蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.09点 | 書評数:1660件 |
No.660 | 6点 | 見知らぬ乗客 パトリシア・ハイスミス |
(2014/09/10 20:58登録) (英ベスト100の38位)著者の処女長編(1950年)。著者は、「アガサ・クリスティもコナン・ドイルも読んだことはない。ミステリもサスペンス小説も書いているつもりはない」旨発言しています(解説より)。人間の心理行動を描いた文芸作品と言えるのかも。「罪と罰」を意識して書かれたのかもしれません。主人公の崩れてゆく心理描写はさすがと思います。本書は翌年(1951)にヒッチコックにより映画化されました。「太陽がいっぱい」も同様で翻訳より映画の方が先行して有名になってしまったようですね。交換殺人というテーマとしては本書が元祖になるみたいです。 |
No.659 | 6点 | 読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100 事典・ガイド |
(2014/09/08 17:49登録) 紹介中(作品100冊、著者100名)、既読は作品20、別の作品を読んだことのある著者は35名でした。マストリードとありますが、本格とサスペンスを中心に読んでいますので、少ないのはやむを得ないところがありますね(苦笑)。東西ミステリーベスト100のうち、19作品はかぶっていましたが、代表作品の紹介だけでないところが良いと思います。代表作品は、「さらに興味を持った読者へ」でも紹介されています。「古本屋で探してでも読んでもらいたい作家たち」でマーガレット・ミラー、リチャード・ニーリイが取り上げられていますが、完全に意見一致しました(笑)。 なお、一番に参考とさせてもらっている本サイトでも、やはり海外作品の書評数は少ないのでは?との印象。ちなみに、採点者数ランクではベスト100のうち海外作品は「そして誰もいなくなった」(30位74名)、「Yの悲劇」(90位42名)の2作品だけです。評価順ベスト100(高評価順~10件以上書評)では21作品が海外作品と健闘しています。また、書評数上位50人(125件以上書評)の方が10点満点をつけた作品(2人以上)は45作品ありますが、そのうち海外作品は10作品でした。「そして誰もいなくなった」(12名)「アクロイド殺し」(7名)「Xの悲劇」(6名)「オリエント急行の殺人」(5名)「Yの悲劇」(4名)「幻の女」(3名)「ビッグ・ボウの殺人」(2名)「ナイルに死す」(2名)「薔薇の名前」(2名)「ケインとアビル」(2名)。結果、海外作品は国内作品よりかなり書評数は少ないのですが、評価は相対的に高いということが覗えます。 |
No.658 | 7点 | 死の相続 セオドア・ロスコー |
(2014/09/08 17:43登録) アガサ・クリスティ氏の某作(1939)を彷彿させますが、本作は1935年の発表です。その点を大いに評価したいと思います。動機もユニーク(今まで読んだ中では初物)です。ゾンビの取り扱いがうまいし、それにひっかけた犯人の末路も笑えます。怪作と呼ぶにふさわしいのか?。解説(森英俊氏)で、超弩級の密室ミステリと紹介されていますが、その点はどうかなと思います。 |
No.657 | 8点 | さむけ ロス・マクドナルド |
(2014/09/05 11:54登録) (再読)東西ミステリーベスト100(2013版)では15位にランクアップ。さすが名作の感。本格色の濃い探偵小説ですね。ラストも好みです。捨てずに書庫に残してあったのがうなずけた(笑)。 |
No.656 | 5点 | 暗黒女子 秋吉理香子 |
(2014/09/02 11:54登録) 「告白」張りの衝撃度を期待していたので、やや期待外れでした。闇鍋に期待し過ぎたか(笑)。「藪の中」(芥川龍之介氏)や「毒入りチョコレート事件」(アントニイ・バークリー氏)を彷彿させる点は楽しめました。ミステリー的には予想しやすいのが弱点かもしれません。 |
No.655 | 5点 | マーメイド マーガレット・ミラー |
(2014/08/31 17:59登録) 弁護士トム・アラゴンシリーズの3作目。裏表紙より~『娘の名はクリーオウ、自称22歳。とある風の強い午後、スメドラー法律事務所を訪れた被女は、謎めいた台詞を残して帰途についた。そして数日後、ひとつの報せがもたらされる。娘が失踪した、という。捜索に駆り出されたアラゴンだったが、澱んだ池に投じられたこの一石は、人々のあいだに意外な波紋を描き出していく…。心に弱点を負った男女の軌跡を辿る、異色のサスペンス。』~ ミステリー度、サスペンス度は低く、一般小説に近い。目次は、①少女②女③人魚となっており、パーソナリティ障害を持つ少女の精神的変化の過程、行動を描いたものです。アメリカでのマーメイドの意味は破壊へ導くものということでいいのか?(ドイツのローレライ伝説は、確か船乗りを惑わすだった)ラストはそれに近いものでした。著者60代後半の作品で、アメリカ社会を風刺するような意図があったのかもしれません。 |
No.654 | 5点 | ミランダ殺し マーガレット・ミラー |
(2014/08/30 10:10登録) 弁護士トム・アラゴンシリーズの2作目。裏表紙より~『匿名の中傷文の執筆にいそしむ偏屈な老人、マフィアにコネがあると称する9歳の悪ガキ、寄る年波に必死の抵抗を試みる美貌の未亡人―。こうした登場人物の入り乱れるなか、ある日2人の男女が失踪する。駆け出し弁護士アラゴンをも巻きこんで、物語は予想外の方向へ…。カリフォルニアのとあるビーチ・クラブに展開する恐ろしくもユーモラスな悲劇の顛末。鬼才の異色サスペンス。』~ 異色サスペンスと謳われていますが、前半は昔のテレビでよく見たようなアメリカ的喜劇でした。後半4分の3を過ぎてから事件が起こります。なので、ミステリー好きには退屈な展開だと思います。著者60代の作品ということで、若かりし頃と比べ、いま一つ切れがないように感じます。ラストは三大○○ものの一作品と同様なモチーフでした。シリーズは3までなので、もう一息です(苦笑)。 |
No.653 | 5点 | 明日訪ねてくるがいい マーガレット・ミラー |
(2014/08/28 21:18登録) 弁護士トム・アラゴンシリーズの第1作目。裏表紙の要約~『前夫B・Jを探してほしい、老婦人ギリーの依頼を受けた弁護士トムは、カリフォルニア半島の海辺の小村にたどりついた。B・Jは8年前、当時妻だったギリーとの生活を捨て、この村に新天地を求めてメキシコ娘と駆け落ちしたのだ。だが開発事業に手を出したB・Jは、不動産詐欺で投獄されたという。事業の片棒を担いだハリーというやくざ者の情報に望みを託した。だが何者かに薬を盛られたハリーは、介抱するトムを振り切り、狂ったように干上がった河に飛び込んで無残な墜死を遂げたのだ。次々に殺されるB・Jの過去の関係者たち。老婦人の一徹な願いが招いた戦慄の連続殺人とその意外な真相は?』~ 皮肉な会話のあるハードボイルドタッチの小説です。著者の得意な心理描写は影をひそめ、淡々とした調査状況が語られます。緊迫感がないのでやや辛い感じがします。エンディングの衝撃度は、他の作品ほどではなかったのが残念です。 |
No.652 | 7点 | 耳をすます壁 マーガレット・ミラー |
(2014/08/26 09:25登録) 裏表紙より~『思いたってメキシコ旅行に出かけたエイミーとウィルマ。ありふれた旅路となるはずだったが、滞在なかばウィルマがホテルのバルコニーから墜ちて死んでしまう。居合わせたエイミーも、そのときの記憶を欠いたまま失踪。一体そこで何があったというのか?調査の依頼をうけた私立探偵ドッドは失踪人の身辺を探るが…。鬼才が放つ緊迫のサスペンス。』~ プロットは既視感はあるものの、著者の心理描写、謎の提示などの巧みな筆さばきで飽きさせません。著者の作品はこれで4冊目ですが、みな水準以上の出来で、お好みの作家になりそうです。しばらく残りの作品も読んでいこうと思っています。本作も「最後の一行」にサプライズが用意されています。感謝感激(笑)。 |
No.651 | 5点 | 神のロジック 人間のマジック 西澤保彦 |
(2014/08/24 08:44登録) (ネタバレあり)作品の「肝となる事象」に説得力があるかどうかで評価が分かれると思います。本作の肝は有名作品の「ある○○が○○ない」と同様であるのですが、これについてはミステリーとしては否の立場ですね。SF、オカルト、ホラー系であればよいのでしょうが・・・。なお、「ぼく」の地文に虚偽がないようにする、つまりアンフェアにならないようにするという設定に無理があるように思います。著者の苦労(フェア精神)は分かるような気がしますが、そのため伏線があからさまになり過ぎたように感じます。序盤で真相そのものに触れてしまっていました。比較される同時期の作品は、読者にある違和感を感じさせ、その違和感がラストで判明するという強烈なインパクトがあります。しかし本作の場合、前記のとおりでもったいない気がしました。著者の特徴がでている作品ではあると思います。 |
No.650 | 6点 | 過去を運ぶ足 阿刀田高 |
(2014/08/23 10:28登録) (再読)著者のデビュー作(1978単行本)と同時期の短編集(1972~1977の作品集)。今思えば、当時は星新一氏のショートショートを読み漁っていた頃で、阿刀田氏のちょっとエロティックな大人の世界にぶち当たり、とても新鮮に感じて、それにハマってしまったのでしょう(笑)。その路線では、「蠢く夜」がいいですね。ある人妻は年一度だけアバンチュールをしてみたくなる。知り合った男は肩から三角巾を垂れていた。怪我でもないらしい。さて、そのわけとは・・・。全編に共通しているテーマは「死」です。基本はブラックユーモアなのですが、数編推理小説らしき展開のものもあります。表題作「過去を運ぶ足」はテレビドラマになったようです。~夫が帰宅すると、実母は倒れており、妻は浴槽(水)に浸けられていた。押し入り強盗が牛乳に睡眠薬をまぜたらしい。妻はそれが原因で流産する。その後実母は交通事故死。義父も心筋梗塞で死亡する。義父の葬儀のとき、義父の足が夫の弟(二卵性双生児・既に死亡)にそっくりなことを発見する・・・。~その他「記号の惨殺」・・・図書館のハイミスが自分を弄んだ後輩を殺害するアリバイトリックもの。「不在証明」・・・妻を殺害しようとし、ホテルの電話を利用しアリバイ工作する。しかし偶然愛人が同ホテルにおり、共犯扱いされる。などがミステリー風味があり楽しめました。 |
No.649 | 7点 | これよりさき怪物領域 マーガレット・ミラー |
(2014/08/21 19:57登録) ~若い農園主ロバートは突然姿を消した。食堂にはおびただしい量の血痕があった。そして次の日、十人のメキシコ人労働者がいなくなった。死体は見つからず、数か月後、妻は死亡認定の訴訟を起こした。しかし、ロバートの母親は、息子の死を絶対に認めようとしなかった。~ 死亡認定訴訟の裁判を通して、徐々に明らかになっていく真相。しかし、息子は絶対に帰ってくるという揺るぎない母親の確信により、本当に死亡したのか?母親は何か真相を知っているのか?という謎を残しながら・・・。この辺りは、さすがにうまいと感心しました。真相自体は単純なものですが、ラストでは心理的サスペンスの第一人者と言われるだけのものは用意されています。 |
No.648 | 5点 | 「跳ね鹿」亭のひそかな誘惑 マーサ・グライムズ |
(2014/08/19 14:43登録) ~ある村で、ペットが殺される事件が相次いでいた。そして、電話ボックスに老女の死体、小屋ではバー経営の夫人の死体が発見される。死因は心筋梗塞で事件性はないと思われたが、警視ジュリーは殺人と考える。やがて動物を愛護する孤児キャリーと出会う。~ 何とも捉えどころのない作品でした。捜査に重点が置かれていないので警察小説でもないし、サスペンスでもない。あえて言えば、孤児キャリーの悲劇の物語と言ってよいかもしれません。ミステリー要素の点ではこの評価です。 |
No.647 | 5点 | M.G.H.楽園の鏡像 三雲岳斗 |
(2014/08/17 12:59登録) 裏表紙より~『日本初の多目的宇宙ステーション『白鳳』で発生した、不可解な出来事。無重力の空間をゆっくりと漂う死体は、まるで数十メートルの高度から“墜落”したかのようだった。果たして、事故なのか、事件なのか? 従兄弟の森鷹舞衣の“計略”により、偽装結婚をして『白鳳』見学に訪れていた若き研究者・鷲見崎凌は、謎の真相を探るため、行動を開始することとなる……。斬新な設定とスマートな論理的解決で、各界に衝撃を与えた本格SFミステリー。第1回日本SF新人賞受賞作品』~ 本格SFミステリに魅かれて手に取りました。著者の発言「他のジャンルの読者をSFに導くような作品を書きたかった」は本格好きには成功とは言い難いか?。トリックは理科系の人なら予想はつく?と思われる。動機も後出しの感が強い(伏線が弱い)。逆転の発想は買いますが、うなるほどのものではなかった。 |
No.646 | 7点 | i(アイ)―鏡に消えた殺人者 今邑彩 |
(2014/08/14 08:47登録) 「裏窓」殺人事件を先に読んでいてよかった。その書評でも触れたのですが、著者は「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません・・・」と言っています。本作にも当てはまるということですね。オマージュ作品でありますが、そのエピローグを比較すれば本作の方が受け入れやすいと思います。「足跡」の謎は、オカルト風味をうまく融合させたトリックで感心しました。どんでん返しは、○子の逆バージョンを予想していたのですが・・・はずれました残念(苦笑)。 |
No.645 | 5点 | デッド・ディテクティブ 辻真先 |
(2014/08/11 20:36登録) 本格ミステリ・クロニクル300の1冊。裏表紙より~『「審判は終わった…にもかかわらず、凶手の姿は闇に包まれたままである!」。冥界の法廷で、全ての嘘を見通すはずの閻魔大王が出した苦渋のギブアップ宣言。不可能犯罪の容疑者とされた19歳のみすずは、冤罪を晴らすべく真相究明に挑む。真犯人は誰?閻魔大王に死角は?これを読まずば死なれまい。』~ 設定が地獄であるので、現実の世界には戻さず、SFミステリーのままラストを迎えた方が良かったのかも。好みが分かれてしまう作品?。中身は楽しめましたが・・・。 |
No.644 | 7点 | 「裏窓」殺人事件 tの密室 今邑彩 |
(2014/08/08 09:00登録) 中公文庫版にて。副題は「警視庁捜査一課・貴島柊志」、メイントリックからしても、旧「tの密室」の方がマッチしていると思いました(苦笑)。著者あとがきでは、構想に苦労したと語っていますが、まさにその通り構想の勝利といった作品でした。伏線もしっかりと描かれており、非常にフェアで好感が持てます。犯人の狂気も、トリックもお気に入りです。あとがきの続き~「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません。(中略)読んじゃった人はさっさと忘れてください。蛇足みたいなものですので。こういう「???」みたいな話を色々想像して楽しめる人のために残しただけです。少ないとは思いますけれど・・・・・・。~カーの有名作品を想定していっているのかな?(笑)。 |
No.643 | 5点 | 停まった足音 A・フィールディング |
(2014/08/07 00:05登録) 裏表紙より~『屋敷の一室で女主人の遺体が発見された。心臓を貫いた弾丸、傍らには被害者の指紋がついたリボルバー。争った形跡はなし。事故か自殺か、あるいは殺人か。死亡直前に被害者の背後で足を止めたのは誰なのか。ロンドン警視庁のポインターが地道で緻密な捜査を続けた結果、浮かび上がる意外な真相…』~ 1926年発表、オーソドックスな探偵小説です。フーダニットものですが、推論・仮説が多すぎるとの印象。保険会社の代理人の自殺説とポインター警部の殺人説が、本来軸になるはずなのですが、やや散漫になってしまった感じ。意外な犯人も、伏線が弱すぎるのでインパクトに欠ける?。 |
No.642 | 7点 | まるで天使のような マーガレット・ミラー |
(2014/08/01 13:01登録) 裏表紙より~『オゥゴーマンは五年前に死にました ― ある宗教団体の尼僧から、オゥゴーマンという男の身辺調査を頼まれた私立探偵クインは、意外な答にぶつかった。事務員だった故人は、嵐の晩に車で出かけたまま戻らず、川に落ちた車だけが見つかったという。妙なのは事件だけではなかった。どうやら過去を暴かれたくない者がいるらしいのだ……多くの謎をはらむ事件の真相とは? 心理サスペンスと私立探偵小説を融合させた代表作!』~ 探偵は、尼僧からある人物を見つけるのではなく、その身にどんなことが起きたかだけを調べてほしいと言われる。それ自体も謎であるが、その依頼により波紋が広がってゆく。やがて殺人事件が起きてしまう。「天国の塔」(宗教団体~異質な世界)に住む人々の狂気?や、小さな町の住人(オゥゴーマンの妻、横領犯の女(服役中)、その兄と共同経営の女、母親の生き様がうまく描かれていて物語に引き込まれてしまいました。エンディング・サプライズも用意されていますが、それ以上に独特の雰囲気を味わう小説であると思いました。 |
No.641 | 5点 | 汝の名 明野照葉 |
(2014/07/30 18:17登録) 裏表紙より~『若き会社社長の麻生陶子は、誰もが憧れる存在。だが、その美貌とは裏腹に、「完璧な人生」を手に入れるためには、恋も仕事も計算し尽くす女だ。そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える妹の久恵がいた。しかし、ある日から、二人の関係が狂い始め、驚愕の真実が明らかになっていく…。』~ 女性の嫉妬心、執念深さを描いたホラー系作品でした。スラスラと読め楽しめました。中盤で題名に係るプチサプライズとラストでも同様のサプライズが用意されていますが、おまけのようなものでしょう。 |