」と書かれているくらいに、この替え玉話はいかにも怪しげ。まあだからヴァイオリニストの手記で綴られる、この替え玉話のプロセスに「何の裏が?」で話を引っ張っていく導入あたりでは、結構ワクワクしながら読み進める。

で、皆さまがご指摘の要約バレの要素があるわけだけど、いやさあ、バレないようにすると、この導入の話からズレていく話だから、何とも評しにくいことにもなる作品なんだ。で、記述がその妻の日記になるあたりから、裏の狙いがバレてきて、転機となる事件があって、それからはこのヴァイオリニストの身を案じつつも秘密に苦悩する妻の話になる。話が当初の見かけからヘンな方向に転がっていく話だったりするんだ。

おいな~打ち明けろよ!って評者思っちゃった。だからあまり話にノレなかったなあ。
あといいのは、マトモな音楽小説だったりするあたり。ヴァイオリニストは不遇だけど、埋もれた天才っぽいあたりが、具体的なレパートリーで描写されてリアルに感じられた。「女魔術師」同様の芸道小説の味わいが小説全体の隠し味になっているようにも思う。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2014/11/14 18:53登録)
(タイトル男13)(注)本の内容紹介は先に読まない方がいいです。・・・ヴァイオリン弾きのジャックは、ある男から遺産相続の為、行方不明になっている夫に成りすましてくれとの依頼を受ける。その妻にもばれないよう記憶喪失を装うということであった。その裏にはある陰謀が・・・。その陰謀が内容紹介でネタバレしています(苦笑)。ジャックと妻の日記で物語は進行しますが、日記なのでお互いの心のうちはうかがい知れません。二人のすれ違いの「あや」や「心理描写」を巧みに操って読ませてくれます。読者には真相が提示されるのですが、そのことがより効果的で非常に堪能できました。

No.1 7点
(2014/05/30 22:54登録)
創元タイトルページの作品紹介は、先に読まないことをお勧めします。本作ではこのコンビ作家にしては珍しく、すべての秘密をかなり早い段階(100ページぐらい)で明らかにしているのですが、それまで作者が隠しておいたことを、作品紹介では完全にばらしてしまっているのです。
実はこの秘密が明かされるまでが、あまりこの作者らしくない嘘っぽいありきたりな設定なのです。それでもさすがの心理描写の巧みさで読ませてくれているのですが、秘密を読者に明かしてからが俄然おもしろくなってきます。原題の ”Maldonne”(誤配)は比喩的な意味で、読み終えてみると哀しみを持って納得できます。
主人公は不遇なヴァイオリニストだというのが、『女魔術師』のマジシャンや『思い乱れて』のピアニストと同じ芸術家設定なのも、この作者らしいと言うべきでしょうか。

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