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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.813 6点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2015/10/03 18:49登録)
奇妙な遺言、動機などのアイデアは評価したいと思います。犯行方法、密室、盗難事件などがあっさり片づけられているので、何が中心なのか、ぼやけてしまった感じです。金への執着心などを中心に人物像をもう少し堀り下げていたら、傑作になっていたかも。


No.812 5点 オシリスの眼
R・オースティン・フリーマン
(2015/10/01 17:57登録)
エジプト考古学者が不可解な失踪をし、その2年後に白骨が発見される。その白骨は考古学者のものなのか?・・・。ヴァン・ダイン氏が世界ベスト10に挙げたらしい1911年の作品。しかし、現在から見ると、トリックはかなり古い(苦笑)。本作でも、当時としては最先端?のX線写真が登場しているので、そういう意味から科学的推理のソーンダイク博士という謳い文句になったのでしょう。歴史的な意義を感じるかどうかといった作品ですね。


No.811 5点 NかMか
アガサ・クリスティー
(2015/09/28 16:32登録)
裏表紙より~『情報部からナチの大物スパイ“NとM”の正体を秘密裡に探るという任務を帯びたトミーは、妻のタペンスには内緒で任地へと赴いた。だが、タペンスとて一筋縄でいく女ではない。騙されたふりをして先回り。かくして二人は、大規模なナチ・スパイ網のまっただなかへと飛びこむことに…スリル満点の冒険ミステリ。』~

シリーズ第1作「秘密機関」(1922)から約20年後(1941)の本作。主人公も年をとり子供もいる設定です。題名のように内容は、スパイは誰か?であり、どちらかというとフーダニットに近い展開でした。本格ものであれば意外な犯人ということになると思います。しかし、スパイもの、冒険ものとしては、スリル満点とは言えず、この評価となってしまいました。


No.810 6点 追跡者
パトリック・クェンティン
(2015/09/23 18:02登録)
主人公が出張から帰ってくると、自宅には新婚の妻の姿はなく、代わりに男の死体が転がっていた。妻の行方を追うという題名通りの追跡劇で、冒険活劇要素の方が強い作品です。パズル・シリーズにはないコメディタッチの場面(脇役のホテルボーイがアクセントとなりいい味を出している)もあり楽しめました。


No.809 5点 秘密機関
アガサ・クリスティー
(2015/09/22 16:57登録)
初期(1922)の初々しさが感じられる作品。何しろ若い(笑)。著者の冒険・スパイものは概して評判はよろしくないみたいですね。単純なプロットに加え、スピード感、サスペンス感が不足しているのでしょうか。2009年、ガーディアン(イギリスの新聞)が必読小説1000冊を発表。その中に本作は選出されています。また「アガサ・クリスティ ベスト BY 折原一」にて氏は本作を第17位にランクしています。本作の解説をしている杉江松恋氏は本シリーズ「NかMか」をアガサクリスティの私的ベスト10に入れ、本作よりそちらの解説をしたかったとコメントしています(苦笑)。記念碑的作品ということで甘目の採点となりました。


No.808 5点 スリープ
乾くるみ
(2015/09/20 15:50登録)
高評価のSFミステリー「星を継ぐもの」もそうでしたが、”なんでもあり”のSFにおけるミステリーとしての評価は下げざるを得ない(苦笑)。本作の読みどころはミスリード?。


No.807 6点 柊の館
陳舜臣
(2015/09/20 15:47登録)
(再読)著者の作品を読み始めたころは、ミステリーという意識はなかったですね。本サイトで「炎に絵を」を知り、著者の他作品の多くがミステリーに分類・登録されていていることにびっくりしたことを思い出します。本作は、神戸の異人館(イギリス系船会社の宿舎)に長年勤めた日本女性の語る恋物語や殺人事件です。今でいうコージー系、日常の謎系に近いものと思います。奇妙な味系もありますが、全体の印象はロマンチックな味わいといったところですね。。第1話の事件の真相が、最終章で判明するという形をとっています。


No.806 6点 呪縛の家
高木彬光
(2015/09/20 15:45登録)
「読者よ欺かるるなかれ」(カーター・ディクスン1939)にインスパイアされた作品であることに間違いはないと思います。物語の展開は全く違いますが、重要部分での類似点はありますね。そのこととは別に、この作品の「オチ」は結構気に入っているので、オリジナリティの高い作品で適用されていればなあ、と思いました。非常に勿体ない気がします。


No.805 7点 ベスト・ミステリ論18
評論・エッセイ
(2015/09/12 23:14登録)
①若島正氏~「そして誰もいなくなった」における犯人の心理描写部分を特定・抽出するという作業・分析に敬意を表したい。この評論を読んで、改めてクリスティ氏の凄さを思い知らされた。
②坂口安吾氏~「黒死館」を”こけ”にしているところが楽しめる。
③北上次郎氏~007ジェームズ・ボンドは国家のために闘うエージェント・ヒーローを否定するところから出発したという。ファンですけど、こういうことを考えたことはありません(笑)
④法月綸太郎氏~「わが子は殺人者」(パトリック・クエンティン)の解説。満点評価なので、この解説が読みたかった。
⑤都築道夫氏~トリック無用は暴論か。まあ、暴論でしょう(笑)
⑥北村薫氏~解釈についての評論ですが、一か所?の点がありました。≪「傷だらけの挽歌」という映画の試写会。大金持ちの傲慢な令嬢が誘拐され、救出時はぼろくずのようになっていた。父親はそんなになっても生きているのかと冷たい言葉を浴びせる。ラストシーン、川に身を投げた娘を見て、探偵は何とも言えない表情で、その場を去ろうとした。助けないのか、という声に「アイ・キャント・スイム」。実に苦く、見事な台詞である。まさしく、<出来ない>のである。ところが、字幕が出た途端噴き出した観客がいた。その人には素直におかしかったのだ。本当に<泳げない>と思ったのだ。≫色々な解釈があっっていいという評論ですが、ここでは決めつけてますね。笑った人はブラックユーモアが大好きだったかもしれません。


No.804 7点 白雪姫には死んでもらう
ネレ・ノイハウス
(2015/09/11 20:58登録)
ワンカットが短く、話が飛ぶのが作風ですね。本作は「深い疵」より読みやすかった。相変わらず、登場人物は多い(苦笑)。事件が複雑なので、主席警部オリヴァ―の家庭事情の話はない方がすっきりしていたかも・・・。とは言っても、非常に面白かったですね。題名の「白雪姫には死んでもらう」ということが中盤で判明するのですが、ゾッとしました。シリアスな展開なのですが、ところどころに笑いが挟まれています。


No.803 8点 証拠は眠る
R・オースティン・フリーマン
(2015/09/08 19:44登録)
裏表紙より~『夫の急死で悲しみに暮れる未亡人とその関係者たち。だが、その中の誰かが夫を毒殺したことが明らかにされる。未亡人の幼馴染みであるルパートは、ソーンダイクに真相の解明を依頼するのだが、やがてそれが考えもしなかった結末へと連なっていった。誰が、いかにして夫を毒殺したのか。証拠はどこにあるのか。それも確かな証拠が。ソーンダイク博士シリーズの傑作長編と話題を呼んだ逸品。』~

 科学探偵の元祖といわれるソーンダイク博士(シャーロック・ホームズのライヴァルたち)が活躍するシリーズの11作目とのこと。1928年の作品でありながら古さは感じないし、非常に読みやすい。検死審問などの緊迫感も心地よい。翻訳作品が少ないのが残念です。ソーンダイク博士は基本的にやさしい人なのですが、今回は犯人に厳しい態度で臨んでいますね。登場人物が少ないので、フーダニットよりハウダニットに重点を置いているように感じました。「ポッターマック氏の失策」(1930)は倒叙ものだったので、その前段のように感じました。そのあらすじの骨格になる事にも触れていましたね。作風が好きなので採点は甘目かも(笑)。


No.802 6点 連続殺人事件
ジョン・ディクスン・カー
(2015/09/07 19:25登録)
裏表紙より~『妖気ただようスコットランドの古城に起きた謎の変死! 妖怪伝説か、保険金目当ての自殺か、それとも殺人か? 密室の謎に興味をそそられて乗りこんだフェル博士の目前で、またもや発生する密室の死。怪奇と笑いのどたばた騒ぎのうちにフェル博士の解いた謎は、意外なトリックと意外な動機、さらに事件そのものも意外なものだった。』~

①密室➁多少の怪奇色③ドタバタ劇④ラブコメ⑤プロット(自殺か他殺か)⑥予想外の解決法とてんこ盛りで、著者作品への入門編に相応しいのでは?という気がしました。著者の作品のうち、私的には怪奇系は苦手で、本作のようなドタバタ・ラブコメ系の作品の方が好みです。


No.801 5点 お楽しみの埋葬
エドマンド・クリスピン
(2015/09/04 13:15登録)
裏表紙(あらすじ)の事件が起きるまでが長すぎる。スピード感でくじけ、ユーモア期待感でもくじけてしまいました(苦笑)。伏線回収に関しては楽しめました。題名は”読者にとって誰(犯人)が逮捕(埋葬)されるのか、お楽しみ”ということなのか???。


No.800 7点 「そして誰もいなくなった」殺人事件
ジャックマール&セネカル
(2015/09/01 17:24登録)
クリスティ氏をリスペクトした作品です。「11人目の小さなインディアン」で拝読。10人の俳優が登場するにも拘らず、登場人物表がなく、初めは戸惑いましたね(苦笑)。大胆なミスリードを駆使した作品との印象を受けました。動機がやや弱いかも・・・その点がマイナス要素です。
ちなみに「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品の既読一覧。
①「そして誰もいなくなる」今邑彩氏
➁「そして誰かいなくなった」夏樹静子氏
③「そして二人だけになった」森博嗣氏
④「そして五人がいなくなる」はやみねかおる氏
⑤「十角館の殺人」綾辻行人氏
⑥「殺しの双曲線」西村京太郎氏
⑦「インシテミル」米澤穂信氏
 まだあるかも?・・・


No.799 6点 呪い
ボアロー&ナルスジャック
(2015/08/30 21:07登録)
商品説明より~『獣医ローシェルが知り合ったアフリカ帰りの女ミリアンには、どこか謎めいたところがあった。ふと見せる残酷な性格、事故死した夫にまつわる無気味な噂。女の虜になるにつれて、ローシェルの生活は暗い影に包まれてゆく。やがて妻の身に、恐ろしい災厄が……!』~

海外ミステリ・ハンドブック(2015版)のエッセイの中で、皆川博子氏が本作に惹かれたと書いてあったので手にしてみました。ほぼ全編、浮気男の手記です。妻と浮気相手の間で揺れ動く葛藤や苦悩を描いています。しかし、男の優柔不断さの方が目立ち、感情移入が出来なかった点が残念ですね。少ない登場人物で物語を構成する手腕は見事だと思いますが、題名の「呪い」は効果的とは言い難い?(苦笑)。


No.798 6点 完璧な殺人
リレー長編
(2015/08/29 12:36登録)
企画の勝利か?。依頼者の手紙が読みにくいところが難点。各人の殺人計画案をけなすところが楽しめる。ローレンス・ブロックの辛辣さが特に目立った(笑)。


No.797 5点 そして五人がいなくなる
はやみねかおる
(2015/08/27 16:51登録)
「BOOK」データベースより~『夏休みの遊園地。衆人環視の中で“伯爵”と名乗る怪人が、天才児4人を次々に消してみせた。亜衣たち岩崎家の隣人で自称名探偵、夢水清志郎が颯爽と登場!と思いきや「謎はわかった」と言ったまま、清志郎はなぜか謎解きをやめてしまう…。』~

内容は、怪人二十面相と少年探偵団のような感じです。ユーモアは心地よいし、ほのぼの感もあります。ミステリーランドの諸作品とは、また違った味わいがありました。小栗虫太郎「完全犯罪」・薬漬けの探偵、灰色の脳細胞などの言葉も登場するので、大人の読者も少しは意識しているのかな?


No.796 5点 第三の銃弾<完全版>
カーター・ディクスン
(2015/08/25 18:59登録)
裏表紙より~『密室で射殺された元判事の死体の傍らには、拳銃を握りしめた青年がたたずんでいた。しかし、被害者を襲った凶弾は青年の銃から発射されたものではなかった…。この不可解で錯綜した事件に挑むマーキス大佐は、不可能犯罪の巨匠が創造したシリーズ探偵マーチ大佐のプロトタイプ。従来の簡約版では、エラリイ・クイーンのひとりフレデリック・ダネイにより大幅に削除されていた部分を、完全復元した待望のオリジナル版。』~

謎は複雑で魅力的です。真相もよく考えられています。しかし、好みでない点があり辛目の採点となりました。


No.795 6点 きみの血を
シオドア・スタージョン
(2015/08/24 14:16登録)
兵士・ジョージが書いた手紙、その中身を問いただされると、彼は態度を急変し異常な行動に・・・。「手紙の中身」と「異常な行動」の二つの謎が提示され、物語は展開します。しかし、内容は手記であり、その書き手が誰か分からないし、信頼もできそうにない・・・。
ミステリーとしての構成は面白いし、どんでん返しも好みで高評価です。しかし、あまり後味が良くない。読書Mではこのような意見はなかったが、これは好みの問題で致し方ないといったところ(苦笑)。


No.794 5点 海外ミステリ・ハンドブック
事典・ガイド
(2015/08/22 17:28登録)
「おわりに」により~『・・・本書の「海外ミステリ・ハンドブックガイド100」は、≪ミステリマガジン≫二〇一五年五月号・七月号の座談会企画<『新ミステリ・ハンドブック』を作ろう!>で出席者の方々に挙げていただいた作品をベースに、編集部が討議のうえ新たな作品を加え、100冊としたものです。・・・』~ということで、読者アンケートを集計した前回の「ミステリ・ハンドブック(1991年版)との継続性はありません。またカテゴリー別も前回のカテゴリーとは別物となっています。ちなみに、新カテゴリーは<キャラ、クラシック、ヒーロー、楽しい殺人、相棒物、北欧、英米圏外、エンタメ、イヤミス、新世代>夫々から10冊選出されています。自分としては、「密室もの」「クローズド・サークルもの」「アリバイトリックもの」「叙述もの」などのカテゴリー別が欲しかった(笑)。「もはや1大ジャンル・北欧ミステリ」で紹介されている10冊のうち、本サイトで評価されているのが2冊のみで、8冊は未登録または未評価です。よって、初心者向けとは言い難いですね。

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