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ミステリの祭典

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編集室の床に落ちた顔

作家 キャメロン・マケイブ
出版日1999年04月
平均点4.50点
書評数4人

No.4 4点 nukkam
(2015/07/25 23:12登録)
(ネタバレなしです) キャメロン・マケイブ(1915-1995)は元々はドイツ人ですがナチスの台頭をきっかけに英国、カナダ、フランス、イタリアと国外を転々として最後はオ-ストリアで生涯を閉じたという数奇な運命を辿った人です。作家の他にも映画製作者、レーサー、ジャズ・ミュージシャン、ジャーナリスト、性科学者と色々な顔も持ち合わせているようです。英国時代の1937年に発表された本書はとてつもない問題作という世評通りの本格派推理小説です。作風は全然違うんですが私はスタンリイ・エリンの「鏡よ、鏡」(1972年)を思い出しました。これほどまでに何が本当なんだか混乱させられる作品も珍しいです。結末にも唖然とさせられますし、確かに独創的ではありますが好きか嫌いかと問われればどちらかといえば嫌い(笑)。一度は我慢するけど二度はもう勘弁と言いたいです(あっ、これってジュリアン・シモンズの評価と同じになってしまいましたね)。国書刊行会版の巻末解説(解説者は小林晋)は一読の価値ありです。

No.3 2点 yoshi
(2015/07/23 03:49登録)
問題作、多重解決のはしり、と喧伝されているので読んでみたのですが・・・。

これは本当に多重解決と呼べるのだろうか? という疑問がまずある。
多重解決とは、こういう可能性もある、いやこういう可能性もある、
すると同じ記述でも全然意味が変わって来る! 
という知的スリリングさに醍醐味があると思うのだが、
これはだれが嘘ついてるのかわからないよというものであり、
強いて言えばある体系は自らの正しさを証明できないという、
ゲーデル問題を小説化したものに近い気がする。

そして当然の如く、小説としてはまったく面白くない。
だらだらした会話の連続は、読み通すのにかなりの忍耐力が必要だった。

No.2 6点 mini
(2015/03/02 09:57登録)
* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第3弾はキャメロン・マケイブだ
これは過去に書評済だが今回のテーマに合わせて一旦削除して再登録

国書刊行会の世界探偵小説全集には”問題作”とでも称せられる作品がいくつかあるが、刊行時にストリブリング「カリブ諸島の手がかり」やJ・T・ロジャース「赤い右手」と並ぶ問題作という触れ込みだったのがこの「編集室の床に落ちた顔」だ
作者はナチスの迫害を逃れて英国に亡命したドイツ人でキャメロン・マケイブというのはもちろん筆名である
この作品は英国に亡命した翌年の作者がまだ19才で書いたというから天才的な語学力ですねえ

掟破りの荒法師ロジャースの「赤い右手」はすっかり話題になり全集随一の怪作という評価が定着したが、マケイブの「編集室」の方は評価が微妙で得体の知れない作という評価が多かった
それどころか何を狙ってるんだか分からないとか、どこに魅力を感じればいいのか分からない的な意見が多かったようだ
日本の読者はメタ・ミステリーをわりと好む層もいると思うが、こういうのは受けないんだろうな
推していた森英俊氏も反応の鈍さにがっかりしてたみたいだし
私はすっきりした結末ばかり求める読者側の風潮のほうに問題がある気がするんだけどな

No.1 6点 蟷螂の斧
(2014/10/03 19:55登録)
裏表紙より~『映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切って死んでいるのが発見される。自殺か他殺か。真相は、編集者のロバートソンが編集室に仕掛けた自動カメラが捉えていたはずなのだが、肝心のフィルムが消えている。捜査の難航をあざ笑うかのように、第二の事件が発生し……。“どんな探偵小説でも無限の終わり方が可能”と主張する作者が仕掛けた、二度と使えぬトリックとは? 「全ての探偵小説を葬り去る」と評された問題作。』~
題名は映画用語で「映画が完成したあと、何らかの理由で本編からカットされた俳優や女優をいう」とのことです。1937年(著者20歳)の作品で黄金期本格ミステリー最大の問題作とされているようです。今でいうアンチミステリーやメタミステリーに該当するのでしょう。この時代に書かれたことに敬意を表したいと思います。ストーリーは面白いし、主人公と警部のやり取りも楽しめます。読後は「犯人がどうしてこんなドジを踏んでしまうのか」と思いましたが、解説で詳しく説明されています。解説が必要な作品ですね(笑)。

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