蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1693件 |
No.893 | 6点 | ローズマリーの赤ちゃん アイラ・レヴィン |
(2016/03/28 18:27登録) 裏表紙より~『おぞましい悪夢にうなされた夜、ローズマリーは身ごもった。そのときから、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈し始める。しきりに襲う腹部の異常な激痛と生肉への執着、そして医師や隣人や夫の不審な言動。そのうえ、彼女に何かを知らせようとした友人は怪死を遂げた。だがそれさえも彼女に迫り来る恐怖のほんの序章にすぎなかったのだ! サスペンスの鬼才が大都会に住む現代人の狂気と孤独を描いたモダンホラーの金字塔』~ 話は単純で読みやすい。ローズマリーの心理の変化や、恐怖心がよく伝わってきます。米ベスト100位、ミステリー映画ベスト20位。 |
No.892 | 8点 | インフェルノ ダン・ブラウン |
(2016/03/23 20:01登録) 裏表紙より~「(略)ダンテの<地獄篇>の影響を受け描かれた絵には、暗号が隠されているのか?追っ手を逃れヴェッキオ宮殿に向かった二人を次々と危機が襲う!」~ 「ダ・ヴィンチ・コード」では、「~に関する記述は、すべて事実に基づいている。」本作では、「~に関する記述は、すべて現実のものである。」としています。この辺はあくまでも”フィクション”なので目くじらを立てることではないでしょう(笑)。上巻は「ダ・ヴィンチ・コード」と同じような進行で、新鮮さはあまり感じられませんでしたが、下巻は、展開にかなりひねりが加えられており、結末も衝撃的なものでした。精神医学での「否○」という概念が結構ポイントになっているように思います。読み終えた後に、この言葉を思い起こさせるのが著者の狙いか?・・・。2016.10映画公開予定みたいです。本作では、フィレンツェ・ヴェッキオ宮殿内のヴァザーリ作「マルチャーの戦い」の壁画に書かれた文字「探せ、さすれば見つかる」がヒントになって登場します。おお!、この壁画の裏に隠されたダ・ヴィンチの幻の壁画のことか?と思いきや話は別の方向へ(涙)。観光案内を兼ねたエンターテイメント作品です。イタリア旅行がしたくなりますね(笑)。 |
No.891 | 5点 | 64(ロクヨン) 横山秀夫 |
(2016/03/22 09:34登録) 前半は、マスコミ対策、内部権力闘争、家庭問題に割かれ、求めているもの(期待したもの)と違っていました。後半は、やっと誘拐事件になり緊迫感は十分伝わってきましたが、肝心の犯人特定の手段(誉めている人が多い)がどうも?・・・という感じです。ラストで、登場人物のその後の動向をもう少しきっちりした形であらわしてほしかったです。 |
No.890 | 3点 | 相互確証破壊 石持浅海 |
(2016/03/20 07:39登録) ロアルド・ダール氏の「来訪者」はオブラートにくるんだ艶笑譚で思わずニヤニヤ。本作はセックスシーンがストレートで18歳未満禁ですね。ミステリー作家が描くとこうなってしまうのかというほどワンパターンです(大笑)。ミステリー<エロ描写であり、評価はできません。官能ミステリーを書いてほしいと○○○讀物の編集部から依頼されたみたいです。作家もつらいよということでしょうか。 |
No.889 | 7点 | 神坂四郎の犯罪 石川達三 |
(2016/03/19 14:58登録) (再読)1950年の作品(中編)でミステリーとして書かれたものではありません。形式・内容は「藪の中」(芥川龍之介氏・1921)と似ています。ミステリー要素の強い作品なのでとりあげてみました。森繁久彌氏主演で映画化もされています。「五匹の子豚」(アガサ・クリスティー氏・1943)は5人の証言から真相を導き出すものですが、本作はミステリーではないので、そこまではいきません。事件は、横領と心中幇助です。構成は4人の陳述、被害者の手記、被告・神坂四郎の陳述のみで、裁判の様子は描かれません。ミステリーファンの1人として読んでも、ラストの被告の含蓄ある言葉は印象的なものでした。 |
No.888 | 8点 | 青春の蹉跌 石川達三 |
(2016/03/19 14:57登録) (再読)裏表紙より~『生きることは闘いだ、他人はみな敵だ――貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し、挫折していく青年の悲劇を描く長編。』~ 「死の接吻」の書評の中に「アメリカの悲劇」のテーマ云々とありました。たしか「アメリカの悲劇」は映画「陽のあたる場所」の原作だったと思います。「死の接吻」と「陽のあたる場所」は当然話の展開は違いますが、同じようなテーマを扱っています。この男と女の普遍的なテーマを扱った日本の作品は?ということで、石川達三氏の「青春の蹉跌」をとりあげてみました。氏は第一回芥川賞作家で、その後社会派と呼ばれるような作品を多数発表しています。その中で、本作はミステリー要素の強い作品となっています。映画化もされており、萩原健一氏、桃井かおりさん、檀ふみさんが出演、退廃的なムードの強い作品となっていました。原作の方は、どちらかというと立身出世型の青春を描いたもので、結末は映画と違っています。青春時代の思い出深い作品なので甘目の採点かも・・・。 以下ネタバレ。 医学的見地より問題化され話題にもなった作品です。しかし、実話に基づく作品であり、その裁判では医学的問題をどのように取り扱われたのか気になりました。 |
No.887 | 9点 | 長いお別れ レイモンド・チャンドラー |
(2016/03/18 07:55登録) (再読)(東西ベスト6位)「大アンケートによるミステリー・サスペンス洋画ベスト150」の書評でもふれた映画の脚本トラブルからか?、1952年ハリウッドの脚本仕事に見切りをつけ、本作に全力を傾けたようですね。「最後の一行」的感覚でいえば『ギムレットにはまだ早すぎるね』がすべてであるような気がします。本作は、筋書きがいいのであって、いくら男の友情や独特の文体がいいからといっても、それだけでは傑作にはならなかったような気がします。同レベルの筆力を持った作家が、本格もの、叙述もので別の角度から書いたとしても、やはり傑作になるのではと思いました。 ちなみに日米英の嗜好の差です。 (米)大いなる眠り>長いお別れ>さらば愛しき女よ>湖中の女 (英)大いなる眠り>さらば愛しき女よ>長いお別れ>湖中の女 (日)長いお別れ>さらば愛しき女よ 米英では「大いなる眠り」が断然人気のようです。参考・日英米各ベスト100より |
No.886 | 6点 | さらば愛しき女よ レイモンド・チャンドラー |
(2016/03/16 17:31登録) (再読)(東西ベスト79位)1986年版では13位でした。初読は数十年前であり、当時は007>ハード・ボイルドの私立探偵という気持ちでしたので、ハード・ボイルドにのめりこんでいくこともなく、どちらかというと苦手意識の方が強かったです。今から思えば大人の味がまだわからなかったのかもしれません。東西ベスト1986版の「長いお別れ」の(うんちく)によると、”チャンドラーは、つねにイギリスの伝統的な推理小説を念頭において新しい書き方を模索した作家だった。本書の書かれる八年前からすでに彼は、狂言回しにすぎない私立探偵は推理機械と化した本格派の名探偵とさして違わないことに気づいていた。つまりマーロウに、より深い感情をもたせたいとおもいつづけていたのである。”とあります。これを信じれば、「長いお別れ」(1953年)の8年前は1945年となり、本作(1940年)の発表時点では、まだマーロウは未完成の探偵であった?ということになりますね。「うーん、なるほど」と思えたのは、狂言回し的な部分で、マーロウの目の前で人が死に過ぎることでした(苦笑)。ハード・ボイルドに詳しくないので、再読に当たり段々こんがらがってきたことがあります。ハード・ボイルドのイメージはクールで妥協しない探偵像というものでしたが、本作のラストでは上記(うんちく)にもあるように、マーロウは”感情的”な発言をしています。つまり、本作はハード・ボイルドではない?、などと考えてしまいました。ウィキペディアで調べてもいま一つ明確な答えが出ませんでしたが、あるサイトで「文体に特徴があるということで、主人公が無感情である必要はない」との趣旨のことが書いてありました。非常に判り易く納得。独特な雰囲気を味わうことができました。次は、以上のことを踏まえ「長いお別れ」の再読に取り掛かります。 |
No.885 | 8点 | 深夜プラス1 ギャビン・ライアル |
(2016/03/14 18:20登録) (再読)(東西ベスト25位)本作の良さは、シンプルなストーリー、個性ある登場人物(特にアルコール依存症のガンマン)、ハードボイルド風な生きざま、男の友情、主人公ケインのなかにある元情報部員だったコードネーム「カントン」とのせめぎ合い(戦争の後遺症)など、いろいろな点をあげることができると思います。そんな中でも、やはり一番は、ラストシーンにおける”ロマンティシズム”にあると思います。非常に印象的ですね。このシーンの為に物語があると言ったら言い過ぎか?これがプラス1になっているような気がします。 |
No.884 | 5点 | クライム・マシン ジャック・リッチー |
(2016/03/13 22:31登録) (再読)なぜ手元にあるのかと思いましたら、2006年版海外編「このミステリーがすごい!」第1位との帯がありました。解説には「シンプルに書くことにこだわった作家・・・無駄な言葉や描写を徹底的にそぎ落とすこと・・・「軽さ」こそが身上である。」とあります。その「軽さ」を良しとするかどうかで評価が分かれてしまうと思います。常日頃、短編はあらすじを読んでいるようで味気ないとの思いがあり、オチにかなりのインパクトがないと高評価は付けづらいですね。決してつまらない作品集ではありませんが、ガツンとくるものが残念ながらありませんでした。MWA賞受賞作「エミリーがいない」も評価は6~7点くらいかな。 |
No.883 | 5点 | 幽霊列車 赤川次郎 |
(2016/03/12 22:20登録) (再読)謎の提示は大変興味をそそられます。それに見合った真相を期待し過ぎたのか、いまいちインパクトが不足しているように感じました。ブラックな味わいは良かったですが。 |
No.882 | 6点 | 来訪者 ロアルド・ダール |
(2016/03/12 10:12登録) 裏表紙より~『オズワルド叔父は、その巨万の富とたいへんな漁色癖で、昔から一族の伝説的存在だった。ある日、30年来絶えて音信のなかった叔父から、遺産と称して厖大な日記が送られてきた。そこには、それまで噂でしか知ることのなかった、国から国へ、女から女へと渡り歩いた叔父の優雅で刺激的な暮らしぶりの全貌が記さていたのだった…28巻におよぶ日記のなかから、叔父の絶筆となったシナイ砂漠での甘美で奇妙な一夜の体験を紹介する表題作、媚薬をめぐる顛末を描く「雌犬」など、短篇の名手が絶妙の筆ばさきで綴る愉しくも恐ろしい4つの艶笑譚。』~ (再読)1989版です。( )は新訳版(2015)。帯「すばらしくセクシャルでスリリングな大人のメルヘン」(エロティックなミステリの最高峰) ①来訪者・・・砂漠で出会った男が自宅へ招待してくれた。美貌の妻と娘がおり一夜を共にしたいと画策する。 ②すばらしきかな、スワッピング(夫婦交換大作戦)・・・お堅い妻に気づかれずに実行する計画を練る。 ③やりのこした仕事(やり残したこと)・・・未亡人は、元恋人とやり残していることがある。 ④雌犬・・・男の理性を完全に失わせるほどの媚薬を開発した。 以上の4点。表題作「来訪者」がベストですね。セックス描写は、強烈なものはなく、どちらかといえばユーモア・ミステリーになると思います。なお、阿刀田高氏の作品にも同題名の「来訪者」(日本推理作家協会賞(短編篇))があります。 |
No.881 | 7点 | 大アンケートによるミステリー・サスペンス洋画ベスト150 事典・ガイド |
(2016/03/11 21:42登録) 「東西ミステリーベスト100」と同じ方式で、1991年391人による”ミステリー・サスペンス洋画”のアンケート結果です。 1位 第三の男 2位 恐怖の報酬 3位 太陽がいっぱい 4位 裏窓 5位 死刑台のエレベーター 6位 サイコ 7位 情婦(検察側の証人) 8位 十二人の怒れる男 9位 鳥 10位 悪魔のような女 1986年版の「東西ミステリーベスト100」との関連性を調べてみたいと思ったのですが、本作の中のエッセイ編「原作と映画の間に」(山口雅也氏)で先を越されていました(笑)。それによると、原作、映画ともランクインしているものは8%と非常に少ないとの結果です。その要因の分析は的確なものでした。 それではと、ミステリー作家や評論家が何に投票しているのかを調べてみました。ベスト10に入った作品にどれだけ投票(的中)していたかの結果です。芳野昌之氏 8 小林久三氏 7 阿刀田高氏 6 原尞氏 5 (この辺までは驚異的な数字ですね。)結城昌治氏、都筑道夫氏 4 西村京太郎氏、泡坂妻夫氏 3 筒井康隆氏、大藪春彦氏、山崎洋子氏、折原一氏、宮部みゆき氏 2 逢坂剛氏、山口雅也氏、瀬戸川猛資氏 郷原宏氏1 という結果でした。 なお、座談会の中で面白いエピソードがありました。「見知らぬ乗客」(映画38位)<原作パトリシア・ハイスミス氏 脚本レイモンド・チャンドラー氏他>でチャンドラー氏はこんなばかばかしい話はあり得ないとの理由で脚本を全然書かなかったらしい。またヒッチコック監督ともかなり衝突していたみたいですね。映画は1951年ですから、まだ「長いお別れ」は書いていない時代の話ですね。LGは近々再読のつもりです。20位「ローズマリーの赤ちゃん」28位「コレクター」など懐かしい作品がありました。早速原作を読んでみようと思います。 |
No.880 | 7点 | 北斎殺人事件 高橋克彦 |
(2016/03/10 23:13登録) (再読)「BOOK」データベースより~『ボストン美術館で殺された老日本人画家とは何者か?一方日本では、謎の生涯を送った浮世絵師葛飾北斎の正体に迫ろうと研究家たちが資料を追う。北斎は隠密だった?日本とアメリカを結ぶキイはどの辺にあるのか、またキイを握る人物とは?浮世絵推理の第一人者の「写楽殺人事件」に続く傑作。日本推理作家協会賞作。』~ 本書のメインである北斎隠密説が納得できるものかどうかは別として、その推理の根拠・過程は十分楽しめます。サブである殺人事件は当然北斎がらみではあるのですが、ここで本格ものを期待するのは酷な話ですね(笑)。探偵役は登場しますが、残念ながら真相は告白によるものとなっています。しかし、真相の背景は良く考えられていると思いました。 以下余談です。本書でも触られていますが、北斎は印象派の画家であるモネ、ゴッホ、ゴーギャンに多大な影響を与えていますね。小布施(長野)には北斎館があります。映画「北斎漫画」(1981)では、○○○バンクCMのお母さん役でおなじみの樋口可南子さんが、「蛸と海女」を描くシーンで大蛸と絡み非常に妖艶な姿を見せてくれていました。 |
No.879 | 5点 | 悪魔の羽根 ミネット・ウォルターズ |
(2016/03/09 17:44登録) 主人公は何者かに拉致監禁され、3日後に解放されます。なんと無傷であり、警察には曖昧な証言ばかりを繰り返します。何かを隠しているという謎でひきつけられますが・・・・・・。しかし、急に逃避先である農村での出来事に物語が移ってしまいます。この部分が、かなり冗長でありサスペンス感の乏しいものになってしまいました。後半の主人公と警察とのやり取りについては迫力があり、その点、著者らしさを感じることができました。 |
No.878 | 7点 | 007/カジノ・ロワイヤル イアン・フレミング |
(2016/03/08 11:54登録) (再読)裏表紙より~『秘密情報部員00七号、ジェームズ・ボンド、彼の新しい任務はソ連の工作員でフランス共産党の大立物、ル・シッフルの資金源を断つことであった。党の資金を使い込み、カジノの賭博場で一挙に挽回をはかろうとするル・シッフル、そうはさせじと英米仏三国共同作戦のもとにバカラ賭博場に挑戦するボンド。賭金は50万フランから始まって、100万」、200万と幾何級数的に上昇し、ついに3200万フランの巨額に達した。興奮と緊張の極に達した人いきれ。そのとき、ボンドの背後にそっと死の影が歩みよった・・・・・・。 』~ 「007ドクター・ノオ」(1962年)の映画化以来、半世紀を超えシリーズ(映画)が継続中であることは、驚異的なことです。その記念すべきシリーズ第1作目が「カジノ・ロワイヤル」です。本作は、権利の関係で現シリーズの番外編として映画化(1967)されていますが、コメディ(パロディ)タッチで内容もかけ離れており、拍子抜けした記憶があります。2006年版は原点に戻るということで、かなり原作に忠実だったようですね(未観)。さて、内容は前半はカジノでのバカラ対決を中心に、後半は恋愛小説風となります。「悪漢が最後には殲滅されて、英雄が勲章をもらって美女と結婚するようなロマンチックな冒険小説とは違うんだ。」と適役に言わしめています。思わずニヤッとしてしまいました。著者としては、ハード・ボイルドタッチを取り入れたことや、ラストへの伏線らしきものに言及したのかもしれません。ボンドも苦悩するんだ・・・。 |
No.877 | 6点 | 007/ムーンレイカー イアン・フレミング |
(2016/03/08 11:52登録) (再読)裏表紙より~『ドーヴァーの白亜の岸にあるムーンレイカー基地では、億万長者ヒューゴ卿が国家に寄付する超大型原爆ロケットの製作が進行していた。そこへ007号ジェームズ・ボンドが、保安係として特派されることになった。前任者が謎の死をとげたからである。国際的英雄ヒューゴ卿とボンドは、トランプのいかさまをめぐって白熱的な大博打を演じたという因縁があった。基地のなかにはいったボンドが発見したムーンレイカーの秘密、それは大英帝国を震駭する大陰謀だった!』~ 最初に読んだ「007」で思い出深い作品です。”ふたつの三八口径が同時にうなった。”で始まるシリーズの第三作目(1955年)。酒、料理の話、ゲーム対決(ブリッジ)、カーチェイス、敵陣からの脱出と、この作品からいわゆる007らしくなってきたような気がします。ただし、色恋は少々です。映画でのヒローとは違い人間味が感じられます(ブリッジ対決では、映画のイメージにあるスマートさやクールさはなく人間くさい)。ボンドは、やはり初期のショーン・コネリー氏をイメージしながらの読書となってしまいました。 |
No.876 | 7点 | 玉嶺よふたたび 陳舜臣 |
(2016/03/07 10:07登録) (再読)「BOOK」データベースより~『訪中視察団の一員として中国を訪れた東洋美術史専攻の入江は、25年ぶりに玉嶺へと向かう。抗日ゲリラの疑いのあった中国人の娘・映翔を愛し、不可解な別れを味わった思い出の地である。戦火の渦のなかに隠されたその悲恋の真相たる彼女の心境を今ようやく入江は知るのだった。』~ 解説・権田萬治氏によれば、「見事なミステリー・ロマンである。」ということです。異論はありません。ミステリーよりロマンスに重点が置かれていますので、ラストは感動しました。ロマンスものに弱いので・・・(苦笑)。「本作」および「孔雀の道」とで1970年日本推理作家協会賞受賞しています。ちなみに、江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞、直木賞の三冠王(?)は、現時点で陳舜臣氏、高橋克彦氏、桐野夏生氏、東野圭吾氏の4名だけのようです。 |
No.875 | 7点 | 東西ミステリーベスト100 事典・ガイド |
(2016/03/05 10:27登録) 「007」の内容を確認しようと書棚をひっくり返したら本書が出てきました。まったく記憶にありませんでした(笑)。本書と同様の趣旨で発表された「大アンケートによる洋画ベスト150」(1988年版)の方は記憶にありました。よって当時はミステリー本より映画だった・・・。それでも既読のマークは60冊位あったので、当時としては結構読んでいたんだなあと驚きの気持ちが強いですね。ミステリーは謎があり、それを解くものというイメージだったので、ハードボイルドやスパイ・冒険ものなどは、当時ミステリーとは思っていませんでした。よって、このサイトを利用し始めたころ、恥ずかしながら「大誘拐」「白昼の死角」などはミステリーの範疇外などと書評していました。しかし、本書で12位、28位としっかりランクインしており、かつ、しっかりと既読のマークがついていました。その時点でミステリーと認識しなければならなかった・・・(苦笑)。本書は、海外編のみ101位~200位まで作品名が載っています。その中から2012年版ベスト100へランクアップしたものなど、時代の変遷を見るのも興味深いですね。また2012年版とは違う「うんちく」を読むのも面白かったです。大がかりなアンケート方式では、1975年の週刊読売のミステリーベスト20があります。1975(読売)1988(文春)2012(文春)のベスト10内すべてにランクイン作品は、国内では「獄門島」「虚無への供物」「ドグラ・マグラ」「点と線」「本陣殺人事件」、海外では「そして誰もいなくなった」「Yの悲劇」「幻の女」「アクロイド殺し」「長いお別れ」でした。よって、東西の横綱は横溝正史氏、アガサ・クリスティー氏ということになるでしょうか。余談ですが、「洋画ベスト150」で山田風太郎氏が「禁じられた遊び」を1位にしていたのが意外でした。ミステリー既読分では「サイコ」「めまい」「007ロシアより愛をこめて」「太陽がいっぱい」とランクイン作品が少ない(涙)。なお、姉妹編「ミステリー・サスペンス洋画ベスト150」があるようなので、そちらでは増えると思いますが・・・。 |
No.874 | 5点 | 大統領の密使 小林信彦 |
(2016/03/04 13:21登録) シリーズの4弾(大人向けとしての第1弾)とのこと。1971年の作品でナンセンス・ギャグをメイン?にしたスパイ・冒険もののパロディといった感じです。解説では「1993年の今、本作品はミステリではない」と断言しています。しかし、後発のミステリー作品で、本作のアイデアをどんでん返しに使用している例もあります。当時、著者はこのアイデアを本作品のトリックとは考えていなかったような気はします。あくまでもギャグがメイン?。しかし、そのギャグが伝わってこないのです(涙)。パロディの人物や世相は80%近くわかるのですが・・・。主人公・今似見手郎(いまにみてろう)のモデルは、ラジオ「いまに哲夫の歌謡パレードニッポン」(お相手は、あなたの「ちえ」よ)の今似氏だと思います。車での営業時中(昼間)、よく聞いていました(笑)。一番面白かったのは、「007は二度死ぬ」のボンドガールが生んだ子供(鈴木ボンド)の登場でした。(映画では確か偽装結婚であったような、小説では結婚し身ごもったような・・・。) |