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ミステリの祭典

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明治断頭台
明治もの

作家 山田風太郎
出版日1979年02月
平均点7.31点
書評数13人

No.13 9点 じきる
(2021/02/04 16:03登録)
豪快な物理トリックもそうだが、やはり最終章が圧巻です。
随所で史実の人物が登場し、ストーリーに上手く絡んでるのも面白い。傑作。

No.12 5点 レッドキング
(2018/11/11 13:40登録)
第一篇の螺旋階段トリックとフランス人の巫女が印象的だった でもあの女にはぜひ日本人に帰化してもらいたかった

No.11 9点 青い車
(2017/01/23 23:34登録)
 『甲賀忍法帖』など時代小説の作家と思っていた山田風太郎に、ここまで本格的な推理小説があったとは。いろいろ読み漁ってきて新鮮なトリックに渇望していた今、いくつもの工夫を凝らしたトリックを駆使している本作は非常に楽しく読めました。そのトリックも横溝の本陣を彷彿とさせる下駄、人力車などを使った日本ならではのものでいいテイストを出しています。
 どんでん返しも用意されていますが、この手法が下手な後続作品よりずっとハイレベルに炸裂している点も評価すべきだと思います。さらには、山縣有朋など歴史的重要人物の活躍があるのも大きな見どころで、贅沢さを増しています。

No.10 6点 パメル
(2016/10/28 12:36登録)
明治初期の警察組織がまだ確立されていない治安の悪い東京が舞台
六編からなる連作短編が長編化する形式で書かれている
明治時代ならではの物を使った物理トリックには一部にコントのように感じてしまったトリックやご都合主義的なトリックがありあまり好みではない
ただ歴史上の人物が数多く描かれており作者ならではのユーモアもあって楽しい
最終章ではそれまでの短編に残された伏線を一気に回収し意外な結末に驚かされた

No.9 7点 クリスティ再読
(2016/09/08 21:42登録)
金瓶梅をやったついでに、名作の誉れ高いが未読だった本作を読んだ...まあ両者ともパズラー風歴史短編の最後で全体の構図が変わるような連作の仕掛物で共通点があるんだが、1954年の金瓶梅と1979年の本作だと、25年の歳月がたっているわけで、実際にはそこらの評価ということになると思う。
金瓶梅はミステリの枠を破ろうとする覇気に満ちた作品(実際ミステリからハミ出てる)だけど、本作は一種その逆で、ジャンルにこだわらない自在さを得ていながらも、あえて「ミステリ」に愚直にこだわったようなところがある。本作の物理トリックメインなところってそういう風に評者はみたんだけど、まあ皆さんの本作高評価はその「あえて」のあたりにあるような気もするんだよ。
でまあ、最後にひっくり返しがある、とわかってれば、実はそう意外な結末でもないように思う。第1話が事件なしで邏卒の皆さんのキャラ造形だけで終わってるのは、一種の伏線だって評者は気が付いてたな。だから結末の「姫を護りきって壊滅する」邏卒たちってのが、実に風太郎固有の味わいで感銘がある...
まあそういう風に、トリックがファンタジーなのも含めて、風太郎らしい作品なんだけど、「こだわり」が分かるだけに何か窮屈な感じもする。本作いい作品には違いないんだが、評者は金瓶梅のアナーキズムの方を買いたいな。

No.8 8点 いいちこ
(2015/09/30 11:15登録)
維新直後の混沌とした時代背景と弾正台を活かしたプロット、当時の文物を活かした豪快かつ鮮やかな物理トリック、実在の人物を活かした興味深いエピソードの挿入など、舞台設定とその活用に抜群の冴え。
そのうえで連作短編集として納得性と衝撃度の高い真相を演出。
物理トリックの完成度に甘さを感じてこの点数としたが、「妖異金瓶梅」を超える傑作と評価

No.7 8点 斎藤警部
(2015/06/23 06:45登録)
その昔、P.FUNKと同じ匂いを感じる小説家、山田風太郎の『明治断頭台』を読みました。

大傑作と言われるのも納得の、明治になりたての東京と横浜を主舞台とした連作ミステリーですが、最初の二作は導入部の様な(ミステリーではない)一般小説になっています。 と思わせておいて実は .. いえ何でもないです。 まるっきりの明治でも江戸でもない、揺れる乙女心の様に微妙な、そして極めて治安の悪い時代を背景に、登場人物も含め要所要所史実に基づきながらも微妙に奇想天外さを散りばめ、時にしまそうを思わせる豪腕トリックで目を引きながら、剛直にして絢爛な文体で、ぐいぐいと進みます。

最終話「正義の政府はあり得るか」は確かに驚き。 本当にP.FUNKの様な、鮮烈かつ考えさせられる大団円を迎えるんだなあ。

No.6 4点 haruka
(2015/02/12 23:51登録)
山風忍法帖ファンとして期待大で読んだのだが、
ちょっと自分の好みとは合わなかった。

No.5 7点 メルカトル
(2015/02/12 21:26登録)
再読です。
明治時代ならではの大胆なトリックと仕掛けが炸裂する、連作短編集。と言うか、長編として捉えるべきなのかもしれない。
主役は復活した弾正台の大巡察の二人、香月経四郎と川路利良。弾正台とは現在でいう警察機関のようなもので、勿論その頃は組織立っているとはお世辞にも言えず、個人プレーに走る者が多かったようだ。彼らも独自のやり方で正義のために悪を駆逐してく。
この作品には探偵役は存在しない。大巡察の二人も奇妙奇天烈な事件に振り回されるだけで、捜査も推理もしない。事件が一段落すると、巫女姿をしたフランス人エスメラルダが死者の霊をおのれに憑依させ、事件の顛末を明らかにするという、一風変わった解決法を取っている。そのどれもが驚くべきもので、明治時代でしかあり得ないような真相となっている。
この奇想は素晴らしく、初出が三十数年前にもかかわらず、現在に至ってもその輝きを失わない。そして、最終話のとんでもない仕掛け、それこそ開いた口が塞がらないというところだろう。

No.4 8点 蟷螂の斧
(2014/09/20 09:21登録)
著者の東西ミステリーベスト100のランクイン作品は、妖異金瓶梅(30位)、太陽黒点(48位)、本書(90位)とありますが、本書が一番インパクトがありました。裏表紙に「驚天動地のラストが待ち受ける異色作」とありますが、納得。惜しくは、川路(探偵役)が真相解明にもっと絡んでくれればと思う次第です。

No.3 8点 E-BANKER
(2014/09/06 21:46登録)
山田風太郎の最傑作ミステリーというほど世評の高い作品。
「オール読物」1978年5月号から79年1月号まで連載された、<連鎖形式>のミステリー。
角川文庫の山田風太郎ベストコレクションで読了。

~明治の王政復古とともに復活した役所、弾正台。水干姿の優美な青年・香月経四郎と同僚の川路利良は、その大巡察として役人の不正を正す任に就いていた。とあるきっかけから、二人は弾正台に持ち込まれる謎めいた事件の解決を競うことに。いずれ劣らぬ難事件解決の鍵になるのは巫女姿のフランス人美女エスメラルダが口寄せで呼ぶ死者の証言・・・~

①「怪談築地ホテル館」=このトリックはなかなかスゴイ。島田荘司もビックリというほどの物理トリックなのだ。でも、あんなものがあんなところから目の前に迫ってきたら・・・相当怖いな。ビジュアル的にもインパクト大!
②「アメリカより愛をこめて」=神田川に落ちた二台の人力車。しかし現場に残されたのは人力車の轍だけで、車夫の足跡が見当たらない・・・というのがメインの謎。これもアクロバティック!
③「永代橋の首吊人」=このトリックもビックリ! 今回はアリバイトリックがメインテーマになるのだが、まさかの方向からの一撃とでも形容したくなるトリック。まぁ本当にうまくいくのか、という疑問は当然あるが・・・
④「遠眼鏡足切絵図」=フランスから贈られた最新式の遠眼鏡を覗くと・・・女の足を切断している光景が目に入る、という魅力的な謎。要は見る側の錯誤を狙ったトリックということなのだが、とにかくウマイ!
⑤「おのれの首を抱く屍体」=発見されたのは糞汁にまみれた首切り屍体、ていう凄惨な状況。果たして死者の正体は何者かということになるのだが、やや消化不良気味。
⑥「正義の政府はありえるか」=最終章はこれまでの解決をひっくり返す(むしろぶっ壊す?)ドンデン返しが待ち受ける。まさか、作者がここまで読者に罠をはっていたとは、と気付かされることになる。こりゃスゴイわ!

とにかくスケールの大きい作品。
①から⑤は主に川路やその部下が途中の捜査を担当するが、最終的にはエスメラルダが口寄せで死者の証言を導き、真相が判明するという流れ。
このままじゃオカルトだと思っていたところへ、⑥で本作の大いなる深謀遠慮が詳らかにされる。
もちろん一編ごとの内容やトリックも十分スゴイのだが、こういうスケールのミステリーを書けるということ自体、やはり只者ではない。

明治維新直後の不穏な空気が漂う東京という舞台設定も秀逸。
実在の人物がそこかしこに登場(もちろんフィクションなのだが)するのも楽しく、サービス精神に溢れている。
やはりさすがの出来栄えとクオリティという評価になるだろう。

No.2 9点 ボナンザ
(2014/04/08 15:28登録)
すばらしい!途中の物理トリックメインの作品も高水準だが、なんといっても最終話のどんでん返しが圧巻。

No.1 7点 kanamori
(2010/07/07 23:29登録)
山風の明治ものと言えば、史実の隙間に大胆なフィクションを織り込んだ謀略系の時代小説が大半ですが、本書は連作式の本格ミステリとなっています。
各編とも明治時代ならではの奇抜なアイデアに機械トリックを多用しているところが異色で、しかも最終話で単なる本格編ではないことが判明します。最後に作者のメッセージが現れている点では、他の明治ものに通じるところがあります。

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