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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.700 8点 炎の裁き
フィリップ・マーゴリン
(2015/01/03 17:42登録)
「BOOK」データベースより~『裁判でミスをしたピーターは、大物弁護士の父により勘当同然に片田舎の町へと追いやられ、細々と公選弁護人をつとめていた。そんなある日、地元の女子大生が惨殺され、障害のある青年ゲイリーが殺人容疑で起訴される。世間注視のこの裁判で勝利すれば、檜舞台に復帰できる…不純な動機からゲイリーの弁護を引き受けたピーターだったが、検察側の態勢はまさに磐石。はたしてピーターは圧倒的に不利な状況を覆せるのか。』~
読後は映画「摩天楼はバラ色に」(マイケルJ・フォックス主演)アメリカ的な立身出世物語(コメディ)を思い起こしました。いかにもアメリカ的でオーソドックスな展開ですが、リーダビリティがあり、なにしろエンタメに徹しています。久しぶりにほろりとする場面に出会ったり、読後は爽快感を味わうことができました。日本ではまだ認知度は低いようですが、アメリカではベストセラー作家の地位を確立しているようです。著者の作品は4冊目となりましたが、お気に入りの作家の1人になりそうです。


No.699 6点 リッジウェイ家の女
リチャード・ニーリィ
(2014/12/30 21:08登録)
(タイトル女31冊目)ニーリィらしさがないと言えばないのですが、後半は作風に反して活劇的な展開となり、ファンとしては逆な意味で楽しめました。解説は自称ニーリィ中毒の折原一氏。私の場合は折原一氏中毒?からリチャード・ニーリィ氏ファンへとなりました(笑)。


No.698 5点 影の顔
ボアロー&ナルスジャック
(2014/12/27 19:14登録)
ハヤカワ・ミステリの裏書は、本文の3分の2までのあらすじが書かれていて興ざめでした。ここまで書いてあるのだから、かなりのどんでん返しがあるのでは?と期待してしまいます(苦笑)。盲目の心理描写(疑心暗鬼)はうまいと思います。しかし、それによる恐怖感があまり感じられなかったことが残念な点です。ラストはエスプリが効いていました。


No.697 4点 犠牲者たち
ボアロー&ナルスジャック
(2014/12/26 09:46登録)
結末は一瞬面白いと思いましたが、考えると不自然ではないか?。全編主人公の独白(恋愛感情が主体)でサスペンス感がなかった。


No.696 7点 氷の男
フィリップ・マーゴリン
(2014/12/23 20:35登録)
(タイトル男14)裏表紙より~『つねに沈着冷静で、どんな犯罪者も無罪にすることから“氷の男”の異名をとる辣腕弁護士のナッシュ。だが心の底で彼は、依頼人たちが実は有罪なのではないかという思いに苛まれていた。そんな矢先、同僚の弁護士が婦人警官殺しの容疑で逮捕された。同僚の冤罪を晴らすべく法延に立ったナッシュを、思いもよらぬ罠が待ち受けていた!どんでん返しの連続でぐいぐい読ませる、『黒い薔薇』の著者の第二作。』~                                   弁護士の苦悩(依頼人は有罪ではないか?、依頼人の妻を愛してしまったことによる裁判への影響、犯人の殺人の告白は守秘義務によりどうすることもできない等)がうまく描かれていていました。どんでん返しは、予想範囲内なのですが、弁護士が精神的に追いつめられてゆく後半は読みごたえがありました。プロットがいいです。


No.695 7点 笑わない数学者
森博嗣
(2014/12/20 13:28登録)
「逆トリック」(謎が読者には解かるが、登場人物には解からない)に魅かれ拝読。それ自体は非常に簡単な問題でしたが、本命はやはり「題名」に係る謎ですね。これも少し考えれば明らかになるはず?(不定ではない(笑))。当初、博士が姿を見せないので「四季」なのか?などと思いながら読んでしまいました(苦笑)。人間関係がやや複雑なので、数学的なスッキリ感がなかったのは残念です。しかし逆説的に考えれば、不条理な世界を描いた作品であるので致し方ないのかもしれません。つまり、結果的に人間の弱さ(逃避)が原因で、犯罪を犯さなくてもよかった人間を犯罪に導いてしまったということでしょうか。


No.694 4点 キドリントンから消えた娘
コリン・デクスター
(2014/12/16 13:36登録)
(東西ベスト80位)「毒入りチョコレート(1929)」と同様、仮説ばかりで面白味を感じることはできませんでした。根拠のある仮説なら、まだ納得はできるのですが・・・。まあ、好みの問題でこの評価としました。


No.693 4点 『ギロチン城』殺人事件
北山猛邦
(2014/12/11 21:19登録)
トリックの原理(既読分)は黒田研二氏(2000)歌野晶午氏(2004)東川篤哉氏(2005)などがありますが、本作が一番応用がきいていたとは思います。ただ、始めに物理的トリックありきで、物語性の面白味に欠けるという難点ががあるような気がします。また、もう一つのメイントリック?はいただけません。他の方も指摘されていますが、瑕疵があります。著者が叙述を意図するならばアンフェアな表現以下と言わざるを得ません。


No.692 8点 暗闇の囚人
フィリップ・マーゴリン
(2014/12/09 18:57登録)
著者は弁護士なので、法廷でのやり取りはやはり迫力がありますね。女性検事が別居中の夫(弁護士)を殺害した容疑で起訴される。重要証人はその女性検事を憎む凶悪犯。背景になにがあるのか?。有罪か?無罪か?。敗北を知らない辣腕弁護士が腕を発揮できるのか?弁護士の女性補佐人の活躍は?~愛の物語も同時進行・・・そしてラストに待ち受けるものは?とエンターテイメントに徹しており、テンポも心地よかったです。悲しい○の物語でもありました。


No.691 7点 黒い薔薇
フィリップ・マーゴリン
(2014/12/06 21:02登録)
女性弁護士ベッツィは、弁護する会社社長が本当に無罪なのかどうか疑心暗鬼になる。独自に真相に迫る姿がサスペンスフルに描かれています。また、家庭と仕事の狭間で揺れる心理もうまく描かれていると思います。二転三転する展開は読みごたえがありました。法廷ミステリーというより、サイコサスペンス色が強いと感じました。


No.690 8点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2014/12/03 13:17登録)
(東西ベスト100位)第十三回日本探偵作家クラブ賞受賞作。時刻表トリックはあまり好みでない(「黒いトランクで苦労した経験<笑>)のですが、本作は、時刻表と”にらめっこ”することなく楽しめました。東京創元社版にある著者の「創作ノート」によると、本作と松本清張氏の「ゼロの焦点」が同時進行の形で連載され、ある類似点があることが判明したとのことです。興味深い逸話でした。また、「トリックのオリジナリティとモラル」については、「苦労して考え出したトリックを安易に転用されるのは御免こうむりたいと思う」と語る一方、同じトリックを用いた秀作に遭遇すると主張をまげないわけにはいかなくなるとも語っています。・・・ただし、その著者が先例のトリックをを知らなかった場合のようですが、それ自体はうかがい知ることはできませんので、読者としてはやはりオリジナル作品をリスペクトせざるを得ないのではと思います。解説は有栖川有栖氏です。自作「マジックミラー」(1990)については触れてはいない(この解説より先の作品か後か判りません)のですが、鮎川哲也氏へのオマージュ作品であるような気がします。オリジナルとオマージュを比べるのも読書の楽しみの一つですね。


No.689 7点 憎悪の化石
鮎川哲也
(2014/12/01 09:42登録)
第十三回日本探偵作家クラブ賞受賞作。最近の読書はサスペンスものが多く、久しぶりのアリバイ崩しで楽しめました。サブトリック?は大胆で先例を知りません。メイントリック?とサブを入れ替えた方がよりインパクトがあったような気がしました。著者は題名にかなり気を使うそうで、「憎悪の化石」の意味は読み終えれば納得できますね。


No.688 7点 半身
サラ・ウォーターズ
(2014/11/29 21:31登録)
(東西ベスト82位)オカルト風味のサスペンス。著者がどんな結末に導こうとしているのか?最初に感じる謎でしたね・・・。その謎を最後まで持ってゆく筆さばきが、巧みであると言わざるを得ません。主人公の日記(心情)が主体で描かれ、相手となる女囚(霊媒)の現在の心の内が描かれないのは何ともいえない不安感を醸し出します。最初に感じた謎は、それほど驚きのある真相ではないのですが、幻想と現実のギャップの描き方がうまいのかもしれません。


No.687 6点 侵入者 自称小説家
折原一
(2014/11/26 09:07登録)
裏表紙より~『北区十条で起きた一家四人殺害事件。発生後半年以上経っても解決のめどが立たず、迷宮入りが囁かれる中、“自称小説家”の塚田慎也は遺族から奇妙な依頼を受ける。「この事件を調査してくれないか」―。以前、同じく未解決の資産家夫婦殺人事件のルポを書いたことから白羽の矢が立ったのだ。百舌の早にえ、車椅子の老人、ピエロのマスクをかぶった男…二つの事件に奇妙な共通点を見出した塚田は、あるアイデアを思いつく。遺族をキャストに、事件現場で再現劇を行うことで犯人をあぶり出すのだ―。ミステリー界の特級幻術師が送る「○○者」シリーズ最新刊。』~
フーダニット物。もし、理詰めで推理する本格物であるならば、その結果暴かれる真相は、結構インパクトがあるような気がしました。しかし、サスペンスものなので、その点若干弱く感じるのは致し方ないか?・・・。前半は事件の概要なので、そのサスペンス感、盛り上がりにやや欠けています。後半は、遺族が事件の再現劇を演じるというリアリティのない展開(笑)なのですが、脚本が面白いので一気読みできました。やや甘めの採点となります。


No.686 7点 死者の中から
ボアロー&ナルスジャック
(2014/11/21 11:49登録)
「めまい」(パロル舎版)で拝読。~「高所恐怖症のために警察を辞めた弁護士のもとへ、かつての友人から、妻の様子がおかしいので監視をしてくれとの依頼を受ける。やがてその人妻を愛してしまう。」~解説によると、ヒッチコックによる映画化を期待して書かれた作品のようです。「高所恐怖症」と「転生」をうまく取扱い、サスペンスの傑作に仕上がっていると思います。


No.685 4点 わたしを離さないで
カズオ・イシグロ
(2014/11/20 08:21登録)
(東西ベスト74位)裏表紙より~『優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。』~
著者は日本生まれのイギリス人。訳者あとがきによれば、これはミステリではないとのこと。へールシャムという施設は何かという「謎」はありますが、青春小説+○○小説といった感じになるのかも。主人公の淡々とした語り口が、奇怪な感じを盛り上げています。好みでない分野であることと、ミステリー的な要素を斟酌し、この評価としました。


No.684 5点 ふたりのシンデレラ
鯨統一郎
(2014/11/16 19:42登録)
裏表紙より~『「ふたりのシンデレラ」を上演するため、合宿中の劇団を襲う惨劇。主役を巡り、女優や演出家が対立する中、一人は殺され、一人は失踪、一人は重傷を負い記憶を…。シンデレラが仕掛けた罠とは何か?事件の証人であり、犯人であり、犠牲者で、探偵役で、ワトソン役で、記録者で、容疑者で、そして共犯者でもある…一人八役の「わたし」が語る驚愕の真相とは。』~
「シンデレラの罠」(1962)のオマージュ作品(2002)です。オマージュでは綾辻行人氏が1989年に先行。原作は一人四役に対し、本作は一人八役に挑戦したもの。展開は楽しめましたが、ミステリーの基本となる証拠などのトリックに関し、やはり無理があるような気がします。技術的な問題ではなく、ミステリーファンの心理として納得がいくかどうかということですが・・・。


No.683 5点 四〇九号室の患者
綾辻行人
(2014/11/15 17:48登録)
「シンデレラの罠」(1962・セバスチアン・ジャプリゾ著)のオマージュ作品。ただし、その点に関し「あとがき」(角川版)で触れていないことが気になりますが・・・。やはり原作を上回ることはできなかったか(苦笑)。本作は著者の一面ではあると思いますが、折原一氏の作品を読んでいるような錯覚を起こしました。結末には無理があるような気がします。本人が、記憶喪失で、精神的におかしくなっているとしても、○や○に気が付かないのは不自然でしたね。○や○が不明な設定にすれば納得がいくと思います。


No.682 5点 フリークス
綾辻行人
(2014/11/15 17:46登録)
①夢魔の手~三一三号室の患者~②四〇九号室の患者③フリークス~五六四号室の患者~②がオマージュ作品とのことで拝読。(単独で別途書評) 3本とも精神科の患者を題材にしているので、おおよその結末は予想できてしまいます。著者の作品の中で、オチは好みでない方の部類でした。


No.681 7点 仮面の男
ボアロー&ナルスジャック
(2014/11/14 18:53登録)
(タイトル男13)(注)本の内容紹介は先に読まない方がいいです。・・・ヴァイオリン弾きのジャックは、ある男から遺産相続の為、行方不明になっている夫に成りすましてくれとの依頼を受ける。その妻にもばれないよう記憶喪失を装うということであった。その裏にはある陰謀が・・・。その陰謀が内容紹介でネタバレしています(苦笑)。ジャックと妻の日記で物語は進行しますが、日記なのでお互いの心のうちはうかがい知れません。二人のすれ違いの「あや」や「心理描写」を巧みに操って読ませてくれます。読者には真相が提示されるのですが、そのことがより効果的で非常に堪能できました。

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