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ミステリの祭典

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来訪者

作家 ロアルド・ダール
出版日1976年07月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2023/10/06 21:18登録)
男女の闘争譚がダールの一大テーマだ、ということを「あなたに似た人」「キス・キス」で評者は書いたわけだが、それに続くこの短編集では、この男女の闘争が艶笑譚に変貌してくる....まあいいけどさあ。
なので、意外なオチはしっかりとキメてくれるけど、ミステリ、というほどのものではないな。「来訪者」「雌犬」はオズワルド叔父シリーズで、ホラ男爵のような性の冒険家であるオズワルド叔父の自叙伝から、という体裁で語られる話。

いや本当に落語みたいな洒脱な語り口にやられる。落語家が「マクラ」としていろいろ導入を苦心惨憺するわけだが、こんな感じでオズワルド叔父のエピソードをいろいろ語っていく。うん、短編小説としてはけして「模範となる」ような書き方じゃないわけだけど、これで通用するのがダールの魔術、というものだろうな。いや本当に話が意外な方向に転がっていって、先が読めない。初見殺しとかそういう言い方をしたいくらい。


一応悲劇な「やり残したこと」は、オトコのダメさ加減がヒドいもの...だから艶笑、といっても深刻な男女闘争なんだけども、この深刻さは離れてみれば「バカなもの」でしかないのが、ダールのシニカルな部分のようにも感じる。

No.1 6点 蟷螂の斧
(2016/03/12 10:12登録)
裏表紙より~『オズワルド叔父は、その巨万の富とたいへんな漁色癖で、昔から一族の伝説的存在だった。ある日、30年来絶えて音信のなかった叔父から、遺産と称して厖大な日記が送られてきた。そこには、それまで噂でしか知ることのなかった、国から国へ、女から女へと渡り歩いた叔父の優雅で刺激的な暮らしぶりの全貌が記さていたのだった…28巻におよぶ日記のなかから、叔父の絶筆となったシナイ砂漠での甘美で奇妙な一夜の体験を紹介する表題作、媚薬をめぐる顛末を描く「雌犬」など、短篇の名手が絶妙の筆ばさきで綴る愉しくも恐ろしい4つの艶笑譚。』~

(再読)1989版です。( )は新訳版(2015)。帯「すばらしくセクシャルでスリリングな大人のメルヘン」(エロティックなミステリの最高峰)
①来訪者・・・砂漠で出会った男が自宅へ招待してくれた。美貌の妻と娘がおり一夜を共にしたいと画策する。
②すばらしきかな、スワッピング(夫婦交換大作戦)・・・お堅い妻に気づかれずに実行する計画を練る。
③やりのこした仕事(やり残したこと)・・・未亡人は、元恋人とやり残していることがある。
④雌犬・・・男の理性を完全に失わせるほどの媚薬を開発した。
以上の4点。表題作「来訪者」がベストですね。セックス描写は、強烈なものはなく、どちらかといえばユーモア・ミステリーになると思います。なお、阿刀田高氏の作品にも同題名の「来訪者」(日本推理作家協会賞(短編篇))があります。

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