007/ムーンレイカー 007 |
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作家 | イアン・フレミング |
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出版日 | 1964年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2019/01/19 21:16登録) 初期にしては陰謀が大げさな例外的な作品なんだけど、売れてからのお約束みたいなものが薄くて、丁寧に書かれた印象を受けるのが、いいところ。実際、本作をリライトしたのが「ゴールドフィンガー」なんだろう。「ゴールドフィンガー」はもう「何がウケて、自分は何が書けるか?」をよく分かって「勝ちにいった」作品なんだけども、本作はまだいろいろと「試してみる」感が出ていてこれはこれで新鮮に読める。 実際、終盤までとりあえず「ムーンレイカーの打ち上げの妨害者は誰か?」を軸にプロットが進行するので、ヴィランのドラックス卿の関与だって匂わせる程度。まあ序盤のブリッジ勝負があるから、ドラックス卿が善玉なわけはないのだが、最初っから憎々しいゴールドフィンガーに比べたら、エネルギーと指導力に満ちたカリスマ・リーダーとしてそれなりの説得力のある描写だしね。 だから逆にボンドがまだ若僧っぽい。ムーンレイカーの打ち上げ阻止のために「自分が犠牲になろう」とするあたり、クラシックなイギリス冒険小説みたいで、ボンドらしくない。オマケに、最後にはフられる...アンタ誰だ(苦笑)。 訳者の解説によると「インテリ好みの西洋講談」だそうだ。意外なくらいに若々しい筆で、いいじゃないか。 |
No.1 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2016/03/08 11:52登録) (再読)裏表紙より~『ドーヴァーの白亜の岸にあるムーンレイカー基地では、億万長者ヒューゴ卿が国家に寄付する超大型原爆ロケットの製作が進行していた。そこへ007号ジェームズ・ボンドが、保安係として特派されることになった。前任者が謎の死をとげたからである。国際的英雄ヒューゴ卿とボンドは、トランプのいかさまをめぐって白熱的な大博打を演じたという因縁があった。基地のなかにはいったボンドが発見したムーンレイカーの秘密、それは大英帝国を震駭する大陰謀だった!』~ 最初に読んだ「007」で思い出深い作品です。”ふたつの三八口径が同時にうなった。”で始まるシリーズの第三作目(1955年)。酒、料理の話、ゲーム対決(ブリッジ)、カーチェイス、敵陣からの脱出と、この作品からいわゆる007らしくなってきたような気がします。ただし、色恋は少々です。映画でのヒローとは違い人間味が感じられます(ブリッジ対決では、映画のイメージにあるスマートさやクールさはなく人間くさい)。ボンドは、やはり初期のショーン・コネリー氏をイメージしながらの読書となってしまいました。 |