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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.733 7点 ボーン・コレクター
ジェフリー・ディーヴァー
(2015/04/01 11:49登録)
(東西ベスト22位)安楽椅子探偵は、昔のTVドラマ「鬼警部アイアンサイド」(69~75)の見過ぎで食傷気味?(苦笑)だったので、あまり興味をひかれませんでした。著者との出会いは「魔術師」(2003年ライム・シリーズ5作目)であり、当時それほどの印象(評価5)を持ちませんでした。最近、「監禁」(2000年)(評価8)を読んでから、著者に興味を持ち出し、本シリーズを読もうかな?といったところです。シリーズ1作目ということで、主人公・ライムが障害にいたった経緯や、アメリア・サックス(女巡査)との出会いを理解することができました。ジェットコースター的展開ということで、途中だれることなく読むこともできました。科学捜査関係の取材力に敬意を表し+1としました。本作のジャンルの投票は「冒険/スリラー/スパイ小説」3、「サスペンス」2、「警察小説」1と分かれていて、ジャンル分けは難しいですね。


No.732 6点 赤毛のレドメイン家
イーデン・フィルポッツ
(2015/03/27 18:53登録)
(東西ベスト48位)1922年ということで時代を感じる作品ですね。アイデアは、当時として見るべきものがあると思います。ただ、トリックの見せ方(解決篇)があまりうまくないと感じました。サプライズがラストの一行的なものであれば、傑作に値するのでは?という思いです。また、ブレンドン刑事の恋心も、もっと効果を上げることができたのではないか?。前半は事件そのものより、恋愛の方に主体が置かれていたわけですから・・・。後半、引退した刑事の登場により、その効果が半減してしまったようです。残念。


No.731 10点 わが子は殺人者
パトリック・クェンティン
(2015/03/22 11:21登録)
裏表紙より『三年前に妻が謎の自殺を遂げて以来、ジェーク・ダルースの生活は、わびしいものだった。夫からも息子からも愛されていた幸福な女が、陽光の輝く六月の朝、なぜ自殺しなければならなかったのか?その謎が彼の心に暗い影をなげているのだ。 しかも今や、ひとり息子のビルが、なにか恐ろしい事件に巻きこまれそうな気配があった。父親としての愛情と本能が彼にそう警告しているのだ・・・。横溢するサスペンス、緊密な構成、全編に流れるたくましい父性愛、これは名作「二人の妻をもつ男」の作者ならでは作りえない、第一級の推理小説である。』

上記案内のとおりである小説に初めて出会いました(笑)。計算しつくされた綿密なプロットに脱帽。人物像の造形が素晴らしい。トリックによる反転よりも、人物像(一人だけではない)の反転が読みどころか?。数々の決定的な動機、証拠を突きつけられても、息子の無実を信じる愚鈍ともいえる父親像に感情移入することができました。後半はやっと犯人にたどり着き、自白を引き出せるか?というところで・・・。この辺の展開はうまいですね。本作はこれといったトリックはありませんが、トリック重視派の私でも満点をつけてしまいました(笑)。本作は単独で読んでもいいのですが、主人公の弟であるピーター、その妻アイリスの人物造形が省略されているので、唐突な感じを受けるかもしれません。パズルシリーズ(ピーター主人公)を1冊読んでいた方が理解できるかも。トラント警部補も警部に昇格し、相変わらずいい味を醸し出していました。入手困難でやっと手に入れましたが、初版で法月綸太郎氏の解説(かなり緻密らしい)がついていませんでした(残念)。


No.730 8点 メソポタミヤの殺人
アガサ・クリスティー
(2015/03/19 09:12登録)
(ネタバレあります。)本サイトでの評価はそれほどでもないのですが、他ではマイベスト○○に入れている方が何人かいらっしゃいました。著者のファンで、私生活(離婚、中近東旅行、考古学者との出会い結婚)とだぶらせての評価かもしれません。それは別としても、心理描写については、うまいというしかありません。殺害トリックについては、初物です。後発は今のところ1作品しか出会っていませんが、前例(短編?)があれば読んでみたいですね。完全密室ではなく、準密室扱いにしたところをかなり評価したいと思います。無理があるとの意見も多いようですが、50cmの距離でOKであると思います。さて、もう一つのトリックですが、著者の他の作品(高評価9)でも取り上げられていますが、本作の方が強烈な印象です。そこまでやるか?!(笑)。心理描写の強い作品なので、次のような会話を勝手に考えてみました。看護婦(士)「奥様、今のご主人のどこに魅かれたのです?」夫人「そうね~。亡くなった前の主人の面影があったからかしら?。あっ、このことは今の主人には内緒にしてね(笑)」・・・この看護婦(士)の視点でのポアロものは新鮮な感じを受けました。


No.729 6点 魔の淵
ヘイク・タルボット
(2015/03/16 19:45登録)
怪奇現象、雪の足跡、密室等、カー氏の影響を受けたというより、対抗意識の方が強い作品と感じました。一つは、怪奇現象はすべてトリックであると言う人物を登場させ、物語全体の怪奇趣味を否定していることです。怪奇現象のトリックが面白いかどうかは別として、この人物の登場は好感度アップでした。もう一つは、物語の終り方ですが、「火刑法廷」をかなり意識しているのでは?ということです。本作品もかなりミステリーの常道を外した結末であると思います。プロットのアイデア(解説ではタルボット氏の発明と表現されています)は買いますが、全体(主人公)がややぼやけてしまった感じで、非常にもったいないと思いました。


No.728 5点 エッジウェア卿の死
アガサ・クリスティー
(2015/03/14 21:10登録)
裏表紙の功罪(ヒントがあり過ぎ?)で、第1章を読んだ段階で犯人が判ってしまいました。ミスリードに引っかかっていればいいのだがと思いつつの読書でしたが・・・やはり当たっていましたね。真相への小技も冴えていると思いますし、真の動機は初物で面白かったです。


No.727 5点 伯母殺人事件
リチャード・ハル
(2015/03/12 17:21登録)
アイルズの「殺意」、クロフツの「クロイドン発12時30分」と並ぶ、三大倒叙推理小説。倒叙ものの作品が少ない中で三大とは?と思いますが、”三大奇書”と同様で少ないから価値があるということでしょうか?。内容はシニカルなユーモア小説風です。こういった内容であれば短編のほうがいいような気がしました。サスペンスが好きなので、あまりのめりこむことができませんでした。お気に入りの点は、ラストの一行ですね(短編であれば高評価の部類)。


No.726 6点 偽のデュー警部
ピーター・ラヴゼイ
(2015/03/10 17:40登録)
(英ベスト27位)裏表紙に「ユーモアあふれる本格ミステリの傑作」とあり、本格物として読み始めましたので、当初どうしても人物像に違和感がありました。登場人物の女性が28歳にも拘らず女子高生のような妄想を抱いており、妻ある男性に一目ぼれし、すぐに結婚を望む。さらに殺人計画を持ち掛けるというものですから・・・。途中でユーモア小説とわかり納得(笑)。前半は人物紹介にページを割かれやや冗長な感じです。途中どんでん返し(ミステリーとしてではない)があり笑えます。ラストはもう一捻り欲しい感じがしました。


No.725 8点 女郎ぐも
パトリック・クェンティン
(2015/03/08 11:04登録)
シリーズ最終話にふさわしい出来栄えですね。前半はサスペンス(サイコ系?)かと思わせ、後半は本格的な展開となります。主人公ピーターの部屋で自殺した娘ナニーのことを調べるうち、段々自分に不利な状況に陥ってゆく過程は読みごたえがあります。シリーズでは、ピーターとその妻アイリスの絆が背景にありますが、本編でもその夫婦の揺れ動く心理がうまく描かれていました。また、周りに登場する女性陣(性悪女?)にイライラさせられたりしました。~ほめ言葉~(笑)。「○○パズル」シリーズなのに、本作だけ「女郎蜘蛛」となっていますが、読後はこれでいいのかなと納得。単独で読んでもOKですね。初登場のトラント警部補の飄々とした雰囲気がお気に入り。(その後の「二人の妻をもつ男」(1955)に登場していたんですね。その書評で”トラント警部が切れ者なのか、またはサラリーマン的な性格なのかよく解らない点が魅力的で、非常に効果があったと思います。”としていました(笑)。「わが子は殺人者」(1954)は絶版で読めないのが残念です。


No.724 7点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2015/03/05 10:48登録)
(東西ベスト8位)『このミステリーを読め!「海外篇」』(郷原宏氏)で~「ブラウン神父の童心」を読まない読者はモグリ!~がずっと気になっていました(笑)。ある選者による「3大○○」。”奇抜トリック”は「ブラウン神父の童心」「黒猫亭事件」「乱れからくり」とあり、手にした次第です。ちなみに”叙述”は「アクロイド殺し」「殺人交叉点」「心ひき裂かれて」、”アンフェア?”は「アクロイド殺し」「死者はよみがえる」「夜歩く」、”カルト人気”は「赤い右手」「瓶詰の地獄」「太陽黒点」etc。選出視点が面白かったので、自分なりの三大「誘拐もの」「監禁もの」「絵画もの」「どんでん返しもの」等々記録してゆこうと思います。横道にそれてしまいましたが、やはり古典の評価は難しいですね。歴史的意義で高評価としたいのですが、内容では今一歩という点があります。特に「奇妙な足音」「見えない男」は心理トリックとして、当時の発想は素晴らしいと思いますが、中身としてはどうかな?といった感じです。ベストは「秘密の庭」、当時でこの手を使うか!でやられました。評判の「折れた剣」は長編向きで短編ではもったいない感じ。短編らしさとしてのお気に入りは「イズレイル・ガウの誉れ」のブラックな味わいでした。


No.723 8点 監禁
ジェフリー・ディーヴァー
(2015/03/02 18:24登録)
緊迫感があり、エンタメに徹したサイコキラーサスペンスでした。誘拐者と追跡者(誘拐された娘の父親)とのやり取りは迫力があり楽しめました。二人とも弁が立つ者同士です。意外な真相により、誘拐者の論理が崩れていくところが本作の見どころですね。ただ、もう一つの真相が、かなりあっさり片づけられていて、非常にもったいない気がしました。もっと追求(やり取り)する場面があっても良いと感じました。あと、追跡者側は当初から誘拐と思っていたので、その手がかりには藁をもつかむ心境なはずですが、素通りしてしまう箇所がありました。物語を面白くするため(読者をやきもきさせる?)にやむを得ないのかもしれませんが、チョット違和感がありましたね。この父親と元妻の関係は、この後どうなるのでしょう?・・・。余談となりますが、前の書評で「夜の大捜査線」に触れたのですが、本作の会話の中にシドニー・ポワチエとロッド・スタイガーの名前が出てきて、おもわずニヤリとしてしまいました。あと「その女アレックス」(監禁もの)の鼠も出てきました・・・(笑)。


No.722 6点 暑いクリスマス
ジェイムズ・マクルーア
(2015/02/28 14:51登録)
「夜の熱気の中で」(映画では「夜の大捜査線」~白人と黒人の対立)を彷彿させますね。本作の方が断然本格風ですが・・・。警部補は殺人事件を外されるのですが、それが皮肉な結果に結びついていきます。南アの気怠さ・雰囲気は感じますが、もう少し緊迫感があればと思いました。


No.721 6点 読者よ欺かるるなかれ
カーター・ディクスン
(2015/02/26 21:21登録)
念力(読心)の解明にいま一つ説得力がなかったのが残念。あまりにも当たりすぎでしょう(笑)。まあこれはご愛嬌でいいと思いますが、第一の事件は、死体の状況や、この事件がこのあとの物語に大きく影響する点などを考えると、ややアンフェアな気がしました。あと、読心術者がホテルにいるはずなのに、別の場所に現れる?のは興ざめでしたね。しかし、題名の主旨(プロット)は大いに買います。後半、登場人物表にない人物が突如現れるのですが、これは伏線がはっきりしていたので問題ありません。(但し、解説・泡坂妻夫氏ではこの点をネタばらししていますので要注意ですね。)


No.720 5点 夜は千の鈴を鳴らす
島田荘司
(2015/02/22 20:24登録)
全体に淡白な感じを受けました。「著者のことば」にある読者を翻弄させるトリックは、あまり効果的とは言えませんでしたね。メインの時刻表トリックはまあこんな感じのものかな・・・という印象です。過去の事件に重点が置かれたため、現在の事件があっさりし過ぎた感じがします。もう少し掘り下げてくれたらなあといったところです。


No.719 6点 検死審問ふたたび
パーシヴァル・ワイルド
(2015/02/21 14:34登録)
前作では伏線が不明だったので、今回はメモを取りながらの読書でしたが、メモの中に伏線はありませんでした(笑)。本作は本格というより、やはりユーモア小説でしょう。狂言回しのイングリスがいい味を出しています。心情(愚痴、批判)を誰にも読まれないよう速記するも、検死審問の速記者に読まれてしまうあたりは大笑いです。なんといっても最大のユーモアはトリック自体でしょう?!(それとも当時は本気???)。


No.718 6点 検死審問 インクエスト
パーシヴァル・ワイルド
(2015/02/20 13:50登録)
事件の概要が1/3位まで、中々わからないのでイライラ(笑)。ユーモアあふれる会話は楽しめました。本格というより、ユーモア小説に位置づけられるのかも?。事件が判明してからは、犯人は○と決めつけ、その結果はビンゴでしたが、犯人に結び付く伏線らしきものがなかったのが残念な点です。”深読み”はしないので気が付かなかっただけなのかもしれません(苦笑)。自分にとっての伏線とは”サラッ”と読んでいても「違和感を感じる」「印象に残る」という文章や出来事があることをいいます。例えば「ハサミ男」は伏線があったとは言い難い。印象には残らない文章(一行)であったということになります。「葉桜の季節・・・」には明確な違和感がありました。よって絶妙な伏線として評価するということです。以上を踏まえ、再読(伏線探し)はしませんが、続編の「検死審問ふたたび」に挑戦してみます。


No.717 6点 三本の緑の小壜
D・M・ディヴァイン
(2015/02/17 20:18登録)
1人称は本人以外の心理が中々伝わってこないのですが、本作は3人によるそれぞれの1人称で語られているので良く伝わってきましたね。犯人の心理以外は(笑)。一見本格風な展開ですが、心理サスペンス要素が強い作品でした。本格物としては5点、心理サスペンスもので7点といったところです。姉マンディ(20歳)と義母妹シーリア(13歳~やや発達の遅れた少女)の一人称で語られる心の閉鎖部分が、片や恋愛物語へ、片や事件の真相に繋がっていくところは、さすがにうまいと感じました。


No.716 4点 もう教祖しかない!
天祢涼
(2015/02/15 19:21登録)
「BOOK」データベースより~『老朽化した銀来団地で急速に広がりを見せる新宗教“ゆかり”。大手流通企業スザクのセレモニー事業部で働く早乙女六三志は、顧客との生前葬儀契約を守るべく、教団潰しを命じられた。ところが、同世代の教祖・藤原禅祐は訴える。「今や若者は、社会や成功者にとって搾取の対象でしかない」「そんな我々が逆転するには、もう教祖しかないのです!」そして両者は、“ゆかり”の存亡を賭けてある勝負に挑むことに―』~

コンゲーム風な作品で、ミステリー度は薄い。結末も予想範囲内でした。ドタバタ調にした方が楽しめたかも。


No.715 4点 毒薬の小壜
シャーロット・アームストロング
(2015/02/15 09:28登録)
(東西ベスト76位)裏表紙より~『ギブソン氏は初老の学校教師として生活は安定し、礼儀正しく、上品だった。親子ほども年の離れたローズマリーも、小柄でおとなしく、気だてのいい女だった。二人は幸福な夫婦になった。しかし、突発した自動車事故が、彼の世界を粉々にした。妻の不倫が足の不自由な彼の心に重くのしかかってきたのだ。彼は自殺を決意、ひそかに毒薬の小壜を入手したが…アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞受賞の心暖まるサスペンス。』~

前半は童話のような展開です。チャップリンの「街の灯」的な恋愛ものの印象。後半はドタバタ劇です。ミステリー的な要素はほとんど感じられなかったのでこの点数ですが、物語的にはつまらないというわけではありません。ただ、ミステリー作品として、MWA受賞していること、東西ミステリーにランクインしていることが不思議な感じがします。解説には「善意のサスペンス」、東西ミステリーの”うんちく”には『これは「現実主義」という名の絶望と闘う希望の物語なのだ。』とありますが、よくわかりませんでした(笑)。


No.714 4点 邪宗門の惨劇
吉村達也
(2015/02/12 09:16登録)
「Book」データベースより~『〈母さん、帰らぬ、さびしいな。金魚を一匹突き殺す まだまだ、帰らぬ、くやしいな。金魚を二匹締め殺す なぜなぜ、帰らぬ、ひもじいな。金魚を三匹捻じ殺す〉―北原白秋の奇妙な童謡『金魚』とともに送られてきた中学時代の同級生からの招待状。東京渋谷区の高級住宅地松涛に建つ洋館を訪れた推理作家・朝比奈耕作を待ち受けていたのは、無限に連なる蝋燭の輝きと美女が二人に死体がひとつ。ワーグナーの歌劇が鳴り響き、金切り声で白秋の詩が朗読される異常空間で何が起きるのか?『館』での殺人の新構想登場。』~

「そして誰もいなくなった」の残り3人の心理劇を描きたかったようですが、失敗に終わったようです。原因は心理劇の重要要素(各人が○○○○になる)を排除してしまっていたからです。北原白秋の童謡も効果的とは言えなかった。残念。

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