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ミステリの祭典

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大絵画展

作家 望月諒子
出版日2011年02月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 6点 SU
(2025/09/21 19:48登録)
犯行の主役は、それぞれの事情から投資詐欺に引っ掛かり、借金を抱えて追い詰められた男女。彼らは一発逆転を狙って大博打に乗り出すことになる。そのターゲットが、ゴッホが死の直前に描いた油絵「医師ガジェットの肖像」。
しかしこの油絵は、死んだ当時は史実として何の価値もない絵だと思われていた。本作は「芸術の価値とは何か」という問いが小説全体の隠しテーマになっている。イトマン事件で暗躍したバブル紳士たちや当時の実際のエピソードが小説の下敷きに使われ、ジャーナリスティックな興味も満たされる。
その一方、コンゲーム小説としての面白さもある。ストーリーテリング、人物配置、意表を突く展開と、どれをとっても間然するところがない。容易に先を読ませずサスペンスフルで非常に後味のいい着地。イトマン事件まで絡めた背後設定の生臭さとは対照的に、映画「スティング」ばりの鮮やかなとどめの一撃を決めてくれている。

No.3 6点 虫暮部
(2023/02/17 13:38登録)
 5分の4まではページを繰る手が止まらない面白さ、だったんだけど真相がなぁ。
 共犯者の人数多過ぎでしょ。人海戦術で包囲網を敷けるなら、騙しは何でもアリじゃないか。こういうのは蟻が象を手玉に取るからこそいいのである。
 
 五章。警官がフェイクなら、仕掛け人がプラン変更について言い争う場面があるのは変では。

No.2 7点
(2017/06/09 10:15登録)
ゴッホの絵画をめぐる、和製コンゲーム物。

登場人物の多さによる読みにくさはある。主人公らしき人物が見つからない、いわゆる群像劇のスタイルなためか、登場人物への感情移入もない。
なのに、なぜかほどほどに魅力的なのだ。それに序盤から終盤まで、なかだるみもない。
とにかくよくまとめてある。いやまとまりがないというべきか。まとまりなく場面がよく変わるわりに、その場面ごとに引き込まれてしまった。
どんでん返しも〇だった。

難を言えば、ユーモアがほとんどないことか。とはいえ、ラストをほのぼのと締めているので、それはそれでOKかも。
それよりも、タイトルがまずい。もうちょっとマシなのにできなかったのか。

「ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードに捧ぐ」
コンゲーム物と承知しながら、しかも洋画好きなのに、巻頭のこの献辞の意味にまったく気づかなかった。
自分の鈍さに、プラス1点。

No.1 4点 蟷螂の斧
(2015/10/11 15:29登録)
「BOOK」データベースより~『ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。』~

絵画ものは、どうしても贋作がらみとなり、既視感がぬぐえない。ストーリー展開(コンゲーム)も新鮮味は感じられなかった。

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