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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.873 6点 純喫茶「一服堂」の四季
東川篤哉
(2016/03/02 21:36登録)
各編のトリックは、バカミス気味?であまり現実味があるとは思えないのですが、ある仕組みが隠されているところは気に入りました。この仕組みは翌年(2015)発表された某作品で応用されていますね。応用した方が巧かったかも(苦笑)。なお、某シリーズの二番煎じ、三番煎じのそしりを避けるためなのか?結末は著者の心意気を感じることができました。


No.872 5点 クリスティー記念祭の殺人
キャロリン・G・ハート
(2016/02/29 18:04登録)
裏表紙より~『アニーは胸の高鳴りを抑えられなかった。自分の企画した〈クリスティー記念祭〉が、ついに開幕するのだ。人気のミステリ作家も参加してくれるし、催し物も盛りだくさん。誰もが楽しんでくれるにちがいない。が、その記念祭に本格ミステリ嫌いの冷酷な評論家が闖入してきて、おまけに連続殺人が…。ミステリの女王に捧げられた、とびっきりの本格ミステリ。』~

記念祭参加者へのクイズなどあります。問題は作品名当て。出題作品のうち15点ほどは読んでいましたが、当たったのは、2,3点でした(苦笑)。では問題「白のダックのスーツを着て、パナマ帽をかぶった年配の男がデッキチェアにゆったりとかけ、日光浴をしている人々をおもしろそうに眺めている。」答えは「白昼の悪魔」etc. 内容は、まあまあで、あくまでもファン向けの作品のような気がします。


No.871 6点 二千万ドルと鰯一匹
カトリーヌ・アルレー
(2016/02/28 18:12登録)
悪女と悪女の対決。男が腑抜けに思えてきます(笑)。題名は、男は2000万ドルの夢は与えてくれるかもしれないが、現実的には鰯一匹しか与えてくれないというような意味です。著者の特徴である登場人物の少なさという点でも読み易いです。本作登場の悪女は完全犯罪を成功させることができるか?が読みどころの一つですね。


No.870 6点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2016/02/27 13:21登録)
題名「○x8」は、なるほどと思いました(笑)。○○トリックのネタは、まだまだあるんだなあと感心しました。犯人特定など、下ネタではありますが、アイデア勝ちといったところでしょう。


No.869 7点 片桐大三郎とXYZの悲劇
倉知淳
(2016/02/24 21:06登録)
帯より~『聴覚を失ったことをきっかけに引退した時代劇の大スター、片桐大三郎。古希を過ぎても聴力以外は元気極まりない大三郎は、その知名度を利用して、探偵趣味に邁進する。あとに続くのは彼の「耳」を務める野々瀬乃枝。今日も文句を言いつつ、スターじいさんのあとを追う!』~

冬の章・ぎゅうぎゅう詰めの殺意(Xの悲劇に対応)・・・大三郎の推理は、かなり説得力に欠けますね(苦笑)。評価5点。
春の章・極めて陽気で呑気な凶器(Yの悲劇に対応)・・・思い込みや前提を崩してゆく推理方法は気に入りました。評価7点。
夏の章・途切れ途切れの誘拐(Zの悲劇との直接的な関連性は見つかりません。~よって、かなりこじつけの推理をしてみました~本作では副題のとおり3回電話が途切れてしまいます。その要因は名前に関するものでした。Zの悲劇では箱が3つ存在し、それぞれに「HE」「JA」「Z」とあり、これはある名前が途切れたものです。著者がいつかどこかでネタバレをしてくれることを期待して。)・・・内容は強烈な反転とパンチがありました。かなりブラックな味わいです。評価8点。
秋の章・片桐大三郎最後の季節(レーン最後の事件)・・・著者はこれがやりたっかたのですね(笑)。すっかり騙されました。評価9点。
パロディとして、クイーン氏の論理的推理の逆?(特に冬の章など)をあえて描いたのかもしれません。


No.868 5点 ビブリア古書堂の事件手帖
三上延
(2016/02/22 12:16登録)
日常的な謎、青春もの、安楽椅子ものとして楽しく読めました。


No.867 7点 サイコ
ロバート・ブロック
(2016/02/21 19:31登録)
裏表紙より~『シャワーカーテンの隙間からのぞく仮面のような顔。ぎらつく二つの目。メアリは悲鳴をあげはじめた。が、その声は切り裂かれた…肉切り包丁の一閃で!雨の夜、片田舎のさびれたモーテルでなにが起きたのか?大金を拐帯し失踪した婚約者を探すサムが見いだした、恐るべき真実とは?ヒッチコックの映画であまりにも有名なサイコスリラーの原点』~

映画がヒットし過ぎたので、本書はあまり読まれなかったのか?・・・。「悲しみのイレーヌ」の中で紹介された「アメリカンサイコ」を読もうと思ったのですが、エログロだけの内容の乏しいもので、途中で放棄。本家本元を読もうと思いついたわけです。映画ではアンソニー・パーキンスの不気味さだけが印象に残っており、筋は全く忘れていましたので好都合でした。まあ、途中で思い出してしまいましたが・・・(苦笑)。映画と違い、本の犯人は太っていますね。「容疑者Xの献身」もそうでした(笑)。「サイコ」という言葉が本作以降、広まっったことに敬意を表して。


No.866 4点 幸運の逆転
エリザベス・チャップリン
(2016/02/19 10:39登録)
ジル・マゴーンの別名義とのことで拝読。名義が違うと、こんなにも作風が違ってしまうのかと変な感心。裏表紙でネタバレがあるので、途中までサスペンス感もないし退屈で仕方なかった。というより、登場する妻の心境が理解できないことが一番の苦痛。ラストのオチはブラック・ユーモア系で大好きなのですが・・・。短編にすべきだったのかも。


No.865 7点 鉄の枷
ミネット・ウォルターズ
(2016/02/17 09:01登録)
裏表紙より~『資産家の老婦人、マチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。睡眠薬を服用した上で手首を切るというのは、よくある自殺の手段である。だが、現場の異様な光景がその解釈に疑問を投げかけていた。野菊や刺草で飾られた禍々しい中世の鉄の拘束具が、死者の頭に被せられていたのだ。これは何を意味するのだろうか?』~

デビュー作「氷の家」でCWA新人賞、第二作「女彫刻家」はMWA最優秀長編賞、第三作「本作」ではCWAゴールドダガ―賞受賞との経歴の持ち主です。さすが、重厚でうまいとの印象です。ミステリーの部分では、自殺?他殺?の謎、鉄の枷の謎、不可思議な相続の内容などで引っ張て行きます。一方の軸で、登場人物の側面、裏面を徐々に明らかにしてゆく手法で描いています。ミステリー部分より、こちらの方(被害者、その娘、孫の人格形成)が本流のように感じました。なお、シェークスピアの作品が登場しますが、内容を知らない私にも判り易いように説明されており好感が持てました。全体的には、クリスティ氏の手法を用い、背景を非常に重くしたような作品とのイメージですね。


No.864 6点 牧師館の死
ジル・マゴーン
(2016/02/14 07:19登録)
裏表紙より~『クリスマス・イヴの夜、ロイド首席警部は事件の知らせを受け、牧師館に急行した。殺されたのは牧師の義理の息子。単純な家庭内の事件に思われたが、互いに庇いあう家族の前に捜査は難航する。次々と覆されていく偽りの奥から現れた真相とは? 現代本格ミステリの新たな担い手、ジル・マゴーンが描く現代版“牧師館の殺人”。』~

ジャンル分けに困る作品です。アリバイ崩しの本格もの?ともいえるし、方や、心理サスペンスの要素が強い作品でもあるし・・・、一応本格ものということで。クリスティ氏の「牧師館の殺人」とは特に関係はありません。ただし、「さっさと家にひきあげて、ミス・マープルにぜんぶまかせたい心境よ」とか、ミス・マープル似の老婦人がチョイ役で登場したりします。アリバイはお互いを庇い合うため、嘘をついているので複雑で判りにくいのが難点です(自分はアリバイ崩しが苦手なので、そう感じるのかも)。登場人物の心理描写はうまいと思いますが、捜査側の二人の恋愛感情の描写は、本作に限って言えば結構邪魔になっていましたね。著者名義で4冊しか翻訳されていない状況は残念です。


No.863 7点 パーフェクト・マッチ
ジル・マゴーン
(2016/02/11 17:28登録)
裏表紙より~『嵐の去った早朝、湖畔で女性の全裸死体が発見された。遺体は最近莫大な遺産を相続した未亡人のものと判明。その前夜、彼女を車に乗せ、そのまま姿を消した青年が犯人と目されている。だが、この事件には腑に落ちない点が多すぎた。ロイド警部とジュディ・ヒル部長刑事のコンビが不可解な事件に挑む。期待の俊英のデビュー作。』~

トリックは単純ですが、それを非常にうまく隠しています。よって、サプライズは大でした(笑)。全裸死体であるにもかかわらず、暴行の痕跡はないという謎で引っ張て行きます。登場人物が少ないのも魅力ですね。「騙し絵の檻」のカットバックには苦労しましたが、本作のカットバックは読み易かったです。


No.862 6点 壜詰の恋
阿刀田高
(2016/02/10 12:45登録)
裏表紙より~『砂丘でめぐり会い、めくるめく一夜をともにした気高い美女は、翌朝姿を消してしまった。そして枕元には香水のびんが……。それ以来、わが部屋にこの香水の匂いをまきちらすとき、かならずあの美女がそっとあらわれ、熟れた身体をひらいてくれるのだ。「奇妙な味」の小説の名手のブラック・ユーモア秀作集。』~

(再読)初期(6冊目)の短編集です。ベストは「賢者の贈り物」・・・匿名の女性から手袋、ネクタイ、ポートレート、鍵、地図が順次送られてきた。男はそのマンションを訪れてみると、女の死体が・・・。そこへ不審人物がいるとの通報で警官がやってくる。さて男の運命は?そしてその仕掛けとは?。著者はあとがきで、推理小説としてはあえてアン・フェアな道を選んだと言っていますが、三人称を一人称で描けば、その問題は解決か?。なお、長編で読んでみたいなあと思うような作品でした。表題作の小粋な短篇から、グロテスクな結末を予想させるブラック・ユーモアまでバラエティに富んだ作品集です。気の向いた時に、書棚から著者の作品を引っ張り出して再読するのですが、過日も歌野氏の作品テーマを見つけたりしました。本作の中にも京極氏、島荘氏、黒研氏の作品のモチーフがあるのを発見。これも読書の一つの楽しみですね。


No.861 6点 幸福荘の秘密―新・天井裏の散歩者
折原一
(2016/02/08 13:02登録)
裏表紙より~『幸福荘―推理作家小宮山泰三を慕うあやしい住人たちが、南野はるか争奪戦を繰り広げたアパートは瀟洒な三階建てのマンションに建てかわった。その第二幸福荘の前で花束を捧げ泣いていた謎の女性。そして始まる九転十転の逆転劇…。前作『天井裏の散歩者』を凌ぐ衝撃の結末とは。』~

前作では、ヒロイン南野はるかを巡る男たちの争奪戦が楽しめました。本作では登場しないはずと思っていたら、後半に登場で大活躍!。言い寄る男たちを退治するシーンは大笑いでした。前作同様、叙述の大盤振る舞いです。叙述の解説付きなので入門編になるかも。このシリーズは打ち止めのようですが、もう一方のユーモアシリーズ・黒星警部の新作を待ち望んでいるところです。

変に感心したところ・・・前作「天井裏の散歩者」は1993年角川ミステリーコンペティション(懸賞)に参加した13冊の一冊です。そのことが作中で紹介されています。「ダリの繭」(有栖川有栖)→「誰の眉?」(東久邇國彦)、「暗鬼」(乃南アサ)→「暗記」(昼間ユキ)、「黒猫遁走曲」(服部まゆみ)→「捨て犬ブルース」(波多野舞)、「揺歌」(黒崎緑)→「揺籠の歌」(白峰赤彦)、「邪宗門の惨劇」(吉村達也)→「南大門の難題」(牛尾潮)etc・・・こんなことまで考えなければならないなんて作家って大変なんだな。


No.860 6点 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記
折原一
(2016/02/07 13:35登録)
裏表紙より~『日本推理文壇の重鎮、小宮山泰三が住む2階建てモルタル造りの幸福荘。そこには古くから小宮山を慕う数多の作家志望の若者たちが集っていた―。幸運にも私はそんな幸福荘に入居することになったが、部屋に残されていた1枚のフロッピーが私を戦慄させた。創作なのか、現実なのか。〈文書1〉から〈文書6〉まで、6つの不思議な連作短編小説を読み終えた私は思わず天井を見上げて…。叙述トリックの名手が、九転十転のドンデン返しであなたに挑む、究極の叙述ミステリー。』~

山田風太郎氏の「誰にも出来る殺人」のパロディー・パスティーシュです。初期の著者作品の黒星警部シリーズに近い、軽いノリの作品でした。前半は、アパート住人による、若くて美人の作家・南野はるかの争奪戦です。後半は、著者らしい叙述のオンパレード。前半の方が楽しめました。叙述は大好きですけれども、後半はちょっとクドイ感じがしました。


No.859 5点 黄色い犬
ジョルジュ・シムノン
(2016/02/05 13:22登録)
メグレ警部の言葉に「推論はしない」とあります。事件が次々と起こるのですが、主人公が推論をしないので、読者も推論の余地がありません。他の方も言っているように、メグレ警部の行動が突飛であり、その根拠が説明されません。よって、何か置いてきぼりを食ったような感じです。全体の雰囲気はいいのですが、ミステリー部分だけに限って言えば、作風は肌に合わないのかも。


No.858 7点 悪意の糸
マーガレット・ミラー
(2016/02/04 18:52登録)
解説によると、「ロマンチック・サスペンス」の構造を採用した作品とのこと。話は単純明快、登場人物も少ないので、スムースに頁がすすみます。主人公シャーロット(医師)は既婚の男性と恋仲である。事件担当の刑事はシャーロットに一目ぼれ。刑事は公私混同ではないと言いつつ、シャーロットを口説きまくります。この辺りの洒落た会話を楽しむことができました。そして・・・。やはり、ラストは一筋縄ではいかないところが著者らしい。「ミラー節」発揮といったところですね。


No.857 5点 男の首
ジョルジュ・シムノン
(2016/02/02 08:53登録)
(1985版東西ベスト83位、2012版ではランク外)2008年、英「タイムズ」紙が発表した最も偉大なミステリ作家ベスト10(選出基準は不明です)。その1位はパトリシア・ハイスミス氏 2位ジョルジュ・シムノン氏 3位アガサ・クリスティー氏。ということで、お初のジョルジュ・シムノン氏の作品となりました。しかし、本作は異色中の異色作ということで、入門には向かないとのことが後で判明。「罪と罰」を念頭に置いて描かれていることは、よくわかるのですが、ミステリーとして、どうもしっくりこない点が3か所ほど・・・。犯人とある人物の接点が何もないというような記述(場面設定)は不自然またはアンフェアですね。このこと(接点なし)を前提として読んでいるので、どんな方法で完全犯罪を実行したのか?とワクワクするわけです。しかし、真相は?、何もありませんでした・・・(苦笑)。また、メグレ警部が手紙を読むチャンスがあったことや、ピストルを操作するチャンスがあったことなど、ご都合主義っぽい・・・。と、辛口になってしまいましたが、まだ1冊目なので、評論家の間で高評価の「モンマルトルのメグレ」や、本サイトで高評価の「倫敦から来た男」などを読んでみたいと思います。


No.856 5点 パディントン発4時50分
アガサ・クリスティー
(2016/01/29 18:59登録)
2015年、世界中が投票したアガサ・クリスティー作品・ベスト10の第7位です。世界的な評価~本作の良さが良くわかりませんでした。日本人はどうしても本格ものを求めるので、本サイトのように低評価となってしまうのでしょう。同じプロットならば、他にもっと良い作品はありますし・・・。主人公のルーシー(家政婦)の活躍は理解できますが、ベスト10に入るのかな?というのが率直な感想でした(苦笑)。


No.855 7点 本格篇「眼中の悪魔」
山田風太郎
(2016/01/27 10:21登録)
表紙がいい!!!。これは「快楽の園」(ボス・1450?~1516))の一部分ですが、非常に本作の内容とマッチしていると思いました。一つは、「司祭館の殺人」(本作のマイベスト)の青年と娘のような感じを受けたこと。もう一つはこの絵はレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代に描かれていますが、当時では、かなり先駆的なシュールレアリスムの作品でした。風太郎氏のこれら諸作品も、”先駆的”なミステリー要素を多分に含んでいましたね。数作品に登場する、あるモチーフが、この後の「太陽黒点」(1963)に繋がってゆくのも良くわかりました。

余談ですが、「誰にも出来る殺人」が折原一氏に影響を与えた作品であることの紹介です。氏のブログより~『18歳の頃、このへんてこりんな小説を読んで、「ミステリ作家になれるものなら、こういう作品を書きたいな」と思った。私にとってバイブル的な作品なのだ。ある意味、私の原点なんですね。』~ということで早速オマージュ作品である「天井裏の散歩者」を読まなければ・・・。


No.854 5点 人間動物園
連城三紀彦
(2016/01/22 21:42登録)
著者らしい反転の構造は評価したいと思います。しかし、事件現場が特殊設定の為、犯人との交渉もなく、誘拐ものらしい緊迫感がなかったのが残念です。動機もいま一つのような気がします。本作(2002)が「造花の蜜」(2008・誘拐もの~これは傑作と思います)に発展したと感じました。

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