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ミステリの祭典

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ベスト・ミステリ論18
ミステリよりおもしろい 小森収編

作家 評論・エッセイ
出版日2000年07月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 7点 蟷螂の斧
(2015/09/12 23:14登録)
①若島正氏~「そして誰もいなくなった」における犯人の心理描写部分を特定・抽出するという作業・分析に敬意を表したい。この評論を読んで、改めてクリスティ氏の凄さを思い知らされた。
②坂口安吾氏~「黒死館」を”こけ”にしているところが楽しめる。
③北上次郎氏~007ジェームズ・ボンドは国家のために闘うエージェント・ヒーローを否定するところから出発したという。ファンですけど、こういうことを考えたことはありません(笑)
④法月綸太郎氏~「わが子は殺人者」(パトリック・クエンティン)の解説。満点評価なので、この解説が読みたかった。
⑤都築道夫氏~トリック無用は暴論か。まあ、暴論でしょう(笑)
⑥北村薫氏~解釈についての評論ですが、一か所?の点がありました。≪「傷だらけの挽歌」という映画の試写会。大金持ちの傲慢な令嬢が誘拐され、救出時はぼろくずのようになっていた。父親はそんなになっても生きているのかと冷たい言葉を浴びせる。ラストシーン、川に身を投げた娘を見て、探偵は何とも言えない表情で、その場を去ろうとした。助けないのか、という声に「アイ・キャント・スイム」。実に苦く、見事な台詞である。まさしく、<出来ない>のである。ところが、字幕が出た途端噴き出した観客がいた。その人には素直におかしかったのだ。本当に<泳げない>と思ったのだ。≫色々な解釈があっっていいという評論ですが、ここでは決めつけてますね。笑った人はブラックユーモアが大好きだったかもしれません。

No.2 9点 こう
(2009/11/03 23:28登録)
 たまたま初版時に購入していたのですが臣さん同様ですがなんといっても若島正氏の「乱視読者の視点」から「そして誰もいなくなった」を扱った評論が入っているのが魅力です。初読時目からうろこが落ちました。要するに「この作品では犯人を含めた全員の独白があるのに何故読者に犯人が見破れないか」という内容の評論ですが素晴らしい内容です。「アクロイド」と「そして誰もいなくなった」のトリック、犯人に言及していますがこれらの作品を読んだ後に読む価値のある評論です。若島氏の「乱視読者の帰還」にも収録されていますが「乱視読者の帰還」はかなりマニアックな内容ですのでこの本に収録されている評論だけでも十分おつりがくると思います。
 個人的には都筑道夫氏の「黄色い部屋はいかに改装されたか? 」の抜粋評論とパトリック・クェンティンを扱った法月綸太郎氏の評論も気に入っていますが「黄色い部屋はいかに改装されたか? 」は評論集そのものをお薦めします。収録部分で横溝正史の「獄門島」と「蝶々殺人事件」のトリックに触れられていますのでできればこれらの作品を読んでからの方がいいです。また法月氏の評論はパトリック・クェンティンの「わが子は殺人者」の文庫解説そのままです。それ以外にも坂口安吾の評論なども読めて貴重な評論集でした。

No.1 7点
(2009/09/24 12:15登録)
北村薫、坂口安吾、都筑道夫、瀬戸川猛資、法月ら著名批評家13人による18のミステリ評論を集めたアンソロジーです。若島正の評論が目的で図書館で借りましたが、都筑道夫、坂口安吾の評論も楽しく読ませてもらいました。評論というよりエッセイという感じです。

若島正の「明るい館の秘密」では、クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」を「アクロイド」と比較しながら、その心理描写を徹底分析し、叙述トリックを解析し、そして致命的な誤訳を指摘しています。この内容については予備知識があったので、どちらかというと裏づけがとれたという感じで、これですっきりとしました。章ごと登場人物ごとに詳細に分析していることには本当に驚かされます。「そして」を既読の方には絶対にお勧めです。「そして」の本格物としての面白さが倍増し、クリスティーの緻密さと文章力の豊かさを理解できると思います。若島正の著書には「乱視読者」シリーズもあるので、そちらも読んでみたいです。

また、都筑道夫の「トリック無用は暴論か」では、フィリップ・マクドナルドを例に挙げ、また森村誠一氏の「高層の死角」や斉藤栄氏の「奥の細道殺人事件」を槍玉に挙げながら、アリバイつくりや密室構成は従であり、解決にいたる論理が主であることを説いています。たしかに論理さえしっかりしていれば、少々無理のある真相、動機でも納得させられることがあるのは事実ですね。この評論が書かれたのが国内で新本格が登場するずっと前(1970年ごろ)の社会派全盛の時代ですから、時代に合った、国内本格を悲嘆したような内容といえますが、いま発表されたとすれば新本格ファンから反感を買うかもしれません(笑)。でも、論理が多少無茶でも、綾辻氏の「十角館」などのように、文章(叙述トリックなど)で驚かされるのも個人的には好きなほうなので、論理が全てではないと思いますが。。。

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