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ミステリの祭典

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サイコ
別題『気ちがい(サイコ)』/「サイコ」三部作

作家 ロバート・ブロック
出版日1960年04月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 6点 クリスティ再読
(2023/10/23 19:01登録)
超有名作だけど、原作読んでいる人は意外に少ないかも。
ヒッチの映画はミステリ映画を語る上じゃ必見作なのは言うまでもない。で、原作は、というと基本的に映画と同じ内容。しかも映画が伝説なのは、話の内容以上に、ヒッチコックの「映画術」が凄まじいため....内容的には「中編」くらいの密度の話だから、映画にした時に一番過不足なく映画にできている。なら原作読まなくていいと言えばそうなんだよね。
それでも、私立探偵アーボガストは階段から落ちて死なないし、ベイツが母親を抱きかかえて階段を降りたりしない。これが不満、となってしまうと、原作者ブロックの立場がないな(苦笑)
うん、というわけで、本サイト的にはこのくらいの評価にしておこう。一応、タイトルとかミスディレクションの役目もあって、小説として悪くないんだけどもね。
でもさ、純ミステリ的な見地だと、ロスマクの例の作品、絶対本作の影響受けてると思うよ。違う?

(あとブロックの話なんだけど、この人ラヴクラフトの最後の弟子みたいなものなんだよね。「アーカム計画」とかそのうちやりたい)

No.4 7点 人並由真
(2021/08/24 06:14登録)
(ネタバレなし~途中の一部を除いて)
 カリフォルニアの地方都市フェアヴィル。小さな不動産会社で事務員として働く27歳の独身女性メアリ・クレインは、婚約者サム・ルーミスの亡き父親が遺した多大な負債のために、彼と結婚できないでいた。そんななか、魔が差したメアリは、大手の契約者トミイ・キャシディ老人が預けた4万ドルの現金を横領してしまう。メアリは大金を持って少し遠方の恋人サムのもとに向かおうとするが、途中で太った中年男ノーマン・ベイツが経営する人里離れたモーテルに宿泊する。そこで頭を冷やした彼女は今夜はここに泊まり、翌朝、早めに会社に戻って金を返そうと考えた。だがそんなメアリの前に殺人者の影が。

 1959年のアメリカ作品。作者ブロックの第六長編(処女作の『スカーフ』以来ようやっと二冊目のハードカバーで、これが躍進作、出世作になったそうだ)。

 評者は今回はじめて原作を読む。
 当然、ヒッチコックの映画はウン十年以上前から観ているし、そもそもそれ以前から大ネタは知っていた。
 本サイトの閲覧者の多くの方も、原作は読んでなくても映画は観ているだろうし、あるいはネタは知っていると察するが、一応はネタバレをしないように警戒しながら書く。

 まずはどうしても原作と映画との比較になるが、メアリとサムのなれそめなどがしっかり書かれているのは、原作小説のみの味わいどころ。大筋は予想以上に映画とほぼ同様だが、それでもそのほかにも、細部などはさすがに原作の方が情報量が多い。
(評者はポケミスで読んだが、それだと全部で本文180ページ弱と、やや短めの長編なんだけど。)

 しかし素で(中略)トリックのミステリとしてスナオに読むと、結構な部分でアンフェア。序盤からしてこの(中略)オカシイよね? まあ屁理屈をつけてフォローできそうな気も……微妙だな。原書刊行当時、本国アメリカで、怒った人はいなかったのだろうか。

 一方で感心したのは、原題『Psycho』の表意がいい感じのミスディレクションになっている点で……

【以下 しばらくちょっと、微妙にネタバレ】

 
 本当に万が一、何も知らないで素直に読めば、原題のタイトル「サイコ=キチガイ」という言葉の意味は、殺人狂のノーマ夫人(ノーマンの母)のことだと思うだろうし、さらにもう少し深読みしてその言葉の意味ダブルミーニングを探ったとしても<そんなキチガイの母にやむなく付き合わされる、一種の禍根を背負った主人公ノーマン。しかし彼もまた「ちょっとだけ」イカれた男だ>というくらいの認識に至るハズ。

 つまりは<終盤の最大のサプライズ>を活かすためのミスディレクションとして、タイトルロールのキーワードで読者をあらぬ方向に誘導しようという作者の目論見が用意されている。その辺は改めて、よくできている、とは思った。

 なお<実は母親が(中略)>という事実を作中で明かすタイミングは早すぎるような気もしたが、まあこれはこれで、クライマックスのゾクゾク感のポイントを絞り込む上で、効果があったとも考える。

 ちなみに原作のラストでニコラス・シュタイナーが語るある情報は、映画には書かれていない小説のみのもののはずだが、正直、その分野の素人の当方などにはそんなに意味があったとは思えない。
 この部分の情報を割愛したヒッチコックの潤色は的確だったと思う。


【以下、ネタバレ解除】

 評者はこの原作を(今更ながらに)読む段階で、先に観た映画の記憶はどっぷり染み込んでいたわけだけれど、その上で、小説は小説でまあ面白かった、とは思う。

 ただまあやはり、万が一にもまだ大ネタを知らない人がいたら、できるなら原作から先に読むことをオススメする。
 たぶん映画は小説を読んでいても、かなり面白いよ。

 いつかその順番でネタバレに引っかからずに読む~観ることができた人に出会えたら、原作小説と映画、それぞれのくわしい感想を聞いてみたいもので。

No.3 7点 蟷螂の斧
(2016/02/21 19:31登録)
裏表紙より~『シャワーカーテンの隙間からのぞく仮面のような顔。ぎらつく二つの目。メアリは悲鳴をあげはじめた。が、その声は切り裂かれた…肉切り包丁の一閃で!雨の夜、片田舎のさびれたモーテルでなにが起きたのか?大金を拐帯し失踪した婚約者を探すサムが見いだした、恐るべき真実とは?ヒッチコックの映画であまりにも有名なサイコスリラーの原点』~

映画がヒットし過ぎたので、本書はあまり読まれなかったのか?・・・。「悲しみのイレーヌ」の中で紹介された「アメリカンサイコ」を読もうと思ったのですが、エログロだけの内容の乏しいもので、途中で放棄。本家本元を読もうと思いついたわけです。映画ではアンソニー・パーキンスの不気味さだけが印象に残っており、筋は全く忘れていましたので好都合でした。まあ、途中で思い出してしまいましたが・・・(苦笑)。映画と違い、本の犯人は太っていますね。「容疑者Xの献身」もそうでした(笑)。「サイコ」という言葉が本作以降、広まっったことに敬意を表して。

No.2 7点
(2011/05/02 09:46登録)
究極のマザコン&○重○○のホラー・ストーリーです。
あの驚愕の真相を映画で観て知っているので読む必要なし、と思いつつも手にとってしまいました。でも真相を知っていても楽しめました。再読(読むのは初めてですが)でも、サイコサスペンスならではの最高の緊迫感を味わえましたし、どういう伏線があるのかな、と探りながら読めたのも収穫です。
映画では隠す工夫がされていましたが、原作のほうは、ノーマン・ベイツの視点の描写さえあれば、文章でなんとでもなるんだなという印象を受けました。その点は映画のほうが優れています。しかし、あのオチがある限り、映画のヒットはヒッチコックだけの手柄ではなく、やはり原作があればこそだという感じがします。原作小説を賞賛すべきでしょう。

小説のノーマン・ベイツって太っていたんですね。巻末の賛辞にも名を連ねていたように、サイコといえばアンソニー・パーキンス。スリムなトニ・パキのイメージが強すぎますが、ベイツのようなタイプって本当は太めのほうが合っているのかもしれません。

No.1 6点 大泉耕作
(2011/04/13 15:20登録)
この作品の主題は精神異常者・サイコテイック。
僕はこの作品をヒッチコック監督の『サイコ』に魅了されて読んだのですが、何だか映画をそのまんま丸映ししているようにも思えてなりませんでした。つまり監督がそれだけ忠実に映像化しているのですな。
この作品のほとんどが人間の思っていること。動く写生が少なく心理写生がほとんどであり、特にストーリー的にハラハラするようなところもありません。
(ネタバレ)
二重人格者どころの話ではなく三重人格者。かなりの精神異常におどろおどろしさを感じました。

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