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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.780 6点 刑事くずれ/ヒッピー殺し
タッカー・コウ
(2015/07/17 12:26登録)
”落伍刑事の汚名を浴びながら困難な密室殺人に挑むミッチ・トビン。ハードボイルド第2弾”とありますが、本格要素の強い作品でした。心理的密室を扱った作品で楽しめました。欲を言えば、容疑者ロビン(記憶喪失)の絡みがもっとあったらなあと思いました。


No.779 5点 仮面舞踏会
ウォルター・サタスウェイト
(2015/07/14 13:29登録)
裏表紙より~『1923年、パリ。ピンカートン探偵社のフィルはまたも怪事件の渦中に。新米探偵ジェーンも、家庭教師に扮して初仕事。パリの探偵ルドックとともに調査するうち二人が出会うのは、イギリスから来た女流ミステリ作家、パイプをくわえた敏腕警視、ヘミングウェイ、スタイン、サティにピカソ……怪しいやつが多すぎる! おまけにドイツ新政党も暗躍か? 華の都に名探偵たちが再登場。「名探偵登場」に続く、痛快ユーモア時代ミステリ !』~
 ハードボイルド系、ユーモア系、本格系の要素を含んでいるのですが、核となるものがないので、ミステリーとしては中途半端な作品になってしまったという感じです。時代設定が1923年であり、その後有名となった作家等が実名で登場したり、パリのグルメ紹介(かなりの件数)があったり、性風俗(意識)が描かれたり、そういう点では500P超は退屈ではありませんでしたが・・・。


No.778 7点 三人の名探偵のための事件
レオ・ブルース
(2015/07/11 21:24登録)
3人の名探偵対田舎巡査部長の構図です。多重解決より、構図そのものを楽しむ作品のような気がしますね。巡査部長は最初から犯人は解かっていると3人に対し公言してはばからないところが面白い。密室(窓は開いている)の推理は幾通りも示され、夫々楽しめた。真相は後出し的な面もあるが、それがどうしたとでも言わんばかりである(笑)。


No.777 8点 清里高原殺人別荘
梶龍雄
(2015/07/08 14:05登録)
777冊目。7.7には1日遅れの書評となりました。以前から読みたいと思っていたのですが、絶版で中々手に入らなかった。ようやく図書館で見つけ拝読。一部のファン?の評判通りの作品で楽しめました。著者の初期作品の雰囲気とは一味違って、エンタメに徹した作品といえますね。雪の山荘、連続殺人ものです。1988年の作品で、「十角館の殺人」(1987)の新本格ブームに刺激されたのかもしれません。著者の言葉として「作者としては、特上の意外な真相と結末を用意したつもりでいるが・・・」と自信をうかがわせています。発行元や題名のイメージがマイナーだったのか?、もっとメジャー扱いされてもいい作品ではないかと思います。


No.776 6点 七人のおば
パット・マガー
(2015/07/07 22:05登録)
「おばが夫を毒殺し自殺した」との手紙を受け取り、サリーは自分には殺人者の血が流れているのでは?と疑心暗鬼になる。サリーには母方のおば1名(母の姉=直系)と母の義姉妹となるおば6名がいる。義姉妹方の母の血であれば流れていないことになる。おばの名前は、翌日に新聞で確認することは可能なので、その疑心暗鬼が本物語の取っ掛かりとなっている。疑心暗鬼になる必要性はあまりないのでは?とつまらないことが頭にこびりついてしまった(苦笑)。全体的にはメロドラマであり、ミステリーとしてはワンポイントのみの評価となってしまう。


No.775 6点 人形が死んだ夜
土屋隆夫
(2015/07/07 11:48登録)
著者が米寿の記念に執筆を思い立ち、90才に脱稿した作品。長編の第1作「天狗の面」(1958)に登場した土田巡査の息子が、本作では土田警部として登場。その間50年です。これだけでもすごいことですね。内容は、探偵役が、犯人役へ転換するというどちらかといえば倒叙的な作品です。よってフーダニットやハウダニットを期待すると面白味はないかも。土田警部が沈黙した理由は?それを確認する術は?・・・。余韻は人生の無常。


No.774 5点 模倣密室
折原一
(2015/07/05 14:20登録)
先日、TVドラマ「黒星警部の密室捜査」(陣内孝則氏主演)を観て手に取りました。本作中の「交換密室」のドラマ化でした。ファンとしては、葉山虹子との絡みを期待したのですが・・・。さて、TVドラマはシリーズ化されるのかどうか?・・・。密室自体に期待するものは、現在ではあまりない。というか機械的密室・心理的密室を含めて、新しく面白いものはもうできないのではと思います。真面目な応用作品ではつまらないし、本作のようなパロディで読ませるしかないのでは?という印象ですね。作中で紹介されている密室もの(著者のベスト10?「三つの棺」「プレーグ・コートの殺人」「見えないグリーン」「くたばれ健康法!」「ビッグ・ボウの殺人」「アンクル・サイラス」「五十一番目の密室」「<引立て役倶楽部>の不快な事件」「密室の行者」「本陣殺人事件」)で未読のものは読んでみたいと思います。著者らしいのは表題作の「模倣密室」でした。


No.773 4点 道化の死
ナイオ・マーシュ
(2015/07/04 08:10登録)
黄金期の4代女流作家とのことで手に取りましたが、全体的に単調であり、読むのに時間がかかってしまいました。本作と似た「ジェゼベルの死」(評価4)と同様、舞台や道具が頭に入ってきませんでした(苦笑)。この手の作品は配置図や道具の絵がないと分かりにくい?。まあ、あったら逆にすぐトリックがばれてしまう恐れもあるが・・・。○○像が好みでないのでこの評価。


No.772 7点 はなれわざ
クリスチアナ・ブランド
(2015/06/29 17:56登録)
裏表紙より~『休暇をすごすため、イタリア周遊ツアーに参加したスコットランド・ヤードの名警部コックリル。だが、事件が彼を放っておかなかった。景勝で知られる孤島で一行のひとりが何者かに殺された。地元警察の捜査に不安を感じたコックリルは自ら調査に乗り出すが、容疑者であるツアーの面々は、女性推理作家やデザイナー、隻腕の元ピアニストなど一癖ある連中ばかり…ミステリ史上に輝く大胆なトリックで名高い、著者の代表作』~
著者と相性があまり良くなかったのですが、本作は楽しめました。「緑は危険(5点)」「ジェゼベルの死(4点)」の2作とも、場面・人物がイメージしにくかったという印象が強いです。本作は”浜辺の図(事件発生時の各容疑者の位置)”が挿入され、人物像も個性豊かに描かれており頭に入ってきました。刑事が、容疑者全員のアリバイを証明している点がミソですね。恋愛が絡んだ物語には高得点をつける傾向があることに、自分自身気が付きました(笑)。真相にはかなりの無理があるのでは?と思わせないことが、著者にとっての「はなれわざ」なのでしょうか。物語自体は、クリスティ氏の「白昼の悪魔」(1941)を連想しました。


No.771 5点 もう年はとれない
ダニエル・フリードマン
(2015/06/26 19:07登録)
主人公のキャラクターからして、もう少しドタバタ調でもよかったのでは?という思いです。つまり、ハードボイルド系の主人公がただ年をとってしまっだけの物語という印象しか残らなかった。残念。


No.770 7点 高木家の惨劇
角田喜久雄
(2015/06/24 15:21登録)
あらすじ~『青年が喫茶店で飲物に蜘蛛が入っていると騒ぎ出した。隣の席にいた男は、青年が蜘蛛を飲物に入れるところを目撃した。青年は何の目的で?・・・。 同時刻に高木家の当主・孝平が自宅で射殺された。容疑者は少数の人間に絞られた。誰もが強い動機を持っている。しかし、全員に確固としたアリバイが存在する・・・。』~
「本陣」「不連続」「獄門島」「刺青」(1946~1948)に並ぶ名作とのことで拝読。知名度は前記4作と比べると劣っているようですが、予想以上に楽しめました。心理的トリックと、被害者の生前の意図が本書の読みどころですね。


No.769 8点 カラマーゾフの妹
高野史緒
(2015/06/23 13:32登録)
第58回江戸川乱歩賞受賞作。ドストエフスキー氏は「カラマーゾフの兄弟」の第2部(13年後の物語)を書くことなく、亡くなりました。その続編である第2部をミステリーとして著者が描いたものです。この大胆さに拍手(満点)を送りたいですね。原作(第1部)では、明確な犯人は描かれておらず、当然第2部で明かされるのでは?と予想されていたわけです。しかし、残されている資料は少なく、続編では兄弟の○男がテロリストになるという筋書きのみがあったようです。本作は、原作の伏線(現場情況、供述、アリバイ、言動など)を紐とき、真犯人を浮かびあがらせるというものです。その点は成功していると思います。原作のあらすじ(これが実に面白い)が挿入されていますので、読んでいなくても「本作」のみで十分楽しめます。乱歩賞選者の東野圭吾氏も「原典は読んでいない。」とのことでした。


No.768 6点 ミステリとしての『カラマーゾフの兄弟』
評論・エッセイ
(2015/06/21 20:19登録)
著者の「カラマーゾフの妹」を読む前に、「カラマーゾフの兄弟」本編を読もうかとも思いましたが、5冊もありあきらめました(苦笑)。本書は、「カラマーゾフの兄弟」をミステリーの面から捉えたものです。殺人事件(父親殺し)に係るあらすじがあるので本編を読んでいなくとも大丈夫ですね。なお、真打は真犯人の考察です。証言と供述が、犯行現場と一致していないことより、真犯人がいるのでは?というものです。60ページと短いので非常に読み易く楽しめました。


No.767 5点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2015/06/20 16:28登録)
(東西ミステリー47位)海外著名ミステリ作家のお気に入りベスト10でも26人中6名が本作を選出しています。歴史的意義のある作品であることは理解できるのですが、面白いか?と問われると、評価に困る作品ですね(苦笑)。解説(島田荘司氏)によれば、「著者にとっては、最新科学の情報を作品に組み入れていくことが必要であったが、ロマン派冒険作家の意識から脱しきれなかった(要約)」らしい。そこへゆくと、ジェフリー・ディーヴァ―氏は凄いのかな?。


No.766 5点 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイル
(2015/06/17 16:55登録)
世界ミステリー史的なものに興味を持ち始め、ミステリー黄金期やそれ以前の主だった作品を順次読み始めたところです。ドイル氏の作品では「緋色の研究」(1887)「バスカヴィル家の犬」(1902)を選びました。ホームズものについては、子供の頃読んでいないので、こだわりとか思い入れなどがありません。また短編もあまり好みでないので、手にすることがありませんでした。既読は「冒険」①と「事件簿」➁の2冊のみです。①は東西ベスト3位という人気は本当?、②はソア橋の本邦作品への影響調査という意図からのものでした。本作はホームズおよびミステリーを広めた最初の1冊という位置づけでの読書です。印象としては、やはり著者は短編向きなのかな?ということですね。動機を2部で語り、あえて長編にしたといった感じです。気になった(違和感)のは宗教は別として、犬の毒見シーンとホームズが変装を見抜けなかった点(一般人が気がつかないことを見抜く能力をもって、それはないでしょう!?(笑))です。島田荘司氏の作品に本書の構成パターンが良く使われていることが分かり勉強になりました。


No.765 7点 ルルージュ事件
エミール・ガボリオ
(2015/06/16 15:26登録)
1866年にフランスでミステリー初の長編である「本作」が発表され、一方ソビエトで「罪と罰」が発表されています。その後、ミステリーが両国においてではなく、英米で発展していったことが何か不思議な気がします。本作はフランス流エスプリが各所(当然ラストも)で効いている作品で楽しめました。登場人物の夫々の恋が語られているのも楽しいですね(従前の「抄訳」ではこのあたりがカットされたのかも?)。探偵タバレの役回りが、「トレント最後の事件」(1913)のトレントに引継ぎされたように感じました。当時のフランスにおいて、冤罪に関する意識が相当強いということが、本書から伺えました。


No.764 4点 人生の阿呆
木々高太郎
(2015/06/14 13:15登録)
物語は主人公の人生(祖母の溺愛から脱出し、元恋人との愛の挫折を乗り越えて・・・)と事件(毒入り・射殺)を組み合わせたものですが、どちらも中途半端な感じを受けました。恋愛小説風部分も物足りないし、事件も淡々と語られるだけで盛り上がりに欠けるものでした。犯人像は意外かも?。自序における著者の探偵小説に対する意気込みだけは強いものを感じましたが・・・。


No.763 6点 ジキル博士とハイド氏
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
(2015/06/11 18:38登録)
「ジキルとハイド」(新潮文庫2015版)で拝読。本版でも裏表紙および解説にて、完全にネタバレしています。意味不明です!!!。100%の人がこの話を知っているということ???(苦笑)。
「私は純粋な喜びだけのために罪を犯した初めての男だ。」正にその通りかもしれません。強く印象に残るフレーズです。


No.762 5点 ミステリイ・カクテル(推理小説トリックのすべて)
事典・ガイド
(2015/06/10 15:01登録)
本文より~『本書「ミステリイ・カクテル」は、江戸川乱歩の「類別トリック集成」におおむね準拠して、数多いトリックのなかから代表的なものを抜きだし、その作品例を要約してのべ、各々の概念をときあかし、かつ同種のトリックをふくむ代表作を列挙し、全篇を読みものとしてまとめてみたものである。』~
 乱歩氏の「類別トリック集成」は同氏にとっても満足のいくものではなかったらしい。私には、どうもピンとくるものがなく、使い勝手が非常に悪い。本書は、乱歩氏に準拠しているとは知らず読んでしまったので、あまり効果的な内容とは言えませんでした。また、短編の例が多いことも私にはなじめないところがありました。なお、トリックに関する先駆的な作品が数点判明したことは役に立ちました。先駆的作品を読むことも楽しみの一つなので・・・。
 現在、考えていることは、「トリック別ベスト5」的なものを自分なりに作ってみたいということです。やはり6W1Hに基づき分類するのがいいのかなあ?と思っています。大分類を犯人・被害者・アリバイ(時間・場所)・犯行目的・動機・方法(密室・毒殺)+叙述等とし、そこから中分類くらいまでの項目で抑えるような感じですね。いつになるか分かりませんが、書評で”本書は「意外な犯人像」のマイベスト3となりました”などと記載できればと思っています。


No.761 9点 トレント最後の事件
E・C・ベントリー
(2015/06/09 10:32登録)
江戸川乱歩氏が選んだ「黄金期のベスト10」のラスト1冊として拝読。マイ評価は下記のとおりとなりました。
             当サイト平均点 マイ評価
1位「赤毛のレドメイン家」  6.10    5 
2位「黄色い部屋の謎」    6.48    7 
3位「僧正殺人事件」     6.55    5 
4位「Yの悲劇」       8.14    8 
5位「トレント最後の事件」  5.00    9 
6位「アクロイド殺し」    8.15   10 
7位「帽子収集狂事件」    6.20    5 
8位「赤い館の秘密」     5.79    6 
9位「樽」          7.08    6 
10位「ナイン・テイラーズ」 6.20    8 

本作がこのサイトでは低評価なのに驚き!(笑)。現在風に言えば「アンチ・ミステリー」として書かれたもののようです。ベントリー氏いわく「これが探偵小説というより、むしろ探偵小説を揶揄したものであることは、あまり気づかれなかったようだ」とあります。つまり、いままでの短編小説(ドイル氏など)に登場した超人的な探偵ではなく、人間味のある探偵を描きたかったようです。恋と事件の真相で苦悩する姿など、その意味では多いに成功していると思います。歴史的評価が高いことが、充分うなずける1冊です。「最後の事件」とした皮肉も効いていますし、物語の展開(二転三転)も当時としては中々のものであると思います。最後の行「この秘宴の勘定を、あなたに払っていただくことにします」は、大のお気に入りになりそうです。

(追記)海外著名ミステリ作家26名のお気に入りの作品でレジナルド・ヒル氏(英作家)ピーター・ストラウブ氏・ジャック・バーザン氏(米作家)の3名が本作をベスト10に選出しておりホッとしています。

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