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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.840 4点 アリス殺し
小林泰三
(2015/12/23 15:32登録)
裏表紙に本格ミステリとあるので、SF的要素はないものと期待したのですが・・・・・。結末は予想通りで感心するものではありませんでした。評価できる点は、人物に係る叙述部分のみ。


No.839 7点 帝国の死角
高木彬光
(2015/12/21 22:50登録)
解説によると、当初上下巻別々の題名で発売されたとのこと。かつ、上巻の物語は完結しているため、下巻は上巻ほど売れなかったようです。感想としては、上巻はスパイ小説もどき風、歴史教科書風で、はっきり言ってミステリー読者向けとは言い難いのでは?と思います。従って、下巻で判明する先駆的な試みも話題にならなかったのかもしれません。トリックは、読みなれた読者に対しては微妙かも。評価は先駆的な試みに対してです。


No.838 6点 百万ドルをとり返せ!
ジェフリー・アーチャー
(2015/12/13 20:42登録)
(東西ベスト95位)デビュー作でありながら、二段落ちまで用意したことに敬意を!。貴族・ジェイムズの役どころがいい。他の3人が真面目に奪回作戦を検討するのだが、ジェイムズは、モデルのアンに”うつつ”を抜かしてしまう。案が出てこないところに、アンが登場するというわけです。一つのオチは予想できたのですが、ラストのオチは考えつかなかった・・・。敵役・ハーヴェイをもう少し悪人に描いて欲しい気もしたのですが、結果、「死体のない楽しいミステリー」の1冊となった。・・・で良しとするでいいのかな?。


No.837 6点 シャドー81
ルシアン・ネイハム
(2015/12/12 09:42登録)
「東西ミステリーベスト100」の32位にも拘わらず、ジャンルが「冒険」(あまり得意な分野でない)ということで今まで未読でした。ある解説で「死体のない楽しいミステリー」ベスト3に入るという評論や、本サイト・他サイトでの高評価により拝読。面白かったのは事実ですが、諸手をあげてとまでいかなかった。緊迫感・危機感にやや物足りなさを感じてしまったのが原因です。つまり、物事がスムースに運び過ぎといったところか・・・。後半、サプライズがあったのですが、それならついでにその動機もというのは、ないものねだりでしょうか?。金塊強奪については、007「ゴールド・フィンガー」(映画)をイメージしながら読んでいたら、主人公が、「ゴールド・フィンガー」を口笛で吹くシーンが出てきました。私的には一番受けたシーンでした。なお読後、判明したことですが、「東西ミステリーベスト」の解説は、サプライズの”完全ネタバレ”をしていますので要注意です。


No.836 6点 美の神たちの叛乱
連城三紀彦
(2015/12/07 15:42登録)
謎を秘めた3つのバラバラな事件がやがて一つに纏まってゆきます。逆説的な言い回しが頻繁に出てくるので、途中かなり惑わされました(苦笑)。そしてルノワールの贋作を巡ってのコンゲームの開始となります。コンゲーム自体はあっけない幕切となるので、変形的な”愛”を描きたかったのか?・・・。それとも、30代の美貌を保つ83歳の怪物マダムの謎とモデル・マリー(23歳)にまつわる謎の対比なのか?・・・。


No.835 7点 押絵の奇蹟
夢野久作
(2015/12/04 13:53登録)
①氷の涯 7点 大戦前の満州。一兵卒が軍資金の横領事件の真相に挑むが・・・ロシア娘との逃避行
➁押絵の奇蹟 8点 歌舞伎役者が恋した女性からの手紙。そこには数奇な運命が綴られていた・・・
③あやかしの鼓 6点 100年前に作られたいわくある鼓。翻弄される子孫・・・

3作とも独白調で語られています。それが著者の特徴ともいえるのかも。直接的に読者に語られるので、結構頭に入ってきますね。「ドグラ・マグラ」が有名過ぎ、かつ、難解過ぎて、その他の作品が敬遠気味となってしまったのでしょうか?。まだ短編集2冊のみですけれど、難解でもなんでもなく、結構楽しめました。


No.834 5点 まやかしの風景画
ピーター・ワトスン
(2015/12/01 10:26登録)
裏表紙より~「イザベルという美女が、画廊主マイケルの元に一幅の絵を持ち込んだ。冴えない風景画には昔、修道院廃絶の際に消えたとされる財宝の在りかが隠されているらしい。だが、寓意に満ちた絵の解読は容易でない。しかも、何者かが既に探索を始めているという。マイケルとイザベルは、秘宝目指して旅に出た!知恵と冒険とロマンスに彩られた、胸おどる宝探し小説。」~

解説者によると、「死体のない楽しいミステリー3作」は①「シャドー81」➁「百万ドルをとり返せ!」と「本作」になるそうです。①②とも冒険?というジャンル的に未読な分野ですが、両作品とも東西ミステリーベスト100にランクインしているので、近々拝読予定。本作(1989)は、図像学に基づき、絵の謎を解いてゆくというもので、「ダ・ヴィンチ・コード」(2003)より先行しているものの、スピード感・展開力では劣っていましたね。残念。


No.833 7点 瓶詰の地獄
夢野久作
(2015/11/28 19:52登録)
①瓶詰の地獄 9点 海難事故で孤島に流れ着いた幼い兄妹。初めは楽園かと思われたが。3本のビール瓶に入れられた二人の手紙が流れ着いたのだ・・・3通の手紙が書かれた順番を問題・謎とする書評が多いのですが、単に時系列を逆にしただけと思います。天国から地獄へをたった13ページで表現したところがすごい
➁人の顔 4点 幼い少女は、いろいろなところに人の顔が見えるという・・・無垢だけに大人にとっては恐ろしい
③死後の恋 6点 ロシアの青年は、これから語る数奇な物語を信じてくれたら、宝石をあげるという・・・果たして真実なのかという謎
④支那米の袋 9点 ロシア娘はアメリカの青年に恋をした。青年には変な性癖があった。そのアメリカ青年の話によると、日本には男女間でもっと面白い遊びがあるという・・・本編が一番わかりやすいオチ
⑤鉄鎚 7点 主人公と叔父と従妹との三角関係。悪魔はいるのか?。従妹の死に顔を見て、主人公は彼女の真実を知ったで突然物語は終了する・・・彼女の真実とは何かと読者に問う。回答は4種くらい考えられるが、オーソドックスに「瓶詰の地獄」と同じ発想か?
⑥一足お先に 8点 片足を切断した主人公はその足が勝手に歩き回る夢を見る。そして殺人が。果たして現実の事なのか、夢なのか?・・・本編は「ドグラ・マグラ」に似ている
⑦冗談に殺す 6点 新聞記者の主人公は女優のサディスティックな趣味を見、完全犯罪で彼女を殺そうとする・・・完全犯罪をぶち壊したものは思いもよらない○であった。
著者の世界は、幻想と現実の境の曖昧さにあると思います。その世界を知らず、『ドグラ・マグラ』を読んだのが失敗だったと反省(苦笑)。これらの短編集を読んでからであれば、その評価は違っていたと思いました(よって評価変更)。


No.832 5点 ラ・ロンド
服部まゆみ
(2015/11/26 09:21登録)
内容は、副題にあるとおり「恋愛小説」です。展開がミステリアスといえるのかも。よって、ミステリーとしてのサプライズを狙った作品ではないと思います。といっても、それなりのオチはありますが・・・。著者が最後に上梓した連作集。
①「父のお気に入り」・・・劇団女優・妙子は33歳。学生の孝と愛し合うようになるが、舞台で裸を晒したことから二人の仲に溝が。そんな折、孝は中学の同級生と偶然出会い、彼女のうなじにセックスアピールを感じていたことを思い出し・・・。
②「猫の宇宙」・・・売れない画家・克己は兄・哲学教授より人生の敗北者とレッテルを張られていた。そこへ姪の藍が転がり込んでくる。藍は克己に魅かれてゆくのだが・・・。
③孝は藍から、妙子と克己が付き合い始めたと相談される。交差する愛情劇は・・・。


No.831 6点 時のかたち
服部まゆみ
(2015/11/25 07:51登録)
「BOOK」データベースより~『移ろいゆく時を画家の感性で捉えた珠玉の短編、密室・アリバイ・暗号・アナグラム・プロバビリティの犯罪…とさまざまなミステリ的アイディアに満ち満ちた服部まゆみのミステリ・ワールド。』

とありますが、ミステリ的アイデアより、心の機微、綾を中心に描いた作品のように思います。トリッキーさでは表題作「時のかたち」が印象的で、長編で読んでみたかった作品ですね。以下簡単な紹介
①「怪奇クラブの殺人」・・・大学入学の下宿を祖父宅に求めた僕。祖父は資産を怪奇趣味に投じ、自宅に怪奇博物館まで設立しようとする。それを阻止しようとする人々が・・・
②葡萄酒の色・・・軽井沢に住む私(翻訳家)の元に、転がり込んできた冴えない画家の友人。しかし、彼と私の兄の婚約者との間に何か秘密が?。私は彼に嫉妬しているのか?
③時のかたち・・・久ぶりの旧友からの手紙。彼の住む元ホテルを訪れた流行作家の私。14年前のホテルの火事以来である。その時は後始末の手伝いを断られ追い返させられたのだ・・・
④桜・・・崖から脚を滑らせ転落死した叔母の葬式の日、夫である叔父は小さな男の子を「これはわしの息子だ」と愛人とともに親戚一同に引き合わせた。そして叔父の死。密室殺人のように見えるのだが・・・。


No.830 8点 レーン最後の事件
エラリイ・クイーン
(2015/11/23 08:02登録)
倉知淳氏による「レーン四部作のオマージュ作品」が発売になったようです。原作を読んでいないとお話にならないとの思いで手に取りました。四部作の最終話として相応しい内容でしたね。ただ、単独作品としてみれば、まあ普通の作品といったところでしょうか?。謎の文字が専門家の鑑定でも不明とは、思わず苦笑してしまいました。やはり、四部作全体で、本作の価値が決定されるような気がします。シェークスピア俳優であったレーンにシェークスピアに関する謎を提示したことや、「Yの悲劇」を本作への大伏線としていることなど感心する点が多かったです。感動も添えてもらいました。


No.829 6点 悪魔パズル
パトリック・クェンティン
(2015/11/20 13:15登録)
裏表紙より~『ふと目覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝ている。自分の名前も、ここがどこかも、目の前の美女が誰かもわからない。記憶喪失。あなたはゴーディよ、わたしの息子よ、と言う女。自分はゴーディという名らしい。だが、何かがおかしい。なぜ女たちは自分を監禁し、詩を暗唱させようとするのか…。幾重にも張りめぐらされた陰謀。ピーター・ダルース、絶体絶命の脱出劇。“パズル・シリーズ”第五作』~

あらすじからもわかるように、記憶喪失者は主人公ピーターであり、「私は誰?」的なサスペンスではありません。なぜ、ゴーディの身代わりをさせられるのかという謎で引っ張ってゆきます。その展開は楽しめました。ゴーディの妻セレナの造形がいい。手足をギブスで固められた本当の理由にはニヤッとさせられます(謎とはあまり関係ないのですが・・・)。


No.828 5点 致死量未満の殺人
三沢陽一
(2015/11/17 09:22登録)
題名ってつくづく難しいものだと思いました。旧題は「コンダクターを撃て」ですが、これはある意味絶対ダメですね。「致死量未満」もいかがなものか(苦笑)。序章と題名で大筋が読めてしまいました。人間うんぬんは気にならなかったのですが、やはり毒殺トリックにリアリティ(完璧なものを求めるわけではありませんが)を感じられなかったことが惜しい点です。アイデアは買いますが・・・。


No.827 5点 ボトムズ
ジョー・R・ランズデール
(2015/11/15 13:17登録)
ミステリーというより、少年成長物語・家族物語の要素が強い作品です。背景に人種差別問題が流れるというならまだ良いのですが、本作は前面に出てきます。よって、ミステリーを読もうとしていた、または、期待していた自分にとって、かなり違和感というか、肌に合わない要素が強い作品となってしまいました。また、ちょっと長いかなとの印象も。しかし、他の書評ではかなり高評価の作品です。


No.826 7点 宵待草夜情
連城三紀彦
(2015/11/10 11:00登録)
氏らしさとは、雰囲気全体(筆づかい、ロマン性、トリッキー性等々)を言うと思いますが、私的好みはやはり、トリッキーな部分ですね。そういう意味では、「花虐の賦」「未完の盛装」が良かった。ただ「未完の盛装」における「去年の末」がしっくりこない点で減点対象となってしまいました。残念です。


No.825 6点 月光のスティグマ
中山七里
(2015/11/05 09:13登録)
「BOOK」データベースより~『この傷痕(スティグマ)にかけて俺が一生護る――。月夜に誓った幼なじみは、時を経て謎多き美女へと羽化していた。東京地検特捜部検事と、疑惑の政治家の私設秘書。追い追われる立場に置かれつつも愛欲と疑念に揺れるふたりに、やがて試練の時がやってくる。阪神淡路大震災と東日本大震災。ふたつの悲劇に翻弄された孤児の命運を描く、著者初の恋愛サスペンス!』~

主人公(淳平)は、双子の姉妹(優衣・麻衣)と幼馴染であった。震災で生き残ったのは優衣か麻衣か、やがて疑念が浮かんでくる。恋愛サスペンスかと思いきや、中盤から潜入捜査(マネーローンダリング)やテロ遭遇などに展開してゆくので、やや違和感がありました。まあ久しぶりに政治ものを読んだので考えるところが多かったです。やはり一番は東日本大震災が二大政党化が端緒についたばかりであった日本の政治に大きな影響を与えてしまったことかも?。なお本日のニュースで「非正社員4割を超える」とありました。「労働者派遣法」について本書では「民生党」の失政となっていますが「国民党」が制定・改悪したのが原因かと(苦笑)。以上は余談ですが、全体的にはやや詰め込み過ぎたかという感じですね。でも一気読みはできると思います。


No.824 5点 殺人ファンタスティック
パトリシア・モイーズ
(2015/11/03 11:02登録)
裏表紙より~『メイスンは今や事業を隠退し、”地方名士として敬われる”という夢を実現するべく、片田舎クレグウェルで日々を送っていた。ある日、農園の持ち主マンシプル家を訪れた彼は、その帰途、不慮の死を遂げてしまう。目撃者によれば、故障をした車を降りたメイスンは、喚声とともに宙を泳ぐように倒れ息絶えたという。この奇妙な事件もやがて、凶器と思われる拳銃が発見され、殺人であることが決定的となるが、さっぱり糸口が掴めず、遂にティベット警部の登場を待つこととなった……。モイーズが描く、ファンタスティックな殺人の顛末!』~

ユニークな(変人・奇人といわないまでも)登場人物とティベット警部とのやり取りを楽しむ小説かも?。本格度はそれほどでもないし、題名のファンタスティックな殺人(凶悪な殺人ではない?)の意味もよくわからなかった。


No.823 6点 赤の組曲
土屋隆夫
(2015/10/30 13:30登録)
裏表紙より~『千草検事は、懐かしい友・坂口秋男の来訪をうけた。「警察署長を紹介してほしい」彼の妻が失踪したというのだ。千草は助力を約束する。坂口の妻らしき女性が、長野の温泉を訪れたという情報が入るが、その女性も失踪してしまう。犯人が残す「赤い」謎―。論理と直感が絡まり合い、ひきたて合い、鮮やかな結末を紡ぎ出す本格推理小説。』~

題名や目次にある「赤」に期待し過ぎたのか・・・。それほどの謎ではなかったのが残念。方言の扱い並びに刑事宅でのエピソードから解決への流れは光っていました。


No.822 5点 奇術師の密室
リチャード・マシスン
(2015/10/28 00:06登録)
裏表紙より~『往年の名奇術師も脱出マジックに失敗し、いまは身動きできずに小道具満載の部屋の車椅子のうえ。屋敷に住むのは、2代目として活躍する息子とその野心的な妻そして妻の弟。ある日、腹にいち物秘めたマネージャーが訪ねてきたとき、ショッキングな密室劇の幕が開く! 老奇術師の眼のまえで展開する、奇妙にして華麗、空前絶後のだまし合い。息も継がせぬどんでん返しの連続。さて、その結末やいかに─鬼才マシスンが贈る、ミステリーの楽しさあふれる殺人悲喜劇。 』~

密室とありますが、密室トリックものではありません。マジックルームという一室で繰り広げられる劇です。語り部は、車いすで動くことも、しゃべることもできませんので、ある意味観客みたいなものです。ユーモアあふれる語り部、バカバカしい?トリックの繰り返しということで、ユーモアミステリーに分類されるのかも。


No.821 4点 禁断の魔術
東野圭吾
(2015/10/28 00:03登録)
裏表紙より~『高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!』~

『禁断の魔術』(2012)所収の「猛射つ」を大幅に加筆・改稿したもの~2015版~で拝読。残念ながら人間ドラマを感じることはできなかったし、内容もありきたりのものでした。

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